遊戯王5D’s もう一人のデュエリスト   作:ナタタク

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第十二話 破滅

「・・・。」

大雨が降る夜、ヒイロは眠れずに、ダイダロスブリッジの近くに立っていた。

ダイダロスブリッジ・・・かつて、サテライトとシティをつなごうとしたDホイーラーが作った未完の橋。

「・・・。あれから・・・・3日か・・。」

あれから、クロウとジャックは鬼柳に会っていない。

ヒイロもそうだ。

遊星は何度か鬼柳の様子を伝えに来た。

どれも同じような内容だったが、一つだけ気になる言葉がある。

「鬼柳は、セキュリティ達がデュエルギャングたちを拘束しているのを見て、目の色を変えていた。」

「・・・。鬼柳・・・。」

「おい。風邪ひくぜ。」

クロウがぼろぼろになっている傘をさして近づく。

「・・・。」

「・・・・。鬼柳のこと・・・心配なんだな。」

「・・・なぜそう思う?」

「そりゃ・・・お前とは長い付き合いだからな。」

「長い付き合い・・・か・・・。」

ヒイロは今まで思い出した記憶を呼び起こす。

 

5年前、夫と息子の墓参りに来ていたマーサは、ある少年を見つけた。

マーサは、ゼロリバースで夫と息子を失っている。

彼は緑のタンクトップに青いボロボロのジーパンという姿で、マーサの夫の墓にもたれていた。

そして、そのそばにはデュエルディスクとデッキがある。

彼の第一声はこうだった。

「・・・。そのパン・・・食べていいか・・・?」

彼は墓に備えられているパンに指差して言った。

マーサは目を丸くしたが、しばらくしてからこういった。

「これは私のものじゃないよ。私の夫に許しをもらうんだね。」

それを聞いた少年は、すぐにパンを食べてしまった。

「・・・。いいっていってもらえたのかい?」

「・・・。死人に口なしだ・・・。」

少年の瞳は輝きがなく、ただ死を待っているようだった。

「あんた、私のところに来ないかい?私のところにはあんたみたいな子がいっぱいいるよ。一人増えたところでどうってことないさ。」

「・・・。」

少年は何も言わない。

「ま・・・・無理強いはしないよ。好きな時においで。私はマーサ。あんたは?」

「・・・。名無しだ・・・。」

「名前がないのかい。困ったねえ。名無しって呼ぶのはかわいそうだし・・・。」

マーサは困った顔をしながら息子の墓を見る。

そして・・・。

「じゃあ・・・今私が付けてあげるよ。あんたの名前を。」

「・・・。名前・・・?」

少年はゆっくり立ち上がってマーサを見る。

「ヒイロ。今日からあんたの名前はヒイロだよ。」

 

「・・・。5年・・・だな。俺たちがあってから。」

ヒイロはマーサハウスに来て、そこで遊星、ジャック、クロウと出会った。

ヒイロは最初、だれとも会話をすることがなかった。

しかし、デュエルをきっかけに人とかかわるようになる。遊星たちと仲間になった。

そして、1年前には鬼柳が加わり、ヒイロの周囲はさらににぎやかになった。

「なあ、ヒイロ。鬼柳の奴、大丈夫だよな?」

クロウはヒイロに問いかける。

「・・・。」

ヒイロには何も言えなかった。

どういえばいいのかわからなかった。

だが、破滅の時はそんな彼らの思いを無視してやってくる。

「ヒイロ!クロウ!」

遊星とジャックが走ってくる。

「鬼柳が・・・セキュリティを襲撃した。今あいつはチーム・ブルー&ブラックのアジトだったビルに籠っている」

「!!鬼柳・・・。バカ野郎!!」

クロウは壁に拳をぶつける。

「助けに行くぞ。手遅れになる前に。」

ヒイロは鬼柳を救うためにビルへ走る。

遊星、ジャック、クロウも何も言わずにヒイロに続いた。

 

「はあ・・・はあ・・・。」

鬼柳は息を荒くしながら部屋に隠れている。

ビルは完全にセキュリティに包囲されている。

「ここまでかよ・・・。」

鬼柳は覚悟を決めようとしていた。

「「「鬼柳!!!」」」

その時、ヒイロ達が鬼柳のもとに来た。

彼らはセキュリティの目を盗んでビルに侵入してきたのだ。

「お前ら・・・。へへへ・・・一緒に戦ってくれるんだな!そうだろう!!だったら早く始めようぜ!俺たちのラストデュエルをよお!」

鬼柳は遊星たちがともに戦ってくれると信じていた。

その瞳はある種の狂気に満ちていた。

「鬼柳。俺たちはお前を救いに来た。」

「セキュリティと戦って勝てるわけがないだろう。」

遊星とジャックが鬼柳に思いとどまるように説得する。

「・・・。なんでだよ・・・。クロウ・・・ヒイロ・・・・お前らも遊星たちと同じなのか・・・?」

鬼柳が問いかけた途端、クロウは目をそらし、ヒイロは鬼柳の目をじっと見た。

「・・・なんでこうなるんだよ・・・。俺は・・・お前たちと・・・。」

サテライトを制覇して、一緒に満足したいだけなんだ・・・と言おうとしたが、爆発の衝撃によってその言葉が外に出ることは無かった。

「突入が始まったか・・・。逃げるぞ。」

ヒイロ達はビルを脱出し、セキュリティからの追跡から逃れようとした。

だが・・・

「奴ら、デュエルギャングを拘束しろ!!」

ビルを包囲しているセキュリティの部隊の司令官とみられる男の一声と同時に、複数の白バイ型Dホイール『チェイサー』が発進し、追跡を始める。

ヒイロ達は必死に逃げている間にはぐれてしまう。

 

ヒイロは運よく振り切ることに成功し、アジトへ向かっていた。

しかし、アジトへの曲がり角で彼は見てしまう。

遊星によって制止させられている鬼柳と、頭から血を流しながら横たわっているセキュリティ隊員の姿を。

ヒイロはすかさず隊員の右手の脈を測る。

そして、遊星に目線を向け、顔を横に振った。

 

ヒイロ達はアジトの中に入った。

すでにジャックとクロウがいる。

そして、ほどなくして、アジトはセキュリティに包囲された。

「これでは・・・逮捕は時間の問題だな。」

ヒイロはこの状況でも表情を変えずにいる。

「・・・。ヒイロ。一緒に来てくれ。」

遊星はそれだけ言うとアジトから出る。

「・・・。何をするつもりだ・・・?」

ヒイロは遊星の後を追う。

 

ヒイロが外に出た頃には遊星はセキュリティの大群の前で、大声でこう言った。

「俺がチーム・サティスファクションのリーダーだ!セキュリティを襲ったのは俺だ!他の奴らは関係ない!俺を拘束しろ!!」

「!!(遊星・・・・お前は自分を犠牲にして・・・。)」

しかし、だれも遊星を拘束しようとしなかった。

やがて、司令官らしき男が遊星の前に立つ。

「たしかに、リーダー以外には用がない。拘束すべきはリーダー一人だけだ。」

すると、アジトから3人の男が現れる。

そのうち2人はセキュリティで、もう一人は・・・鬼柳だった。

「!!?これはいったい・・・??」

遊星はなぜ鬼柳が拘束されているのかわからなかった。

「あの二人は抵抗したが、帰ってもらった。それに、奴はセキュリティの隊員を一人殺害している。セキュリティへの抵抗は第一級犯罪だ。あいつとは二度と会えないぞ。」

司令官はそういって遊星の肩をたたくと、そのまま立ち去った。

鬼柳は遊星の肩をたたいて去る司令官を見て、取り返しのつかない誤解をしてしまう。

「遊星!!俺を売ったのか!!」

鬼柳は遊星に問い詰めようとしたが、すぐに取り押さえられる。

「違う!!違うんだ鬼柳!!俺は!!」

遊星は誤解を解こうとするが、興奮している彼には無意味だった。

「遊星ーーーー!!!遊星ーーーーー!!!!!」

鬼柳は遊星への深い憎悪を込めた大声を出しながらトラックで連行されていった。

「鬼柳・・・・鬼柳ーーーー!!」

遊星は涙を流しながら鬼柳の名を呼んだ。

「・・・・。」

ヒイロは涙を流さず、鬼柳を連れて去っていくトラックの姿を見えなくなるまでじっとにらんだ。

こうして、チーム・サティスファクションは崩壊した。サテライトを統一した期間はわずか10日。奇しくも、明智光秀が本能寺の変で織田信長を打ち取ってから山崎の戦で死ぬまでと同じ期間だった。




チーム・サティスファクションが崩壊・・・。
そして、ヒイロにも運命の時が近づく。
次回・・・チーム・サティスファクション編完結!
そして、ついにヒロインが・・・。
感想、待ってます!

ちなみに若干オリジナル設定があります。
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