というわけではないですが久々の投稿です。
よくスポーツ漫画とかでゾーンに入るなんて言葉を聞くが、あんなもの才能がある一部の人にしかできないことだし、必死になればできるわけではないのだ。だから妖夢ちゃんに真剣で追い回されていてもそんなゾーンに入れない俺はやっぱり才能がないそんな人間なわけだけど、頼むから何でもいいからこの状況から脱したい。だってもう喋る余裕もないんだもの。
「チッ、ちょこまかと鬱陶しいですね。疾く斬られてください」
「(やめてください死んでしまいます)────ふッ、ふッ」
「往生際が悪いですね」
てかなんでそんな刀っていう鉄塊を二振りも携えているのに息切れしてないんでしょうかね。刀はアニメとかでよく簡単に振り回しているが、打刀はおおよそ1キロ以上でありそれを振り回すとなれば、腕力もそうだが握力を含めて持久筋が必要になるわけで、それに見合った腕の太さがあるはずなのに妖夢ちゃんには見受けられない。やっぱり半人半霊で真人間ではないからなのか、妖力やら霊力やらを扱えるからなのだろうか。人外ってせこいわ。羨ましいわ、妬ましいわ。
お願いだから早くバテてくれないかな。日々の木端妖怪どもとの命がけの鬼ごっこのおかげで体力はついてるけど、走る速度は人外の速さじゃないから、緊急回避の連続で体力やら精神力やらの消耗が激しく、既に俺がバテ気味なのだ。さらに言えば完全回避しきれずに致命傷にならない、運動に支障をきたさない切り傷が背中に大量に出来ているから、霊夢でも紫でも藍でも、この際魔理沙でもいいから早く助けにきてほしい。
「どうやって白玉楼までたどり着いたのか、何を狙って来たのか、様々な謎がありますが、斬ってしまえばそのなぞも解消されることでしょう」
「いやいや、謎は解消せずに解決しないといつまでも問題は残ったままだ。再起しないように謎は徹底的に解明した方が今後のためだと思うなあ、俺は」
「私もその考えには同意です。では喋る余裕ができたらしいのでキリキリ吐いてもらいましょうか。ここに来た目的と手段を。見たところただの人間のようですから霊力か何かで飛んで来たんでしょうか?目的は異変解決でしょうか?」
「いや、なんかスキマ妖怪に拉致されて、ここにいるだけで他意はないんだけど。さっきも言ったけどお酒飲んでたのは幽々子さんに誘われたからで窃盗ではないし、幽々子さんや妖忌さんには昔世話になったから懇意にしてもらってるだけだ。信じてくれないかもしれないけどな」
「ええもちろん信じませんとも。いつまでも本当のことを話してくれないなら本当に斬ってしまいますがよろしいでしょうか?というかそろそろ面倒なので斬ります」
「待て待て、人間、人類には会話というコミュニケーションツールがあるんだからそれを活用しなくてどうする」
「子見煮敬称?なんですかそれは?訳の分からないことを言って煙に巻こうとしてもそうはいきませんよ」
あー、つい外来語使っちゃった。幻想郷だと外来語は基本的に通じないんだよな。通じるのは元外国住の紅魔館組だけだ。紫は現代にも多少は精通しているが、やはり何年も生きているからか言葉がどこかおばあちゃんというか古臭いことがあるんだよなあ。
「もう御託はいいでしょう。貴方が誰なのかも、目的も、手段もどうでもいい。さようなら、よくわからない人」
ついに彼女の刀が振り上げられる。軌道を見るにまたもや首を斬り飛ばすつもりだろう。心臓に一突きでは死ぬまで時間がかかり苦しむ時間も長くなるから、首なら一安心だ。
正直死にたくないし、なんならイライラしてるけど、なんていうかもう諦めたよね。無理だもんここから弁舌を繰り広げたところで、一方的に否定されて終わりだし、やるせないけど俺の人生ここまでのようだ。皆さんここまでのご視聴ありがとうございました。また来世があればお会いできるのを楽しみにしております。ではでは、おさらば。
瞼を閉じて刀が首を飛ばし、一瞬の激痛がくるのを待つ。が、いつまで経っても激痛はやってこない。疑問に思い恐る恐る瞼を開くと視界に映るのは黄金の毛。
「これは一体全体どういう状況だ。何故博麗の者を襲っている、魂魄妖夢?」
黄金の正体は八雲藍。藍が俺のことを間一髪で助けてくれたらしい。この時期は異変発生の主犯、と博麗結界の維持でだいぶ忙しいから、白玉楼の監視とか俺の見守りとかしてる余裕なさそうだけど、どうやらしていたのか、偶々スキマとかで見たときにでも気付いたのだろう。
「八雲の式神ですか。この人間はどうやら何かしらの手段を用いてこの白玉楼に侵入し、あまつさえ幽々子様のお酒を盗み、その場で飲酒した胆の太い輩です。その盗人を切り捨てたところで計画になんの支障もないでしょう?」
「だからこいつは博麗の者だと言っているだろう。確か紫様が数刻程前に博麗に所属している者を攫い、自分達に有利な陣地に博麗の巫女を誘出し、ことを構える気らしい」
「では、飲酒していたのは?」
「大方、幽々子殿に飲まされたのだろう。あの方も様々な心労を抱えているのだろう。もしかしたら計画が大詰めになったことで緊張なされているのかもしれん。非力な人間であれば何を話したところで害にはならないと判断し共に酒でも酌み交わした、といったところではないだろうか」
「成程、可能性はありますね」
「それにそいつは計画に必要なものだ。危害を加えてもらっては困る。もし危害を加えれば、博麗の巫女が幻想郷のバランスなど考えずにこの白玉楼を滅するだろう。今代の博麗の巫女は『弾幕ごっこ』という規則があるからこそ一方的な戦闘にならないだけで、その規則さえなければ一方的な殲滅に成り下がってしまう。こやつに危害を加えれば、博麗の巫女は躊躇なくこの規則を無視するだろう。そういった理由から、こいつに危害を加えることは得策ではない。分かってもらえたか?」
「この者が放置されていたのは?しっかり監視していなかったそちらの落ち度では?」
「紫様が幽々子殿にこやつを渡した後、幽々子殿も無害と判断し放置したのだろう。実際こやつにこの白玉楼から脱出する直接的な術は所持していない。脱出するためには誰かしらの援助が必要であろう。そんな援助するものが現れるのだとすれば、それはこの異変解決に乗り出した者に違いない。その者はこやつの救助は二の次に考え、異変解決を第一に考える者だろう。そうであれば貴様か幽々子殿が事前に察知する、そのように紫様も幽々子殿もお考えなのだろう。ゆえに、多少放置して自由に行動させたところで何ら問題ないということだ」
妖夢は顎に手を当て考えている。片手には刀を握ったままだが、先程までの剣幕はなくなっていた。
「納得できました。申し訳ありません、私のせいで幽々子様は勿論、紫様にまでご迷惑をおかけするところでした」
「うむ、わかってくれたならいい」
チンッ、と小気味いい音とともに妖夢が刀を鞘に納める。
この瞬間、俺の命は一先ず先延ばしにされたのだった。
いやあ、だいぶ前回と間が空いてしまいました……。
エタるつもりはないんですけどね、どうしても次の展開が想像できないとタイピングが止まっちゃうんですよね……
毎度毎度、誤字やら感想やらありがとうございます。
見直しなんてあまりしないもんだから、修正箇所が多いみたいで、指摘していただける読者の皆様には感謝しかないです。
勿論、感想も嬉しいですし、目を通していただけるだけでもありがたい限りです。
今後とも当作品をよろしくお願いいたします。