心臓止まるかと思った……
さて、まず何から話すべきだろうか?
妖怪を食べるようになった
それがどこからかと言われると、難しいところだ。だが、きりが良い所からの話をしよう。
概要として、俺が生まれる前は普通の一般男性だった、かもしれない。エピソード記憶あたりがごっそり抜けおちているせいで、前世の名前やら何やらかんやらを脳から投げ捨てた状態で生まれ変わっている。
0歳のとき、生まれて間もない頃の話。
いきなりで申し訳ないが、ここからは人から聞いた伝聞話と、俺自身の憶測が多々混じるがそこは汲み取っていただきたいところだ。
俺の生みの親は、ここ幻想郷ではどこにでもいる普通の何の能力もない、本当に普通の男女である、はずだ。俺はこの両親に対する記憶がない。もしかしたら善良な正義感あふれる人かもしれないし、誰もが嫌悪感を抱くような犯罪者かもしれない。全ては『もしも』のこと、平行世界やパラレルワールドの話しなので、気に留めても意味のないことだろう。
それでは話を戻して、俺が0歳のとき、俺は今の育ての親に博麗神社の長い長い石階段の一番下で見つけられ拾われたのだ。そしておそらく家に連れて行かれ育てられた。その時どのように言葉をかけられたとか、拾った相手の顔もわからなかった。当たり前である。生まれて間もない、少なくとも何か月も生きていない赤ん坊の視力なんてないのと同じなのだ。聴覚は辛うじて何か聞こえている程度で、何を言っているかはさっぱりだ。まあなんかやさしい声色だったような気がするかもしれない。なにぶん赤ん坊のときの記憶なもんで、自我自体もふわふわしてて、赤ん坊だからなのか、一日のほとんどを寝て過ごしているため、水風船のように浮いてるのか沈んでいるのか微妙な状態だ。
まあ、長期間夢の世界にさよならしてたから、夢と現実が小学生低学年の給食並みにぐちゃぐちゃしてたからいいんだけどね。
それから約一年、俺が1歳の頃。
それからというもの俺は食っちゃ寝てを繰り返す大人であればただのNEETとよばれる社会不適合者となって、しかもそれが怒られないという何とも素敵な生活を送っていた。だが一年も経てば、何もできなくて暇を感じ始めた。ということで、周囲の観察を始めて半年くらいが過ぎ、いくつか分かった。ここが純和風造りの日本家屋であることと、容姿的にはミスマッチな金髪の変な恰好の女性二人によって世話をされていることが分かった。しかも美人。これは嬉しい。
赤ん坊になったことによって人間の三大欲求の内、食欲と睡眠欲が肥大し、思考回路はほとんど停止状態。つまりだ、
たとえこんな綺麗な女性にお世話されても、俺自身が起立できたとしても、俺の息子が起立することはないんだよぉぉ!!
取り乱したな、今のは忘れてくれ。そもそもそういったことを理解するのは凡そ10歳から12歳の年頃で、齢1年と少しの若輩者には肉体的に理解するのは難しい。三流以下のシナリオライターが書いた安いエロゲのシナリオとは違うのだ。もしも性欲があったとしても、育ての親にそういった感情を持つことはないと断言しておこう。そもそも相手が偉大すぎてそういう対象として見れないんだよな。せめて……いやなんでもない。
ある程度自由に歩き回って、舌も回り始めた2歳頃。
ここでようやく俺は、俺自身が置かれている環境を理解することをできた。金髪の日本家屋にミスマッチななんとも残念な美人2人は、八雲紫と八雲藍、幻想郷の管理者、妖怪の賢者、BBA、スキマ妖怪の式、九尾の狐、スッパテンコーなどの二つ名をほしいままにしている。そんな二人に世話されていると自覚した俺は相当に委縮し、泡吹いて何度か倒れたらしい。それでその状態に慣れたころ俺はある程度のトラブルに対しての耐性がついたようで、並大抵のことでは驚かなくなっていた。
たしかこの時期だっただろうか?ふとなんで八雲家は俺を育てようと思ったのか。もしかして俺には隠された力とか、有名な誰それの末裔とか、予言に記された子だとかそういうのかもしれない。やみのま!とかバニッシュメント・ディス・ワールドとかエル・プサイ・コングルゥとか爆裂魔法とかできるようになるかもしれん。打ち明けられるまで期待に胸を膨らませて待つとしようか。
少しは身の回りのことを自分でできるようになった3歳の頃。
「白鹿、ちょっといいかしら」
母親の一人である胡散臭い雰囲気を漂わせて、姫様気分で近こう寄れとでも言いたげに手に持った扇子で手招きしていた。
「なに?ふだんはぐうたらして、ふゆになったらずっとねてるだめなゆかりかあさん?」
「ぐふぅ!……3歳ながらこの大妖怪たる八雲紫をたおすとはなかなかやるわね……!でもっ、それでもっ、私達はっ、負けn」
「ゆかりさま、そーゆーのいいです。はやくよーじおしえてしてください」
「はい……」
ふむ、息子に他人みたいに扱われるのは嫌みたいだな、よし今後はこれ使って何回か精神攻撃をしてやる。藍お母さんが紫母さんを働かせたいときに限るけど。俺の脳内カーストは、藍お母さん>紫母さんで確定してる。多少ながらある世話してもらった記憶の全ては藍お母さんによるものだけだ。どうせ「藍一人でこの子を育てなさい。あなたの主として命じます」とかそんなこと言ったんだろ。子育て面倒とかそこらへんを思って。
「それで?」
「白鹿に妹ができました!」
「は?」
衝撃の事実!!俺に妹ができました!そんな前兆全くなかったけど、なんか妹ができた!
「世話は任せたわ!」
「ファ!?」
今回は並大抵のことではないので驚きました。だからセーフ。