春、それは終わりと始まりの季節。
涙と笑顔。悲しみや寂しさと喜びや期待。
様々な思いや出来事が集まり、混ざる。
良くいえば賑やかで彩やか。
悪くいえば騒々しく無統制。
そんな季節。
電車の中から見える外の景色は緑豊かで、
これから新しい生活を迎える人々を見守っているようにも見える。
いや、もしかしたらこれからも変わることのない日常を送る社会人を嘲笑っているのかもしれない。
…と、まぁ、偉そうにかっこつけて語っても、ただの一般人てある自分も周りの大多数と同じでこの春に中学を卒業し来週に高校へ入学する。
今電車に乗っているのは、高校に入学してからバイトをすることになっている親戚のもとへ向かっているからだ。
詳しく話は着いてから話すと言われているから細かい事は知らされてない。
怪しいバイトだったらどうしよう…。
もうすぐ降りる予定の駅に着くというところで徐々に不安が込み上げてきた。
不安を紛らわすために時計を見ると。
時計の針が午前の10時を、過ぎる少し前だった。
「おっと、予定の時間ギリギリだ。急がないと」
急いで階段を駆け上がり改札を出る。
駅前の広場で待ち合わせをしたのですぐわかるはずなのだが、広場に着いても見慣れた叔父の姿が見当たらない。
「おかしいな。場所間違えたかな…?」
キョロキョロと辺りを見回していると
「おーい!こっちだー!」
叔父が必死にこちらに手を振っていた。
「久しぶりだね。いやー、大きくなったなぁ…」
「叔父さんは、変わらないですね」
「お、言うようになったねぇ…。まぁ、立ち話もなんだしせっかく来たんだ。私の家に寄って行きなさい。」
「はい。お言葉に甘えて」
広場から数分歩いた所に叔父の家はあり、すぐ近くに楽器の専門店やライブハウスがあった。
「やけにここら辺には、音楽関係の建物が多いですね」
「あぁ、この町はバンドを組んでる子供達がたくさんいてね。ちょっとした変わった名物みたいなものだよ」
「へ〜。それは知らなかったです」
「面白いだろ?あ、ふつうに座って待っててくれ。すぐお茶を入れるから」
「ありがとうございます。急がなくても大丈夫ですよ」
叔父の家は一軒家で、奥さんと暮らしている。
子供(つまり従兄弟)は息子が1人いて、今は1人立ちして新社会人として東京で働いている。
「今日はバイトについて話すんだったよね?」
「はい」
「さっきこの町にはバンドが多いと言ってだろう?実は私もライブハウスを経営していてね。君にはそこで働いて貰う。」
へ〜ライブハウスねぇ…
「楽器や音楽についての知識はあるかい?」
「いえ、無いです……っていうかライブハウスでバイト!?無理ですむりむり。俺にはそういうことに対するセンス?みたいなものがないんですよ!」
「大丈夫、大丈夫。知識が無いのは承知のうえだから。それに…」
「それに?」
「それにもし、ここでバイトしてくれるなら…高校卒業後に正式に雇うし、私が歳をとったら君に私のライブハウスを丸ごと譲るつもりでいるんだ。」
「え、つまりそれって…」
「あぁ、就職先決定&未来の経営者だ。もちろん君にその気があればだけれども」
「うっ…でも音楽とかに関する知識不足はどうするんですか?」
「そりゃぁ、全部覚えて貰うよ。あたりまえだろう?」
「うぅ…」
就職先決定ははっきり言って魅力的だ。
特にやりたい事もないし。
だけど全部覚えるってかなり辛くないか?
揺れているのを見抜かれたか、叔父が畳み掛けてきた。
「まだ悩むか…。それなら、あと1つ」
「何ですか?」
「バンドの殆どが女の子のグループだ。つまりガールズバンドのかわいい女の子と仲良くなれるぞ?殆どが女子高生くらい。君とほぼ同年代だね」
「やります。今決めました。男に二言はありません!全力でやらせていただきます!!」
「お、おぉ。ちょっと引くぐらい食いついてきたな…」
叔父は少し驚いたがすぐに嬉しそうに笑った。
「頑張ります!」
「そうかそうか…。じゃ、今日からこの本を読んで全部覚えてきてくれるか?その後はやりながら覚えていこう。あ、あと高校入学後からは私の家に住んでもらうから。よろしくな?大丈夫だ。許可はちゃんととってある。部屋は2階の部屋を使ってくれ。荷物は私が取りに行こう。」
そう言って叔父は楽器とその説明が載ったおかしな位に大きく分厚い本5冊と、それとは別に様々な機材の大まかな使用方法と用途が載った本をテーブルの上にだした。
え、多くない?
「は?え?ちょっと?」
来週から叔父の家で暮らす?これ全部覚える?
無茶だろ…?
「え、そんなのむr」
「男に二言は?」
叔父がまっすぐこちらを見てくる。
「…ありません(泣)」
腹を括るしかないか…