遊戯王5D’s もう一人のデュエリスト   作:ナタタク

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第百十話 約束

「(自然と・・・この場所に足を運んでしまったな・・・。)」

WRGP決勝の前日、ヒイロは旧サテライト付近の荒野に足を踏み入れていた。

ゼロ・リバースの原因となった旧モーメントが近くにあって、縁起が悪いためか、未だに開発は進んでいない。

ヒイロはルカスが死んだ場所に石を置いた。

「ルカス・・・。すまなかったな。今までここに来なくて・・・。」

近くの岩場に腰掛け、龍可が作った弁当を食べ始めた。

「ルカス。龍可が、俺の恋人が作ってくれた弁当だ。」

弁当の中から、おにぎりを1つ出すと、それを石の前に置いた。

「本当なら、お前に紹介するために龍可もつれていけばよかったが・・・・。」

ヒイロは唯一ルカスのことを知る龍可を連れてこなかった。

彼女を苦しませたくないのもあったが、何よりもルカスと2人っきりになりたかったからだ。

ヒイロは彼と一緒に生きた5年間のことを思い出した。

 

3才の時、ヒイロは両親を強盗に殺害された。

治安の悪いサテライトでは、強盗は珍しくはなかったが、殺人に発展するのは全くレアなケースだ。

そして、孤児となったヒイロを引き取ったのが、ルカスだ。

彼が最初に自分に掛けた言葉をなぜか未だに覚えている。

「寒いか?」

ルカスは着ていたコートをヒイロに掛けた。

そして、彼を引き取ってサテライトで生きる術を教えた。

デュエル、パルクール、傷の応急処置、カップラーメンの作り方・・・。

子供っぽさと父親のような優しさを併せ持つ彼に、ヒイロは自然と懐いた。

その子供っぽさが原因で、ヒイロはいまだに彼のことを父親と呼べずにいるが。

7歳の時に、ルカスは突然、自分の過去を話してくれた。

「俺は20年前に旅を始めたんだ!」

「え・・・?どうしたの?突然・・・。」

「おいおいアルスー・・・。もうちょっと興味津々になってくれよー。お父さん寂しいぜ・・・。」

「分かった分かった。じゃあ、教えて。」

その頃のヒイロは今とは違い、明るくて笑顔の多い少年だった。

「旅に出た理由は田舎にずっといるのが嫌だったことと、世界を自分の目で見たかったからだ!!イギリス、フランス、ロシア、ルーマニア、インド・・・。いろんな国に行ったんだぜ!ま、今はサテライトで一時旅は中断してるけどよ。」

ルカスは大好物のおにぎりを食べながら、旅の思い出を話した。

その時のルカスは本当に楽しそうで、その頃のヒイロの夢はルカスと一緒に旅をすることだった。

しかし、ルカスの死でその夢は消え、ヒイロは自らの名前とともにその明るさを捨てた。

 

「ここにいたんだ。」

「何・・・?」

ヒイロは振り向くと、そこにはなぜか龍可がいた。

「なぜここが分かった?」

「きっと、ルカスさんのところへ行くと思って・・・。それで、発信機を・・・。」

「発信機・・・?」

ヒイロは衣類を調べると、ジャケットの襟の死角になる部分に小型の発信機がついていた。

「・・・。敵わないな。」

ヒイロは小さく笑むと、石の前に立った。

「ルカス。紹介する。俺の彼女の・・・・龍可だ。」

「初めまして。ルカスさん。」

龍可は笑顔でルカスにあいさつをした。

「龍可・・・。」

「何?ヒイロ。」

「正直に言う。俺は怖い。明日の戦いで、もし・・・。」

ヒイロは続きを言おうとした瞬間、龍可に唇をふさがれた。

「大丈夫よ。ヒイロ。みんな、絶対に勝って、生きてこの町を守るわ。それに、どんなことがあっても、私はヒイロのそばにいる。それだけは約束する!」

「・・・。」

ヒイロは何も言わずに、龍可を抱きしめた。

 

「うん・・・・。」

翌日、自室でヒイロは目をさまし、机上の昨晩作り直したばかりの今できる最強のデッキを手に取った。

「(この戦いで決着がつく・・・。勝って未来をつかむか・・・負けて運命に従うか・・・勝負だ。)」

ヒイロは準備を整えて外に出た。

目指すはダイダロスブリッジ、チーム・ニューワールド、イリアステルとの決戦の地だ。

運命に従うか・・・未来をつかむか・・・?




次回からいよいよ決勝戦開始!!
機皇帝を打ち砕くことができるのか・・・?
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