霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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お待たせしました。

お休みが続いて何したらいいのかわからなくなりますね。


第37話

「うー…………」

「ほら、唸ってないで大人しく寝ときなさい」

 

傘が壊された次の日、雨にうたれ濡れていたのを放置した結果、風邪をひいてしまったというわけだ。確かに妖怪に追われるというのは日常茶飯事の俺の生活だが、昨日のような生命の危機というか死ぬ一歩手前までいくことは結構珍事だったりする。だからだろうか、気が動転して濡れている状態で長時間過ごし、あまつさえ風邪をひいてしまうなんて。体調不良になったのなんていつ以来だろうか。少なくとも俺は霊夢の世話をするようになってからは寝込むほど体調を崩したことはない。霊夢も俺が栄養とか生活状態とか見てるからそこまで体調を崩すことはないから、博麗神社では誰かが寝込むことなんてかなり珍しい出来事だったりする。

 

「食欲はある?おかゆくらいなら食べれる?」

「うん……」

 

弱弱しい声が喉からくぐもって通り抜ける。熱はあっても咳はそれほど出てないし嘔吐もしてないしそこまで食事を気にする必要はないだろう。できれば昼はガッツリしたものが食べたかったが仕方ないだろう。霊夢もおかゆとか簡単な料理は一通り作ろうと思えば作れるし、最悪の場合霊夢の直感で味を調えられるから、不思議と食べられる味になるんだよな。まあ普段は物臭で俺しか台所に立つことはないんだけど。手持無沙汰なときとか機嫌がめちゃくちゃいいときとかは手伝ってくれることもあったりするから、その時のことを思い出すことができれば、食べたいものも作れるだろう。

 

「じゃあ作ってくるからそれまで寝ときなさい」

「うん…………。あのさ、一つ聞いていい?」

「何?」

 

そういえば風邪とか体調が悪い時って、甘えんぼになったりするらしいな、信頼している人限定で。ちっさい子は普段しない子でも親に抱き着いたりすることもあるらしい。いいなあ可愛いんだろうな。霊夢は普段そういうスキンシップはちっさい頃に比べてしなくなったなぁ。謹みを持ったと思えばいいのか、親離れ兄離れしたのだと悲しめばいいのか。

 

「なんか今日口調が変よ?」

「いや、世間一般の母親的な口調を真似てみたんだけど、おかしい?」

「今私風邪ひいてるからあんまりよくわからないんだけど」

「なんとなくでいいから」

「衆道には落ちないでね」

「おかゆ、さらさらの全粥以上のほぼ液体にするけど、塩も入れない味のないおかゆでよかった?」

「素直にごめんなさい」

 

俺普通に女の子が好きなんだけどなあ。なんかよくこういうこと言われてる気がする、霊夢とか魔理沙とかには特に。紫とか藍とかは言うことはないのは救いだな。

 

「出来上がったら起こしてね?」

「もちろん。完璧な美味しいおかゆ作ってやるからゆっくり休んどけ」

 

おかゆって簡単だけどすぐできるってわけでもないから、その間は寝させとけばいいだろう。

 

「んじゃま、作りますか」

 

見た感じ食欲が全然ないわけでもないから、五分とか三分粥でも問題なさそうだし、何なら梅干しじゃなくて卵でも入れてあげようか。水炊きじゃなくて出汁炊きにしてもいいな。題して西洋風なんちゃって粥。でも一応失敗したものを霊夢に食わすわけにもいかないから、普通のおかゆも作っておくか。ちょうど俺の分の昼飯にもなるし、料理の研究にもなるし一石二鳥以上だな。

 

「あら?何を作っているのかしら?」

「いらっしゃい紫。西洋風なんちゃって粥。美味いかどうかは作ってからのお楽しみってことで」

 

後で一口くらい上げるからと付け足せば、そのために来たんじゃないと拗ねられてしまった。まったく、見た目は可憐だろうけど、もうちょっと年齢にあった所作を常日頃からしてほしいものだ。

 

「ちょっと、今失礼なこと考えたでしょう」

「もうちょっと威厳のある風格出してよ。妖怪の賢者がきいて呆れられるよ」

「嫌よ。なんで家族相手に肩ひじ張ったことしなきゃいけないのよ。必要だったらやるけどプライベート空間くらい自然体でいさせてほしいものだわ。それとも白鹿はそんな威厳のあるお母さんのほうがいいかしら?」

 

顎に手を添えられるが照れることはない。ていうかくすぐったい。

 

威厳のある八雲紫といわれると違和感はないけど、威厳のある紫母さんといわれると違和感が半端ない。そもそも紫の素の性格を知っている身としては今更風格を出したところで演技してるのがバレバレだから意味ない。

 

「ってこんなこと言いに来たんじゃなかったわ。私そろそろ冬眠の時期に入るからそのお知らせね。あ、でも年末年始にはこっちには呼ぶから久しぶりに一緒に過ごしましょ?」

「年末年始は神社のかき入れ時だから無理でしょ。俺と霊夢の二人で運営してるんだからてんやわんやしてて大忙しの時なんだから、年末年始以前か以降じゃないと無理だぞ。できれば全部終わった後がいいから三が日以降に迎えに来てくれると嬉しいんだけど」

「いいでしょう。で?なんでお粥なんて作ってるの?霊夢が風邪でも引いたのかしら?」

「その通り。失敗した、気が動転して霊夢の体調管理を疎かにした結果だな。今後はないようにするよ」

 

霊夢が安全に安心して生活できるようにするのが俺の存在意義だ。それができないのなら俺がいる意味はないし、やってる努力も水の泡だ。

 

「あんまり落ち込まないの。白鹿の悪い癖よ?そんな風に深く考えすぎるのは。風邪をひいたのはあの子自身が体調管理を疎かにしたせい。普段からぐうたらしてるからこんなことになったのよ。もっと普段から規則正しい生活を送れてないからこんなことになるのよ。あなただってたまには家事を休みたいときがあるでしょうに」

「あそれ言う?子育てと家事を幼児にやらせた本人が────」

「すいませんでした!」

「わかればいいよ。それに苦しかったら霊夢も手伝ってくれるし、危ないときは助けてくれるし、ぶっきらぼうに見えて案外かなり優しい子だよ。俺が育てたからね!」

 

霊夢はわしが育てたといえる人間ですからね。霊夢のことなら何でも知ってると自負している。好き嫌いから一日の過ごし方得手不得手、今日の下着の色だってお手の物だ。なんたって服も俺が用意してるからな。そろそろ自分で用意させないと、本格的に兄離れというか親離れができなくなりそうだから、今度から自分で用意するように言い聞かせようか。情緒教育も大事だし。

 

「貴方も親馬鹿に育ったわねえ」

「そりゃあ、俺も親に溺愛されてるのは理解してますから?下の子にも同じようにしたいと思うのは自然でしょう?」

 

小さじで一口、なんちゃって粥の味を確認、うん問題なし。紫にも小さじを向けて一口与える。

 

「はいどうぞ」

「あむ、…………あら、美味しいじゃない」

「こういう創作料理も、何年も料理してたらできるようになるんだから、そこまで気にする必要はないよ。今度帰ったら美味しいもん食わせてあげるから」

「楽しみにしてるわ。それじゃあね、霊夢にお大事にって伝えといて」

「わかった。じゃあまた今度」

 

ゆっくりとスキマが閉じていく。紅霧異変が終われば春雪異変が起こる。八雲紫と西行寺幽々子が犯人の異変が。

 

俺としては知り合いが犯人だけど、特に気にすることはないと思ってる。傷つこうがあの人たちなら翌日にはケロッとしてそうだし、それよりご飯だ酒だと要求してきそうだ。

 

「霊夢ー。お粥持って来たぞー」

「ん……ありがとお兄ちゃん。お腹減っちゃった」

 

食欲あり、顔色も寝る前より良くなってるし、やっぱりそこまで悪くはならなかったな。普段からなるべく栄養のあるもの食わせてたから、そこまで大事にならなかったのか、もともとの霊夢の体が丈夫だったからかはわからないが良くなって嬉しいよ。

 

「ほれお粥。普通のと創作どっちがいい?」

「創作。結構良い匂いがするもの。今回のは当たりだわ」

「ほい、火傷するから溢さないようにして食べろよ?」

「食べさせてくれないの?」

 

霊夢、久々に風邪ひいてちょっと幼児退行してないか?こういうのって治ったときとかに恥ずかしい思いするからあんまりかまいたくないんだけど。

 

「俺も一緒に食うから自分で食べなさい。俺もお腹すいてんの」

「はーい」

 

そこからは一緒に食べて寝るまで一緒にいることになった。といっても風邪で疲れているせいかすぐに寝てしまったけど。

 

 

どうか安らかにお休み、霊夢。

その顔が苦しみで曇らないように、春風のごとく暖かく清らかであらんことを。

 




いつも感想、誤字報告ありがとうございます。
いつも助かってます。

暖かくなってきましたが、この小説は今後は寒くなっていくという、季節感を完全無視して進行していきますが、皆様ご容赦のほどよろしくお願いします。
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