この春から夏にかけて2回転勤して、今は京都にいます。
職場もなんとかひと段落してきたので、投稿できました。
やっと………!やっと投稿できた!
皆さまお待たせしました!
霊夢とお嬢様は結局屋敷の外に出て弾幕ごっこを再開したようだ。2人が不気味な赤黒い雲の下で戦っている中で、俺はというと特にこれといってすることがなく手持ち無沙汰にしていた。そもそも今回の俺の役割は、霊夢が道すがらに倒した連中を介抱して、最終的にはこの屋敷の主人と交渉することだ。
妖怪の中でも賢者と言われている紫のことだ。交渉を少しでも有利に進めたいという理由だけで、行動を起こすことはないし、そのためだけに、自分で言うのはなんだが親愛の情を感じている俺を死地に向かわせることはしないだろう。俺が死ねば博麗の者ということで、博麗神社の名前に傷が付く。そのため危険になりうる障害にはなるべく接触しないようにしているのだろう。ここ数年は、博麗神社と人里の往復ですら危機感を感じることは少なくなった。何年も走っていて鍛えられ体力と筋肉がついたということもあるが、おそらく紫と藍がなんらかの手段で助けてくれているのだろう。そんな手間をかけていながら、今回正体不明な妖怪の屋敷に単独で向かわせるというのは、2人の今までの苦労が水の泡になってしまう。
ならば、その危険に見合った旨味があるはず。それは博麗に属していて、暇な人材である俺であることが条件だろう。霊夢には迅速に異変を解決してもらう必要があるため手が回らない。紫や藍は妖怪であるから意味をなさず、人間である俺が行動を起こすことで意味がある。やることといえば、霊夢に倒された妖怪の介抱とこの屋敷の主人と交渉すること。人間である俺がすれば、妖怪と仲が良いと判断されるかもしれない。さらに憶測が進めば、博麗は妖怪の味方だと考えるようになるかもしれない。
しかし普段から霊夢が人里周辺の妖怪を退治し、俺は俺で各種お守りを人里で売っているため、間違っても妖怪と結託して人間を滅ぼすなんて考えは出てこないだろう。
「紅茶はいかがですか?」
「あぁ………じゃあいただきます」
考え事に思考を沈めていると、メイドさんが突如として声をかけてきた。2人でずっと沈黙してれば気まずくなってこえをかけたんだろう。
取り敢えず何でも貰っておく主義な俺は、脊椎反射で紅茶をもらうことになったが、受け取ったティーカップとソーサーを手に持ったまま、口に運ぶことができない。前世のことではあるのだが、ペットボトルで販売されていた紅茶を興味本位で購入して飲んでみたところ、茶色に着色されたほぼ唯の水を飲んだ気分になったのだ。以来俺は紅茶を買うことも飲むこともしていない。
「飲まないのですか?熱い内の方が美味しいですよ?」
「………猫舌なんだよ」
苦し紛れの言い訳をしてみたが、これは事実であり嘘ではない。だが一応お客様扱いしてもらえてるのなら、飲んでやっても良いかなとは思うので、取り敢えず一口飲んでみる。
「美味い………だと………!?」
「今までどんな物を飲んで人生を歩んできたんですか………?」
「3回以上使った茶葉」
「せめてちゃんとした茶葉を使って下さい」
メイドさんは呆れて言っているが、しょうがないじゃないか。我が家の家計は常に火の車一歩手前。第1に食事、第2に酒、第3にその他娯楽品と言った具合で、茶葉に回す余裕はあまりないのだ。茶葉を買うくらいなら米を買う。
だから、前世も含め人生初の美味しい紅茶はとても新鮮で、直ぐにカップの底が直接見えるまで紅茶は減ってしまった。
「おかわりを所望する!」
「せめて自身が紅魔館のお客様、または我々の敵であることを自覚して下さい。まぁいいですが」
「あぁ、美味ぇ………」
即行で入れられた紅茶を飲みつつ2人で雑談しながら、霊夢達の弾幕ごっこを観戦する。いつの間にか箒に乗った魔理沙ともう一人、おそらくフランドールが参戦し、4人で大乱闘を繰り広げていた。弾幕が様々な色に光っていてイルミネーション見たいで綺麗だが、流石にずっと見ていると目が疲れる。しかし目が疲れきる前に弾幕は消滅し、弾幕ごっこの終わりを告げる。空を覆っていた趣味の悪い赤黒い雲が霧散し、夜空が見えてくる。どうやらあの吸血鬼姉妹がラスボスだったようで、異変そのものも解決したようだ。霊夢と魔理沙が吸血鬼姉妹を連れてこちらにやってきた。
「さて、仕事するか」
溜め息をつくように一言溢す。ティーカップをソーサーに戻し立ち上がる。霊夢が連れ帰ったレミリアと話をつけるためだ。今後の俺達のためにも、彼女達のためにも。
「お疲れ様、霊夢」
言い終わる前か後か定かではないうちに腹に衝撃を受け何度も床を回転する。
「何するんだよ霊夢!」
投げつけられたものを退けて霊夢に向け怒鳴る。後頭部を強打したせいか、眩暈がする。
「どうせこの後、そこの奴と異変の後処理とか話し合うんでしょ?私は魔理沙と一緒にこいつを見張っておくからアンタは早々に話をつけてちょうだい。夜も明けそうだし眠いのよ」
「しゃーねーな、わかったよ。風呂沸かしといてやるから風呂入ってから寝ろよ。少しは汗かいてるだろ」
「お願いするわ。あっ忘れるところだったわ。私がいないからって変なことしたら文字通り飛んでくるからね。だから変なことしたら承知しないから」
勘に触れる何かが霊夢にはあったのだろう。俺をひと睨みした後、魔理沙と一緒にどこかへ行ってしまった。
そういえば先程霊夢が言っていた「そいつ」とは誰だろうか?メイドさんは何も言わずに多分霊夢達に着いて行ったし、この部屋には俺しかいない。いや、そういえば1人投げられた奴がいたな。
「あら、やっと私のことが目に入ったのね。凡俗な風態と同様に感覚も貧弱ね。これが私を負けさせた博麗に属する人間と言うにはあまりにも不適応だわ」
「うるせ、そんなこととっくのとうに知ってるわ」
不遜な態度をとる人物は、幼い見た目に反して人間離れした美しさを持ち、特に目を惹くのは血のように紅く不気味である一方でガラス玉より透き通る深淵を感じる瞳だ。夏の晴天色の頭髪、口の端には人間ではあり得ない長さの八重歯、永遠に紅い幼き月こと、この紅魔館の主人であり500年以上生きている吸血鬼、おそらく今回の異変の首謀者でもあるレミリア・スカーレットだ。
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