遊戯王5D’s もう一人のデュエリスト   作:ナタタク

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第百二十一話 希望

「う・・・・・うう・・・・。」

ヒイロが目を覚ますと、そこは旧モーメントの壁だった。

彼はそれのわずかな凸凹に捕まって、気を失っていたのだ。

「まったく・・・悪運だけはあるようだ・・・。俺は・・・。」

体を簡易的に調べると、大きな怪我は確認できなかった。

ヒイロはそのまま下へゆっくり降りていき、瓦礫の山に到達した。

そこには、ボロボロになって目を閉じているアポリアがいた。

「アポリア・・・。なるほど、ジャックたちを止めることができなかったようだな。」

「・・・・。ヒイロ・リオニス・・・。」

アポリアは急に目を覚ましたが、ヒイロは別に驚きもしなかった。

「なんだ?」

「私は・・・今まで絶望ばかり目を向けていたために、自らが抱いている希望を見落としていたようだ・・・。」

「何・・・!?」

ヒイロは絶望の代名詞ともいえる存在であるアポリアから意外な言葉を聞き、かなり驚いた。

「私は親を失い・・・恋人を失い・・・崩壊した世界にたった一人取り残された・・・。」

自分の目の前からいなくなってしまった人々の顔がアポリアの目に浮かんでは消えて行った。

「少年の姿を見て、思い出した。」

「龍亞の?」

「そうだ。絶望のどん底に叩き落としたにもかかわらず、そこから這い上がってきた・・・・。」

「そうか・・・。」

ヒイロは自らの義弟の成長を静かに喜んだ。

「私は・・・確かに失ってばかりだった・・・。しかし、肉体を失った今でさえ、ロボットとなって生きている・・・。それは・・・絶望の中で希望を持っていたからだ。それを今になって思い出すとは・・・。」

アポリアは起き上がろうとするが、両足が悲鳴を上げ、すぐに倒れてしまった。

「行かなくては・・・Z-ONEの・・・私の友の元へ・・・。」

「その足でか?」

「思い出してほしいのだ・・・・。彼にも・・・希望を・・・。」

「・・・。待っていろ。」

ヒイロはがれきの中からまだ使えそうなパーツを集め始めた。

そして、アポリアの横に移動した。

「何をするつもりだ?」

「お前の脚を直す。この状況では慰め程度にしかならないだろうが・・・。」

「分かるのか?」

「わかるわからないの問題ではない。どうしても、お前が他人のように思えなくてな。」

ヒイロは試行錯誤しながら、アポリアの脚の修理をした。

「俺は・・・赤き龍に導かれたのか、お前の過去を見た。あんな状況の中でよく自殺しようと思わなかったな・・・。」

「・・・・!!まさか・・・お前が死の直前まで私の頭の中に・・・。」

「俺は幼少のころに両親と養父を殺されてな・・・。何もできなかった自分を何度も呪った・・・。だが、マーサハウスで遊星たちと出会ったことで、変わることができた・・・。」

ヒイロはマーサハウスでの日々を思い出した。

自分には他人とかかわる資格がないと思い続けた日々・・・。

そして、クロウから何度も声を掛けられたのをきっかけに、遊星とジャックとも不可抗力でかかわることになり、いつの間にか恋人ができ、多くの仲間ができた。

「(結局・・・前を向いて生きるしかないということか・・・。)終わったぞ。」

「・・・・。」

アポリアは立ち上がった。

脚へのダメージは完全に回復していないが、立って動くことくらいはできるようになった。

「感謝するぞ・・・。ヒイロ・リオニス。」

「だが、無理はするな。完全に治ったわけでは・・・。。」

「(ヒイロ・リオニス・・・。)」

「!?」

急に周囲の時が止まり、闇に包まれた。

「・・・。ダークネスか・・・。」

「ヒイロ・リオニス・・・。汝は消滅させねばならない・・・。」

「・・・・。」

ヒイロは声が聞こえた方向に目を向けると、その方向には旧モーメントがあった。

右腕に戻ってきた痣の力がヒイロの視力を強化した。

その膨大なエネルギーの流れの中には山羊のような形状の頭蓋骨に人間の外骨格、そして漆黒のローブを纏い背中には左右非対称の位置にある5枚の翼を生やした邪神を連想させる存在が眠っていた。

そして、、旧モーメントの上部に人一人が入れるくらいの亀裂がある。

「どうした?ヒイロ・リオニス。」

「・・・!?」

急に周囲の時が動き始めた。

「アポリア・・・。ここからZ-ONEの元へ向かうための道は・・・?」

「あの道だ・・・。」

アポリアが指差した方向に、ぼろぼろで巨大な螺旋階段が現れた。

「先に行ってくれ。後から行く。」

「なぜだ・・・?」

「ストライクチェイサーを探す。おそらく、近くにあるはずだ。」

「・・・。分かった。Z-ONEのところで待っているぞ。」

アポリアはそういうと、ゆっくりと階段を上って行った。

彼の姿が見えなくなったころになって、ヒイロはようやくがれきの中からストライクチェイサーとスタッグを見つけた。

「半分・・・嘘をついてしまったな・・・。」

ヒイロはストライクチェイサーからデュエルディスクを取り外し、場に置いたままになっているカードも回収した。

そして、壁をよじ登り、旧モーメントの真上に到達した。

やはり、そこには亀裂があった。

「(ヒイロ・リオニス・・・。アーク・クレイドルが地表に到達するとき、犠牲となる人々、そしてその惨劇を見る人々から膨大な絶望が・・・心の闇が発現する・・・。旧モーメントが蓄えたルドガー・ゴドウィン、そして未来人の心の闇とは比べ物にならぬくらいにな・・・。)」

「ダークネス・・・。」

「(そのエネルギーがあれば、虚無の世界を生み出すことは容易い。だが、汝のような存在は我が世界にふさわしくない。)」

「そうだな。俺もお前は今のこの世界にふさわしくないと思っていたところだ。決着をつけるぞ。」

「(ならば・・・飛び込め。この中に・・・。)」

「言われなくてもな・・・。」

モーメントの流れの中に飛び込むと、普通の人間は無事では済まない。

だが、命の石と不完全なシグナーの痣を持つヒイロなら多少のダメージはあるだろうが、中でも活動できる。

ヒイロはためらうことなく、その亀裂から旧モーメントの中に飛び込んだ。




そして、ヒイロはたった一人で決戦の舞台へ・・・。
ヒイロとダークネス・・・。
はたして、勝利するのはどちらか・・・?
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