魔法剣士ロウが元いた世界とは別の世界、「幻想郷」に来てはや一週間がたった、現世と幻想郷を唯一行き来する事の出来る大妖怪八雲ゆかりの出した「異変解決」を達成し、現世に帰るため、ロウは霊夢の知人、烏天狗で幻想郷唯一の新聞記者、射命丸文に依頼募集の記事を作ってもらいそれを妖怪と人間どちらの里にも配ってもらったのだが・・・
「・・・誰も来ない・・・な。」
「そもそも文の新聞がそれほど読まれてないのを忘れてたわ・・・ましてやその依頼を請け負ってる人間が妖怪神社とか妖怪殺しの化け巫女神社なんて呼ばれてる博麗神社に居るとあればなおさら来ないわよね〜・・・。」
「ああ、だから誰もお参りに来ないしボロいのかこの神社、ならなんでお前は生計立てられてるんだ?」
「うるさいわね二流剣士、ぶっ飛ばすわよ・・・紫にたまに妖怪退治の依頼を回してもらったりしてんのよ。」
「ふん、ぶっ飛ばせるほど実力差ないだろ・・・なら広告なんて出さずに依頼回してもらえばもらえばいいんじゃないか?」
「紫のとこに来る以来もせいぜい月二回程度よ、そんな調子じゃ異変解決する前に戦争が始まるわよ。」
「駄目か・・・どうする?」
「・・・このまま待ちぼうけくらってても時間がもったいないわよね・・・仕方ない、慧音に会いにいくわよ。」
「慧音?」
「人里で寺子屋をやってる妖怪よ、とある異変で戦ってそれから付き合いがあるの、人間に人望があってよく面倒ごとの相談されるのよ、で私はそれをたまに手伝ってるの。」
「なるほどそれは名案だな、じゃあ早速行こう。」
「あ、剣は持ってかないで、置いてきなさい。」
「?・・・何でだ?」
「(教育熱心)だからよ。」
「?」
「よし!今日の授業は終わり!遊んで来い!川の方にはいくなよー!」
「「「「はーい!」」」」
ドタドタとたくさんの子供達が転ぶのではないかと心配になるような勢いでロウ達の傍を走り去る
なるほど、子供達がいるのだから剣を持った人間などがしかも殺しを生業としてる人間がそんな中にやってくれば怯えさせてしまうし教育に悪いのは当然だ、とロウは独り言ちる
「相変らずキィキィ五月蝿いところね。」
「ハハハ、可愛いだろ?」
霊夢の悪態に爽やかに返答したのは蒼い衣で身を包み、白銀の長髪をなびかせる快活な女性、上白沢慧音その人だ
彼女がロウに気が付く
「銀の髪、狼を象ったメダル、君が噂の青年か!」
「どんな噂が流れてるのか知らないが多分そうだ、狼流派のロウ、ウィッチャーだ。」
「おっとすまん!名乗るのが遅れたな、失礼した、私は上白沢慧音、この里で歴史の編収録作業と同時に寺子屋を営んでる、よろしく頼む!」
「ああよろしく、寺子屋・・・昔の日本の学校か、かなりの人数がいたが大変じゃないか?」
「ハハハ!なぁに、確かに大変だが私にとってはそれも生きがいだ、何より可愛い!」
「・・・いい仕事だな。」
学び舎独特の和やかな雰囲気と慧音の子供に対しての真剣な思いにロウの頬も思わず緩む
「ん?なんだ興味あるのか?もしかして子供が好きとか?表情が和らいでるぞ」
「?!・・・なっ・・・!」
ロウは慌てて真顔にを戻るが耳が赤くなっている
「ハハハ!そうかそうか、子供が好きなのか、霊夢みたいなひねくれ者かと思ったがそうでもないらしい、子供好きに悪い奴はいないからな!」
霊夢の頭をポンポンと慧音が撫でる、どうやら彼女の前では霊夢も幼い子供扱いのようだ
「ひねくれ者で悪かったわね、それよりそろそろ本題に入らない?」
霊夢が慧音の手を払いのけイライラした様子で話を切り出した
「ああ、そうだったな!いやいや丁度手こずってる問題があるんだ、来てくれ依頼人のところに案内する。」
そう言う慧音について行き歩き始めた
歩いてる最中今回の依頼について慧音が話し始めた
「実はな、今度里から離れにある廃村に大きな娯楽施設を建設するそうなんだ、ただその枯れ井戸にどうやら悪霊の類が出たらしくてな?調査に行った者達がカラカラに乾いたような状態で発見されたらしい。」
「悪霊?どうせたいしたことないでしょ?なんであんたが退治しないのよ。」
「うーん、私も最初はそう考えて現場に行ったんだが一晩たっても何も出ない、現場を調べようにも廃村の中から事件に関する手掛かりなんて何一つ見つけられんくてなぁ、ほとほと困ったところにそう言った類の事件を解決するのが得意な人間が幻想郷に来たっていうじゃないか、早速依頼に行こうと思ったら霊夢に仕事の話を持ちかけられてな、願ったり叶ったりだよ、わたしにとっては。」
「・・・・・・カラカラに乾いた死体、か、炙られたような跡はあったか?」
「うーん、すまん私は実物を見ていないんだ、検死をしたあとすぐに埋葬されたらしい。」
「そうか、実際に死体を見た人間は?」
「うん?たしか検死した町医者とあそこらの地主と今回の娯楽施設の計画をしてる里の商業団体、そして死体の回収をした傭兵だ・・・着いたぞここだ。」
白塗りの壁に漆塗りの瓦の屋根を重ねた壁が百m先まで続いており、目の前には檜の巨大な門がどっしりと構えていた
どうやら家主は相当の資産家のようだ
慧音がどんどんと巨大な門を叩く
「たのもー!上白沢慧音だ!例の件で専門家を連れてきた!」
しばらく立たないうちに巨大な門が開き、十数人の侍女と丸々とした男が現れた
「これはこれは!慧音殿よく参られました!さぁさ中へ!」
男に言われるがままにロウ達は屋敷の中へと連れられ、様々な装飾品や美しい家具で飾られた客間へと案内される
「さて、申し遅れましたわたくし、ここいらの金融を営みつつ地主をやっておりますナルカネと申します、以後お見知りおきを。」
フゥフゥ言いながら玉のような汗をぬぐい男は名乗った
「博麗神社の博麗霊夢よ、よろしく。」
「おお!貴方がかの博麗の巫女!博麗霊夢殿ですか、お噂はかねがね伺っております!いやはやこれはなんとも心強い、して、もう一人のお連れ様は?」
「狼流派のロウ、ウィッチャーだ。」
「うぃっちゃー・・・と申しますと?」
「外の世界で営んでた業種だ、巫女さんと同じように怪物退治を生業にしてる。」
「ほほぉー成程成程、外の世界の方ですか、いやいや申し訳ありません外の世界のことには疎くて!」
ぐわははとナルカネは豪快に笑った、口をあけて笑う様は泣きわめくヒキガエルのようだ
「さて、挨拶も済ませたところで本題に入ってくれないか?」
「おお、そうでしたそうでした、いや、我々も困り果てておりまして。」
「事の成り行きは?」
「あれは1週間前の事です、物流の盛んなこの地域をもっと盛り上げるため、私と商業団体とでやっと見つけた娯楽施設の建設のための土地を調査するために私の部下二人と商業団体の数人に向かわせました、ですが彼らは一日たっても戻らず、次の日に戻って来たのは商業団体の中の一名だけでした、何があったのか訪ねてもブルブルと震えるばかりで何も答えずその次の日に自殺しました、部下の何人かに現場を見に行かせましたが彼らも戻らず、仕方なく傭兵を雇い死体の回収を行いました。」
「・・・傭兵には何もなかったのか?」
「ええ、何事もなく死体を回収できたようです、その後慧音殿に依頼し、今にいたります。」
「検死をおこなった医師と死体の回収をした傭兵にあわせてもらえるか?死体の状況を聞きたい。」
「ええ、今来させます、おい!彼らを連れて来い。」
しばらくしないうちに侍女に連れられ、初老のやせ細った男と刀剣を携えた筋骨隆々の大男が現れた。
「へっ、ナルカネさんよ、化物退治に女とガキを雇ったのかよ、こんな奴らが化物を殺せるなら俺は神だって殺せるぜ、はははは!」
大男がロウや霊夢を見て馬鹿にしたように笑った、その粗野な風貌から察してこの大男が死体を回収した傭兵だろう
「死体を回収したのはあんたか、回収時の死体や周りの状況を教えてくれないか?」
挑発には乗らず、ロウは冷静に話を切り出した
「んん?いやぁ俺は随分と忘れっぽくてなぁ・・・くくく、いくらか金を貰えば思い出せるかもしれんなぁ?」
いやらしい笑い方をしながら男は金を要求した、最初からそのつもりだったのだろう
「き、貴様!下手に出ればぁ!」
憤りのあまり慧音がバンと机を叩き立ち上がり男の胸ぐらをつかもうとするが
「はぁ、馬鹿だな。」
ロウがすぐさま手を印の形に作り、男に呪文をかける
途端、男の目が虚ろになりするすると喋り始めた
「周りは・・・死体がいくつも転がっていた・・・死体はカラカラだったのにあの廃村は全体的にジメジメして嫌な感じだった。」
「なっ・・・なんだぁ?」
慧音が驚いたようなのでロウは仕方なく解説する
「アクスィーの印だ、相手を混乱させ、催眠にかける、まあかかる相手とかからない相手がいるが・・・コイツはかかりやすいタイプだったみたいだな。」
「へぇ、便利ねそれ。」
「まあ、使ってて損した覚えはないな・・・さて、現場でなにか見たか?怪しいものや不思議なものは?」
「死体以外は何も・・・いや、そうだ・・・声だ・・・声が聞こえた・・・。」
「声?」
「ああ・・・低い唸り声だ・・・あんなおぞましい声は聞いたことがない・・・。」
「声か・・・わかった、お前は家に帰ってゆっくり休め。」
「ああ・・・ああ、そうするよ・・・。」
そう言って男はゆっくり立ち上がりとぼとぼ歩いて去っていった
「さて、次はあんただが・・・。」
「ワシには呪文をかけんでええ、素直に話すわい、検死をした町医者じゃ。」
「ありがとう、それで、死体の状況はどんなものだった?」
「ありゃ人間のできるような所業じゃない、死体は全部体内の水分が全部蒸発してカラカラに干からびておった。」
「炙ったような跡や焼け焦げたような跡は?」
「おお、あったあった、全員所々皮膚や衣服が焼け焦げておった。」
「・・・なるほど、ありがとう、これは気持ちだ。」
そう言ってロウはひと握りの通貨を渡す
「おお、毎度どうも!」
そう言って町医者はホクホクとした表情で出て行った
「ちょっと!なんでお金なんか渡してるのよ!」
「情報料だ、それに彼は町医者だ、医者は結構な情報力がある今後もいくらか情報をもらえるかもしれないからな、あれくらいは渡して当然だ。」
「ぬぬぬ・・・。」
「それでなにかわかったのか?」
「まぁ、幾つかはな、相手は幽鬼・・・悪霊だな、おそらく被害者たちは皆発火能力(パイロキネシス)で体の水分ごと蒸発させられて死んだんだろう、実際に現場を見てみないとわからないがおそらくその廃村は呪われている、悪霊は生前に思い入れのある場所に住み着く。
おそらくこの悪霊は何らかの理由があってあの廃村に入るある特定の侵入者を攻撃しているんだろう。」
「もうそんなにわかったのですか!なら早めに退治をお願いしますよ!」
「ただ退治をするんじゃダメだ、生者の世界との楔・・・悪霊をこの世界に引き止めている何かを見つけ問題を解決しない限りこの手の悪霊はいなくならない、そのためには徹底的に現場を調査する必要がある。」
「な・・・調査ですって?」
ナルカネが一瞬動揺を見せる
「なにか問題でもあるのか?」
「いえ、いえいえ!それでは宜しくお願い致します!ええ!」
瞬時に張り付けたような笑顔に戻るが、ロウはその一瞬の動揺に違和感を抱いた、が、あえて今は突っ込むことをしなかった。
「・・・事件が解決次第、たぶん明日までにはここに戻る、それまでに報酬を用意しておいてくれ。」
そう言ってロウは客間を後にした
「あっ!ちょっと待ちなさいよ!」
ドタドタと慌ただしく彼らは客間を去っていった
博麗の巫女達が部屋を去ったあと、ナルカネは一人考えていた
あのロウとかいう小僧はあの廃村を調査すると言っていた、下手をすれば「アレ」が見つかるかもしれない、いやあの小僧は悪霊と言った、ならば今回のことの発端は間違いなく「アレ」だろう、だとすればこの件を解決するならば必ず「アレ」を見つけなければならない、それは困る
「・・・・・・・・・事件が解決次第消すか。」
下卑な笑いが客間に響いた
「おい、ちょっとお兄さんよ。」
「?」
屋敷のもんを出た際、ロウは男に声をかけられた、先程の町医者だ
「あんたか、どうしたんだ?わざわざ待ってたのか?」
「あんたにおまけでいいこと教えてやろうと思ってな。」
「いい事?いい事って何よ?」
霊夢が目をらんらんと輝かせる
「たぶんお前の期待してるようなもんじゃないぞ、それでなんだ?」
「あのナルカネって男、ここら一体の地主なのは知ってるよな?」
「ああ、今回の廃村の土地もあの男のものだと聞いたが。」
「ああ、あいつが今の地位に上り詰めるまでの間に”何故か”あいつのライバル達が次々に事故や病気にあってな、そのライバルたちの資産を吸収してあそこまで大きくなったらしい、あの男には気をつけろ、じゃあな!」
「・・・ありがとう、また何かあったら頼む。」
そう言ってまた彼に少しばかりの金を渡した
「なるほど、相応の情報には相応の報酬をか、私も覚えておこう!」
「慧音先生、これは子供の教育には使わないと思うから覚えておかなくてもいいと思うぞ。」
「ふむ、そうか?・・・それもそうだな。」
「・・・一瞬見せたあの動揺といい、今回の件少しきな臭くなってきたな。」
「ちょっと!辞めるとか言わないでよ!」
「いや、そんなつもりはない・・・面白くなってきたな。」
狼のメダルを握りロウはにやりと笑った
設定説明
・この世界の幻想郷はいくつかの大きな里があり、それぞれに特色があります、今回ロウ達が訪れた里は人間同士の物流が盛んで幻想郷商業団体の本部があります、この里には慧音のような変わり者の妖怪が人間に扮して住んでいる事がありますが、おおよそ人間だけの里です