魔法剣士と笑わない巫女   作:狼流派見習い

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大変お待たせしました、ウィッチャーロウ初めての依頼です、果たして無事依頼を果たす事はできるのか、それではどうぞ









第三幕 依頼其ノ壱 哀しみの井戸 後編

真実の愛は幽霊のようなものだ。誰もがそれについて話をするが、それを見た人はほとんどいない。

byラ・ロシュフコー

 

 

「・・・ここか。」

「なるほど・・・確かに”いかにも”な場所ね。」

「何度来ても気分のいい場所ではないな・・・。」

ウィッチャーであるロウは霊夢そして慧音と共に街の資産家であるナルカネと行商組合からの依頼により、件の悪霊が現れるという廃村に調査を行いに来ていた

人が済まなくなり崩れた家々のあちこちに血痕が飛び散り昼間であっても異常なまでの不気味さを醸し出している、心なしか空気もジメジメしているように感じられる

「・・・血痕が多いな、発火能力で殺られた被害者が苦しみのあまり転げ回ったんだろうな・・・酷い死に方だ。」

「何かわかりそう?」

「今の所はまだ何も・・・ただ俺のメダルが反応してる、ここら一体が呪われてるのは確かだな。」

そう言ってブルブルと震える狼のメダルを霊夢に見せる

「つまりここにその・・・何だっけ?悪霊を縛り付ける”楔”とやらがあるってこと?」

「ほぼ間違いない。」

「問題はその”楔”をどうやって見つけるかだな、以前私が訪れた時は幽霊どころか何もなかったからなぁ。」

特定の場所に居座り続ける悪霊の類は”楔”と呼ばれる何かによって聖者の世界に縛り付けられている、こういった場合たとえ悪霊を消せたとしても一時的なものですぐにまた復活してしまう、”楔”を適切に処理し死者を死者の世界に戻さなければ永遠に悪霊はいなくならないのだ

「・・・足跡?」

辺りを捜索していたロウは気になる物を見つける、向かい合わせで移動する足跡だ、血や死体処理をした傭兵の足跡などによって消えかかってはいたものの、ウィッチャーの驚異的な感覚によってロウにはその足跡がどんなものでどこにあるのか分かった

その足跡は崩れて入口が塞がっている廃屋から井戸まで転々と続いていた

「あの廃屋から二人の人間・・・足跡の深さ、靴の大きさからして男だな、二人の男が村の中央にある井戸まで何かを運んだ・・・何を運んだんだ?」

次に井戸を調べる、井戸はかなり大きなもので長年この村で愛用され続けていたのだろう、石造りの井戸の淵はすり減り丸くなり、水を組み上げるロープはちぎれる一歩手前まで使い込まれている、ロウは足元にある石を拾い上げぽんとひとつ投げ入れた

すこししてコーンと言う虚しい音が響いた、どうやらこの井戸にもう水は張っていないようだ

「なあ、霊夢頼みがある。」

「?」

 

 

 

ーーしばらくしてーー

「ーーーーっあぁあぁあ!」

井戸から霊夢が”それ”いや”その人”とともに飛び出した

「・・・やっぱりあったか。」

霊夢が引き上げたのは白骨化した死体だった、魔力で浮かせている”その人”をゆっくりと下ろした

頭蓋骨は小さく、骨盤は横楕円形、骨の状態からして若い女ーーおそらく20代前半の女性だろう

この女性の四肢の骨はポッキリと折られ、頭蓋骨は凹んでいた

「あんたの言った通り井戸にはもう水は張ってない、クモの巣とコケとその死体があっただけよ。」

「やっぱりか、とするとこの頭部の傷は井戸に落とされた時に出来た傷か・・・。」

「よく見つけたな・・・にしてもなんで井戸なんかに死体が・・・。」

 

「さぁな、ただわかるのはここで何かが起こり、この女性は殺されたってことだ・・・・・・そうだろう?」

 

そう言ってロウは銀の剣を引き抜き、軽値の後ろにいた”何か”を切りつけた

 

『アァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァ!!!!!!!』

 

切り付けられた”それ”はつんざく様な叫び声を上げ霞となって消える

「何?!今の!」

「〈ヌーンレイス〉!結婚直前に非業の死を遂げた女や少女の魂が苦しみや怒りから狂った化物だ!彼女らをこのよに縛り付ける〈楔〉を見つけない限り死にはしない!だが!」

霊夢の背後に突然現れたヌーンレイスにロウは素早く結界の〈印〉イャーデンをかける

紫の雷がミイラ化した花嫁姿の悪霊を縛り付ける

『アァアアアァアァアァアァ!!!』

「一時的に消すことはできる!今だ霊夢!慧音先生!イャーデンの結界で魂を捉えてる今なら攻撃が通る!」

「わかった!『宝符・陰陽宝玉』!!!」

「まかせろ!『野符・GHQクライシス』!!!」

大量の光弾がヌーンレイスを穿つ

『イィアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァ!!!』

身の毛もよだつような雄叫びを上げながらヌーンレイスは霞のように溶けていった

 

「終わった・・・のか?」

「今の所はな・・・早く〈楔〉を見つけて開放してやろう。」

「見つけるっていったってどうやって?」

「・・・多分答えはあそこにある。」

そう言ってロウは崩れて入口がふさがっている建物を指さした

「彼女はあそこから運び出されていた、あそこに何かがあるかもしれない。」

「成程、なら早く瓦礫を退かそう、またさっきの悪霊が戻ってくるかもしれない。」

 

 

 

「ふう、何とか人が入れるくらいにはなったか?」

「まあ何とかな、行こう。」

ぎりぎり人が入れる隙間をくぐり、ロウ達は建物の中に入った

「こほっこほっ・・・誇りっぽいし暗いわね・・・陰陽玉(小)」

霊夢が小さな陰陽玉を出し、ぼうっと辺りを照らし出す

室内はほこりまみれで家具や壁がことごとく壊され、血の跡がこびりついていた

「ここに調査をしに来た被害者達はこの中に入ってないはずだ、つまりこれはあのヌーンレイスが人間だった頃に起こった争いの跡・・・か。」

荒らされた家具や床、寝室などを調べていると霊夢があるものを見つけた

「これ・・・日記かしら?」

「日記?」

腐りかけた革で閉じられているそれを霊夢が渡す、表紙にはロミエットという名がうっすらとだが読み取れる

「ベットの枕の中に入ってたのよ、枕を持った時に違和感に気づいて開いたらなかにこれが。」

「隠したのか・・・なかに見られてラまずい何かが書かれてるってことか。」

「〈楔〉ってこれ?」

「・・・いや、狼のメダルは反応してない、多分違うだろうが・・・なにか手掛かりが書かれてるかもしれない、見てみよう。」

そう言ってロウはロミエットという男の日記を開いた

 

 

〇月×日

今日も村は平和だ、ほかの村や里では相変わらず妖怪と人間同士でいがみ合ってるがうちの村には異種族同士でのいがみ合いなんて一度も起こったことがない、天狗も河童もみんないいやつばかりだ、許嫁のジュリーもこの村をとても気に入っている、いつまでもこんな日が続いて欲しいものだ

 

「三年前ね。」

「三年か・・・人が骨になって建物が腐るのにはちょうどいい時間だ。」

 

 

〇月△日

今日、とある男が来た、ナルカネという男だ、なんでもそこそこ力のある資産家だそうでこの村にある井戸水に興味があるようだ

あの井戸は私の御先祖様がその昔偉い巫女様に預けられた井戸でどんな時でも清水をうるわせ、飲んだものには健康をもたらすと言われている、実際この村にいる妖怪や人間もあの水の効能を耳にしてやってきたものも多い

ナルカネはあの水を使って一つ事業をしないかと持ちかけてきた

ジュリーや村のみんなは反対した、もちろん私も断った

神聖なあの井戸を金儲けの道具にはできない。

あの男が去る際に言った言葉が気になる、「私の誘いを断ったことを後悔するがいい」確かにそう言った

ジュリーに相談したが彼女は「大丈夫、村のみんなで力を合わせればどうとでもなるわ」と笑い飛ばしてくれた、ああ彼女が許嫁でよかった、わたしの心をこんなにも軽くしてくれるのだから

 

 

 

「ナルカネ?なんであの男の名前がここにあるんだ?」

「とりあえず最後まで読んでみよう。」

 

 

 

×月○日

週一で来る行商が来なくなった、天狗が彼の死体を見つけた、どうやら野党に襲われたらしい、可哀想に

だが困ったことになった、彼が野菜の種やほかにもいろいろなものを持ってきてくれるからこの村は豊かだったが彼が居なくなったとなるとどうやって野菜の種や肥料を手に入れようか

里へ行ってもナルカネの命令で売ってはくれなかった

 

×月△日

やったぞ!畑に埋めた野菜に井戸の水をかけるとみるみる育っていくじゃないか!

これで村人の食利用問題は解決する!それどころか来年埋める野菜の種芋や肥料が有り余るほど取れるぞ!

ジュリーも喜んでくれた、ああ早く指輪を買って彼女につけて欲しい、だがそんな蓄えはまだない、天狗や河童に頼んでできた野菜を遠方の村に売ってもらおう、そこまではナルカネのても届かないし、ジュリーのための結婚指輪の資金も集められる。

 

×月×日

順調に資金も溜まっている、彼女に指輪を渡す日が楽しみだ

天狗が妙な人影を見つけたという、何だろうか、なにか嫌な予感がする

 

△月○日

やった!ついに指輪を手に入れた!遠方まで買いに行ってくれた河童に感謝しなくては!やはり好むるの連中はいい奴らばかりだ!いつ彼女に渡そうか、そうだ!△月□日に渡そう!彼女と私のであった日だ、ああ彼女はどんな顔をするだろうか。今からたのしみだ、おっと河童が報酬のきゅうりをせがみに来た、早く渡してやらねば。

 

△月□日

今日は私の人生の中で最も幸せな日だ、気のいい村のみんなで集まって、彼らの前で彼女に指輪ををわたした、彼女のあの天使のような笑顔が忘れられない

明日、彼女を連れて教会に行く、そこで永遠の愛を近い私たちは夫婦とな

 

 

村が囲まれた、松明と武器を持った大男どもが村の出入口を塞いでる、妻や村の子供達を逃がさなければ

 

天狗や河童、村の子供達が捕まっている、ナルカネは村の権利書と私の命を差し出せば全員助けると言っている

ジュリーはあれは嘘だ何か他の方法を探そうと言っている

だがおそらく何もないだろう、それにナルカネは商人だ、利益にならない殺しをする事はないだろう、私の命一つで気のいい彼らが助かるのなら喜んで差し出そう、私は人生の最後で英雄になれたことを誇りに思う

ロミエット・イートン

 

 

「・・・そして彼は殺され、この惨状を見るに・・・約束を守られることはなかった・・・。」

「まさか依頼人が事の発端とはね・・・。」

どん、と壁をぶち破る大きな音が響く

横を見ると慧音が拳に壁を叩きつけていた、しかもその姿は先ほどとは打って変わり角が生え毛はボサボサになり獣のような風体だ、どうやら彼女は人間ではなかったようだ、だがそんなことはどうでもいい

「あんまり・・・すぎるだろう!」

静かに、だがふつふつとした怒りによって熱くなった大粒の涙が、半人半妖の獣の瞳から流れ落ちた

「・・・・・・一刻も早くヌーンレイス・・・いや、ジュリーさんを呪いから開放してやろう、たぶん楔は指輪だ、探してみよう。」

「・・・そうだな、早く開放してやろう、こんなに苦しい思いをしたんだ、もう苦しまなくてもいいように。」

 

しばらくして、床に不自然な継ぎ目があるのを慧音が見つけ、そこをはがすと大量の白骨死体を見つけた、その中に大事に指輪を握る首のない死体があった、おそらく村人とロミエットだろう、ジュリーが井戸に捨てられたのはこの場所に入らなかったからだろう、つまり最後にジュリーは殺されたことになる、おそらくナルカネの部下に性的暴行を加えられた後に殺されたのではないだろうか

そんなことが簡単にわかってしまった自分にロウは久々に嫌気がした

 

 

 

 

村人の遺骨を綺麗に並べロミエットとジュリーの手は指輪をはめ、つながせた

「何してるのよ?」

「言っただろ?ヌーンレイスみたいな悪霊を除霊させるには〈楔〉をみつけて〈対応〉しなくちゃいけない。」

「?」

「成仏させるって事だ。」

「成程。」

すう、と息を吸い込んでロウは用意していたセリフを発した

 

「ロミエット・イートン、ジュリー・イートン、汝らの愛は死してなお他者に認められ、「真実の愛」である事を証明した、彼の地でもその愛は認められ、未来永劫続くであろう。」

 

途端、辺りを霞が覆い、一つの形にまとまる、ヌーンレイス・・・いや、ジュリーだ

「あんたらはもう充分苦しんだ・・・」

『ゥアアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァ!!!!!!!』

ジュリーは怨念の炎で身を包みロウに飛びかかる

「もう・・・・・・もういいだろうっ!もう苦しまなくていいだろうっ?!」

がしりと慧音がそれを抱きとめる、ジュウジュウと服や肉が焼けるるがお構いなしだ

『あ・・・ァア』

「貴方達の「歴史」は私が語り継ぐ!私が皆に伝える、だから・・・もう・・・っ!」

『・・・・・・。』

ヌーンレイスの動きが止まり、炎が和らぐ

「遺灰の煙がお前達を導くだろう・・・〈イグニ〉。」

ロウは遺骨を燃やす

『アァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァアァアアアァアァアァアァ!!!!!!!』

 

ジュリーは最後の憎悪を吐き出すかのように雄叫びを上げそして

 

消えた

 

「・・・・・・終わった。」

「これであいつらは・・・本来住むべき世界に帰れたって事?」

「ああ・・・大丈夫か?慧音先生。」

ペタリとへたりこんだ慧音に声をかける

彼女は泣いているようだった

「・・・・・・・・・とうって。」

「えっ?」

「彼女が最後にありがとうって・・・。」

「・・・・・・そう・・・か。」

煙はもうもうと天まで続いていた、まるで彼らを迎え入れるかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クッハッハッハッハッハァ!お勤めご苦労さん!」

 

 

ゲスな笑いが響いた

「?!」

「何?」

「・・・。」

いつの間にか武器を持った大男が二十人程村の出入り口にたむろしていた、先頭にはロウが印をかけて追い払ったあの傭兵の大男がいた

「よぉ、よくもこの俺様に恥を書かせてくれたなぁ?」

傭兵は鋼の直剣をロウに向ける

「あんたら・・・何のつもり?」

「ククク、お前ら知っちまったんだろう?この廃村で何が起こったのか・・・ナルカネの旦那も俺もあんな事が人にしれたら困るのさ。」

「っ!貴様らがやったのか!」

「あぁ、楽しかったぜぇ?ロミエットとか言ったか?首を切り落とす前に約束なんざまもらねぇ、皆殺しにするのは決まってるって言ってやったらみるみる表情変えてよぉ!いい顔だったなぁ、恐怖と怒りで歪んだあの顔は・・・アヒャヒャヒャヒャヒャ!」

腐った笑い声をあげる

「貴様ァあぁあ!」

慧音が傭兵に飛び掛るが

「・・・・・・なに・・・を。」

腹部に大きな衝撃を感じ、そのまま気絶する

「あんたは教師だろ、慧音先生、あんたの手は汚しちゃいけない。」

慧音を抱きとめ、そっと寝かせる

「霊夢、慧音先生を頼む。」

「それはいいけど・・・一人で大丈夫なの?」

「なぁに・・・慣れてる。」

そう言ってロウは魔ならざる者を断つ剣を・・・鋼の剣を引き抜いた

「ハァー!おめぇ一人で二十人弱の俺らを相手するつもりか?正気かてめぇ?」

「・・・一つ質問がある。」

「ぁあん?」

「ナルカネはこの緯度を手に入れるために村人を皆殺しにした、だがこの井戸は今は枯れている、何があった?」

「ふん、人生の最後に聞きたいことがそれか?まあいい、教えてやるよ、ナルカネの旦那は早速この水で商売をしようと水を汲み上げたのさ、ところがだ、水でいっぱいのはずの水桶はスッカラカンで井戸には一滴の水もありゃしなかった・・・突然に枯れちまったのさ、さあ、これで満足か?」

「・・・この村が死んだ時この井戸も死んだのか・・・ならば。」

 

スラリと鋭く、細く、ロウは鋼の剣を構える

怨と殺気がロウから溢れ、その場にいた全員の肌をビリビリと突き刺す

 

(あいつ・・・私と戦った時は殺す気で戦ってたわけじゃなかったのね。)

「あ・・・相手はガキ一匹と女2匹だ!報酬は一人頭二十両!(※およそ20万円程度)こんなに美味しい話はねぇ!殺っちまえ!」

一瞬ひるんでいた男達はその言葉ではっとし、各々武器を片手に一斉に斬りかかる

 

「・・・・・・お前らの命はこの村そのものに捧げる。」

一瞬の間に起こったことを霊夢は見逃さなかった

ロウは、まず一番手前の男に詰め寄りその男の斧の横薙ぎの一撃を姿勢を低くかわし、両足を切り飛ばし、そのままその男の上半身を盾に敵の中に飛び込む

次に縦にしてた男を投げつけ相手が動揺している間に二人の男の頭を切り飛ばした

背後から三人、斬りかかるが防御壁、〈クエン〉の印でそれを弾き飛ばす

吹き飛び倒れた男の一人に剣を突き立て、残りの二人は〈イグニ〉の印で焼き尽くす、ここまでで六人

次に槍を持った男が間合いを保ちつつ鋭い突きを繰り出すがそれをひらりとかわし槍を切り、切れ端を敵に投げつける、見事首に命中し鮮血を吹き出しながら倒れる

それを見て慌てて弓矢を放つ男たちに衝撃波の印〈アード〉を叩きつけ、弓矢とともに一番近くの三人の上半身を吹き飛ばす

その間に五人ほどの男達がロウを串刺しにしようと周りを囲み、一斉に飛び掛る

が、男達の剣は全て流され、かわされ、そして腕や足、そして生首が飛び、血の雨が降る

回天剣舞、ウィッチャーの剣術だ

ここまでで十五人が、一分とたたない内に肉塊と化した。

「な・・・なにが・・・。」

あまりの出来事に傭兵の男は唖然とするしかなかった

「うわあああああ!!」

残りの男達が逃げ出すが

「逃すわけ無いだろ。」

爆薬を投げつけ、逃げる男達に火炎を含んだ破片が突き刺さる、〈踊る星〉相手を延々と燃やし続けるウィッチャーの爆薬だ

「・・・・・・残るはお前だけだ。」

「ひ・・・ひいいいあぁあぁああ!!!!!!!」

傭兵はたまらず逃げ出すが、ロウにすかさず足を切り裂かれ逃げる事すら出来なくなる

「答えろ、ナルカネは何処だ?」

(ち・・・ちくしょう!こんなところで死にたかねぇ!何とか・・・何とかしねぇと。」

「早く答えろ、俺は気が短いんだ。」

「わ・・・わかった!わかった話す!話すから!だから命は助けてくれ!な?」

そう言われてロウはゆっくりと鋼の剣を収める

「い・・・今の時間帯なら里の遊廓で遊んでる!・・・さぁ答えた!だから、なぁ?助けてくれよ!」

「・・・・・・。」

男の懇願を聞き入れたかのように、ロウはゆっくり男に背を向け歩き出した

(くくくくくくくくく!ばァかがァ!テメーが化けもんじみた強さを持ってようが後ろから心臓をひとつきされりゃ終いよ!)

男は袖に隠した小さな短刀をロウの心臓に突き立てようと飛びかかるが

「う・うぎゃあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあ??!!!!」

その手は綺麗に切り飛ばされ、男の横にごろんと転がった

「お前みたいな奴の相手は慣れてる・・・が、そうだな、俺はお前の命を取らないでおいてやる。」

「ぐあぁあちくしょう!いてぇ!いてぇよぉ!」

ドクドクと男の腕から血が流れる

「覚えてやがれぇえええ!銀髪ぅううう!」

村を出るロウ達を男は恨めしそうな目で睨みつける、そんな男にロウはふ、笑いかける

「お前とはもう会うことはないさ。」

「な・・・に?」

「言っただろ?”俺は”お前の命を取らないでおいてやる。」

「どういう・・・事だ?」

霊夢の霊力でロウ達はふわりと飛び上がる

「屍鬼・・・という化物がいる。」

「・・・。」

「奴等は常に飢えていてな、何里も先の血の匂いを嗅ぎつけて死肉をあさりにやってくる、ここにヌーンレイスの被害者の死肉がころがっていた、しかも今はホカホカの生きた肉と山盛りのご馳走が転がっている。」

おぞましい声がだんだんと近づき、村の周りを取り囲む

「あ・・・ぁあぁああぁあ・・・ぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁああ!!!!!!!」

自分のたどる運命を察した男が声にならない声を上げる

 

「絶望を味わえ・・・下郎。」

 

「嫌だあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

屍鬼が肉を貪る音と断末魔が死んだ村に響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霊夢はしばらく飛んだ後、慧音の家の前に降り立った

慧音を運び、奥に寝かしつけ戻ってきたロウに霊夢が質問する

「・・・それで?どうするの?」

「・・・まだ、仕事が残ってる。」

「まさか・・・あんた。」

「言ったろ?慣れてるって。」

「・・・あの幽霊どものためにわざわざそこまでしてやる義理なんてないでしょ。」

「そうかもな・・・でもよ。」

「?」

「あの村人みたいな奴らを俺はもう見たくはねぇんだよ、俺は。」

「・・・だからってあんたが手を汚す事ないじゃない。」

「ばーか、この手はもう汚れてる、こんな汚れた手で俺ができることと言ったら・・・それしかないのさ。」

そう言ってロウは少しだけふ、と笑い、闇の中へ溶けていった

霊夢はその顔を見て何も言わなかった、いや、何も言えなかった

あんな壊れそうな笑顔を見て、何も言えるはずがなかった

 

 

 

「ふぅー・・・・・・。」

ナルカネは遊廓の個室で熱燗を一口煽り、深いため息をついた

あの村はどうなったのだろうか、あの銀髪のがきや巫女を始末できただろうか

そんな考え事をしながらもう一口煽る

まあ、失敗してもいくらでも手はある、自分はあらゆる力を持っている、この自分が望んだことはなんでも叶うのだ

下卑ねたうすら笑いを浮かべナルカネはもういっぱい煽ろうとしたが酒が切れていることに気がつく

「おーい!酒が切れた!持って参れ!」

と、ここで違和感に気がつくいつもなら艶やかな音楽と遊女たちの話し声や笑い声で満ちているこの遊郭がとん・・・と静かになっている

「なんじゃ・・・?」

ナルカネが立ち上がろうとした瞬間、麩がガラリと開く

そこにいたのは酒を携えた遊女ではなく、あの銀髪の剣士だった

「ッ??!!!な・・・なぜここに?!!!!!!!」

「・・・報酬を貰いに来た。」

剣士は特に何をするでもなく報酬をせびた

なんだ、私が刺客を差し向けたとは知らないのか、しかしあの傭兵め、しくじったな?

そんなことを考えながらいつもどおりの作り笑いを浮かべる

「おお!剣士様、お疲れ様でございます、報酬でございますね?いま部下に持ってこさせますゆ・・・え?」

待て、なぜこの男は自分がこの時間この遊郭にいることを知っている?

「報酬は金じゃない・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前の命だ。」

 

そう言って剣士は剣を引き抜いた

 

「ひ、ひいいいいいいいいい?!」

ナルカネは慌てて廊下に飛び出す

「誰か!誰か!ひ、人殺しだ!助けてくれ!」

助けを求めるも誰も来る様子はない

「無駄だ・・・あんたの部屋に結界を貼り、そこ以外に睡眠性の爆薬を放った、今頃みんなぐっすりだ。」

「そ、そんな!・・・か、金か?!金が欲しいのか?!いくらだ?!いくら欲しい?!」

「ふん、その質問は現世でもこっちでも変わらないんだな・・・クズはいつの世もどんな場所でも同じか。」

ふぅ、と呆れたようにため息をつく

「ぬむっ、ふぬうぅうあ!きっ、貴様ァ!貴様が殺すのは化物だろう!化物を殺す剣士が人間を殺していいのか?!」

ナルカネの質問など気にせずグイグイと近づく

気がつくとナルカネは壁際に追い詰められ、その首筋には鋭く冷たいものが押し当てられぷつりと薄皮を切り裂いていた

「あァ、そうさ、俺は化物を狩るウィッチャーだ。」

「うぎっ?!ぐぅうう?!」

銀髪のウィッチャーの目尻がキリキリと上がり、憤怒のそれと化す

首に押し当てられる剣がズブズブと沈む

「た、助け

 

 

 

 

 

 

 

「だから、化物を殺すのさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、文々新聞にてとの資産家の暗殺についての号外記事が出回り、様々な現場検証が行われたが、未だに犯人は分かっていない、ただ銀色に輝く白狼を見たという証言が相次いだという

そしてこの資産家の死によって、人間と妖怪、両方が住まう不思議な土地の権利者が居なくなり、再び別種族同士がが住まう村が戻って来たのは偶然と言えるのか、はたまた仕組まれたものなのか、それは誰にもわからない

 

だが人々はこの事件もすぐに忘れてしまうのだろう

 

なぜならこのは幻想郷、悪鬼妖魔が跋扈し、外道非道が謳歌する、摩訶不可思議な理想郷

幻想郷なのだから









※今回の裏設定
・妖怪と人間が共に住まう土地は不思議な力があるとされ、その力を狙って様々な資産家がその土地を奪おうと躍起になっています

初めてのロウ達の依頼、いかがでしたでしょうか?お楽しみ頂ければ幸いです。
フランスの文学者、ラ・ロフシュコーの言葉に冒頭で書きました「真実の愛は幽霊のようなものだ。誰もがそれについて話をするが、それを見た人はほとんどいない。」と言う言葉があります、もしかしたらそれはもう我々のいる現世にはなく、今は幻想郷に流れ着いているのかもしれませんね
それではまた。
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