霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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第56話

参道を下りて少し歩いたところに案の定というかなんというか、ミスティア・ローレライが無残にも倒れていた。

 

今度は蟲は近くにいなかった。

 

「……おいしそう」

 

 

代わりにお腹を空かせているルーミアがいた。

涎を垂らしているところから、冗談ではなく美味しそうと感じているのかもしれない。

 

 

「ちょっと待てぃ!」

「ん?あ、白鹿だ!こんばんわ、いい夜だね!」

「おい、こいつ妖怪だぞ。しかも人も食うようなタイプの」

 

妹紅さんは今までルーミアに会ったことがないのか、初見で妖怪であることと人食いであることを理解したのか、腕を出して庇ってくれる。

 

「妹紅さん、こいつはルーミア。お察しの通り人も食うような妖怪だけど、俺と出会ってからは人は食ってないよ。寧ろ人の助けになってくれてますよ」

「そうなのかー?」

「おい、こいつも疑問に思ってんじゃねーか」

「こいつの口癖なので気にしないでください。特に意味はないので気にしなくていいですよ。相槌みたいなもんです」

「そうなのか?」

「そうなのかー?」

「わざとです?ルーミアも便乗しなくていいから。こいつは頭は少し弱いですが、よくご飯を報酬に護衛してもらってます」

「そうなのだー」

「そこは”そうなのかー?”じゃないのかよ」

「それしか喋れない訳じゃないですからね。それよりルーミアは何でそいつの近くにいるんだ?」

「霊夢が襲ってるの見えたから、美味しそうな物(何かの死体)がないか探しに来たの。そしたらこれ(死体)が落ちてたから食べようと思ったんだけど、食べちゃダメ?」

「悪いんだけど食べないでね。その妖怪聞いたことあるんだけど、料理できるみたいで、人里で結構話になってるから、絶対逃がしたくないんだよね。今回の異変も解決したら宴会やるから、その時にこいつの料理を食わせてもらいな。だからこいつ食べるのは止めてくれるか」

「分かった!」

 

とにもかくにも一応はミスティアに事情を聴きたいため、起きてもらいたいのだが、仕方ないのでリグルのときとは違い落ち着いて起こす。頬を叩く、肩を揺する、呼びかける等意識覚醒に尽力する。

 

2~3分くらいだろうか、ミスティアは目を覚ました。

 

「うーん……ここは?」

「目が覚めたか。とりあえず名前聞いていいか?」

「いいわよ」

 

地べたに倒れた状態から、土埃を払ってペコリとお辞儀をしてから挨拶を始めた。

 

「初めまして人間のあなた。私は夜雀の怪、文字通り夜雀の妖怪、ミスティア・ローレライよ。夜中に目が見えなくなったら私に言ったら治してあげれるわよ」

「気をつけろよ。目が見えなくなる原因作るのはこいつだからな。しかも治療に金をとるぞ」

「あら妹紅、あなたもいたのね」

 

つまりこの鳥は強制的にマッチポンプを行いつつお金を稼いでいるようだ。なんという所業だろうか、決して許してはおけん。そういえばミスティは割烹着を着ているイラストを見たことがあるし、人里でも何度も屋台の食事が美味しいと話に聞いているので、宴会の新しい料理人枠としてお迎えしたい。

 

「すまないがどうしてここで倒れてたのか聞いていいか?」

「えっと、夜中に飛んでる人間がいたから、ちょっかいかけてやろうとして、目を見えないようにして揶揄って遊ぼうとしてたんだけど、確かに見えないようにしてたはずなのに弾幕は全部躱されるし、すぐに倒されるし、散々だったわ」

「そいつの特徴は?」

「紅白の巫女服を着た女よ。なんだったのかしらあいつ」

「博麗の巫女だよ。巫女服着てるんだからそれくらいわかるだろ?あとついでに俺の妹な」

「そうなの?兄妹なのに全く似てないのね」

「私も気になってたんだが、お前ら本当に兄妹なのか?」

 

そういえば今まで俺と霊夢の血縁関係に疑問に思われたことなかったな。特に隠してるわけでもないから話してもいいだろう。

 

「育ての親に俺も霊夢も拾われて育てられたから、別に血はつながってないぞ。もしかしたら同じ人に捨てられた本当の兄妹かもしれないけど、流石にそんなことはないだろ」

「「そうなのかー」」

「!?ルーミアの口癖だからルーミアが言うのは理解できる。でも妹紅さんどうしたんですか?貴女こんなことに乗っかる性格でしたっけ?」

「冗談ぐらい普通に言うぞ?お前は私を何だと思ってんだ?」

「年上の他人の家に常駐する荒事になると頼れる人」

 

あと不老不死でメンタルブレイクしてそうで、死なない殺し合いを輝夜とやってる時限爆弾みたいな人、とか言ったら多分ぼこぼこにされるから絶対に言わないけど。

 

「印象が良いのか悪いのかよくわからない感想だな」

「人間なんてそんなもんでしょ。善いだけの人も悪いだけの人もそんなにいないもんですよ。年下の俺が言うまでもないと思いますけど」

人間(・・)はそうだな」

 

人間は、なんて態々強調して言ったのは妖怪とか他の種族の事を言っているのか、それとも宿敵である月の住人だった輝夜への恨みつらみかは、聞かないでおこう。時限爆弾が作動するかもしれないし。

 

今からその時限爆弾を爆発させに行くんだけどね。

 

妹紅さんのフラストレーションは定期的に輝夜との戦闘で抜いてるらしいし、今回もその延長戦ということで何とかなるだろう。

 

「で、ミスティアは今度やる異変解決の宴会で料理を提供してもらいたい。確か屋台を出しているんだろ?なら料理も誰かに提供できるものなんだろ?」

「そ、そうですね……」

「じゃあ、料理の種類は?何を中心に作ってる?」

「串焼きや串揚げを中心に作ってます……。ねえこの人怖いんだけど?」

「こいつ毎回宴会となると料理人を血眼になって探しているからなあ。しかも妖怪とかうじゃうじゃいるような宴会だから普通の人間なんか誘えないからな。料理できるような妖怪は喉から手が出るくらい欲しているんだろうよ」

「よし、明々後日に宴会するだろうからそれまでに材料とか準備してくれ。場所は博麗神社、そこの階段を上っていけば着くから。時間は昼くらいだ。何か質問は?」

「参加するのは確定なの?」

「強制ではないが、やってくれるなら今後悪さをしない限り博麗の巫女がお前を退治することはないだろう」

「それはつまり?」

「もし俺の提案を断ればお前の命はないと思え」

「それはもう提案じゃなくて脅迫なのよ!」

「ルーミア、もしこいつが俺の提案を断るようなら、容赦なくこいつを食っていいからな」

「やったー!」

「食べないでよ!分かったわよ!宴会でなんでも作ってあげるから食べないでよ!」

 

交渉は無事に終わってよかった。後宴会の料理人が確保できて本当に良かった。異変が起きるごとに参加者がどんどん増えていくから、正直料理人も増やしていかないと俺達料理人の体がもたないので、料理人も逐次増やしておきたいのだ。

 

「助かる。費用は基本的に異変の敗者が材料費とか支払うようになってきているから、基本的に損はしないようになってるから」

「そうなの?それなら特に問題はないかな」

 

とはいっても基本的に払うのは材料費のみで、人件費等の労働に関する費用は支払われたことは今まではないので、損はしないけど得もしない。というか労働力に対しての費用が支払われていないのでむしろ損になるだろう。

しかしここでリスクを言ったところで断られるだけだから絶対に言わないけどな。

 

「ルーミア、悪いけどこのミスティアを守ってやってくれないか?またご飯食べさせてあげるから」

「ご飯食べさせてくれるならやるー!」

「よし、頼んだぞ。もしそいつに何かあったら、宴会で美味いご飯が食べられなくなるかもしれないからしっかり守ってくれよ?」

「わかった!」

 

「妹紅さん、俺達はこのまま人里を通り過ぎるように竹林へ向かいましょう」

「おう」

「白鹿ー、またねー!」

「宴会にはちゃんと来いよー」

「はーい」

 

こうして俺と妹紅さんはミスティアとルーミアの二人と別れて次の目的地に向けて歩き出した。

 

「妹紅さん、俺抱えて飛んだりできない?」

「その場合お前が焼死体になるけどいいのか?」

「じゃあいいっす……」

 

歩き出したのだった!

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