あと日韓ランキングに52位になってて驚きました……
満月に限りなく近いが少しだけかけた月が二日続いて空を彩る。天文学的にあり得ない月の状態だ。
常識を投げ捨てた幻想郷でも流石に惑星を自由自在に操ることは不可能だ。
これは異変だと感じた霊夢はすぐに支度を始め、紫母さんも現れた。
「あら霊夢、もう支度しているのね」
「こんばんは紫母さん。霊夢は今準備中だから少し待ってもらっていいか?」
「こんばんは白鹿。異変が起こったからには、いつも通り白鹿も被害者たちの救助に回ってもらうわよ。今回の異変の元凶は竹林にいるわ。分かっていると思うけれど、竹林には多くの雑魚妖怪がいるわ。私達にとっては羽虫と同等だけれど、白鹿にとっては命を脅かす妖怪よ。残念だけど藍も橙も連れて行くから、私達からの支援はないわよ」
「大丈夫、日中から霊夢が準備してるの見て、俺も助けてくれそうな人見つけたから」
「あらそうなの?白鹿も準備がいいわね」
「駄弁ってないでさっさと異変解決に行くわよ」
紫母さんと話していると霊夢が準備を終えたのか俺達の傍にまでやって来た。一言二言話した後、「行ってきます」と言って飛んで異変解決に向かった。
と思ったが、急いでこちらに戻って来た。
「忘れるところだった、はいこれ。あんたもどうせこの後異変解決の後を辿るんでしょ?だからこれ一応持っていきなさい」
「おお、ありがと」
渡されたのは一本の脇差と針が数本、お札も何枚か手に持たされた。渡し終わった霊夢は一目散に上空へと飛んですぐに見えなくなってしまった。
家に一人になった俺は近くの森に待機していた妹紅さんと合流した。
「妹紅さんお待たせ。早速行きましょうか」
「おう、ここから竹林に行くんだっけか?」
「そうそう。察しはついてると思うけど、今回の異変の原因は妹紅さんの因縁の相手、というかその一派」
「よりにもよって輝夜の野郎か……。竹林に異変解決に動くって言われたときから相手が輝夜だってのはなんとなく分かってたよ」
「ですよねぇー。よく引き受けてくれましたよね」
「輝夜が悪者なら、あいつを打ちのめす私達は正義側だろ?なら合法的に焼けるじゃん?」
「あ、そっすね……」
「うわぁ、大義名分を手に入れた暴君だぁ」
「あ゛あ゛?何か言ったか?」
「なんも言ってないっス……」
暴君から不良に突如変身した妹紅さんにビビり散らしながらも、神社の階段を下りていく。
山に囲まれた神社であるため、参道脇から虫の声がよく聞こえるが、参道を下りるにつれてその声はどんどん大きくなっていく。疑問に思いながら降りていくと、そこには触角と虫の羽が生えた女の子、闇に蠢く光の蟲ことリグル・ナイトバグが参道脇に無残に倒されていた。
どうやら霊夢が行きしなに一捻りに倒したのだろう。最低限の攻撃で急所を狙い仕留めたのがよくわかる。周りに被害はゼロかつ、リグルはボロボロ。さっさと解決する気満々だ。
「おーい大丈夫かー?」
意識回復を図るため、リグルの頬をペシペシと叩く。一応怪我人であるため優しく叩いているが、正直早く目を覚ましてほしい。先程から周囲の蟲がこちらをじっと見つめている気がするのだ。
蟲は俺達を観察しているのか、先程まで五月蠅かった虫の声は止んでいる。月明かりが照らす参道で虫の気配はするのに風で草木が凪いでいる音しか聞こえず、嫌な静けさだった。背中から嫌な汗が流れているのを感じる。
しかし妹紅さんは特に何かを感じているわけではないのか、平然とした顔で俺の後ろに腕を組んで突っ立っている。
焦る俺はリグルの肩を持って激しく体を揺すった。
「おい!起きてくれ!!生きてんだろ!?なあ!??」
「どうした急に?こいつの頭、お前のせいで地面に強打してるけどいいのか?」
「そんなことはどうだっていいんだよ!さっきから蟲がこっち見てる気がするんだって!どうせ原因こいつだろ!?さっきから不気味なんだよ!早くこの環境から解放されたいの!俺は!」
「お前が半狂乱になってるお前の方がこの環境より私は怖いけどな」
「うっ……」
「お!起きた!」
半狂乱になって叫んだおかげか、それとも強く揺すったのが功を奏したのか、リグルはゆっくりと目を開いた。
「あれ……ここは?」
「やったあ……!おきたぁ!」
「なんか言動が幼児化してないか?」
「おいお前、早く周りにいるやつら何とかしてくれ!」
「え?ああ、うん。いいよ。ちょっと待ってて」
リグルが何か話した後、蟲が散っていく様は、影が立体となって霧散していくようで、その様子を見て思ったより多くの蟲がいたのだと簡単に想像ができてしまい寒気が走る。
「正気度下がりそう……」
「ねえ、聞きたいことがあるんだけど。いい?」
「おうどうした?」
「私、ここら辺で弾幕ごっこで負けちゃって気絶したんだけど、その相手ってすごく強くて手も足も出なかったの。その相手、紅白の巫女服を着てたんだけど、誰か知ってる?」
「それ俺の妹だ」
「あと頭の後ろがズキズキするんだけど何か知ってる?」
「それは俺だわ」
俺の言葉を聞いたリグルはプルプルと震えだした。それはまさに火山噴火の前兆だった。周囲からガサガサと先程の蟲が戻ってきたのだろう、活発になってきている。
「お前かーーーーーーーーー!!」
「ひい!ごめんなさい!蟲怖いからひっこめて!」
「お前本当に腰低いな」
「だって蟲怖いんだもん!何なら泣きそうだもん!」
「男が「もん」とか言うなよ気色悪
「私を無視するな!!あんたが私をぼこぼこにしたんでしょ!あの巫女もあんたが命令したんでしょ!」
「多分異変解決に邪魔だったからぶちのめしただけだろ?」
「うるさい!」
俺をすべての元凶と思い込んだリグルが俺に向かって叫ぶが、これだけ元気ならもう介抱する必要ないよね?むしろ俺の方が命の危機に近づいている気がするのは気のせいだろうか?
「いやマジで俺は悪くないって!俺は気絶してるお前を起こそうとしてただけだし、後頭部痛むのも弾幕ごっこ中に気絶して地面に落下したときに打ったんじゃない?」
「それはそうかも……」
「あと、弾幕ごっこすることになったのはお前が神社の近くにいたから仕方ないぞ。何なら機嫌が悪ければ退治されるかもしれないから、今まで幸運だったのかもな」
「え、ここそんな危険なの?」
「そりゃあ博麗の巫女のおひざ元だからなあ。名前教えてくれたらあいつに言っておくけどどうする?」
「リグル・ナイトバグよ。教えたら何かあるの?」
「どうなるか知ってから名前言えよ……」
「俺から危険な妖怪じゃないって妹に伝えとくから、そうすればむやみに退治されることはないと思う。ここ以外で会っても妹からは何もしないようになるぞ」
「そうなの?」
「人間に悪さをしなければな」
むしろ悪さをしたと知れば、名前も姿も知っている方がすぐに見つかるため制約になるが、そこは言わなくていいだろう。
「で、リグルはもう起きても平気なのか?」
「うん!もう大丈夫よ!」
「なら今後は博麗の巫女の邪魔はしないようにな。あとこいつにも」
しゃがんでいる俺の頭を軽く叩きながら妹紅さんが注意してくれる。俺の安全確保のためだろう、ありがたい。
「分かったわ!巫女にもそこの人間の邪魔はしないようにする!」
「助かる」
「うん!」
元気に返事するリグルにこいつはなんだか純粋な奴なんだろうなんて感想が出てくる。
お別れの挨拶をしようとしたところで、少し待ったをかける。介抱も俺の目的だがもう一つ俺には目的があるのだ。
「言い忘れるところだった。明日……いや明々後日の昼頃に博麗神社で宴会開くから是非来てくれ」
「あたし妖怪だけど、宴会に行ってもいいの?」
「大丈夫大丈夫、もう妖怪が宴会に参加しているのは普通になってきてるから、気にする奴なんていねえよ」
「妖怪よりも人間の方が少ないもんな、宴会の参加者」
宴会に参加する人間は、俺と霊夢と魔理沙と咲夜さんで四人しかいない。妖怪退治は博麗の巫女が受け持っているので、人里で退治屋なんてのもいないから、そういった筋の人達とかかわることも少ないのだ。結果的に霊夢は妖怪と人間の知り合いは同じくらいいる。そのため、競い合える魔理沙や咲夜さんは結構貴重な存在なのだ。
「じゃあ参加する!」
「分かった。待ってるぞ」
「そうだ、あたしからも一つ言い忘れてたことがあった」
「なんだよ」
「あたしの友達が階段降りたところに屋台開いてるからもしかしたら退治されてるかも」
「もしかしてあの焼鳥屋か?」
「知ってるの妹紅さん?」
「結構美味いぞ。そういえばあいつも妖怪だったな」
「ミスティアっていうの。あの子ももしかしたら……」
「うん、話しかけるだけでも七割で仕留められるな……」
「もしちょっかいかけたら?」
「十割で滅多打ちにされる」
もう、その友達焼鳥になっているかもね、とは情けとして言わないでおいた。