霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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お久しぶりです。
前回の投稿から何日たったのやら……


第53話

燦燦と煌めく太陽を背に買い物籠を両手に持った霊夢が、そよ風が頬を撫でるかのように地に足を付けた。

霊夢の顔や首筋から汗が滴り落ち、飛んでいた影響で髪が顔に張り付いているのはそれなりに急いだ証拠だろう。暑い日差しから一刻も早く逃れるためか、面倒ごとを早急に片づけて帰宅したい一心か、あるいはその両方か。霊夢は俺の穏やかな表情を見るなり表情に険が現れ始めた。

 

「どうしたよ?帰ってくるなりそんな顔して」

「開口一番で惚けないでくれる?誰だって帰宅早々に男家族が女の子を侍らせ……てはいないわね、むしろ侍らされてるけど、最悪なのは一緒よ。というかなんで魔理沙は白鹿に膝枕されて左団扇状態なのよ?白鹿の主人にでもなったつもりなのかしら?」

「何を勘違いしているのか知らないけど、そういった目的でやってないからね?」

「じゃあ、どういう目的なのよ?」

「いやこれ只の看病だから」

「看病って、どういうことよ?」

「とりあえず家に入ってから話すわ。霊夢も汗かいただろうしお茶飲んで来いよ」

「わかったわ。でも有耶無耶にしたりしないでよ?」

「わかったから早く家に入りなさいな」

 

霊夢がお茶を飲んで一息ついて、やっと魔理沙が熱中症になったことやら、看病するに至る経緯を説明することができた。霊夢はいまだに不服そうな表情ではあったが、友人である魔理沙に気を使って、声を荒げることはしなかった。

 

「で、今日は魔理沙の看病してるってわけね。ご飯はどうするの?今日は私が作るわよ?」

「買い物に行ってきてもらったしいいよ。代わりに魔理沙に膝枕してあげて。俺は魔理沙にも食べやすい物作って、風呂焚いてくるから」

「ん、じゃあお願いしようかしら」

 

隣に座った霊夢に促され、膝に乗せていた頭を霊夢の膝に移動させる。その際魔理沙から少しだけうめき声が聞こえたが、気のせいだと思おう。

 

重心を動かし、手を畳につけて正座していた足を崩して、片膝をついて立ち上がる。ただ立ち上がるという動作を実行するために今まで無意識化で行ってきた動作を意識して行わなければならないが、今の俺にとってはひどく難解で、重心を動かした直後から、次の段階に進めない。

 

「どうしたのよ?……ああ、なるほどね…………、てい!」

「ん?……ぎゃああああああ!!」

 

鈍重な動きをしていた俺に対して疑問に思った霊夢が、俺との付き合いの長さと濃さから最速で正答を導き出し、その答え合わせをするために行動に移したのだ。数時間に及ぶ同じ姿勢で少女とはいえ人間の頭部を乗せていたのだ。それは悪い比喩表現ではあるが、拷問の一つである石抱きに近いだろう。

重い物を膝に乗せていたために、足は痺れて立つこともままならない状態。まさに痛恨の一撃ともいえる衝撃で、受けた直後にはうつ伏せで倒れこんでしまって動けない。何とか数分で回復したが、畳に正座に膝枕なんて金輪際してたまるか、と内心愚痴っておく。なお、いつか霊夢にも同じようなことをしてやろうと復讐を誓いつつ、台所へと向かう。

 

「霊夢、後で覚えてろよ」

「はいはい、覚えておいてあげるからご飯とお風呂よろしく」

 

恨み節も何のその、暖簾に腕押しだったので、それ以上は何も言わず今日作るものを考える。とはいっても、魔理沙を膝枕しているときに決めていたので、特に考える必要もないのだが。

今日は冷やしうどんを作ろうと思う。現代日本では冷凍の物をゆでるだけの簡単な料理だが、幻想郷には冷凍庫も出来合いの長期保存可能な麺なんて販売されていない。小麦粉と塩と水、これだけでうどんの麺は作ることができる。しかしこれはあくまで作る材料がそれだけという話で、そこからの作業は少し体力を使う。

まずは水と塩を混ぜる。次に小麦粉に先ほど作った塩水を何回かに別けて回し入れながら混ぜる。本来なら小麦粉ではなく中力粉や薄力粉と強力粉を混ぜた物を使うのだが、そんな便利な物はないので諦めるしかない。

混ぜて混ぜてこねてこねて、一塊になったところで麺棒を使って伸ばして畳んでを繰り返す。

ここまでで大体30分は経過しただろう。体力はついているが流石に重労働だった。少し寝かせるために手ぬぐいに包んで放置。その間に薪を準備して水を沸騰させる。それも時間がかかるので少し魔理沙の様子を見ておこう。

 

居間にいる魔理沙の様子を見てみると、うどんを作る前と同じように霊夢に膝枕され団扇で扇がれていた。顔色は先程よりも良くなっているため、食べることもできるだろう。

 

「霊夢、魔理沙の調子はどう?」

「座って飯食うくらいならもう大丈夫だぜ」

「本人はこう言っているけど、まだちょっと辛いみたいね。もうちょっと寝かしとくから手ぬぐい濡らしといて」

「わかったよ」

 

霊夢の言う通り手ぬぐいを濡らして魔理沙の額に再度かけてあげる。魔理沙の眉間にできていた皺が少なくなったので、まだ辛かったのだろう。

 

とりあえず料理を再開しよう。

まずはうどんの麵を作る。麺棒で伸ばして包丁で切れるサイズに畳む。それをなるべく均一になるように切っていく。生姜と細ねぎ、みょうがを刻んで別々の小鉢に入れる。山葵もすり下ろしてこれも小鉢に添える。

鍋の水が沸騰し始めたので、麺を投入。その間に醤油と乾燥した小魚を用意する。鶏肉と卵も湯がく準備もしておく。麺も適度に柔らかくなったので、ざるに入れてお湯は再利用。まずは沸騰しているお湯に卵を優しくお湯に落としてエッグベネディクトを作る。次に小魚を鍋に入れて、また少し放置して、その間に麺を冷水に通してしめる。鍋の小魚を取り出して醤油を適量入れる。後はどんぶりに麺と氷を入れてからつゆを入れる。最後にネギを盛り付けてそれぞれの小鉢の物をお好みで入れて完成。

 

「ほら出来たから魔理沙はそろそろ起きろ」

「分かった分かった。よっこらせ」

「私も膝が少し痺れたわ……」

 

それぞれの前に配膳していく。

 

「小鉢のやつはそれぞれお好みで入れな」

「おう」

「私みょうがいらない……」

「霊夢は全部入れなさい。せっかく用意したのにいらないとか言った罰だ」

「えー……」

 

文句を言う霊夢はお残しは許さない方針で食べさせよう。魔理沙は食欲はあるのか箸の速度は遅いがしっかり嚙んで食べている。

 

「相変わらず美味いな」

「あんがとさん」

「暑い日にはちょうどいいわよね」

「そういえば魔理沙は何で汗だくになるまで外にいたんだよ?」

「ん?ああ、これ、これ取りに行ってたんだよ。それで気が付いたらフラフラしてきたからさー、急いでここまで来たって訳」

 

魔理沙が取り出したのは一つの風呂敷だ。広げられると中身はきのこの山だった。

つまり魔理沙は森でキノコを採取していることに夢中になっていつの間にか熱中症になって、避難所として博麗神社まで来たってことか。しかもこのキノコを駄賃代わりにでもする気だろう。

 

「そういうことかよ。まあいいが、できるなら人里の方が近かっただろうに、次からそっちに行けよ?慧音先生とかなら頼れるだろ?」

「次回からはそうする……」

「その前に熱中症にならないようにしなさいよ」

「はいはい……」

 

そのまま魔理沙に文句を言いながら食事は終わり、お皿を洗った後にお風呂を入れて、魔理沙はお風呂に入って霊夢と一緒に寝た後、朝飯も食った後に帰っていった。

 

ついでにキノコも粗方置いていった。

 

いや、毒キノコかもしれないモンいらんて……

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