私は今日、久しく凄腕のハンターというものを見た。……違うわね。正確にはその原石。
その凄腕のハンターはまだ幼く、歳は20丁度らしいけど、その小さな容姿を見たら本当だとはすぐに信じれなかった。
今日はその子を連れて原生林の水辺へやってきた。目的はチコ村で待っている料理長のアイルーちゃんに『垂皮竜のお肉が欲しい』と依頼されたから。けど本質はこの子に実戦経験を与える為。
本当は知識だけで、自称ハンターだと言い張るこの子の鼻を折りたかった。まだハンターを名乗るのは貴女には早い。そう言いたかった。
その子は凄く体も心も小さくて、飛んできた虫にすら酷く驚愕する程。その分驚かないように周りを常に気にして、観察していたわ。
命を奪う行為にも抵抗を覚えてたの。最初採取ツアーに片手剣で行ってモンスターを斬ったらしいのだけど、肉を刃で裂く感触に耐え切れず吐いたらしいの。……優しいのね。
だから私は直接手を汚さない方法を提示した。そしてその子はその才があるのを知ったわ。
───そして今。ただのクロスボウガンで、通常弾Lv2で、意外とタフなあのズワロポスの急所を撃ち抜いて1発で絶命させたわ。…それも数頭連続で。
素直に戦慄したわ。
まぐれでそんな芸当出来るなんて有り得ない。もしも偶然なら、なんて豪運なのかしら。でもやっぱりこの子の中で命を奪う事に開き直れてなくてすぐに失神しちゃったわ。
私は水に頭が浸かっている彼女を抱き上て、信号弾を天に撃ち上げ、ターゲットの回収係として待機してるアイルー達に報告する。
今回は気絶しちゃったけど、実践練習に意味がある事が分かったのが1番の収穫ね。
あとはこの子には辛いことかもしれないけど、私達が生きるという事。ハンターとモンスターという弱肉強食の世界で互いに喰らい合う関係に慣れさせないと…。
この子には沢山の命を奪わせる。
『酷く非道な事を強要させている悪魔だ!』そう私を糾弾してもいいわ。だってこれしか方法が無いもの。
それに…この程度で躓く様なら私からこの子を見限るわ。だってハンターって職業は常に『"狩る"か"狩られる"か』なんだから。そんな命を狩りとる行為に躊躇を覚えてる自殺志願者をわざわざあんな死と隣り合わせのフィールドに出す筈がないじゃない。
ふふ…。優しい先生を演じるのはここまで。これからは問答無用で私の指示には従ってもらうわ。あの子が泣こうが叫ぼうが関係ない。全てはこの子を一人前のハンターにする為よ。
でももしも。もしもあの子が『もう辞めたい』なんて言い出したら止めないわ。だってそれを無理に続けさせる権利は私には無いもの。
………けど、その時は私がちゃんと責任を取らないと。
具体的にどうするの?……ふふ。そんなの決まってるわ。
彼女の両手の親指を切り落とすわ。2度と刃も銃も持てないようにする為に。
だってそうするしか無いのよ?生半可な戦い方を教えたまま中途半端に解放したら、まだ3割しか教えられてない戦闘知識でフィールドに出るもの。えぇ、あの子なら確実に。
そうなったら絶対と断言出来るほど、あの子は命を落とす。そんな辛いことさせたくないのが人の心であり、私が彼女の先生としている間にやってあげれること。言わば最後の良心。
この事はあの子には言わないわ。言わなくても分かってるはずだもの。ふふ…フェアじゃない?そんなこと知らないわ♪ ハンターを1度志したならその位のリスクは必要だもの。
私色に染まるか、あの子だけの色を出すか。
ふふ…。これからとっても楽しみね。
◆◇◆◇◆
目が覚めるとまたいつもの天井があった。この光景にはもう慣れたよ。……けど時折前の天井が恋しくなる。
マイハウスの出入口から差し込む光は薄いオレンジ。また夜だ。また気絶しちゃったんだ。
特に外傷も無く気分は悪くない。頭がまだ少し湿ってる。指先が震えている。体があの時の反動を覚えている。
「うっ…ぉぇ……」
記録された記憶が蘇り、胃酸が逆流する。吐き出す前にベットの横に置かれた空っぽの桶を見つけてその中に吐瀉物を捨てた。きっとガンナーさんがこうなる事を予測して置いてくれたんだと思う。一緒に置いていた布で口を拭いてベットに戻る。
右腕を目の上に持っていき目を閉じる。……ダメ。目を閉じたらズワロポスの悲鳴が聞こえてきちゃう。多分このまま横になっててこの精神は安定しない。だから向こうに行こう、きっとソフィアちゃんや娘ちゃんが居ると思うから…真由香ちゃんはどこにいるの…?
今まで知らなかった孤独と不安が襲ってきた。それらから逃げるように布団から降り、早歩きでマイハウスから出た。
かまどの炎。明るく辺りを照らしているその光がウチの精神安定剤になりつつある。そこに集まるみんなの影。その中でガンナーさんを見つけて歩み寄る。そして頭を深々と下げた。
「ガンナーさんごめんなさい!また気を保てなかった…」
「ふふ…いいのよ。でも次からは私は助けないわ。遠くから見てるだけ。自分で判断して、自分で自分を守るの」
「でもウチまだ全然ガンナーさんから戦い方を教えてもらってないよ…」
「ガンナーなんて特に教える事は無いわよ。構えて、撃つ。撃ったら逃げてリロード。全部見てるから終わったら反省会。それがこれからの方針」
た、たしかにそうかもしれないけど…。ひたすら頭に抜刀溜め3を入れるだけの脳筋な立ち回りしかやってこなかったウチにガンナーの立ち回りなんて全然わかんないよ。
そもそもガンナーさん居なくなったらウチ独り…まだ無様に負けるビジョンしか見えない。
せめてもう1人……真由香ちゃんがいれば…あれ?あのそういえば真由香ちゃんってどこ行ったの?最近見かけてないけど…。
「そうそう。あと三日したら真由香がニャンターから帰ってくるからそれまでにあの子を唸らせるような実力付けておかないと。ふふ…きっとびっくりするわ」
「にゃ、にゃんたー?」
「あら?……ふふ。ちーちゃんでも知らない事ってあるのね」
この世界に来て2度目の聞き慣れない単語が出てきた。「にゃんたー」って何!?
「ニャンターはハンターのアイルーバージョンよ。
3年前かしら?とあるベテランオトモが主人のG級ハンターをクエストで失ってね?仇を取りたいから行かせて欲しい!って大老殿で懇願したのよ」
「で、でもオトモちゃんだけって流石に……」
「それを許したのよ。一番偉いおじいちゃんが。そして無事にオトモアイルーはモンスターを討伐して帰ってきたの。そこからだったわ、ニャンターという職業が生まれたのは。よく考えてみればアイルーだって元は野生の種族。狩りを行う事はなんら不可能ではなかったわね。…あの子はニャンターの中でもかなり優秀よ。……だからこそ前の主人のことが…」
真由香ってそんなすごいんだ…。
実力ある故の挫折…実力でも挫折じゃないね。実績持ち故の救えなかった時の無力さを痛感しちゃう。
『分かるよ。辛かったね』なんて言葉をあの子には掛けられない。だってウチはそんな誰かから認められるような物は持ってないし、その時その現場にいなかった。……それにその言葉程鋭利な爪になる事をウチは知ってる。
「ほら、噂をすれば帰ってきたわ」
そう言われて村の入口を見ると、そこには血塗れの真由香が疲れた様子でヨチヨチと歩いてきていた。
血には慣れたとは言え、まだ少し抵抗のあるウチは真由香の心配をするよりも先に「ウッ…」と頭に過ぎりってしまい、精神の自己防衛を優先してしまった。
そんなウチの様子が遠目からでも分かったのか、彼女は笑顔を作って優しく語りかけてきてくれた。
「大丈夫よチー。全部返り血。傷はないわ」
「うぅ…ありがと。大丈夫だった?」
「傷は無いって言ってるじゃない。…まぁ大丈夫よ。私があんなお猿さん相手に遅れを取るとでも思ってるのかしら?」
うん?お猿さん?
なんのことだろう?と思考を巡らせていると、真由香に続いて村の入口から「ニャーニャー」アイルーちゃん達の声が聞こえてきた。けれどどこか普段の声とは違い苦しそうだった。
そしてその苦しそうな声をしている原因が見えた。
大型のネコタクシーに積まれた桃色の獣。それを十数匹のアイルーちゃん達だけでロープなどを使い引っ張っていた。
荷台に乗っているソレをウチは知っている。
桃色の毛で覆われた大きな体に立派なトサカ。何処と無く漂ってくる悪臭の匂い。
匂いは初めて嗅ぐけど、鼻が曲がりそう…。
「あら?ババコンガの討伐依頼なんて来てたかしら?」
「別に…管理人ちゃんがぶつくさ言ってるの思い出したのと、散歩してたら喧嘩売ってきたから買っただけよ。それにチーにもこのあとの処理体験させなきゃでしょ」
「ふふ…気が利くわね。でもいきなりアレはちょっとキツイと思うのは私だけかしら?」
「最初にどギツイのやらせてあげる方が後々楽よ」
「そういうことで…ちーちゃんハンターナイフ持ってこっちに来なさい」
あぅ…なんてスパルタ。さっき失神してしまったばっかりなのに直ぐにモンスターの解体をしろとか……でもこんなこと言ってたって仕方ないよね。………おぇ…。凄いうんちと血の匂いが混ざって……うっ…。
「そうね…。それじゃあまずトサカを貰いましょうか。なるべく極彩色の付け根から刈り取って貰えるかしら?」
ババコンガのトサカ。通称「極彩色の毛」黄色いアイコンのアレ。トサカは植物の樹液…人間で言うワックスでカチカチに整えられてて、水に浸からせながら強く優しく揉みほぐしてあげると一級品の糸になるらしい。なんか凄い服の素材として人気で需要が高いんだね。その作業は娘ちゃんがやってくれるらしいから私は恐る恐るトサカの先端を握り、根元をハンターナイフで裁ち斬った。う~ん多分80点。ババコンガの頭の方を見るとまだ極彩色の色が残っている。もっと根元からでよかったのね。手に持っている三角錐の毛を水が張られた桶を持った娘ちゃんに渡す。
次は毛皮を剥ぐらしいけど…え?待って?ウチケルビすら解体やったことないよ?初めてがこんな大きくて臭いゴリラなの?…スパルタすぎるよ……。でもどうやって毛皮剥ぐの?魚の皮引きとは違うよね?
そんなことを思っていると奥から加工屋お兄さんが大きな斧をもってやって来た。なんかあの大きな斧で手首足首を切り落とすんだって。スラッシュアックスとかチャージアックスじゃなくて普通の大きな斧。童話でおじいちゃんが薪を割ってそうな斧だよ?
加工屋お兄さんがババコンガの手首足首を切り落としたらウチは手の切断面から脇の下にまでに一本、足の切断面から脛・膝・前面の太ももを通るように腰まで一本、お腹の黒い筋肉との境目に一本切れ込みを入れる。
そうしたらあとは力いっぱい端から引っ張るだけ。皮と肉の接着が強い時はナイフで剥ぎ剥ぎする。取れた毛皮はこれまた水の張られた大きな桶を持った娘ちゃんに引き渡す。……そして目の前には文字通り丸裸になったババコンガが…おゅっ…。キモイグロイグロイきもい。想像の100倍吐き気がとめまいがする。皮膚の下にある欠陥が千切れることで出血し、血の匂いが充満する。
更に次はさっきお腹に入れた切込みに沿うように、もっと深々とナイフを入れて、お腹の黒い筋肉の殻を外してお腹を開く。討伐した後、ここに運んでくる前に頸動脈を斬っていなかった所為か血は多く残っていて、首元にナイフを入れた瞬間、大きな血管に穴が開き、血が噴き出た。うっぐ……!臭い…!鉄の匂いなんかじゃない。魚の胃袋の中で小魚が消化されかけのような生臭さの二乗のようなヘドロ以下の匂い。
なんとか黒い部分は外せたものの、手が尋常じゃないほど震えてる。まともに呼吸もしてないし、どうやって呼吸してるのすら考えられないほど頭の中がぐちゃぐちゃにかき混ぜられてる。
そんな様子をはっきりと確認しているはずなのにガンナーさんの指示は止まらない。なんと次はこの臓物の海に手を突っ込んで食道を探し出し、なるべく上の方で断ち切れと言ってきた。もう思考回路がショートなんてレベルじゃないよ。シュレッダーとか粉砕機にかけたように基盤自体が粉々になってる。変な笑いも出てきた。
生暖かいような冷たいような熱いような。わかるのはとてつもなく柔らかいものがウチの手に触れていることと、グチャグチャヌチャヌチャと鼓膜どころか聴神経をキャベツの様に千切りにしてくる音が聞こえてくるのと、真っ赤に染まった海で形容すらしたくない海産物が蠢いてることだけ。
中々目的のものが見つからず、グニャグニャに屈曲した視界でガンナーさんを見つめると、あろうことかウチの手を掴んで、この腐敗した腐海に引きずり込んだの。自分の意志で触っていない気持ち悪い感触が肘から先で乱反射して、肘より奥に伝わる。そして人差し指と親指の間に何か細い管のようなものが嵌った。その状況を察知したのか、私の手首を掴む腕が横向きに力を入れる。すると親指と人差し指の間でチェロをしごいている感触が伝わり、2秒もしない内に人差し指の第二関節で天井に行き当たったのが理解できた。
天井から少し離れ、第二関節と天井の間にナイフを入れる。力なんて入らないから切れるはずもなかったけど、ナイフの切れ味が良かったのと、手の震えのおかげで管を斬ることが出来た。……そして切れたことに安堵し、掴んでいたものを放してしまった。
───嗚呼…ウチの馬鹿。ホント馬鹿。死ねばいいのに。このババコンガに代わって解体されればいいのに。
放してしまって見失った目的のものを、再びこの海の中からサーチしてサルベージしなきゃいけない。後ろのギャラリーから「あぁ~…」と落胆の声が聞こえた。ねぇ見てないで手伝ってよ?ホント…ホント無理。助けてよ……。
そんな願いを叶えてくれる神様なんてこの世にいない。泣きながら、叫びながら、もう出るものが入っていない胃袋の中身を捻り出しながら、ウチは必死に手放してしまった物を探し出して引き上げた。
流石に内臓物にアナフィラキシーショックの10倍ぐらいの拒絶反応をしているウチを見て、これ以上ウチにこの内臓の作業をさせるのは無理だと判断したのか、真由香が猫の手なのに器用にナイフをもって直腸を肛門から切り離した。デロン…とお腹から零れたモノはこれまた娘ちゃんが大きい桶に移して持って行った。
あとは首を落とせば料理長ちゃんがやってくれる…はずもなかった。お肉の取り外しまでウチがやるらしい。ガンナーさん曰く首を落とすコツは関節が狙い目らしい。骨にいくら刃物を突き付けても切れることはなく、関節にナイフを突き刺して、梃の原理で分離させるらしい。でもやっぱりいくらハンターとは言えモンスターの関節にナイフを突き刺す事なんてできないから、関節の境目にナイフを置き、柄をハンマーで叩くんだって。もう訳が分からない。
20㎏はありそうなババコンガの頭はゴロンと転がり落ちて、残ったのはなんだかよくわからない肉塊だった。
「ふふふ…ここが人でいう大腿四頭筋。これが下腿三頭筋で、三頭筋の中でもこっちがヒラメ筋でこっちが腓腹筋。牙獣種の大殿筋なんかはとてもおいしいわよ?ババコンガだとお腹を張って勢いよく地面に叩きつけて得物をプレスする習性もあるから広背筋や僧帽筋、腕を上げる前鋸筋の部位とかもおいしいわよ。首筋にある胸鎖乳突筋なんかはジャーキーにすると噛みごたえがあってイイわ。なるべく大きく切り分けてね?」
極限状態のウチの耳元でなにやら楽し気に語る何かがいたのは薄っすらと覚えていた気がするようなしないようなよくわからないけど、目の前がまた真っ暗になったのは覚えてる。
◆◇◆◇◆
今度は丸2日寝ちゃってたらしい。
なんかもう恒例行事と言うか、様式美というか…。お腹空いた。
相変わらずウチが気絶して、次に目を覚ます時は真由香が横で看病していてくれてる。今回はモンスター図鑑とかを見て勉強中らしい。…アイルーも本読むんだ。
ベットから降りると貧血で倒れそうになる。急に立とうとしたからかな?真由香はウチをベットに座らせて、持ってきた水を飲ませてくれた。一昨日の事が昨日のように鮮明にフラッシュバックする。…寝てたから昨日の事なんだけどね?
深呼吸して、二度寝する。珍しく真由香もウチの胸元に入ってきた。…猫飼ってたらこんな感じなのかな?ゴロゴロ言いながらウチの体に顔をスリスリしてくる。可愛い。
「………臭い!ちー臭い!!水浴び行くわよ!!!」
…傷付いた。流石に同性とは言っても、そんなインハイどストライクなデッドボールは辛いよ?もっとマイルドにオブラートに包んで言お?
そんなこんなで水浴びに連れてこられた。…アイルーって水嫌いじゃないの?アイルーは猫じゃないって言ってたけど、猫のようなものだし…個体差あるのかな?
ボトルのキャップを開けてシャンプーを頭にかけられて肉球のついた手で洗われる。…自分でも洗えるのに。相当臭くて真由香自身が納得が行くまで自分の手で洗いたいらしい。潔癖症なのかな?
……でもなんかすっごい癒される。まるであの変態ボクっ娘に洗われてるような…。今頃何してるのかな…?
髪の匂いは取れて、まるで採取クエストを50分間やり遂げたかのような充実感を出している真由香。流石に体は自分で洗おうとしたけど、頑なに背中を流させてと頼まれた。……ここでウチは理解した。これは多分狩りが終わった後、真由香と…真由香の前のご主人が毎回こんな風に血の匂いを落とすために洗いあっこをしてたんだって。……だってこの子がウチの目はまるでウチを見てるようで、ウチじゃない何かを見てる。目に光なんか止まっていなく、何か妄執に取り憑かれているようだった。それがなんか腹立って気に入らない。さっきまでは何ともなかったのに。
───だけど何も言えなかった。
きっと辛いんだね。悲しいんだね。真由香が一番幸せだったであろう時間を過ごせるなら、今だけは付き合ってあげよう。…そんな気持ちは同情からくる最低な物だった。
水浴びから戻ってきたら料理長ちゃんがご飯を作ってくれていた。今日のメニューは桃毛獣のフルコース。
<
<ババコンセンマイとジャンゴーネギの炒め物>
<ババコンガの黒腹肉のシチュー>
<ババコン……。
臭み抜きで丸一日かかったんだって。それにしても多いね?一人前が2ndGの豪華飯の1.5倍ぐらいあるよ?これ絶対ババコンガ一体分じゃないよね?なんだか怖くなって真由香に聞いたら「私じゃない」って一言。あぁやっぱり一体分なんだね…。
そう思った矢先後ろから「あ!おはよーっス!!やっと目が覚めたっスか!!」と手をぶんぶん振りながら歩いて来る筆頭ルーキーさんが居た。その顔には私が気絶する前と比べて、何かやり遂げたような、溜まってた鬱憤を晴らしたような清々しさがあった。……昨日新たに1頭狩ったんだね。そういえばウチは二日寝たのに臭み抜きに
兎に角、今はお腹が空いてる。食べなかったら筋肉が落ちて、また砂浜ダッシュしないといけなくなりそう。学ばないといけないことが沢山あるのにそんな無駄な時間を使ってる暇ない。1分でも早くご飯にありつかないと…満面の笑みをしたガンナーさんの手が迫ってきそう。
「……いただきます」
手を合わせ、その言葉を口にする。
この世界に来てから「いただきます」の6文字が如何に重みのあるものかを知った。これは元の世界に居たら絶対に知ることの無い感覚。
カロリー計算とか全然気にしない。とにかく食べよういっぱい食べよう。どうせこの後死ぬか痩せるかなんだから。
料理長ちゃんが本当に上手に臭み抜きをしてくれたおかげで、獣臭さなんてものは全然ないし、硬そうと先入観を持っていた黒いお腹の肉は、ホロホロ崩れるぐらい柔らかかった。料理長ちゃん曰く、1番外側の部分は皮引きの要領で切り取り、残った部位を1日以上かけて圧力鍋で煮るらしい。おいひい。サル?ゴリラ?のお肉ってこんなにおいしいの?
……でも汁物はいつもスープ。今回のはテールスープ。美味しいよ?こっちもお肉ホロホロでおいしいんだけど…
「はぁ…お味噌汁飲みたいよ…。味噌があったら味噌ラーメンとか食べれるんだけど、この間料理長ちゃんに聞いたら『ミソ?なんニャルかそれは?』なんて言ってたんだよね。…○本さんなんで味噌の概念組み込んでないの?塩派なの?もしかして塩派なの?ゼヨゼヨ船長と会えたら知ってたりしないかなぁ…」
あれ?4Gの世界にゼヨゼヨ船長出てきたっけ?もう大老殿しか行ってなかったから覚えてないんだよね。だってあのゲームゴリラ狩るゲームなんだもん。こんな事言ってるけど、気づけばこの世界に来てもう結構経ってるんだね。
…帰りたいなぁ。好きな世界に転生……死んでないから転移の方が正しいのかな?とりあえず大好きなモンハンの世界に来たんだから楽しもう!なんて精神はウチは持ち合わせていない。だってこんなちっぽけなウチがあんなバケモノに勝てるはずないじゃん。3回ぐらいフィールドに出て全部気絶してたけど生きて帰ってこれたのは奇跡そのもの。仮にウチがゴリゴリマッチョの厳つい戦闘狂な漢だったら話は違ったかもしれないけど、所詮ウチはビビりなか弱すぎる女の子。そんな無力な存在がこんな世界に居続けたいなんて死にたがりではないよ。
──それに大切な友達残してきちゃったからね。あのボクっ娘がこの話を聞いたらどう思うかな?帰ったら自慢しよ。あの羨ましがる顔が何とも言えない可愛さがあって定期的に見た…い……。
「…………会いたいよ。どうして追っかけて来てくれなかったのよ…貴女の大好きなウチとモンハンが一緒にあるのに何で居ないのよぉ…」
あ、あれ?料理長ちゃんにして珍しいなぁ。スープの塩加減間違っちゃったのか?すごく…すごい、とってもしょっぱいよ。それに喉がキューって感じな異常を感じる。喉の高さを絞めつけるようなスパイス使ってるんだね。それも分量かなり間違えてる…。
ホント…ホントに…。どうしてこんなに…なんでなの……。
あぁダメ。早くこのスープを飲んでしまわないと、せっかく整えてくれた極上のテールスープがまずくなっちゃう。ホント…不味くなっちゃうから早く飲まないと。飲まないとダメなのに…娘ちゃんとかソフィアちゃんとかみんな居て楽しい食事なのに、二日ぶりのご飯でお腹空いてるはずなのに…全然ご飯が喉を通らないよぉ…何で居ないのよ…いつも見たいに勝手にウチの部屋に入ってウチの布団に潜り込んできてよ…。ねぇ…今何してるの?
長期間空いた癖に何一つ進展してませんが、一応私は生きてます。生きてる限り書くので頑張ります。