Fate/Curse brade   作:春サーフィン

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序章

誰も知らない、物語があった。

 

 

語り継ぐ者は居らず、紡ぐ者も居ない。

 

 

故に、誰も知らない物語。独りの少女の、呪われた生涯。

剣に呪われ、運命を弄ばれた孤独なる最期。紛れもない悲劇のその物語は、後世誰に語り継がれる事もなく、歴史の渦に飲み込まれた。

 

 

ここに紡がれるは、その続章。

 

 

悠久の刻を経て、少女自身が自らの手で紡ぐ、生前果たされる事の無かった、願いを遂げる、運命と呪いの物語。

 

 

──Fate/Curse brade

 

 

 

 

 

 

──子供の頃の俺はまだ、きっと信じていた。

 

国内では有数の魔術の名家に産まれ、己の力と技を磨くばかりの日々の中で、俺は確かに誇らしかった。

 

自分の才能(ちから)

 

 

自分の血筋(ちから)

 

 

自分の理想(ちから)

 

 

全ては正しい事の為に使われると信じて疑わなかった。全くもって、愚かな少年時代だ。碌でもない現実は知りもせず、知ろうともせず、ただ自分にとって都合の良い空想の夢物語にばかり胸一杯に溜め込んで、

 

 

現実を知った途端に、吐き気のままに吐き出した。

 

 

魔術とは人の為にあるものなのか、それは愚かな俺には分からない。結局のところ魔術は魔術でしかなく、それを扱う人間が十人いれば十通りの使い道があるのだろう。

 

だが少なくとも、俺の一族は人の為になんてならない。おぞましい程に独り善がりで、自らの力の誇示とか利益とかにアホみたいに執着する。アホ共の集まりの割にセコさと魔術の腕だけは一級品で、手のつけようのないアホ一族にまでなっている。

 

「──素に銀と鉄」

 

あんなごみ溜めを正義の味方一族だなんて信じていた時期があったなんて、忘れたい過去だ。

 

「礎に石と契約の大公」

 

忘れたいと言うよりは、消し去りたい。あの頃の自分を否定し、そんなものに手を汚す事のないままの人生を送りたい。

 

「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

だが、そんな事は不可能だ。仮に時を巻き戻して、あの頃をやり直し、魔術と関わりの無い人生を送ったとしても、俺はもう知っている。

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。」

 

あの家の所業を既に知り、俺は確かな怒りと哀しみ覚えた。ならばもう、戻れない。もし事象は改変できたとしても、感情は操れない。ずっと奥の方で残り続ける。

 

「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する。」

 

ならば俺はこの感情に従おう。感情のままに、否定しよう。

 

「告げる。汝が身は我が下に。我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

俺は俺の願いを成す。万能の願望器、聖杯を手にし其の力を以て。その為に戦い、そして勝つ。

 

「誓いを此処に。我は常世総ての善となる者、我は常世総ての悪を敷くもの」

 

さぁ、その為にも、共に戦う相棒の顔を拝むとしよう。

 

「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の……守り手よ──!!」

 

地面に描かれた魔法陣が強く発光し、夜の闇に包まれる森が強烈な光に包まれた。

 

暫くして光が止み、そこには先程まで存在しなかった人影が、サーヴァント召喚、その儀式の成功を意味していた。

 

深く頭を垂れる赤髪の女性はゆっくりと顔を上げ、その鋭くもなく、妖しくもない、只々強い瞳で、俺の眼を覗き込んだ。

 

「サーヴァント、バーサーカー。召喚に感謝します。マスター」

 

「バーサーカーか」

 

狂戦士のクラスまさか専用の詠唱も無しに引き当てる事になるとは。狂化して理性を失った英霊が召喚されると思っていたが、見たところ、普通に会話はつうじるようだ。

 

「お前のマスターになる、阿野 拒(あの こばみ)だ。バーサーカー」

 

跪いたままのバーサーカーに手を差し出す。一瞬驚いた顔をしながらも、彼女は俺の手を取り立ち上がった。

 

「こう見えて魔術の腕とセコさは一級品の名家の出だ。それなりに期待してくれ」

 

さぁ、開幕だ。




裏話:「あの家」と入力したら、「阿野家」と変換予測が出た。

──故に、阿野拒。
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