マテリアル・シンカロン 作:始原菌
【――】
あの鎧に見覚えはない。
どこかでちらりとだけでも見たことすら無いと、断言できる。
でも、何もかもを全く知らないと、どうしても言い切れない。
何かを、わずかに、ほんの一欠片だけ知っているような、気がする。この感覚をなんと言えば良いのか俺にはわからない。
一つだけわかっているのは――あの鎧は俺と同じ事ができる。
俺は、あの鎧と同じことが出来る。
俺は、生命を持たないのに動き回る怪物のような存在と――同じことが出来る。
【――――、】
わからない。
あれが何なのかわからない。
あれと無関係ではないであろう俺が何なのかもわからない。
俺は、一体、『何』なんだろう。
【――――――紫苑】
▲▼▲
「あれ。家だ、あれ?」
目が開いて、視覚に自宅の天井が映って。
そこでようやく紫苑は自分が『起きた』のだと自覚した。
数度まばたきしている間に、思考が立ち上がっていく。程なくして、どうして意識が途切れたのかに行き当たる。脳裏に浮かぶのは、赤い炎、青い雷、ルシフェリオンと剣、最後の砲撃で黒騎士の剣が砕けて――それで、それで
「――っいでででで!!」
飛び起きようとして失敗した。全身を走る激痛で飛び跳ねることには成功した。
落下の衝撃で激痛もう一回。
「うおおおお痛い! 身体の内側が全部痛い!」
全身、激痛、大絶叫。無理やり立ち上がったら物理的にもだいぶバキバキ鳴った。関節が癒着してるのではと錯覚するほど身体が固まっている。
ただ痛みがあるのは内側だけで、外傷は見当たらない。痛みこそあるが、動かないわけでもない。
いやそんな事はどうでもいい。紫苑の事は、今何よりどうでもいい。
――シュテルは、
紫苑の『中』に居ない事は、何となく感じられる。
近くに姿は見え無い。なら何処に行ってしまったのか。
最悪の想像が頭をよぎる。戦闘の結果がどうなったか、紫苑は知らないのだ。
もし負けていたのなら、あの雷同様に
「シュテル!?」
「はい」
「居た!」
「居ますよ」
意外とすぐに返事があった。
これは紫苑の中からの意思ではなく、ちゃんとした声だ。ならば『駆体』で実体化しているはず。なのに、見回す周囲に人影は無い。
「おはようございます紫苑……とはいえもう夕方近いですが。思ったよりも元気そうですね」
「あの、シュテルさん? 何か声だけして姿が見えないんですけど」
「居ますよ、貴方の前に」
「前?」
「前」
「……え? どこ?」
「ああ、もうちょっと下ですね」
目線を下げる。そこにあるのはテーブルだった。別段おかしくもない、紫宮家に最初からあったもの。そこにシュテルは居た。確かに居た。同時に何故今まで気付かなかったのかも理解した。
「す げ え 縮 ん で る !?」
姿形のベースは昨夜見た『高町なのは』の写しのまま。
少しだけ変わった髪型もそのまま。
ただ、なんというか、全体的に
2~3頭身のデフォルメボディ。
全体的なサイズも
テーブルの上に、シュテル・ザ・デストラクターがちょこんと座っている。
「縮んだ、というより『縮めた』のです。通常規格の駆体は急造品の上に、昨夜かなりのダメージを受けましたので。これは機能と消費を可能な限り抑えた緊急用ですね」
「そんな気軽に縮められるものなんだ……」
「サイズこそ小さいですが、飛行や魔法の行使も十分に可能ですよ。さすがに戦闘は無理がありますが、探索には十二分かと」
屈んで目線を合わせた先で、シュテルが得意気に語る。感情の動きに合わせるように、
基本の外見は、色違いかつ髪型違いの『高町なのは』の縮小版。しかし今のシュテルにはそれ以外の要素が何故か――本当に何故だかわからないが増えている。
「…………だめだどうしても気になる、聞いてもいいかなシュテルさん」
「はい。何でしょう」
頭に、人のではなく猫のような耳があって。
腰から、猫のように尻尾が生えている。
端的に言って――ひどく、猫めいている。
「その
「偽装用です。この状態で――こうしていれば、誰も私が魔法生命体だとは気付かないでしょう」
ひとつまみのドヤを混ぜた無表情とでもいえばいいのか。
シュテルが四肢を投げ出してその場に倒れ伏す。なるほど確かに。これなら普通の人にはマスコットやぬいぐるみにしか見えない。
「あれ、でも魔法使えるんだよね。認識阻害できるんだから偽装する必要ないんじゃ……?」
「――――――――――――」
こんなにも『無』になったシュテルは初めて見た。
いやまあ表情を見始めたのが昨日の夜からなのだけれども。
▲▼▲
道を進む紫苑の頭の上に、無から復活したシュテルが陣取っている。
飛べばいいのではないだろうか。
「ああ、そういえば。一応朝の段階でタカマチ・ナノハとユーノ・スクライアには念話で連絡を入れておきました。簡単にしか説明していないので、後で詳細を聞かれるでしょうが」
「そうなんだ。ありがとうシュテ――待って、念話したの? 二人に?」
念話を飛ばしたということは、シュテルの『声』を聞いた訳で。
そうするとどうなるかっていうと。
「物凄く訝しんでいたので、後で適当に説明しておいて下さい」
「そうなるよねー!」
やらなければいけない事リストに肖像権への対処が追加された。用事は他にも色々とあるのだが、それら総てを一旦置いて。紫苑は家を出て街へ向かっている。
目は覚めたものの好調とは程遠い。走るどころか歩くだけで身体がギョリギョリ鳴る。どう考えても寝ていたほうがいい。
だがどうしても外に出なければいけない用事があったのだ。
――お腹が空いているのである。
要するに、買い出しだ。
現在の紫宮家には一切の食料が残っていない。本当に何も残ってない。氷くらいしか無い。辛くとも外に買いに行かなければどうしようもないのだ。
無論、普段はレトルトやインスタント食品をある程度買い置きしてある。
最初は紫苑もそれらで済ますつもりだった。ただ出そうと棚に向かったら、開ける前に扉が開いていた。中身も全部空いていた――すでに全部、食われていた。
『うわ無い、全部無い!? 何これ泥棒!? ピンポイント空き巣!?』
『いえ全部貴方が自分で食べたんですよ』
『……え?』
『家に運んだ後に、意識がないまま手当たり次第にひたすらバリバリと』
『怖ァ!!』
紫宮紫苑――自身の出自というか存在について過去最高に訝しんだ瞬間である。
容器や空箱をきちんとゴミ箱に捨てていたのが唯一の救いかもしれない。救いだろうかそれは。逆に意識ないのにきちっとしてるの、怖くないだろうか。
立ち直れなくなりそうなので、後回しにする事にした。
というか何か食べないと物理的に立てなくなりそうだった。
普段は徒歩だが、今日は荷物が多くなりそうなので自転車での移動だ。
通い慣れた店だと学校が終わる前にうろついてる事を怪しまれかねない。ちょっと面倒だが店を変える。買って即食べられる惣菜も多いコンビニを中心に、食べ歩きで臨時補給しつつ食べ物を買い込んでいく。空になってしまった買い置き分のレトルト食品やインスタント類もついでに補充、
「あ、これも入れて下さい紫苑。おいしかったので」
「さり気なくシュテルも食べてるじゃんか! というかマテリアルって食事要るんだ?」
「不要といえば不要ですが、魔力の方は修復に回したいのです。この駆体の維持分だけでも外からの補給で賄おうと思いまして。あ、ついでにこっちもお願いします。それとこれも――」
「多い多い多い!」
シュテルは短くなったリーチを補うためかルシフェリオン(ミニ)を展開。棚からあれもこれもぐいぐいとカゴに押し込んでくる。
「もちろん本気で止めに入られたらこの駆体の私には為す術ありません。ですが紫苑。認識阻害で他者から見えない私を止めに入ってしまうと、周囲にどう映ると思いますか?」
「は、図ったな!」
「図りますよ。理のマテリアルですので」
ちょいちょい攻防を織り交ぜたせいか、買い出しに予想以上の時間を費やしてしまった。家に戻ってきた頃にはすでに夕方である。
買い込んだ食料を広げつつ、今後に向けた作戦会議である。
そろそろ下校時刻であるから、なのはが様子を見に来る可能性がある。なのはが来ずともユーノが来る可能性もある。二人共『良い人』なので、相手が紫苑でも少しは気にしてくれるだろうから。それに協力関係にあるのだから、昨夜の事は説明しておいたほうが良いだろう。
ただ空腹も限界なので食べながら。
行儀は良くないが、まあ誰も見ていないのでセーフということで。
「高町さんは普通にそのまんま話せばなんとかなる気も、する。むしろ誤魔化しとか変に混ぜると気付かれてこじれそう」
「はあ。そういうものですか」
「相手に
シュテルは『高町なのは』の姿を写し取った。
けれどもそれは悪意や攻撃ではない。行為自体は決まった形を持たない『マテリアル』にとっては自然かつ必要なもの。
「人間とマテリアルの前提と意識の違いってだけで、きちんと話せば咎められることは……無いと、思う、たぶんだけど。ただ今後も使っていいよって言われるかは聞いてみないとわかんないかなー」
「ではこちらも利を出しましょうか。駆体形状の利用を認めてもらえるなら私もジュエルシードの捜索に協力する、辺りで」
「……シュテル、もしかしてだけどその姿だいぶ気に入ってる?」
「ええ、はい。すごく。びっくりするほど私の魔導に馴染むのです、この
真っ先に話題に上るのは、一番説明の難しい肖像権絡みについて。
ちなみにシュテルは(いつの間にか買い物カゴに入っていた)クッキーを抱えるようにして齧っている。この短い間で小動物ムーブがどんどん洗練されていっている。
「おや」
ふいに、シュテルの耳(猫の方)がぴこぴこぴこと規則的に振動を始めた。
「念話ですね、ユーノ・スクライアから」
「何でそんな機能つけたの?」
「どうします? 私が出ましょうか」
「スルー。あー、うん。代われるなら俺が出るよ」
「わかりました。では」
ぴょんとシュテルが頭の上に飛び乗った。炎着小規模版。服は変わらずに髪と瞳の色、それと内側の特性のみが変化する。紫苑単体では魔法が使えないのは変わっていない。
食べかすが降ってきたのは見なかったことにした。
『あーテステス、ユーノ。聞こえる?』
『――え、紫苑? 紫苑!? 良かった、無事だったんだね! 心配したんだよ! 昨日あんな状態で居なくなるし! 少し後に大規模な戦闘もあったみたいだし! あと『シュテル』って名乗る人が念話してきたんだけど、あれが君の言う『シュテル』なのかも判らないし……あれ、何だか念話がすごく鮮明になってるような?』
『うん。まだ普通に生きてるよ。念話は昨日ちょっとアップデートが……まあそれも含めて、色々説明する。要件はそれ?』
『そのつもりだったんだけど、なのはがジュエルシードを見つけたらしくて。今からそっちに向かうんだ』
『そうなんだ? じゃあ俺も――』
行こうか、といい切る前に。
頭の上から飛び降りたシュテルが紫苑の眼前に回る。小さな腕を思いっきりクロスさせ、バツマークを形作る。
『なんかNG出た。俺行けないけど大丈夫かな』
『もちろん。反応はいつもと変わらないから僕達だけで対処できると思う。何があったかは知らないけど、無理してでも紫苑に来てもらわなくても大丈夫』
『わかった。ありがとう。高町さんにもよろしく』
『うん。じゃあ片付いたらまた連絡するよ』
念話が切れる。
視線の先ではまだシュテルが全身でバツマークを表現したままだった。表情に明確な変化は無い。無いのだが、何か怒っているようにも見える。
「紫苑」
「はい」
「何を考えているのですか、貴方は」
「いや何って……何が?」
「昨夜の戦闘で受けたダメージが残っているのをもう忘れたのですか。緊急でもないのに、無理に動いて支障が出たらどうするのです」
「えっと、もしかして心配してくれてる……のかな?」
「そう受け取ってもらって構いません。紫苑は今私が頼れる貴重かつ唯一の協力者です。貴方の不調は、直接私の戦力の低下につながるのです。きちんと自覚してもらわないと困ります。おざなりにされれば怒ります」
「それやっぱり怒ってたんだ」
「見て判りませんか。ほら、この尻尾の荒ぶりよう」
「だから何でそういう機能付けてるの」
省エネ駆体という謳い文句の割に、楽しいオプション機能が多すぎる気がする。
「ふむ。あちら側がこれからジュエルシードの回収に向かうのなら、終わるのは夜に差し掛かるでしょう。ならば直接の説明は明日に改める事になるでしょうから、先に私達の方針を再確認するとしましょうか」
「方針っていっても、目的はマテリアルの捜索と回収のままだよね」
「そうですね、最優先はその二つです。加えて――今後はあの黒い鎧騎士との戦闘が発生するでしょう」
「それなんだけど、剣を砕いたのは憶えてるんだ。なら相手が持ってたマテリアル、何処に行ったんだろうか」
「不明です。それにマテリアルの解放は直接確認できていません。それに解放出来ていてもいなくとも、恐らくあの黒騎士は立ち塞がるでしょう。私も狙っていましたし。避けては通れぬ相手です」
「シュテルの知り合い、って訳じゃないんだよね」
「見覚えのない相手です」
「……………………そっか」
「紫苑?」
「何でもない。でも何なんだろうねあれ。生き物じゃないのは判るけど、じゃあ何かって言われると断言できないっていうか。ただの無機物って感じでもないし」
「わかりませんし、わかる必要はありません。こちら側の対応としては『倒す』以外を選ぶつもりはありませんし。問題なのは――あの黒騎士が
シュテルはそこで一度、言葉を切って。
「だから、紫苑――
マテリアルであるシュテルは、絶対的に不利だ。恐らくシュテルが全ての機能を取り戻し、更に強化したとしても、相性差でひっくり返される。
けれども紫宮紫苑は有利でもなければ不利でもない。普通に戦える。普通に相手より強ければ、普通に倒せる。
「絶対に確実に、
「うん、わかった。それで君を助けられるなら」
紫苑がどう答えるかをシュテルは予想していたし、実際にその通りになった。
それでも確認を挟まねば、実際に言葉にしてもらわねば信用できない。安心できない。
過ごした時間は短く、互いの理解もまだまだ浅い。関係性そのものがまだ芽生え始めたばかりなのだ。
それでもこうして確認さえ取れれば、信じられる所までは来ている。孤立した状態で、寄り掛かる先が出来た事を改めて確認できる。
「ありがとうございます。本当に――あなたに、会えて良かった」
満面という言葉からは遠い。
僅かに目尻が下がっただけで、口の端が上がっただけのもの。頭に微が付く程度のもの。
でもそれは本物だった。
紫宮紫苑が初めて見た、シュテル・ザ・デストラクターが初めて見せた――笑顔だった。
▲▼▲
炎熱変換の特性や所有している術式について説明を始めたシュテルが、いつの間にか赤縁メガネをかけている。もう気にしない事にした。
「私は『私の魔導』の扱い方を教えます、可能な限り、徹底的に。最終的な調整は貴方にやってもらうしかありませんが」
戦力を上げる手っ取り早い方法は、魔法の練度を上げる事。
紫苑の戦闘用の魔法についてはシュテルが当然ながら扱い方を熟知している。
けれどもそれは『シュテルがシュテルの魔法を使う』事を前提にしている。『紫苑がシュテルの魔法を使う最適な方法』ではない。
シュテルの言う『調整』はその差を埋める作業のことだ。
教わった魔法を紫苑は『自分が使いやすい用に』変える必要がある。やらなくても使えないわけではない。が、急場しのぎでは昨夜のように相打ちが精一杯であると証明されている。
「うーん。それなんだけど、一つ試してみたいというか」
「はい、何か?」
「ルシフェリオン、もうちょっと形変えていいかな。シュテルの魔法って『撃ち出す』形式のが多いんだけど。杖って形がどうも個人的にしっくり来ないというか、できればもう完全に『銃』とかに変えちゃいたいというか」
「…………………………は?」
「あ、いえ何でもないですごめんなさい」
「いえ。いいえ。咎めているのではないのです」
表情は変わらないが、シュテルがあからさまにそわそわしている。
というか耳と尻尾がそわそわしている。もしや感情センサーなのだろうか、あのオプション。
「……そこまで大幅な形状変更が、可能なのですか?」
「うん。昨日咄嗟にやった時の感じは覚えてるから、いけると思う。何で出来たかはわかんないんだけど」
「貴方のルシフェリオンは代価として渡した一部です。好きにしてもらって構いません。それでですね、そういう事ならついでに頼みたいというかですね」
「頼み?」
「…………私のルシフェリオンも、変えてもらえますか?」
数十分後。
シュテルの手には、ミニサイズの『ルシフェリオン』が握られている。
赤紫をメインとした色彩、より鋭角的で刺々しく攻撃的な印象を持つ形状。誰が見ても『レイジングハート』の色彩違いとは思わない、完全に独自の姿にして存在を得たデバイス。
シュテルの魔導に最も適した中身を持つ杖であり。
シュテルの魔導に最も適した形状を持つ槍である。
「すばらしい」
メモ用紙八枚に渡るびっちりとした注文から始まり、数十回のリテイクと調整を繰り返した果てに完成したデバイスを見上げて、シュテルは感嘆の息を漏らす。
「気に入ってもらえたなら、良かったよ」
紫苑は今回休息目的でジュエルシードの回収に参加しなかった。なのだが同じくらいどっと疲れた気がしないでもない。それでもシュテルが大喜びしているのを見れば、むしろ満足感があった。
相変わらず表情は余り変わっていないのだが、その分ピンと立った耳と尻尾が感情を表しているから一目瞭然である。
「すばらしい」
本当に気に入っているようだ。
紫苑の方の『ルシフェリオン』もさくさくと形状を変えていく。
色彩はルシフェリオンベースのまま。銃身部分はレイジングハートの砲撃形態に似ていて、グリップに行くほどにルシフェリオン(新)に似ていく。足して二で割って銃にしたとでもいえばいいのか。
「ヒートバレル、ブラストバレル、ディザスターバレル……よしちゃんと変形するな」
シュテルの方に比べれば本当に外見だけざっくりと弄った物だが、それでも紫苑の手に合わせているから前よりずっと扱いやすい。
「シュテル、一応変形機構も確認して……」
「すばらしい」
「だめだ聞いてない」
その後ジュエルシード回収成功の連絡がユーノから入った。
シュテルの予測通り、時間も遅いので明日の放課後に改めて合流して説明することで落ち着いた。
途中念話に乱入してきた高町さんから心配のマシンガントークを飛ばされたりもしたが、まあ想定内である。上手くかわして事なきを得た。
大まかな問題を明日に先延ばしにしたとも言う。
「…………」
今日はもう寝るだけ、となった所で通りかかった居間で。座布団の上に赤紫の物体を見つけた。よく見るとそれはシュテル(ミニ)であった。
マテリアルって眠るんだ、とか。
行動が本格的に猫に寄ってきてないか、とか。
ただ何よりも目につくのは、
「めっちゃ気に入ってる…………」
眠るシュテルは――夕方から出しっぱなしのルシフェリオンを、まるで宝物のように抱えていた。
少し余裕ができて本来の茶目っ気を取り戻し始めたヒロイン(マスコット)。
ルシフェリオン(新)はReflection版とほぼ同じ形状です。