霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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お久しぶりです。
前回の投稿から4か月経ってますねぇ。
これ以上間隔あいたら自分でも内容を忘れてしまいそうで怖いです。




第32話

「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ」」

 

時間は既に太陽が眠り、月が元気よく輝いている時間。外では博麗神社にしては珍しくどんちゃん騒ぎと五月蝿くなっているが、そんなことを気にしているほどの余裕は今の俺と慧音先生にはなかった。宴会が始まる前には下準備が必要な料理は作り終えて、あとは再び温めるだけの状態にしていたのだが、それだけでは全く足りなかったのは今の俺たちの状況から明らかだろう。明らかに経験不足が露呈している。過去に一人満漢全席を経験しているためまだマシだろうが、それでも食事や酒の消費スピードに手が回らない。もう酒に関して言えば勝手に持っていってくれと言ってセルフサービス状態だ。これで今後の宴会ではさらに人数が増えるのだから、頭が痛くなる。

 

「白鹿!料理持って行ってくるぞ!」

「お願いします!」

 

慧音先生が料理を持って厨房から出て行く。両手両腕で4皿持ちとは流石だ。

 

「すいませーん…………」

「はーい!何ですかー!?」

 

料理をしつつ返事をする。失礼かもしれないが料理から目は離せないため、本当に返事だけだ。

 

「白鹿さん、約束通り来ましたよ」

 

チラリと見れば、わかさぎ姫にケモ耳尻尾の女性と赤いマントで口元まで隠した女性が厨房の入り口まで来ていた。本当に約束通り来てくれたようだ。

 

「いらっしゃい!まともに挨拶できなくて悪いが、存分に食べて飲んで楽しんでくれ!」

「いやいや!無理だって!」

「そうだよ!なんでこんなに強そうな奴らがわんさかいるんだよ!これじゃあまともに食事も喉に通らないよ!」

 

あー、確かにな。霊夢や魔理沙はそこら辺の木っ端妖怪には脅威だし、慧音先生も強い妖怪認定されているのかもしれない。レミリアやフランは勿論その他紅魔館組も大妖怪に魔法使い悪魔と強そうな奴らばかりだ。弱いこいつらにはかなり肝が冷える場所とも言えるのか。

 

「ならそこで寛いでてくれ。飯なら作ってやっから。ほら入りな」

 

ここなら客は殆ど入ってこないし問題ないだろう。コソコソと中に入る3人はそのまま俺が見えるだろう近くに居座るようにしたらしい。近くから声をかけてくる。

 

「そもそもなんであんたはそんなに落ち着いて対応できてるの?あなたからしたら私たちだって脅威の対象でしょう?」

 

不思議そうに聞いてくるわかさぎ姫に俺は当たり前のことを返す。

 

「慣れだよ慣れ。人里からここまで往復すれば低級の妖怪なんて簡単に寄ってくるからな。殺そうとかかってくる見た目がヤバそうなやつと追いかけっこするより、理性ある妖怪と談笑してる方が気軽だし、もしものための保険は備えてるしな」

 

霊夢特製のお札を首筋と心臓近くに貼ってあるから、もし衣類を貫通して攻撃してくるようなら、強力な電気ショック的な何かが敵に見舞われるだろう。

 

「へー。大変なんだね」

「そうだな。脆弱な人間は脆弱な人間なりに大変なんだ」

「白鹿、調理速度もう落として良さそうだ。みんな落ち着いてきている。後は緩やかにやって行くだろう」

「よっしゃ。じゃあ慧音先生も飲み食いしていってください。こんだけ手伝ってもらったんで遠慮しないでくださいよ」

「助かる、が良いのか?この後一人で」

「いいですよ」

 

まだ宴会の御開きには時間がかかるだろうから、作らなきゃいけない料理もあるし、後片付けも大変だろうけど、これ以上頼るのも申し訳ない。

 

「本当にいいのか?」

「スンマセン、見栄はりました。後二品だけ手伝ってください………」

「うむ、正直でよろしい」

 

慧音先生には勝てなかったよ………。

その後は塩っ気を少し強めにしたおにぎりと焼うどん、それから事前に買っておいた団子で炭水化物コンボを決めて締めにした。

弱小妖怪達には、追加で塩キャベツと残っていた油で稚魚の素揚げ、猪肉と野菜の炒め物を提供した。久しぶりのまともなご飯だと言っていたが、こいつらは普段何を食べているのだろうか?

 

「それではお暇させてもらおうか」

「はい、ありがとうございました」

 

慧音先生は用事が終われば用はないとそそくさと帰ってしまった。妹紅が家で待っているかもしれないから、らしい。土産に余った料理をいくつか分けておく。おれが作った物もあるが彼女が作った物も多い。彼女の今日の功績を考えればまだまだ足りないが、そこは今度お礼するときに精一杯頑張ろう。

 

少し片付けついでに宴会の様子でも見ておくか。割烹着と三角巾を外して外に出る。外は夜風が当たり涼しいが皆酒を飲んでいるせいか全然気にしていない。妖怪は吸血鬼に常闇、妖精に魔法使いに人間。その他よく分からない奴らがわらわらといる。まさに混沌と化している宴会だが、楽しそうでよかった。

 

「おっ、やっと来たか。霊夢がおかんむりだぜ。皆飲んでるのにって」

 

外に出て最初に声をかけてきたのは魔理沙だった。顔が赤らんでいるのはどうせ酒のせいだろう。

 

「お前は酒呑んでたのか?」

「まあな。でも少しだぜ?」

「あんまり呑むなよ?将来背も胸もちっさいままになるぞ?」

「へっ、私の将来は高身長で巨乳なデキる女だぜ!」

 

その自信はどこが震源地なのかは知らないが、お酒には成長ホルモンの分泌を抑えるという話をテレビで聞いたことがある。まあ所詮はテレビの言うことだし、前世の曖昧な記憶からきてるものだからあまりあてにはできないだろうけど、もしものために予防線を張っておくのは悪い事ではない。

 

「そうかい、それは良かったな。俺は皿を下げに来ただけだから、ぼちぼち楽しんでくれ」

「言われるまでもないぜ」

 

そのまま下膳作業を済ましていると次に声をかけてきたのはレミリアだった。ワイングラス片手に優雅に挨拶してくるが、今日の料理にワインが合う物はあっただろうか?

 

「あら、貴方いたのね。今まで見なかったから何処かに行ってるのかと思ったわ」

「ついさっきまでお前らが食ってた料理をつくってたんだよ。今も黒子みたいに舞台裏作業してるところだ」

 

ほらこの通り、と両手に持つお皿を見せてアピールすれば納得してくれたようだ。邪魔して悪かったわね、と一言言った後、レミリアは場所を移動した。話し相手が欲しかったのか、言葉通りに邪魔しないように気遣ってくれたのかは不明だが、害がないので放っておこう。

 

「いつもありがとね」

「気にすんな。持ちつ持たれつ、だ」

 

さらに片付けをしていると、食事をつまんでいた霊夢に呟かれる。他のやつらに聞こえない声量なのは聞かれると恥ずかしいからだろう。周囲に酒瓶や徳利が無いことから俺の言い付けを守ってくれているようだ。

 

「今日は付き合う程度なら飲んでいいから」

 

だから去り際にこれくらいのご褒美は与えておく。所詮前世の曖昧な知識なんだし。面と向かって言うには少しこちらも恥ずかしいしな。

背後で、今夜はたらふく飲むわよ!と聞こえるがほどほどに飲むと信じて無視する。

 

片付けは大雑把にやるだけで全部はやらない。空いてる大皿と多少の酒を下げるくらいにとどめて、台所に運ぶ。

全体の様子を見たところ基本的に全員酔っぱらってる。もう出す料理もないし俺も一休憩といこう。

 

適当にいくつか酒を宴会をやっている方とは反対側の縁側に腰かけ、脇に持ってきた酒を置く。

 

「俺に一杯、貴女に一杯、月に一杯……」

 

月は建物で隠れて見えないが空に盃を掲げてどこかで聞いた台詞を夕闇に紛れるように呟く。しかし誰もいないと思った場所で、盃がコツンと鳴る。

 

「フフ、こんばんわ」

「いらっしゃい、やっぱりいたんだな」

 

驚きはしなかったが紫がいると確信していたわけではない。ただなんとなくいるんだろうなあという予感がしただけだ。

紫はスキマから出ると自宅から持って来たのかそれとも宴会の中からかっぱらって来た酒と盃を持っていた。その盃をこちらに差し出してきたので日本酒をなみなみと注ぐ。表面張力が発生しないギリギリ注いだが紫はそれを溢すことなく口元まで持って行きすぐに飲み干した。そして今度は徳利をこちらに差し出してきたので自ら酒を注いだ盃を空にして差し出す。

 

互いに最初の一杯は一気飲みだったが、以後は唇を湿らすように少しずつ少しずつ、飲み干すのに数分かかるくらいのペースで飲んでいく。俺たちの間に会話はなかった。夕闇独特の空気と風、あとは宴会場となっている場所から聞こえる喧騒を肴に酒を体に浸み込ませる。

 

「…………ありがとう」

「それは異変解決に対してか?それとも紫が依頼してきたことに対してか?」

「いえ、違うわ。こうやって一緒にお酒を飲んでくれて、よ」

「どうしたんだよ、俺たち別に喧嘩してるわけじゃないんだから、予定さえ合えば飲めるだろ」

「だってねえ。一応私たちは妖怪と博麗じゃない?だから飲むにしてもこうして隠れて飲むしかないし。そもそもの話、白鹿って別に特別な力がないじゃない。私が気まぐれで拾って育てて、そんな子が今では立派に親と一緒にお酒を飲めるまで成長したのよ?それを嬉しく思うのは親心ってもんでしょう?」

「酔ってんのか?ここでそんな話はすんなよ。誰が聞いてるか分かったもんじゃないんだから」

 

博麗の者が誰に育てられているかは幻想郷では明言明記されていない。もしこのことを稗田家(記録家)パパラッチ(クソ烏)の耳に入れば一大事だ。

 

「大丈夫よ、ちゃんと周囲は警戒してるしわからないように結界だって張ってるわ。万が一にもあり得ない」

「世の中に絶対はない、って俺は思うんだけど?」

「それもそうね。じゃあそろそろ帰ろうかしらね」

「おう、じゃあ無理しない程度に頑張ってくれって藍にも伝えといてくれ」

「あら、私にはないのかしら?」

「…………」

「わかったわ。じゃあおやすみなさい」

 

紫は来たとき同様、スキマを通って帰っていく。

 

「おやすみ、紫母さん(・・・)

 

スキマが閉じきるまで紫はこちらに一生懸命に手を振るのを見て取れて、照れくさいやら嬉しいやらで笑みが零れる。我が母親ながら母さんの一言でここまで喜ぶとは、妖怪の賢者としてやっていけるのかは甚だ疑問が残るがそこはあの人の頑張り次第だ。

 

精々胡散臭く頑張ってくれ。

 

 

 

 




いつも誤字報告、感想ありがとうございます。

とりあえずこれからもぼちぼち執筆していくので、よろしくお願いします。
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