霊夢のお兄ちゃんになったよ!   作:グリムヘンゼル

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少し期間が開いてしまった……。
しょうがないんや。イベントで忙しいんだ、ビルダーしたり、ピアノの練習したりしてたんだ……。


第57話

いまだ夜も更けていない、午前様にもなっていないような時間帯に俺と妹紅さんは人里の入り口に到着した。

 

正確に言うのなら、人里に入ろうとしたが入れなかった、と言葉にした方が正しいが。

ここにあるはずの人里が認識できない。視界に映っているはずなのにあるかどうかわからない。

 

「おや妹紅に白鹿、お前も異変解決か?」

「こんばんは、慧音」

「どうも慧音先生。息災で何よりです」

 

慧音先生、フルネームは上白沢慧音、ワーハクタク、白澤と人間のハーフであり、人里の寺子屋で先生をしており、俺も幼少の頃に慧音先生に勉強を教えてもらっていた生徒の一人だ。

また、ワーハクタクであるため人間よりも遥かに長い寿命を持っているため、人里ではご意見番のような立ち位置に収まっている。

おそらく原作では今回の異変で登場だったために、そこまで顔を知られることはなかったのだろうが、俺が再三異変解決の宴会に参加させたためか、幻想郷でも新参者の紅魔郷組や最近になって人里に降りてくるようになった白玉楼組とも顔見知りとなっている。

 

「俺は異変解決じゃなくて、異変解決してる霊夢とかに倒されたやつらの介助が主な仕事です。というか俺もっていうことは、霊夢がここに来たんですか?」

「霊夢もここに来たぞ。あと魔理沙に妖夢、十六夜も来たな。全員初めは殺気立っていたが、私が事情を説明したら納得してくれた」

 

良かった……。慧音先生に失礼なことがあれば俺が生涯慧音先生に顔向けできん。

 

「そりゃあよかった。もし慧音を傷付けようものなら、私が傷つけた犯人を()っちゃうところだったよ」

「ははは、そうならなくてよかったです」

 

そうなったら急遽異変解決中にExステージが開幕することになるから、難易度ルナティックなんてもんじゃなくなるから、慧音先生が傷ついてなくてよかった……。最悪俺が火達磨になりながら妹紅さんを止めることになるかもしれなかったからな。そうなれば霊夢はブチギレて、紫母さんと藍お母さんは妹紅さんを封印するかもっとえげつない処理をしそうだ。

 

「それで?今まで仕留められたやつはいるのか?」

「俺達が把握しているのは蟲の妖怪のリグル・ナイトバグと夜雀の妖怪のミスティア・ローレライだけです。両方とも霊夢にちょっかいかけて返り討ちにされたみたいです。あとルーミアがミスティアを食おうとしてたから、なんやかんやでミスティアは今度の宴会に料理人枠として参加、ルーミアは傷ついたミスティアの護衛をすることになりました」

「なんやかんやってなんだ!?」

 

慧音先生に突っ込まれたので事のあらましを説明する。

 

「そういうことか。確かにここ最近、近所でも屋台と夜中に目が見えなくなるという噂はよく聞くが、原因はそのミスティアという妖怪だったのか……」

「そういうことです。もう悪さはしないように言ってますが、悪戯程度なら見逃してあげてください。さすがにそこまで妖怪の性質を捻じ曲げたくはないので」

「分かっているさ、私も半分とはいえ妖怪の血が入っているんだ。その衝動や性質は身に染みて理解している。私よりお前の方が理解しているのか?」

「知りませんでしたっけ?俺の育ての親、血の繋がった親については知りませんが、育ての親はあれ(・・)なので、その後は先代の博麗の巫女に面倒を見てもらい、慧音先生に勉強を見てもらったので、半分以上は人外に育てられましたね」

「教師の私を育てた親と並べるな」

「先代の巫女もな。育てたとは少し違うだろ」

「まあ確かに親かどうかと言われると違いますね。そうなってくると十割が人外になりますよ」

 

紫母さんと藍お母さんに育てられた俺だけど、俺の周りには妖怪、というか普通の人間が少ない。幼少期は妖怪二人に育てられ、赤ん坊の霊夢を育てて、亡霊の幽々子さんに見守られながら半人半霊の妖夢ちゃんと妖忌さんに剣を教えてもらった。改めて考えると周りに普通の人間がいないな。妖怪に育てられ、幽霊に見守られた俺は本当に普通の人間と言えるのだろうか?

いや、きっと普通ではないだろう。

 

普通の人間なら、人間の親に育てられ、人間の友達と一緒に遊ぶのが普通だろう。

 

翻って俺はどうだ?妖怪に育てられ、2歳で赤ん坊の世話をして、幽霊と一緒に過ごした俺は人間と言えるのか?

 

 

「俺は人間じゃない……?」

「おーい迷走し始めてんぞ、落ち着けー。お前は普通の人間だからなー」

「お前は本当に子供の頃から変わらないな……。いつになったら成長するのやら……」

「つまり子供の頃から俺の精神は完成されてたってことですね」

「急に真面に戻るな。お前の精神どうなってんだよ。脱出不可能な迷宮かよ」

「おい、そういえばここで井戸端会議していていいのか?」

「あ、やべ」

 

慧音先生と駄弁っていると慧音先生は気づいたように注意された。

ここからは竹林に入っていくのだが、妖怪がたくさん出てくるのであまり行きたくないんだよ。仕事だから行くけど。

 

「はああ、行きたくねえなあ……」

「私が守ってやるんだから文句言うなよ」

「分かってますよ……。………………はあぁぁぁぁ、行きますkごっふぁぁぁぁ!!!」

 

後ろのめりの気持ちを溜息と一緒に吐き出して、一斉奮起して竹林へ行こうとして体に衝撃が走り世界がぐるぐると回る。

 

体の一部に衝撃を与えられたとは思うがあまりの衝撃にどこにダメージを受けたのか把握できない。しかも地面をゴロゴロと転がったためいたるところに擦り傷ができているし、土埃で服も汚れているし最悪だ。

痛みがなんとか治まってきて、妖怪が襲ってきたのかと警戒するが仰向けの俺の上にいたのは今泉影狼だった。

 

「痛てえな、なにすんだよ影狼……」

「………てやる」

 

小声で影狼が話すので少ししか聞き取れない。視界に妹紅さんも映っていないので、妹紅さんもこの現状に戸惑っているのかもしれない。

 

「なんだって?」

「お前を殺して、私も殺されるんだ!」

 

なんかさっき言おうとしたことと違くない?しかもなんで俺を殺した後に自殺するんじゃなくて、他殺されるみたいだし、訳わかんねえなこれ。

 

「おい、落ち着け。どうしたんだよ、竹林の入り口で待ってるように言ってあったろ?」

「そうだよ!ちゃんと大人しく待ってたのよ!なのに一向に来ないし、目に針は刺されそうになるし、魔法は打たれるし、急にナイフがどこかから飛んできて刺されそうになるし、刀で切られそうになるし、妖怪たちも騒がしくて私にも襲ってくるし、散々だったの!!待ちかねて人里まで来たら、楽しそうにお喋りしてるし!私はあんなに怖い思いしたのに!お前は!楽しそうに!ああもう!殺す!」

「おいおい落ち着け。落ち着けって!」

 

どうやら自機組全員に退治されそうになったようだ。つまり短時間で4回以上も殺されそうになって感情がおかしくなってしまったのだろう。

妹紅さんに羽交い絞めにされた影狼は、喚くことを止めて俯いた状態で何も話さなくなった。

 

「おーい、大丈夫かー……?」

「この妖怪の情緒も心配だが、お前の身体も大丈夫か?先程何回転もしていたぞ」

「擦り傷と打ち身くらいですよ、多分。俺のことは後でいいんで、こいつ何とかしましょう。さっき俺殺して自分も殺されるとか事件性しかないこと言ってたんで」

「言ってたな、殺して殺されるって。おい、どういう意味で言ったんだよ」

 

影狼は羽交い絞めの状態で俯きながらも、少しだけ顔を上げて前髪越しからこちらを見ながら話し始めた。はたから見たら俺達尋問してるみたいだな。

 

「まず、私がそこの白鹿を殺すじゃない?そうしたら博麗の巫女が私を殺すでしょ?」

「現実的に考えてそうだな。でも俺殺す気概があるんなら、霊夢も殺すくらい言ってみろよ…」

「私みたいな弱小妖怪が逆立ちしたって勝てるわけないじゃない。精々奇跡でも起きてかすり傷負わせれるくらいよ」

 

追い詰められてここまで走ってきて悪質タックル決めて殺意マシマシだったのにそこは冷静に考えるだけの頭は残ってるのかよ。情緒どうなってんだよ。

 

「申し訳ない。こちらから依頼しておいてあまりにも不義理だったな」

「いいわよ。体当たりして喚き散らしたらなんか落ち着いたわ」

 

 

「いや、お前らの情緒どうなってんだよ。落ち着くまでの段階がなさすぎるし、感情が動いてんのかわかんねえし、理解できねえ……」

 

妹紅さんは影狼にしていた羽交い絞めを解いて、肩をすくめた。




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