霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。
最近は月1投稿になってしまってますが、頑張ります。


第28話

「……――――――――――――」

「―――――――――――!」

 

俺たちが熱烈に応援している最中、霊夢たちが弾幕ごっこしながら何か会話している。だが気にしてはいられない。こちらには今後の生活が懸かっているからな。応援の声を緩める気はまったくない。

 

「……――――――――――――――」

「……―――――――――」

「どうしたのでしょうか?」

「さあ?疲れたのか、はたまた飽きたのか。万に一つ」

 

どうやら一旦弾幕ごっこを中断するために話し合いをしていたらしく、一時休戦協定を結んだようで、こちらに向かって飛んできた。

 

「どうした?何かあったのか?」

「――――――――――――」

「あん?どうした?何かあったのか?厠に行きたいならそこにいるメイドに言ってくれ。生憎と俺はまだこの建物の地理を把握し切れてないんだ」

「―――――――――――」

「あんだって?」

 

霊夢は俯いて呟いているが、声が小さすぎて聞こえない。しかし、隣で大声で怒鳴り合う二人を見ればある程度の内容は予測できる。

大方、危ないから下がってなさい、とかそこらへんだろう。大事な戦いの最中でも兄を気遣えるようになって、俺は感動に震えそうだ。

 

「さっきから五月蠅いのよ、あんたたちが!お陰様でこっちはまったく集中できやしないじゃない!!」

「何だと!?俺の声援に歓喜したんじゃないのか!?」

「んなわけないでしょ!鬱陶しくてたまらなかったわよ!あと、せめて言動と顔を一致させなさいよ!表情が全くもって驚いてないのよ!演技するならもう少し完成度を上げてからにしなさいよ。私がこっち来たときにはもう表情作れてなかったし」

 

そりゃあね、心の中でどれだけ適当なこと言ってても、霊夢が怒った顔でこっちに飛んで来れば嫌でも俺にダメな点があるのは分かるもんだ。霊夢に言われるまで、怒られる理由がなんなのかはとんと考えつかなかったけどな。まさか俺の声援が怒りの原因とはな。

 

「そもそもなんでこんなところに来たの?ここまで来るの大変だったでしょう。怪我とかしてないの?」

「そんなにいっぺんに聞くなよ。お前は俺のかーちゃんか………」

「あんたの妹ですぅー。ったく、ここは人間の生き血を啜る妖怪がいる危険な屋敷なのよ?なんでこんなところに来たのよ?」

 

ふむ、ここで紫から言われて半ば無理矢理連れて来られて、半分自棄になりながらも、のりのりで来ちゃった♡、とか近くにいるメイドとお嬢様に聞かれて、妖怪の紫と博麗神社が結託してるみたいに思われるから言えないしな。

 

「別にお前を心配したとかじゃねえからな。あれだ、あれ。ここの奴と交渉してたんだよ、負けた方が大金払うっていう約束」

「ちょっと何そんな約束してんのよ!?大金なんて払えるほど我が家に余裕ないわよ!?それくらい分かってるでしょ!?」

「そうだ、俺たちに払えるお金はない」

「でしょう!?」

「確かにリスクは高い。だが、それ以上にリターンも大きいように交渉してあるんだ。なんと俺たちが勝てば、宴会の費用、今回とあるかもしれない次回の宴会の費用を全額負担してくれるらしい」

「今回のは嬉しいけど、次回なんてあるの?それにそこまで費用がかさむかしら?」

「ああ、断言できる。今回はいいが、次回は大食いが現れる。そうなれば俺たちは破産だ。それにそれがなくても、勝てば普段食えない高級料理の食い放題だ。これだけでやる意味はあるだろ?」

「うん!」

 

うわあい、ここ数年で最高の笑顔ですね、霊夢さんよ。普段はずっとだらっとしてる表情の霊夢を見ているから、こういった表情はレアものなのだが、笑顔の最大の理由が飯とは、我が妹ながらに悲しみを感じてしまうな。しかも、先程まで気だるげにしてたのに、今はやる気満々で、お祓い棒で素振りをする始末。弾幕ごっこにお祓い棒でスイングする機会なんてないと思うが、ここで指摘したところで、霊夢のやる気に支障が出るだけだ。

 

「宴会でお前の好きな料理、たらふく食わせてやるよ」

「ちょっとそこの蝙蝠娘!早く仕切りなおすわよ!」

「うっさいわね紅白娘。こっちはうちの従者とそっちのが変な賭け事してるせいで頭が痛いってのに………」

 

霊夢はやる気が天元突破している一方で、むこうのお嬢様は心労で胃痛でもしはじめたのかお腹を押さえている。吸血鬼の胃に穴をあければ、幻想郷の歴史の一ページに載りそうだ。「吸血鬼の胃に穴をあけた男」とかか?しょっぼいな。

 

「ちょっとそこの従者!」

「ん?俺の事?」

「そうよ!なんであんな賭けをしたのかは知らないけど、私が勝ったら幻想郷の全てを私が貰ったうえで、あなたにここの修理全部やらすからね!」

「え………いやそれ自分でやったんだから自業自t」

「黙りなさい。あなたに口答えを許した覚えはないわ」

「なんという理不尽」

「卑怯者ー」

「暴君ー」

「愉快犯ー」

「金返せ―」

「飯寄越せー」

「遊びたーい」

「早く帰らせろー」

「うるさいわよ、そこの巫女も混じって言うな!難癖の付け方も雑すぎて、育ちが窺えるわね」

 

吸血鬼の胃に追い打ちでダメージ!吸血鬼は反撃してきたが、効果はないようだ。こちとらそんなこと気にする必要ないくらいにご近所が存在しないから。それに人の親に捨てられ、妖怪の親に育てられ、毎日死ぬような目に合えば、神経も鋼鉄製に鍛え上げられるさ。

 

「こいつは俺が育てた」

「こいつに私は育てられた」

「ああもう、本当に鬱陶しいわね!いいわよかかって来なさいよ!完膚なきまでに叩き潰してあげる!」

「よし霊夢、奴に箪笥の角に小指をぶつけたときの痛みを味あわせてやれ!」

「宴会で受けない一発芸をさせて、精神的な苦痛も味あわせてあげるわ!」

 

原作ではこんなにも月が紅いから~、とか言ってた二人も俺のせいかは知らないけど、全然おしゃんてぃなこと言わないし、霊夢はトラウマ確定の罰ゲームをやらせようとしてるし、もうグダグダだな。

 

「あの、すいませんお嬢様?盛り上がってる所申し訳ないのですが、外でやっていただかないと、紅魔館がただの廃墟になってしまいます」

 

「「あ、はい」」

 

お外で遊べってことですね分かります。え?ふざけてると俺もお外に強制的に遊びに行かせるって?はは、分かりませんな。




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明日からテスト期間だ!しっかり勉強するぞ!(メンドクセ)

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