さてさてやってまいりました、宴会当日。天気は晴れ、気温も連日の寒気は消え去り、初春といっていい気候となった。桜も満開とまではいかなかったが五分から七分咲きで、ついでに花見もできる状態になっている。
方々への連絡は紫がスキマで送ってくれたのでかなり手間が省けた。で、料理に関しては、俺と藍、
最終的に四人で料理することになると思ったが、人手が足りない。藍はすごい効率的に作業を割り振って、メイドさんは料理を作りながら能力を使って配膳、妖夢はすごいスピードで具材を切っている。俺は基本的に盛り付け。他の人と比べると俺だけ普通の人間だからね、仕方ないね。
で、そんな現場を見てしまったお節介が一人、のこのここの地獄に入ってきた。
「ねえ、お酒足りないんだ…け……ど………」
金髪碧眼に青を基調としたワンピース、白のフリル付き赤ネクタイ、それとお揃いのリボンカチューシャ、白のケープ。絵本から出て来たかのようなその人物は七色の魔法使い、アリス・マーガトロイド。確か結構料理するタイプだったはず。
「って、ちょっと!?何よこの状況!?メイドは一瞬消えるし、剣士は空中で具材斬ってるし、そこの妖獣は空中にお鍋浮かして火にかけてるし、本当に何なのよこの状況!?魔窟じゃない!」
「しょうがないじゃないですか。ここまでしないと飯が間に合わないんですから」
「あなたはなんでこの状況で落ち着いて盛り付けなんてしていられるのよ!?明らかに異様よ!」
「ほっといてくださいよ。俺は朝から下準備で大忙しで疲れてるんだよ。というか文句言うくらいなら手伝って。俺は別作業があるから。藍、こいつに作業割り振っといてー」
「任せろ」
「ちょっと待ちなさいよー!」
「お前はこっちだ」
藍に肩を掴まれ、台所から逃れられないアリスに心の中で合掌しつつ、霊夢の下に向かう。
宴会はプリズムリバー三姉妹が楽器を鳴らしてBGMを奏でてくれているし、妖精たちもそこら辺を飛んで騒がしい。他の妖怪を含めた人たちも各々料理にお酒、会話を楽しんでいる様子で和やかな雰囲気に包まれている。霊夢も魔理沙や紫と飲んで楽しそうだ。
「失礼しますお客様。ご注文をお聞きします」
「何なのよそれ?」
「お店の店員さん、みたいな?で、何食いたい?この前言ってたろ」
「ん-、じゃあ出汁巻き卵と煮魚と焼きおにぎり」
「あたし、このポテト」
「私は餃子とお豆腐のサラダお願いね」
「紫に魔理沙、お前らには聞いてないんだが?」
「いいじゃない別に。ちゃんともてなしなさい」
「そーだそーだ。というかアリス知らないか?魔法に関して色々聞きたいんだけど。あ、アリスっていうのはなんか女の子って感じの洋服着た女なんだけど」
「そいつなら今台所で文句言ってたから作業員に抜擢してやった」
「えー……。お前、一応客さんなんだからあいつももてなせよ」
「そもそも博麗神社が主催することになってるだけで、俺も宴会楽しむ権利あるでしょ。というか今回は白玉楼、前回は紅魔館が主催してもよかったのに、ここで開催することになったから俺が連日大忙しになってるだけなんだぞ」
俺だって酒飲みたいし飯食いたい。正直、料理作りまくって飯の匂いを嗅いでも全く食欲はわかないが、他の人が作った料理は味わってみたい。
ちなみに今回作ったモノは、ちらし寿司に巻き寿司、てんぷら、刺身、煮魚、唐揚げ、フライドポテト、一口ハンバーグ、餃子、後は菜の花とか海鮮混ぜたサラダとか豆腐使ったサラダやらも何種類か作ったな。
ちらし寿司は桃の節句、巻き寿司は節分、祝い事にてんぷらみたいな感じで思いつくメニューを沢山作ったけど、正直俺だけでは全く足りなかった。そもそも幽々子さんの食べる量がエグいのだ。昔思い知っていたから、ある程度対策していたつもりだけど、宴会ということもあり色んな料理を作らないといけないから、一つ一つの料理はそこまでの量を作っていないのだ。作っていないといっても、幽々子さんのことを考慮してちらし寿司は米だけでも二十合は炊いたし、餃子も皮も含めていくつ作ったか覚えてない。挽肉も何十キロ作ったか……。唐揚げも下処理の段階でにんにく、生姜、醤油などなど色んなものに漬けてみたし、てんぷらには
その後も、来てくれた人が色んな料理を作ってくれたので、さらに料理の品目が増えた。
「とりあえず出汁巻きと焼きおにぎりは作るから。煮魚はできるの時間かかるから、作るけど明日の昼飯になるかも」
「お願いね」
「私のは?」
「あたしのもないぞ!」
「お前らのは他の人に作ってもらうぞ、揚げ物とか焼く物なら藍が作ってるし、サラダなら妖夢ちゃんが作ってるはずだし」
「えー私は貴方に作ってもらいたいのだけど」
「なんでそんなことに拘ってんだよ……」
「あら、せっかくの機会ですもの。いつも食べてる味より、博麗の人間が作るお料理を味わいたいと思うじゃない?」
「えっ面倒臭」
「あたしはそこまで気にしないぜ!」
「うん、魔理沙はいい子だわ。それを見習えよ。まあいいや、余裕があれば作るからそこまで期待すんなよ」
「ええ、それでいいわ」
さて、家族サービスしますかね。
フライドポテトは藍に任せて
まずは出汁巻き卵から作る。卵を溶いて、そこに出汁、醤油、みりんを加えて混ぜて弱火のフライパンに薄く油を敷いて、溶き卵を流す。気持ち厚めにして、火を通しているうちにお握り用のご飯に醤油と少量の磨り下ろしたニンニクを混ぜ込む。卵に焼き目が付かないうちに巻いてもう一度分けてた溶き卵を全て流して、もう一度火が通るのを待つ。お握りを握って、出汁巻き卵はすだれに移して粗熱をとっているうちにお握りを焼く。フライパンに少し多めに油を敷いてその上からお握りを裏表両面焼く。粗熱が取れた出汁巻き卵は切って平皿に盛り付ける。
サラダはレタスを一口サイズにちぎって、絹ごし豆腐も一口大に切る。かいわれ大根も加える。醤油とお酢とすりおろしニンニク、山葵、ごま油、長ネギを刻んで入れて混ぜて、できたサラダに作ったドレッシングをかけて豆腐サラダ完成。
合間にお握りの焼き加減を見て何度か裏返して焼きおにぎりも完成。
餃子は皮も挽肉も余っていたので、そもまま流用。すりおろしニンニク、生姜、山葵を少々、にらの代わりに長ネギをみじん切りくらいに切って、醤油、塩胡椒を加えて混ぜておく。皮に身を包んで、フライパンに油を敷いて水を敷いて餃子を並べて蓋をする。
焼いている間に霊夢たちにできたものを持って行く。藍に頼んだフライドポテトもできていたので、塩を振りかけて持って行く。
「ほい、お待たせ。焼きおにぎりに出汁巻き卵、豆腐サラダにフライドポテト。餃子は今から焼くからもうちょい待って。煮魚は今から作るけどいい?」
「大丈夫よ」
「お、待ってました!」
「これ、藍が作ったの?」
「ポテト以外は全部俺。だからめっちゃ時間効率悪い。とりあえずは召し上がれ。一応何人かで食べる量にしたからみんなでつまんで。俺は餃子作って煮魚も作ってくるから」
「「「はーい」」」
魚の下処理は妖夢ちゃんにお願いして、餃子を作る。生の餃子ができたらフライパンに油を敷いて水を少しだけ加えて蓋をして蒸し焼きにする。魚の下処理が終わっておろされていたので、生姜を刷り込んでおく。妖夢ちゃん仕事早いわぁ。お鍋に水を入れて加熱させ。餃子が出来上がったのでお皿に移して再度霊夢の下へ持って行く。今度はすぐに戻ってきて、湯気が出てきたくらいのお鍋に、醤油、みりん、料理酒、出汁、塩、砂糖を加えて完全に混ざったら切り身と刻んだ生姜を入れて一煮立ちさせる。深皿に盛り付けて、刻みネギをかけて完成。
「ほい、お待たせ。白身魚の煮付け。あんまりしみてないからさっぱりめだけど、今まで濃い料理ばっかりだから、ちょうどいいだろ」
「ん、だいぶいい感じじゃない?ちょうどいいわよ」
「まだ余らせてるから、明日にはいい感じに米に合うようになると思うよ。じゃああんまり飲みすぎるなよ」
「はーい」
「魔理沙もな。もし泊まってくなら霊夢の部屋に布団敷いとくぞ」
「そこまで飲んでないから、今日は家に帰るぜ」
「ならいいや。俺はまだやることあるからもう行くよ」
「はいはい」
さて、台所に戻ってもまだみんな料理を作っているが、見た感じもう料理はいらないだろう。後は会話を肴に飲むだろう。
「みんなお疲れ。今作ってるのが終わればもう戻ってもらっていいよ。あ、藍は後片付け手伝って」
「私だけ居残りか……」
「やっと終わりですか……」
「疲れましたー……」
「私ここに来て何してたんだろ……?」
「まだ料理も酒も残ってたから、さっさと料理作り終わって行ってこい」
「では、私はこれを配膳してそのまま失礼しますね」
「え、はやっ。……フッ。これで私も終わりなので失礼します!」
「……何なのあの従者二人、能力の無駄遣いじゃない?」
「まあ、効率はいいからいいんじゃね?で、お前は?」
「私ももう終わり。もともともうすぐ終わる状態だったし。じゃあ、お疲れー」
メイドさんは能力で時間停止したのか一瞬で作り終わり、盛り付けたものを持ってすぐに出ていき、妖夢ちゃんは魚を空中に投げて一瞬で魚を刺身にはや変わりさせて、落ちてくる切り身を皿で受け止めて、それをそのまま持って行った。アリスは特に変わったことをするわけでもなく普通に作り、普通に盛り付けして、普通に持って行った。
「じゃあ、後片付けやってくか」
「ああ、その前に」
何か札を取り出し、出入り口に貼る藍を見てこちらの意図を理解してくれているらしい。
「防音の結界だ。これで気兼ねなく話せるぞ」
「ありがと、お母さん。まあ要件はそこまで複雑じゃないんだけど、俺たちってもう仲良くしてていいの?」
「仲良くするのは構わないだろう。しかし親子として、というならば無理だ。八雲が博麗を支援していることを知られるのは問題ないが、八雲が博麗の人間を育成していると知られるのはまずい。支援ならば共生しているように思われる可能性の方が高いが、育成ならば人間の中に妖怪思想の者を紛れ込ませていると思われるかも知れない。博麗に不信感をあまり持たせたくない。そのためには八雲が博麗を支援している構図として仲良くしているくらいに思われる距離感を保つ必要がある。と言っても、ときには我々の家に帰ってきてほしいがな」
「ん、わかった。じゃあ今後はちょいちょい神社に顔出す感じか?」
「そうだな。人里に一緒に買い物に行くぐらいならできそうだ」
つまり、俺の人里までの往復の危険度がだいぶ下がるな。藍は妖怪だけど美人だし、店の人たちもまけてくれるかもしれない。もう妖怪に追われる心配はなくなったのかもしれない。
「いいこと聞いたわ」
「純然に喜んでないな」
「よくわかってるじゃん。まあ、それはいいとして、ほれ一献」
「む、まだ後片付けは終わってないが?」
「いいんだよ。まだ外は食ってるやついるんだし他に誰もいないし休憩。何なら料理回収してくるか?」
「そこまでしなくていい。ではお言葉に甘えようか。ほれ、お前も一献」
「ありがと。じゃあ何に乾杯する?」
「そうだな。では今後の我々の益々の親交を願って」
「「乾杯!」」
これにて春雪異変編は終了となります。