モンスターが怖いから私はガンナー   作:友夏 柚子葉

5 / 8
ウチにとってのガンナー

 

 

 

まず最初に訂正しなきゃいけないことがあるの。

 前回ウチは「ウチ実は猫アレルギーだった」なんてことを言ってアイルーちゃんと接触した時に、アレルギー特有のくしゃみをしてたんだけど……実はウチ猫アレルギーでも何でもないです!ハンターなのに猫アレルギー持ちなんて変わった主人公演じようと思ったんだけど、猫アレルギーって言う前からしっかり料理長ちゃんの隣座って、料理長ちゃんが作った料理食べちゃってたし、流れ着いた場所がチコ村なんてもう猫アレルギーと名乗るのは無理な話だったと気付いた今日この頃…。

 え?「じゃあなんでくしゃみしてたの?」って…み、水浸しになって風邪ひいちゃったんだよよヨヨ……あははは。

 

 

………本編始めます。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 結論から言うと、無事採取クエストを終えてチコ村に帰ったよ。

 ウチはエリア10からエリア2エリア1を通り、BCに帰還。そのまま青い大きい箱・支給品ボックスの中に届けられた採取クエストのクリア条件の一つである<ネコタクチケット>を赤い大きい箱・納品ボックスにて納品しクエストをクリアしてチコ村へと戻った。

 麗しき陸の女王様から熱い洗礼(サマーソルト)を受けたウチは初期装備にもかかわらず、何とか力尽きる一歩手前で耐え、吹き飛ばされたことによってエリアチェンジをし、エリアチェンジ先だったエリア10…通称<ネコの巣>にて気絶していたところ、たまたま集会を行っていた野良オトモ達が傷付き気絶していたウチを薬草笛や回復笛でHP回復に努めていてくれたんだよね。感謝の言葉しかない。

 「ありがとう」と言ってアイルーちゃん達が嫌がらない程度に自己のメンタルケアも兼ねてナデナデしてたんだけど……。

 

 

「ちーちゃん。ちゃんとお世話できますか?」

「わー!野良オトモちゃんがいっぱい!これみんなちーちゃんがケイヤクしたの?」

「ひとクエストで12匹も野良オトモをスカウトしてくるのは凄いな…。」

「わーはっは!こりゃまた随分賑やかになったなァ」

「まったくお嬢、友達を呼ぶのは良いニャルが、前もって言ってくれないと全員分の飯を用意出来ないニャルよ」

「確かワシのところにポカポカ島の管理人から島拡張の依頼が来てたわな」

 

 

 キャラバンのみんながウチと、その後ろにいる多数のアイルーちゃん達を見てそれぞれコメントを残した。

 ……どうしてこうなったのかな…?

 

 

「みんなチーの事が心配でついて来たみたいね」

「おぉ猫っ子!もういいのか?」

「真由香には真由香って名前があるからそう呼んで欲しいって何度も言ってるでしょ!そろそろ引っ掻くわよ?」

「すまんすまん。しかしまァこの呼び方に慣れてしまってだな」

「真由香。団長の人の呼び方について頼んでも無駄だ…もう長い付き合いなんだ受け入れな…。」

 

 筆頭オトモこと真由香が下から団長に怒っている?のかな。その姿は容姿の所為もあるけど自分を大きく見せたい、大人ぶりたい子供に見えて凄く可愛い。そして加工屋のお兄さんに諦めろと言われたけどまだ納得いかないらしい。

 とりあえずウチはスカウトし(てしまっ)たアイルー達に自己紹介を求めた。

 

・シロ:アシスト(黒猫)

・クロ:回復(三毛猫)

・ミケ:アシスト(白猫)

・オリバー:アシスト(ゴールド)

・サテン:回復(白黒)

・ミケレッド:ファイト

・ミケブルー:ガード

・ミケイエロー:宝探し

・ミケピンク:回復

・ミケパープル:アシスト

・ミケブラウン:ボマー

・ミケグリーン:ぶんどり

 

 

 ………と、それぞれの名前とトレンドを紹介しに来てもらってウチが毛色を書かせてもらったんだけど…。

 

「ちょっと待って最初の3匹のアイルーちゃん!名前と毛の色間違ってない!!?」

 

 名前がシロなのに黒猫。クロなのに三毛猫。ミケなのに白猫。あぁややこしい!それとなんか後半数合わせの様な手抜きの様なDLC配信されたアイルーちゃんの名前が7つほどあったのは気の所為かな!?

 ツッコミが追いつかない!漸く元の世界のボケ役(ボクっ娘)のツッコミ役から解放されたと思ったら1ヶ月でもう現役復帰!?

 

 ……よくよく見るとトレンド偏ってるね。まぁ同じフィールドで何匹もスカウトしたらこうなっちゃうよね。後半7匹以外。だってフィールドごとに集まりやすいトレンド決まってるから仕方ないと言えば仕方ない。さっきの原生林だと回復とアシストが出やすかったっけ?

 けど序盤にしては良い配分だと思う。レギュラーはアシスト2で<しびれ罠>と<モンスター探知>。残り3は回復で<回復笛><解毒消臭笛><真・回復笛>の火力は上がらないけど生存率や攻撃チャンスの回数が増える編成にできる!火力不足?そこに怪力の種があるじゃろ?

 

 

「ところで、どうだった…?ケガはしなかったか…?」

「あー…あははー」

 

 ぬこの編成を考えていると背後の高い位置からお兄さんの声が聞こえた。多分ウチの素晴らしき勇姿を直で見れず、話だけでも聞きたいらしい。ほうほう…ならそのオーダーに応えよう!

 

「あのねお兄さん、まさか採取クエストでレイアが乱入してくるなんて思わなくてね、一瞬怯んだけどウチの素早い片手剣捌きで見事に尻尾を斬って追い払って~…」

「ダウトよ。この娘ったらレイアにビビっちゃっていいようにやられてたわ。盾持ちの片手剣じゃなくて双剣で来てたら間違いなく死んでたわね」

「ひぇっ!ちーちゃん大丈夫!?怪我無い?」

 

 あはは~大丈夫大丈夫。と抱き着かれて泣き付かれた娘ちゃんに無事を伝える。そしてそこの真由香ちゃん。そんな食い気味に否定しなくてもいいじゃん…。

そういえば回復笛ってすごいね。いやハンターが凄いのかな?傷跡は薄く残るけど傷自体は回復薬や回復笛の演奏で瞬時に塞がる。痛みは残るけどかなり楽になる。ホント今まで画面の外から操作してたけど人間やめてるよねこの職業。

 

 

「ちーちゃんごめんなさい。私がもっとしっかりしていればリオレイアに遭遇する可能性を事前に伝えれたのに…」

「うーん…確かに凄い怖くて、死を垣間見て、どこか何に対してか分からない憤りとかあるけど、それは決してソフィアちゃんに責任がある訳じゃないよ。相手は自然だからね」

「ちーちゃん…」

「それに!早い時期にモンスターの怖さを覚えれたから、勝てずとも収穫はあったんだよ!モンスターの怖さを知らないと絶対に早死しちゃうか、狂った略奪者になっちゃうからね」

 

 足の笑いが止まらない。未だにあの時の女王の威光が、サマーソルトの恐怖が、耳に咆哮が残っている。

 

 

 ───恐怖という振動は身体のいたる所から発生し、共鳴し、増幅する。いつかそれがトラウマになり、体が震え上がって気を狂わす。呼吸は乱れ、両腕を胸の前で交差して自分の両肩を掴んで膝を着く。

 

「はぁ…はぁ…はぁっハァハァ……」

「ちーちゃん?」

「はぁ…あはハ…はぁははハハ…はっはっはぁっ……」

「ちーちゃん!?」

 

 肋骨をぶち破って心臓が飛び出そうだった。強い陽射しで灼熱の鉄板にのように熱くなった砂浜に顔を埋める前にソフィアちゃんが大切な手帳を投げ捨ててウチを支えてくれた。脳が感情を放棄し、恐怖が頭から消えたのと同時にウチの意識も消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めて視界に映った景色は知らない天井…というわけでもなく一ヶ月程毎朝見てる見慣れた天井。

……どうやらキャラバンのウチの部屋のベットの上に移されたようだ。

頭の中にソフィアちゃんのウチを呼びかける声が残っている。入口から部屋に入ってくる光はユラユラとしたオレンジで、恐らく夕焼けではなく料理長ちゃんのかまどの炎。つまり今は夜。半日も寝ていたことになる。

 起き上がろうと布団を退かして気付いた。体がとっても気怠い。この感覚はさっき体験したものに似ていた。陸の女王の毒だ。まだ抜けていなかったのか、ランゴスタの麻痺毒のように体の自由を奪う。

ベットから転がり落ち、床を這って外に出ようとした。

 動かない四肢を一生懸命動かしてマイハウスの出口に到着した時、彼女の声が聞こえた。

 

「あら、そんなオルタロスみたいになってどうしたのかしら?……まぁどうせ大方まだレイアの毒が抜けきってないのね。今解毒薬持ってきてあげるわ」

 

 そこにはウチの友達、アイルーの真由香が水の入った桶を持って立っていた。真由香は「やれやれだわ。なんで動けない体でベットから出ちゃうのかしら」と、小言を言っていたけど、どこか楽しそうだった。

 ベット横のボックスから青色の液体が入った瓶を取り出し口元に持ってきてくれる。……いや、これ絶対毒を治すよりも犯す方の色だよね? そう思ったのがバレたのか、将又解毒薬を見て嫌な目をしたのを見られたか、あるいは両方か。片方の肉球で瓶の底を支え、もう一方をウチの後頭部に添えて…oh!! PortionFace!!

…うん。古いよね。ごめんなさい。penどころかappleですらないって…。

 そんなこんなで無理矢理口に入れられ喉の奥に流された解毒薬。味はもちろん不味い。不味いというよりも苦い。まさに「にが虫を噛み潰したような顔」になっている。にが虫噛んで爆発しながら怪力の種飲んでたハンター凄いなぁ。

 

「あの時は私達の解毒笛で応急処置したけど、所詮は音。人の頭を毒から逃避させるように錯覚させることしか出来ないわ。ちゃんと演奏後に解毒薬飲まないと体に残った毒が再び暴れ出すのはよくある事ね」

「そうだったんだ…。ソフィアちゃんや娘ちゃんは?」

「チーがゆっくり寝れない程騒いでたから皆叩き出したわよ」

 

 騒いで真由香に怒られてつまみ出される団長や娘ちゃんの姿が容易に想像出来た。

 

「そうそう。貴女に会いたいって人達が居たわ。多分団長や加工屋と飲んでると思うから体動くようになったら行ってあげなさい」

 

 ウチに会いたい人?誰だろ?とにかく人を待たせるのはあまり好きじゃない。まだ細かい動きは不自由だけど立てるようにはなったから行ってみよう。

 自室を出てすぐ右。料理長ちゃんのかまどの火の前に人が集まっていた。

 

「お、漸く起きたかお嬢。調子はどうだ?」

「うーんそれがまだ毒で指先がうまく動かせないよ」

 

 真っ先にウチの登場に気付いてくれて安否を気遣ってくれた団長。やっぱりハンサムで男前すぎる…。

 団長の後には見慣れない3人組が居て、夜の暗さと炎の逆行が相まって顔が良く見えない。

誰だろう?と思った矢先、後ろから柔らかい腕で誰かに抱きしめられた。そして正面からも人が飛び込んで来た。

 

「おはようございますチーちゃん。気分は大丈夫ですか?」

「うわーん!チーちゃんが起きたァ!!もう起きないかと思ったよぉぉ」

 

 前から娘ちゃん。後からソフィアちゃん。もしもウチが男子だったら全世界のソフィアちゃん・娘ちゃんファンから背中を刺されるところだった。女の子同士だからゆるして?

 …ハッ!と我に返るソフィアちゃんは離れ、まだ抱きついて泣いてる「泣いてない!!」泣いてる娘ちゃんの頭を撫でる。するとすぐ後ろから声をかけられた。

 

「こんばんわ。初めまして、綺麗な星空ね。フフ…よく眠れた?」

 

 後ろを振り向くとそこには……髪がとても長く、顔の無い人らしき影が火竜砲を担ぎ、女性の声で油断させウチを食べようとしていた。

 

「キィィヤャオォォが無イィィアアァァァ!!?」

「フフ…驚かせちゃった?」

「ィイイヤャァァァァ!!ごめんなさいごめんなさい!!許してください!!悪霊退散っ!悪霊退散っっ!!!娘ちゃん清めの塩はやくぅぅう!!………ぅゔ。ヴヂがだにじだんですがぁぁぁ!!うわぁぁぁぁんん!!」

「あら?私幽霊だと思われてるのかしら?フフ…大丈夫、ちゃんと生きてるし顔もあるわよ。だから泣くのはもう終わりにしましょう?」

 

 待って待って!今誰かに肩叩かれてる!!すごい勢いで何回も叩かれてる!まるで格闘技のギブアップみたいな感じにすごい叩かれてる!!それに「苦しいぃ…」とか怨念の怨嗟の声まで聞こえるよぉぉうぅ!!?これ絶対振り向いたら食べられるぅぅ!!

 

「あー…リーダーこの娘軽いパニック状態になってるっスね」

「少し手荒だがパニックから覚まさせよう(バチン)」

「痛い!おデコが通常弾Lv.2で撃たれたかのように痛…アレ?」

「ちーちゃんはな、はなして…苦しいってばー!」

「わわっ娘ちゃん!?ごめんね首絞めてた!」

 

 どうやらギブアップタッチも苦しいと聞こえた怨嗟の声も全てウチが怖さで手元に居た娘ちゃんを抱き絞めてた事から出た言葉だったらしい。本当にごめんね?

 火竜砲を担いだ女性の顔無しお化けもよく見ればちゃんと顔のパーツがあって、褐色肌と竈の逆光の所為でそう見えてしまってただけだった。……うん?褐色肌?

 

「……もしかして筆頭ガンナーさん?」

「あら?私有名人?」

「てことは…そこの2人は筆頭リーダーとルーキー!?」

 

 嘘…。ゲーム画面から見るよりもかっこいい…。いやいや!それどころじゃない!()()()()()()()()()筆頭ハンター達が登場したの!?

 

「少し動揺は冷めた?」

「あ、え、は?……うん?ひぇ?!」

「あら、もう気付いた?それにこっちも気付くなんて、余程臆病で目が良いのね」

「……え?」

 

 さっきから気が動転してまともな返事をしていないけど、そんな中でも気になる物がいくつか見えた。そしてそれは筆頭ガンナーさんが用意した物らしい。

 

「あ、その、えーと?あの海に浮いてる的(・・・・・・・)と、さっきからガンナーさんの周りを飛んでる()()()()()()()()()はなんですか?」

「そうね。貴女の疑問をひとつずつ解きましょう。この周りに飛んでる蟲は導蟲(しるべむし)。最近ギルドが開発した蟲で、私たちハンターのサポートをするわ。基本的には群れないと見えないぐらい小さい上に、こんな暗い時間帯で見えるなんて。フフ、凄いわね」

 

どういった働きをするかを聞くと、蜂のように蜜を集めて受粉を手助けする訳でもなく、採取ポイントやモンスターまでの誘導、たまにフィールドに残っている痕跡から近くにどんなモンスターが居るかを教えてくれるらしい。

そんな蟲はウチは知らない…どういう事だろう?

 

「次はあの的の説明ね。腕の力は戻ってる?指は充分に動くかしら?」

 

 指先はまだ麻痺していて折り紙を折るような細かい作業は出来ない。手をグーパー軽く握る程度しか動かせないことを確認する。腕は…うん。充分に動く。その事をガンナーさんに伝えると加工屋さんのお兄さんに向けて何かアイコンタクトを送った。それに応じたお兄さんは何かを砂浜の上に運んだ。

 

「何か分かる?」

「えーと…ライトボウガンにヘビィボウガン。それに弓?」

「そう。俗に言うガンナー武器。団長さんから聞いたわ。貴女の性格や特徴。ライトボウガンから順にあの的を狙ってみて」

 

 さっきの確認はウチが引き金を引けるか。弓が引けるか。その確認だと理解する。しかし待って欲しい…あの的波で動いてるよ?それでも関係無くやれと申すの?これにはDI●様も満面の笑み。

 まずはライトボウガン。置かれたのは初心者向けの<クロスボウガン>。攻撃力104/反動大/ブレ無し。狙うは上下左右に動く直径1.5mの的。筆頭ガンナーさんに持ち方や狙いの定め方等は教わった。特別に可変スコープをつけてもらいスナイプする。使用する弾丸は通常弾Lv.1。引き金を引くと同時に弾の反動に襲われる。

 反動に備えていたものの、ハワイでお父さんに銃の撃ち方を教わったどころか、おもちゃのエアガンすら持ったことのないウチは想像以上だった銃火器のパワーに負け、「ぷぎゃ!」と奇怪な声を上げ尻もちをついた。

 

「フフ…初めてにしては上出来ね」

「え?そーなの!?私にはチーちゃん下手過ぎて外れた様にしか見えなかったよ?」

「じゃあ双眼鏡で見てみるといいわ。的の右端。きっと目が丸くなるわよ」

 

 娘ちゃんが団長さんから双眼鏡を借りて的を見ると、なんと弾丸は外角いっぱいギリギリのコースを射抜いていた。穴は半分ぐらいしか空いて無い程で、クロスボウガンだったからか、使った弾が通常弾Lv.1だったからか、将又あまりにも遠すぎて威力が落ちたのか、理由はどうあれ的は壊れてはいなかった。

 

「び、びっくりした…。すごい音出て撃った瞬間動いちゃったし、耳がまだキーンって言ってる…」

「ちーちゃん動いちゃったの?ならもう一回同じ的狙ってくれるかしら?」

 

 

 残響する破裂音でよく聞こえなかったけど、ガンナーさんまでもがウチを「チーちゃん」呼びしてるのと、「もう一回やれ」という注文が入ったのがかろうじて分かった。

もう一度クロスボウガンを持って構える。一回目で反動や音の大きさが把握できた。

 息を整えて銃の上下運動を抑え…。

───今です。そんな啓示が降りてきたところで引き金を引いた。火薬の着火による爆音からの心の揺れを最小限に留め、心理的ブレを無くす。

冴えた感覚が頭から全身に伝わっていた状態からの一発が必中であることは何故か当然の事だと思ってしまう程。

 ド真ん中!…とまでは行かなかったけど、かなり中心に近い位置に当たって的を粉々にした。

 

「波の揺れで動きが不安定…。そんな的に二度目で…。」

「わっはっは!こりゃ凄いな!なァ相棒、お前さんもお嬢の期待に応えないとな」

「あのコ凄いっスね!自分でも当てるのに4日かかったのに」

「そんなことよりワタシはリオレイアに襲われたことが心配だ」

 

 男性陣は固まってウチの腕を各々自分の子のように嬉しがり、女性陣はまた娘ちゃんが飛びついてきてソフィアちゃんがパチパチと拍手を送ってくれる。

 次に手に取ったのはヘビィボウガンの<ボーンシューター>。攻撃力120/反動中/ブレ無し。

 こちらのヘビィは前に使ったライトのクロスボウガンと違って反動中。これはさっきよりも扱いやすいのでは?そう思っていた時期がウチにもあったよ…。

 結論から言うとヘビィの反動中はライトの反動大よりも大きかった。多分原因は弾丸の大きさの違いなんだと思う。

 なんでも筆頭ガンナーさんに聞くと、この世界には<小カラの実>と<大カラの実>・<カラ骨【小】>と<カラ骨【大】>があるらしい。つまり、ヘビィ用の弾丸は大きい分火薬も沢山入っていて威力も反動も大きいって事……なんでそうなったの?

そんな疑問を残しながらも、なんだかんだでヘビィも2発目で的を射抜いた。

 そして問題の弓。…何度も言うよ?何度だって言うよ?ウチはモンハンに心も体も時間も捧げた身。中高どちらも部活なんて入らなかった…強いて言えばモンハン部には入っていた(会員登録無料)。つまり弓道なんてやった事が無ければ、弓にすら触ったことが無い。

 使う弓は<ハンターボウⅠ>。攻撃力72/放散型。

これまたガンナーさんに撃ち方を教えてもらったけど…結構弓の弦を引くのに力がいる。

 どんな軌道でどの様に飛ぶかは分からない。だけどガンナーさん曰く、イメージすることが大切で、必ず当てるという強い意志があれば矢は上手く的を射抜いてくれるらしい。

 張り詰めた弓から矢が発射され、重力に従いながらも真っ直ぐ飛んでいき……的に刺さった。

 

「あれ?1回で当たっちゃった…?」

「チーちゃん凄い!!」

「やっぱり貴女ガンナーの方が向いてるわ。どう?この機会にこっちに転職するのは?フフ…無理にとは言わないけどね」

 

 確かガンナーに向いてるとウチ自身も思う。

……けどなんか違う。そんな気持ちが心のどこかに引っかかっている。

やっぱり心のどこかで剣士で在りたい。大剣使いで居たい。そんな言葉達が自分の中で何度も反響し共鳴し始め、増強する。

 けれど一方で臆病なウチが肉を斬り裂くあの感覚を発狂しながら拒否をしている。

確かにガンナーになれば、引き金を引くだけで命を奪える。手には直接あのおぞましい感覚は入ってこなく、絶命の断末魔に耐えるだけで済む。……なんとも卑怯だと思う。

 

「……………」

 

 本気で悩む。これ程悩んだのは去年ボクっ娘と映画を見に行った時、実年齢料金では映画が見れない薄い財布で映画館に来てしまった事があって、プライドを捨てて子供料金で入るか、諦めて帰るか苦悶した時以来。

 

「───夢。見てからでもいいよね。お兄さん大剣1つ作ってくれるかな?」

「大剣!?ちーちゃん貴女に大剣の使用許可は…っ、加工屋さん?」

「素材と費用は今度でいい…。今余ってる鉱石で一番いいのを作る…。」

「ごめんねお兄さん。ソフィアちゃん、コンガの討伐クエストの受注お願いできるかな?」

 

 

 

 

 

 

カラカラに乾いた笑顔を見せる。

眼からは今にも透明な彗星が流れ落ちそうだ。

手は震え、心は揺らぎ、決壊しそうな愛。

 

 

体が理解を、精神が否定している/夢は叶う

 

この身体は大きくならない/いつか必ず大きくなる。

 

近接など出来ない/剣士こそハンターの花形。

 

残された道はもう1つしか無い/絶対に道は無数に拓ける。

 

……もう諦めよう/こんなところじゃ諦めれない

 

 

 

「……ランク:3。

クエスト名:コンガの討伐。

狩猟環境不安定。

クエスト受注者:○○○○。

───以上の項目でハンターズギルドの名のもとに、クエスト受注を承認します」

「ありがとうソフィアちゃん」

「尚、クエスト受注者によるギルド規定違反が発生しているため、本クエストでの責任はギルドには発生しません。何が起きようとも全て自己責任となります」

 

  武器の使用に身長制限があるなんて知らなかった。そしてそれを破ればそのクエストでは村八分。恐らく力尽きてもギルドが雇用したネコタクはやって来ない。つまりあのクエストで力尽きればエロ同人みたいになるかモンスターの餌になるかのどっちかになるということ。

 ゲームではクエスト受注後はマイハウスや他の村に移動は出来なかったけど、この世界だとマイルームぐらいは許してくれるらしい。部屋着から<ブレイブシリーズ>1式に着替える。

 ボックスから必要なものをポーチに詰め込み、料理長ちゃんのキッチンへと足を運ぶ。食事の組み合わせは魚と穀物。女帝エビをカラッと揚げたものをジャンボパンに挟んだバーガー。防御力があがって、猫飯スキル<ネコの防御術【大】>が発動する。

 

 最後に加工屋のお兄さんの元へと向かい武器を貰う。授けられたは大剣<バスターソード改>。攻撃力480の斬れ味緑。とてもずっしりと重く、今ある素材で作れる武器で最高の品だった。

 これを背負って走れない事は朝に経験積み。鞘の無い大剣を片手剣の様に納刀するのは走ってる途中にふくらはぎや腕を切りそうだからやめた。つまり常に抜刀状態で移動をしなくてはいけない。

 

「全く…命と夢。天秤をかけるには釣り合うかもしれないけどあまり好きじゃないわ。……けど命を懸けてまで夢やロマンを追う人は好きよ?それに応援したくなるわね」

 

 ジャギィ装備を身に纏った真由香ちゃんが横に立ってくれる。それだけで不思議と勇気を貰えた。峰を肩に掛け、米を担ぐように大剣を持つ。

 

「じゃあ……行ってくるね」

 

 まるで富士の樹海に手ぶらで行く様な感覚で原生林への道を歩む。草木を掻き分けキャンプへ到達。クエスト開始の信号弾を空に向けて放つ。……そこから先の記憶が酷く曖昧だった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 案の定負けた。それも下位のコンガ達に。

 この世界は私のFPS視点でしか物を見れない。誰が撮影してるか分からないTPS視点で視界が広がることは無い。故に後ろからの攻撃なんて見えるはずなかった。

 そもそも狩りのイロハは全てゲームで得た知識による独学。けどそれはあくまで理論だけ。実践経験なんて全くない。この日程戦国時代に生まれてればよかったなんて思った事は無い。嫌だけどね?

 

 ネコタクが来ない以上力尽きれば助けは無い。けど今回は見守ってくれた人達がいた。本来ありえない…いや、こっちの世界なら当たり前かもしれないけど同業者に助けてもらえたのが幸運とも呼べる代物。

 ウチの狩りを見守り、助けてくれたガンナーさん曰く、ウチの狩りする姿はまるで『ガーグァの性格をした幼体ティガレックスが蔦に嵌ったドスランポスの様に足掻いていた』と評価してくれた。

 

 ウチが覚えてるのは最初の2頭を相手にした時だけだった。

 溜め斬りのやり方なんて知らないウチはただ振り下ろし、薙ぎ払う事しか出来なかった。

 1頭目には気付かれてなかったから奇襲攻撃として後から右後脚に斬りかかる。

 振り下ろしたバスターソード改から肉を断つ感触が伝わり、返り血が降り掛かり、コンガの絶叫が耳の穴から鼓膜に突き刺さる。

 

()せ返る様な獣臭い血の匂いが辺りに充満し吐きそうになる。「ウッ…」と我慢出来ずに吐き気に負け、絶叫が聴覚を攻撃してたのもあって音爆弾を使われたナルガクルガの如く怯む。モンスター達はその隙を逃さない。

 

 今度はウチが後ろから奇襲される。

 もう1頭のコンガの突進が背中からクリーンヒットして逆「く」の字に曲がる。鈍痛が背中から扇形で全身に走り小さな体は吹き飛ばされた。

あまりの痛さに意識を手放しそうになったけどなんとか持ちこたえ、受け身を取る。けれど受け身をとった先には先程のコンガがお尻を構えていた。………え?お尻?

 

 あぁ…思い出した。ウチ…コンガの放屁で気を失ったんだ。それからガンナーさんに…。

 

「放屁でクエスト失敗って……泣きたい」

 

 今回のクエスト記録がウチの経歴に残るのであれば全力で消去しに行く。例えギルドハンターが出向く事になっても。

 

 

 

 ……けれどこれで決心がついた。この世界でどう足掻こうともウチに大剣は応えてくれない。ましてやハンターにも向いてない事の方が多い。

 

 

 

 

 

───それでもウチはハンターになりたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇガンナーさん」

「なぁに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チコ村の砂浜。皆に囲まれた中央でガンナーさんに膝枕されながら満天の星空を見上げ、放屁リタイアの恥ずかしさと悔しさを右八重歯で下唇を噛みながら堪え、彼女に問いをする。

 

 

 

 

『あれだよね。ウチから言わせてみれば、あんな遠くからチマチマ撃ってるガンナーはただのチキン。大体ヘビィのしゃがみ撃ちなんてハメ用コンテンツじゃん。サポガン以外のガンナーは逃げだよwww』

 

 そんな事を昔ボクっ娘に言ったことがある。今聞けば恥ずかしい話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もしも今、超常的事象以外で何か願いが叶うのであれば…この世界の全ガンナーからあの時の発言と、これからウチがその道を歩む事を許して欲しい。……そう願うだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ウチ、貴女みたいな凄いガンナーになれるかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頬を伝う透き通った蒼の流星。

貴女はそれに願いを込め、言葉にしながら祈ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ…そうね。私程度、アナタなら簡単に超えれるわ。……えぇきっと」

 








半年もお待たせしました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。