スカイガールズハイ   作:3×41

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プロローグ②

暗いビル群の上空を両翼プロペラの輸送機が疾走する。

輸送機の眼下では高く伸びるビル群が高速で後方へ過ぎ去っていく。

飛行する輸送機は遠方のひときわ大きなビルへ向かった。

『RB-2がエベロン社ビルとすれ違いざまに電磁アンカーでエントリーする。準備はいいか?』

ASから三千子がほかの三人に通信する。

『準備オーケーです』とワトラン。

『いつでもかまわんぞ』とフェイル。

『わたしもオッケーっすよー』とイブキ。

 

輸送機がエベロン社ビルと交差しようとする。

 

『イブキ、エベロン社内部をレーダーで捜索できるか?』

三千子がイブキに尋ねる。

 

『了解っすー』

イブキのAS内で各種電子兵装が起動する。

イブキの目の前に膨大な情報が表示され、両手をマニピュレーターモードにして高速で操作し続ける。

イブキはその膨大な情報をすべて確認し、脊髄反射的に両手の指を操作した。

 

『出たっすよー。エベロン社の5FにASが三機、玄関エントランスに有人ASが二機オートマターを牽制してるっす。

あとは玄関の後ろと5Fの中央部に高度ジャミングがかかってるっすね』

 

『どこかからASを強奪してきたんだろうな。ならまだあるかもしれん』とワトラン。

 

『私はエントランスの有人ASをやる、ワトラン、フェイル、イブキは5FのASを制圧しろ』

 

フェイルが少し驚いたように通信した。

『おいおい三千子。一人でAS二機をやる気か?ずいぶんとやる気だな』

だがフェイルは手を貸そうかなどとはたずねなかった。

三千子ならまぁやれるだろうという判断である。

 

『ではカウントする。4,3,2・・・』

 

三千子がカウントダウンを始める。

4機のASと2機の自律思考戦車が輸送機の後ろの位置取り、

輸送機の後ろのハッチが開く。

 

『1・・・』

 

輸送機がエベロン社ビルとすれ違う。

 

『ゴー!』

 

4機のASが後ろ向きに輸送機から飛び降りた。

 

黒い空からエベロン社の巨大なビルに向かって滑空する。

 

4機のASは腕のアンカーケーブルを射出、エベロン社のビルにアンカーを打ち込むと、

それを巻き取りつつ下方に弧を描いて、ビル5階の窓に向かって加速した。

 

それぞれのASが逆の腕の機関銃を窓に向かって掃射しガラスを破壊し、

そこからビル内部に突入した。

 

他方三千子は弧を描きながら1Fのエントランスに突入した。

 

5Fのワトランたちがビル内部に突入すると、

 

広い部屋の中に2機のASが確認できた。

 

『5FにはASが3機っす。奥のジャミング区画の解析をはじめるっす!』

イブキがエレクトロニクスを立ち上げ背部の円盤状のレーダーから周囲の捜索を開始する。

 

ワトランのASはすぐに立ち上がると目の前のASに重機関銃を掃射しながら壁に走る。

ワトランのASの右腕から高速で吐き出される数十発の鉄甲弾が敵ASにふりそそぎ装甲を大きくへこませる。

敵のASが反撃してくる。こちらに疾走する鉄甲弾がワトランが隠れた壁をやすやすと引き裂いた。

 

1Fのエントランスに突撃した三千子はすぐ2機の敵ASを確認すると、

片方が持っていた大口径ガトリングを機銃掃射で破壊すると、

そのまま背部のオーバードブーストを起動、

背部からのバーニア噴射で高速で加速しつつもういったいのASに突進した。

 

三千子のASが敵ASに突撃するとそのまま三千子のASがフワッと浮いて

敵ASの右腕を両足ではさみ腕の先を両腕でつかむと、

三千子のASが外骨格の人工筋肉をうならせ体を強力にそらせた。

 

強力な装甲を持つASにも関節にまで装甲することはできない。

敵ASの右腕がメシメシと音を立てて肩からべきんと破壊された。

 

その瞬間、三千子はASの左腕を敵ASの破壊された肩口に向けるとそこから

敵AS内部に重機関銃を掃射した。高速の鉄甲弾が敵ASのベトロニクスをズタズタに引き裂き、起動を停止させる。

 

もう一体の有人敵ASはすでに外の広い庭に出ていた。

そこからエントランス内部の三千子に機銃を掃射する。

 

三千子はすでに破壊した敵ASを目の前に担ぐとオーバードブーストを起動。

エントランスから飛び出して敵ASに加速する。

 

敵ASが両腕を掲げて疾走する三千子のASを狙ったところで、

三千子は両足の人工筋肉をメシメシとうならせて天高くジャンプした。

 

あたりに黒い空が広がり、くるりと宙返りすると眼下に反応が遅れた敵ASがゆっくりと近づいてくる。

 

敵ASの背後に着地した三千子は敵ASの胴部を両腕でつかむと、

そのまま下方にオーバードブーストを起動し、

敵ASごと天高く舞った。

 

再び二体のASが黒い闇夜を滞空する。

三千子は敵ASを抱えたまま頭を逆にし、

そのまま高速で地面に突っ込んだ。

 

上空から高速で二体のASが地面に激突した。

先に敵ASが地面に激突し、

三千子は敵ASに固定した両腕をズリズリ摩擦して落下のgを減殺し、

地面スレスレで停止した。

 

ASは横の衝撃には比較的強いが縦の衝撃には弱い。

まともに頭から地面に激突した敵ASの搭乗者はよくて気絶しているだろう。

 

 

 

5Fで銃撃戦をしていたワトランたちのところに

窓からアンカーケーブルで上ってきた三千子のASが加わった。

 

『うー、もう下の2機をやったのか。はやいねぇ』

と、フェイルが通信する。

 

『今5F中央部のサーチをしてるっすよー。どうも連中エベロンのコアデータをクラックしてどこかに転送しようとしてるっす!』

 

『くそっ、あまり時間がないな』いって三千子も目の前の敵ASに機銃を掃射する。

装甲がへこんだ敵ASの動きが鈍くなってきた。

 

と、そのときエベロン社の1Fから装甲車が飛び出し、エベロン社の玄関を突き破って

走り去った。

 

『ちっ、機材を持って逃げたな!!ワトラン!!あちらを追え!!アルバニもそちらに回れ!!』

 

『了解』

 

ワトランは短く言うと5Fの窓に走りそこから、アンカーケーブルで勢いをころしながら

1階に下りると、

背部のオーバードブーストを起動、

ジェット噴射で加速しながら逃走する装甲車を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

装甲車は一体のASを背部のコンテナの上に乗せ、

研究都市郊外の道路を走っていた。

海沿いの無人の道路を一台の装甲車がすさまじいスピードで走っていく。

 

そこにオーバードブーストを起動して道路を高速で疾走するワトランのASと2機の自律思考戦車アルバニが追いついてきた。

 

装甲車のタイヤはご丁寧にまわりを装甲でシールドされている。

 

ASを疾走させながらワトランがどうするかと逡巡していると、

装甲車のコンテナの上のASが大口径ガトリングを掃射してきた。

 

『くっ』

 

ワトランは小さくうめくとASのサイドバーニアを吹かせてジグザグ走行し

ガトリングの掃射を回避する。

 

疾走するガトリングの銃弾がワトランのASを通り抜け、

その後ろで走るアルバニの装甲をズタズタに引き裂いた。

 

『うわーやられたー』

 

アルバニが断末魔をあげて機能を停止する。

 

ワトランはさらに回避行動でガトリングの大口径の弾丸を交わし、

空中にジャンプをして、コンテナの上の敵ASに機銃を掃射し、さらに装甲車を追った。

 

疾走する装甲車とASと自律思考戦車は

トンネルに入った。

敵ASのガトリングがワトランの左の道路を切り裂いた。

 

ワトランはASをトンネルの壁にそって疾走させ、

飛んできたガトリングの弾丸を地面に着地してさらにかわす。

 

トンネルを出たとき、ガトリングが熱されすぎたのか玉切れか敵ASが左腕の重機関銃を掃射してきた。

 

『突破する!援護しろ!!』

ワトランはアルバニに通信すると、

背部のオーバードブーストを最大出力で加速した、

『りょうかいー』

アルバニがいって、両手の機関銃をコンテナの上の敵ASに掃射する。

 

ワトランはさらに加速し、装甲車に接近すると、

ASの両足の人工筋肉をうならせてそのまま上空へ飛んだ。

 

浮遊感がワトランのASを包み眼下に走る装甲車が後ろに過ぎ去る。

 

装甲車の前に着地したワトランのASは、

装甲車のほうを向きASの両腕で装甲車をしたから持つと

 

『うおおおおおおおおあああああっ!!!』

 

うなって装甲車を慣性を利用しつつ持ち上げ

そのまま一本背負いの格好で投げ飛ばした。

 

装甲車は車体を逆さにして道路にうちつけられるとそのままこすれながら移動してから停止した。

 

『やるねーワトラン君』

アルバニがワトランのASの前で停止した。

『やったか・・・』

うめくようにワトランが言って、装甲車のほうを見ると、

装甲車のコンテナが開いて、

大口径ガトリングを持った2機のASと、エベロンの研究機材を持った1機のASが出てきた。

 

『なっ・・・』

ワトランが驚いたようにうめくと、

コンテナの上にいたASと別のAS二機がワトランのASの前に立ちふさがり、

研究機材を持った敵ASがオーバードブーストを起動し、海沿いの道路を走っていく。

 

ワトランの前には大口径ガトリングを構えた3機のAS。

その3機の敵ASのかまえるガトリングが回転しはじめた。

ワトランの目にはその大口径ガトリングの回転がひどくゆっくり見えた。

 

そのとき、

上空から黒い影が

ワトランと3機のASの間に高速で衝突した。

 

その人影のようなものは

落下の衝撃を両足と右手を地面につけて減殺しおえると、

3機の敵ASのほうに向けて左腕を突き出した。

 

次の瞬間3つのガトリングから弾丸が嵐のように吐き出された。

そのあまたの弾丸が人影に向かう。

 

しかし、その弾丸の嵐は人影を切り裂くことはなかった。

人影が掲げた左腕の前でその弾丸がすべて停止する。

そしてバラバラと弾丸が地面に落下していった。

 

それはソニックダイバーの空間シールドだった。

そらから降ってきた1機のSDは

次の瞬間1機の敵ASの前に加速し、

全身鎧のような機体の右腕をしたに振りかぶり敵ASを上空20mに打ち上げた。

 

次にSD背部の黒い巨大な剣を手に取ると、

体を回転させながらその隣のASを横文字に切り裂いた。

 

目の前5mにいた敵ASがソニックダイバーに向けてガトリングを掃射する。

 

黒いSDはその瞬間跳躍し、その敵ASの背後に着地すると、

背部のプラズマバーニアを起動、

一瞬で敵ASに向かって超加速しながら、

体を横に向けて肩甲骨の部分から敵ASに質量と全運動エネルギーをぶつけた。

 

高速の鉄山功で吹き飛ばされたASは、

道路から高速で海へ飛び出し、海面を高速で4、5回はねるとそのまま海に沈んだ。

 

最初に上空に打ち上げられたASが地面に衝突して轟音を上げた。

 

ソニックダイバーは腰部のハードポイントから

熱質量ライフルを抜くと、遥か遠方を走行するASに標準を定めて引き金を引いた。

 

ライフルから発射された赤い熱質量弾が夜の闇を裂いて疾走し、

オーバードブーストで道路を走るASを装甲ごと引き裂いた。

 

SDの搭乗者はワトランのASにかけよってワトランのASに左手を差し出した。

「イザナギにいわれてこっちに飛んだんだけど、危ないところだったね」

 

『ああ、助かったよ。名前を聞かせてもらってもいいか?』

 

左手を差し出したSD搭乗者の少女は小さく笑っていった。

 

「私はエリーゼ、エリーゼ・フォン・ディートリッヒだ。はやく後始末をすませよう、ジョン=ワトラン。まだ一杯やる時間はあるはずさ」


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