霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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お久しぶりです。………………お久しぶりです。
約半月振りの更新です。
毎日更新とかうたっておきながら、この体たらく。本当に申し訳ないッ!


第26話

健康的な規則正しい生活は、習慣を定着させることが困難である。それも不規則な生活を何十年も続けていたら、生活リズムの修正はさらに難しくなるだろう。魔女もそのことは承知の上なのだろう。嫌な顔を隠そうとせず、玉虫色の返事を返してきた。

 

「私にとって喘息の治療は優先事項であることは間違いないけれど、別に最優先というほど重要な案件でもないの。かといって治したくない訳でもないの。積極的に治そうとしないだけ。さっきは取り乱してしまったけど、治せる可能性があると分かっただけで満足できたの。よって私がこの図書館から出る必要性はあっても、すぐにするとは言っていないわ。結論として、私はここに残って本を読み続けるし、運動することもないわ。でも貴方の言っていることも嘘であるとも言い切れないから、いつか試してみましょう。それだけの価値はあるでしょうし」

 

頭脳が優れている人の話は聞いていると意味が分からなくなってくるが、この魔女もその類に含まれるようで、ぺらぺらといくつもの小難しい理論を並べ立てて喋っているが、理解できそうもないので適当に聞き流していく。合間合間に相槌を打ちつつ相手をしていると、門番さんの紅さんとメイドの十六夜さんは、俺がこの紫もやしにからまれていることを知りながら無視して話していた。

 

「あの人は私がお嬢様のところまで連れて行きますので、咲夜さんはここに残っていてください。まだ疲れているでしょう?」

「心配してくれてありがたいけど、大丈夫よ。もう回復したわ。ほらこの通り」

 

両手を広げ、優雅にその場でクルリと回転してみせた。足取りはしっかりとしていて、転ぶ心配はなさそうだが、他人の、それも男の前で短いスカートを翻すのは如何なものかと思うわ。今回は残念なことに見えなかったけど、いつスカートの中身が見えるかとドキド……、いやハラハラしながら見てしまった。

 

「そんなに熱烈な視線を向けられても、下着なんて見えないですし、見せませんよ。振り向く速度や風向き、風速、風量、その他もろもろを計算尽くしておりますので、お客様が私の下着をご覧になることは一生に一度とないでしょう」

「咲夜さん、流石にそれは言い過ぎではないでしょうか?」

「そうかしら?至極真っ当な事実だと思うのだけれど?」

「そうですよ。一生どころか、十生ぐらいしても見れないんじゃないんですかね」

「九死に一生も得られない、ということね。…………謗るのもこれくらいにしないと、お客様が塵も残さず燃え尽きてしまうわ。万が一にでもお嬢様の機嫌を損ねてしまったら、お客様が想像もしたくないくらい、悲惨な形相になってしまうかもしれないわ」

「それはお嬢様が癇癪でも起こしてそうなるということですか?」

「何を言ってるの?お嬢様に叱られた私が、悲嘆に暮れ、衝動に突き動かされてサンドバックのように袋叩きにしてしまうからよ」

 

メイドさんやメイドさんや、あと門番さんや、あなた方御2人の口撃で精神に大ダメージを現在進行形で受けているのですが?もう少しで真っ白になるところですが?しかも途中、フォローしてくれたと思ったのに、一瞬で手のひら返ししてくるし、もうおうち帰りたい…………。

 

「私の実力からすれば疑似的に外界を限定的ではあるけれど、召喚は可能なの。そこから感じる五感も通常と同じものだし、空気も清浄そのもの。ただその魔法を行使するのはいいのだけど、疑似的だとはいえ太陽光を私の蔵書に浴びせて劣化を促進させるのは嫌なの。ってちょっと聞いてる?瞳を潤ませて、もしかしてそんなに聞くに堪えない話だったかしら?違う?ならどうして?」

「ああ、いいのですよパチュリー様。ただパチュリー様のご高説を拝聴できて感涙しているだけですから。ただお客様をお嬢様の許へお連れしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「あら、そうなの?まだ話し足りないけど、レミィに呼ばれているのなら、早く行った方がいいわ。今頃愉しく大立ち回りしてるはずだから」

「畏まりました。それではお客様、此方へ」

 

丁寧な言葉遣いでありながら、全くもって謙譲しようとしない態度で案内をしてくれるらしい。できればもう少し割れ物を扱うように優しくしてほしいと思うのは贅沢ではないはず。図書館から出て行く俺たちを、図書館から動こうとしない魔女が手を振ることなく見送っている。

 

「美鈴は屋敷内の片付けをしていてちょうだい。できれば他に侵入者がいないかどうか確認していてくれると嬉しいわ。それと、余裕があれば妹様の様子も気になるから見てきてほしいの。全て問題なければ報告しなくていいけど、何かあれば教えてちょうだい」

「分かりました。咲夜さんもあまり無理しないでくださいね?」

 

では、と俺に向けてお辞儀して軽い足取りで走り去って行く。その後は俺はメイドさんに連れられてどこかへ向かっている。場所はわからないが、ドンパチと激しい騒音が微かに聞こえてくるので、多分霊夢が弾幕ごっこしている場所に向かっているのだろう。正直戦闘力5以下の俺が行けば、流れ弾に当たって大変なことになりそうだが良いのだろうか?あと、こんなにゆっくり歩いていて良いのだろうか?

 

「こんなにゆっくりしてていいのか?このままじゃ、そっちのお嬢様とやらが、うちの巫女に早々に倒されるとは考えてないのか?」

「あら、お言葉を返すようですが、そちらの巫女がお嬢様に瞬く間に倒されてしまうとは考えないのでしょうか?」

 

あははうふふと笑い合うが、お互いに煽り合いで負ける気はない。自分のことではないが、家族といっていい仲の人物を下に見られるのは我慢できないのだ。

 

「なら、どっちが勝つか賭けてみるか?うちの霊夢が勝つのは自明の理だけど」

「あら、賭け事なんてなんと下賎な。ですがいいでしょう。その賭け乗ってあげます。勿論私はお嬢様が勝つことは確定的に明らかですので、お嬢様に賭けますが」

「なら、お前のところのお嬢様が負けた時は、異変解決後にうちの神社で行われる宴会の代金を全額支払ってもらおうか」

「では私は、今日から数ヶ月間で受ける被害の総額を払っていただきましょうか」

「オーケー、乗った。そっちもいいな?」

「異存ありません」

 

意気揚々と賭けが成立して、再び騒音の元凶たる場所に進んで行くが、ふとある考えに思い至る。

 

………霊夢が勝たなきゃ、今後最低三ヶ月は米すら食べれないひもじい生活を送ることになる、ということを。

 

 




最近は学校、部活×2、バイト×2、文化祭実行委員と大忙しで手をつけれない状態ですがなんとか書いていこうと思いますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。

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