前半グダグダ注意
~四ヶ月前〜
「どうも、待たせてしまいましたか?」
3月。
冬が終わり、漸く暖かな日が差し込む頃。
僕は同じ大学の親友達との休暇を楽しんでいた。
「うんにゃ、時間ぴったし。俺らが早く着き過ぎてただけだから心配すんな。」
「流石、大学一の真面目君と言われるだけあって、キッカリしてるっすね。」
「何ですかそれは。」
あまり嬉しくない賛辞に、つい苦笑いしてしまう。っていうか何だよ大学一の真面目君って!
「まーまー。とにかく全員揃ったんだし、早く行こ?」
そう言ってコテンと首を傾げるのは、親友の彼女であり、大学サークルの先輩でもある女性。僕らのマドンナ的な存在でもある。
年上の筈なのに全くそう見えなくて、小動物のように小さく愛くるしい。それでいて頼りになる素敵な人でもある。
今日の進級祝いパーティを立案してくれたのも彼女である。全く頭が上がらない。機嫌を損ねない内に、さっさと移動してしまおう。
ちなみにメンバーは、僕含め男性3人、女性1人となっている。
「しかし……3月とはいえまだ肌寒いな。」
「風も結構キツいね。もしかして春一番かな?」
「俺らはともかく、先輩は早く店に入った方が良さそうっすね。見てるこっちまで震えてきそうっす。」
「そして連れ込まれた先でわたしが食べられちゃうんだね。キャッ♪」
「しねーよ! しても俺だけだよ! アンタホントにブレねぇな!」
「乙女ゲーで培ったわたしの知識を舐めちゃいけないよん?」
「ドヤ顔で言うことじゃないでしょう……」
往来でかなり危ない発言をする彼女、実は重度のオタクである。昨日もイケメンを5人も落としたらしい。そのゲーム昨日配信でしたよね。乙女ゲー廃人コワイ……
「なんだよなんだよー。君だってわたしの同類じゃないかー。」
「な、何のことでしょうカ。」
何と、矛先がこちらに向いてしまった。僕は乙女ゲーなんてやったこと無いんですがね。
「とぼけたって無駄だよん。サボテン見つめながらギャルゲーキャラの名前連呼して――」
「さぁ、行きましょうか。(ニッコリ)」
彼女の言葉を無視して僕は先を急いだ。
うん、何も聞いてない。聞こえてないったらないっ。つーか何で知ってんの!? え、見られてた!? 現実で触れないって点がサボテンに似てるってことで、好きなキャラの顔をサボテンに幻視しながら囁いてたの見られたの!?
いや、落ち着け。ここで狼狽えたら2人にもバレる。それだけは避けねば……!
「お前……バレてねぇと思ってたの?」
「今更っすよねぇ。」
バレテーラ。
あながあったらはいりたい。
「隠してるつもりなんだろうけど、全然隠せてなかったよ。」
「最初はそうでもなかったけど、あれだけサボテンを見つめてたらなぁ。時間あったら見てただろお前。」
「極めつけはアレっすね。手の動きがめっちゃエロ――」
「いぁああぁあっ!!??」
もう止めてぇ! 僕のライフは0よぉ!
つーか僕も僕だよ! 自覚無かったけど周りから見たらただの変態じゃねーか! よくこんなんで隠せてると思ったな馬鹿野郎!
「ま、お前がただの真面目君なら、俺らはこうしてつるんで無かっただろうけどな。」
「そっすよー。人間誰だって好きな物はあるんすから。むしろ男子なら健全じゃないっすか?」
そうだろうか。そうなのか。うん、そうだな。それなら仕方ない。
正直バレてたのはすっごい恥ずかしいし辛いけど、それを知ってて友達として接してくれている2人には感謝だ。今度何か奢ってあげよう。
「ギャップ萌え……グへへ、チョロインの気配だねコレは……!」
先輩にはナシなっ!
「さーて、そろそろお店に着くよん♪」
「わかったからはしゃぐな。コッチが恥ずいだろうが。」
「ホント先輩って年上なんすかねぇ?」
「レディに失礼ですよ。」
あれから20分程歩き、漸く目的地が見えてきた。子どものようにスキップしながら歩を進める先輩は、とても年相応に見えない。絶対口にしないけど。ほら、この口かー!ってほっぺた抓られてるし。巻き添えを喰らわないうちにさっさと離れよう。
それにしても風強いな……
「遊んでないで早くしろよ。こんだけ風キツいと何か飛んできちまいそうだ。」
「イテテ……。確かに凄い風っすけど、そんなに心配しなくても……」
「おーっと、フラグ的な発言頂きました! 立ったかな? 立っちゃっ《バキンッ!!》」
一際強い突風が吹き荒れ、何かが折れる音がした。見事にフラグ回収ですね。ちっとも嬉しくありません。
何が壊れたのかと周りを見ても、それらしい物は見当たらない。一体どこで――
「っ! 上だっ!」
その声にハッとして上を見上げると、大きな看板が落ちてきている最中だった。3人に向かって。
「ひっ……!」
2人は逃げようとするが、先輩は小さく悲鳴をあげ、その場を動かない。足が竦んだか!? くそっ! 間に合え!
……おぉっ! 先輩を抱き抱えたか親友2人よ! 後はそのまま離れ……ってコケた!?
ヤバいヤバいヤバいヤバい!!!!
「うあぁぁあああっ!!!!」
――どうなった……?
確か……3人を突き飛ばして……
あれ、僕横になってる……? 何か……体の感覚が無いし……世界が赤い……
「―――っ! ―――ぃっ!」
ん……声、誰……?
「――か…ろっ! ぉいっ!」
「目を開けるっすよっ!!」
あ……よかった……。ちょっとケガしてるけど、2人は無事だったんだ……
「先…輩は……」
あれ……声が出にくいや。 寒いからかな……ホント寒いや……
「わたしも大丈夫っ! 今救急…呼…から! 死…じゃダ……ょっ!?」
そうか、先輩も助かったのか……。良かった……
……おかしいな……何か視界がボヤけてきた……それに耳も……
ダメだ……ダメだ……しっかり、しないと……
あぁ、限界なのかな……幻覚みたいなのが見えるや……
綺麗だな……くっきり見える……女神みたいだ……
『女神ですが。』
…………………はい?
『だから女神だと言ったんです。』
え、ちょっと待って。え? 本物? ドッキリじゃなくて? そもそも何でこのタイミングで?
『私は神と呼ばれるモノ。つまり死神でもあるのですよ。』
あぁ、成程。
ということは。そっか……
『はい、貴方はもう助かりません。』
やっぱり。まぁ、何となくそんな気はしたけど。
でも、3人が無事なら良かった。
『これ程の苦しみを感じても、最後まで他人の無事を喜びますか。なんと素敵な自己犠牲愛なのでしょう。貴方のような人を失うのは悲しいですね。』
女神様……。僕なんかの事で心を痛めてくれるんですね。優しい神様だ。
『不思議な方。貴方の死を確定させる私を、優しいと言いますか。その言葉は、そのような考えを持つ貴方にこそ相応しいでしょう。』
勿体無いお言葉ですね。本当の自分を隠す為の、理想を演じていただけなんですがね。
『それでもです。貴方の続けたその努力は、既に貴方自身と一体。紛れもない本心から来ているのですよ。』
っ……。そう、ですか。そう言ってくれるのですか。僕は……僕になれてましたか……っ!
『……一つ、提案があります。新しい世界に生きてみませんか。』
えっ……?
『貴方ほどの人を失うのは惜しい。けれどこの世界で引き続き生きようとすれば、間違いなく不自由な生活を強いられます。そこで、こことは違う世界で二度目の人生を送るのは如何でしょうか。』
それって……転生というヤツですか?というか可能なんですか?
『私は死神でもありますが、裏を返せば生命の神でもあります。意味は分かりますね。』
な、なるほど。確かに命を扱うならそれくらいは出来そうですね……。
でも、転生か。まるで物語の中の話みたいだな。
『人の考えで辿り着ける領域は、神は実現させるのですよ。』
凄い、流石神様。
じゃあ、お願いします。
『分かりました。向こうの世界に行くにあたって、何か要望はありますか。』
いえ、新しい命をくれるんです。それだけで十分ですよ。
『実に素晴らしい。その精神に感心致しました。私からの贈り物として、貴方が一番望む物を授けましょう。』
あ……ありがとうございます……。
おかしいな、結局貰えることになっちゃったよ。
でも、望む物かぁ。
何かそう言われたら色々浮かんで来たぞ!
アニメキャラの能力? それとも凄い道具類とか? はたまた両方? まさか二次元のキャラクターをそのまま現実にとかも出来るのか!? うわぁぁぁヤバい、可愛いは正義だよ!
女神様は一体どんな贈り物をしてくれるんだろうか。あーもう、期待で胸が膨らむ!
『喜んで頂けたようですね。では――』
あ、ちょっと待って下さい。
『何でしょうか。』
最後に。皆に、親友達に別れを言いたいんです。お願いできますか?
『ふふっ。貴方には最後まで驚かされますね。もちろんいいですよ。私が助力致します。』
ありがとうございます。
「くそっ! 救急車はまだ来ねぇのかよっ!」
「死んだらダメっすよぉっ!」
「お願いだから起きてよっ!」
あぁ、さっきまでと違ってよく聞こえるなぁ。
体に力は入らないけど、2、3言くらいなら喋れそうかな。
「み…んな……」
「っ! おい、大丈夫か!」
「ごめ…んね…」
「な、何言ってんすかっ」
「ありがとう……!」
「や……やだよ? 嘘だよね? ねえってば!?」
ありがとう、皆。
ありがとう、女神様。
『いいのですね? では、ゆっくりおやすみなさい。』
はい――
「おはようございます。」
長い眠り……だったのかな。僕は目を覚ました。
目の前に広がるのは何処までも青く高い空。
流石に赤ん坊スタートじゃなかったんだね。良かった。
だけど気になる点が一つ。
僕の声ってこんなんだっけ?
「あー、あー。うわ、めっちゃ高い。」
新しい命だから、前とは違うだろうなと覚悟はしてたけども。声変わり前なのかな?
「手も小っちゃ! 成長期まだ来てないのかな……」
立ち上がってみると、爪先が前よりずっと近くに見える。ちょっとショック。
「あ、でも凄い体が軽い。物理的にも軽いだろうけど。」
試しに少しだけジャンプしてみた。
めっちゃ上がりました。めっちゃ怖かった。
「……この体でやっていけるかな……」
初っ端から不安だらけだよ……
まぁそれは置いといて。
「ありがとうございます。女神様。」
『いいえ、礼には及びませんよ。』
女神様、今僕の隣にいます。
『不思議ですか。私が此処に居るのは。』
「あ、いえ。そんなことは。ただ、ちょっと見とれてました。」
だって女神様、めっちゃ綺麗なんですもん。
さっきまでは死にかけでちゃんと見れてなかったけど、ぶっちゃけどストライクです。
『褒めてもお金しか出ませんよ。』
予想外の返答! 僕の中の女神様像が崩れちゃう!
『今の貴方はこの世界の物を何も持っていません。そのままでは暮らせないでしょう。ですから、必要な知識と資金を与えます。』
「ありがとうございます。女神様大好きです!」
恐ろしく速い手のひら返し。僕じゃなきゃ見逃しちゃうねっ。
女神様が僕の頭に触れると、次の瞬間には、まるでこの世界でずっと暮らしてきたのだと錯覚する記憶が植え付けられていた。
『知識と同時に記憶も少しだけ追加しておきました。知っているだけと、体験済みとでは馴染みが違いますから。』
「ここまでして貰えるなんて……。貴女には感謝してもしきれません。」
『私は貴方から、人の素晴らしさを見せて頂きました。どうか、これからもソレを忘れずに生きてください。』
「必ず。」
『では、私が干渉出来るのはここまでです。貴方の第二の人生が実りあるものとなる事を願っています。』
一陣の風が吹き、僕は目を瞑ってしまう。
次に目を開けた時には、もうそこに女神様の姿は無かった。
「ありがとうございます。」
先程まで女神様が居た場所を見つめ、僕は暫くの間、精一杯の感謝の念を吐露した。
「さて、色々と確認していきますかね。」
知識や記憶はあるけれど、実際に自分の目で見た訳じゃない。今の内にやれることはやっておくのだ。
何でもここはファンタジーな世界のようで、今までの常識なんて全く役に立ちそうにない。
「えっと、【ステータス】オープン。」
僕の言葉に反応して、空間に半透明なディスプレイが現れる。おぉぅ! 何コレカッコイイ!
「どれどれ?」
初のステータス確認だ。しっかり隅々まで見とかないとね。確かこの世界の平均は50~100なんだっけ。
【リミット・エフスラ】(Limit Efsla)
性別:男
年齢:14
身長:140cm
特記:転生者
【ステータス】
身体力:380
生命力:630
攻撃力:250
防御力:320
走行力:240
機転力:230
テンション:70
【スキル】
『女神の微笑み』
……………………はい?
あれ? 桁一つ見間違えたかな?
……見間違いじゃない。うそん。女神様サービスし過ぎじゃない?
「マジかー……。それにしても。」
【リミット・エフスラ】
これが僕の名前か。横文字って何かテンション上がるよね!
テンション:
おっと。リアルタイム更新とか無駄に高性能だね。
基本のステータスはRPGとかやってると大体わかるけど、このテンションというのは珍しい項目だ。
内容としてはこんな感じだ。
【テンション】
・高揚度、又は集中力
・100が最高
・スキル等で100以上になると身体リミッターが解除され、ステータス以上の動きができる
うん、かなり重要度が高そうなステータスだ。
やり用によっては自分の意思で火事場の馬鹿力が出せるようなもんだね。反動すごそうだけど。
「次はスキルか。」
正直、名前の時点で女神様がとんでもないモノをくれてる気がしてならない。心してかかろう。
【スキル】
『女神の微笑み』
スキル熟練度【0】
効果:期待で胸が膨らむ
分類:アクティブ
消費:生命力40
条件:笑顔
説明:発動時にテンション+100
1ヒット毎に攻撃力1.01%増加
解除:任意
ぶはっ!?
何ぞこれ!? ヤバくない!?
発動するだけでもれなくリミッター解除出来るんですけど!? 僕リミットなのに名前負けしてるじゃん!
それに加えて攻撃力が右肩上がりしていくとか……。時間制限も無さそうだし長期戦なら敵無しなんじゃないかな……。
しかもこれだけのぶっ壊れスキルの発動条件が、笑顔だけでいいなんて。
「流石女神様。僕の予想を遥かに上回る素晴らしいスキルです。ありがとうございます!」
さて、これで後確認してないのは持ち物くらいかな。
何が出るかな。
【持ち物】
・10,000,000リヴ
・手鏡
お金持ちやー!
ホントに何も持ってないけど、これだけあれば必需品は全部揃えれそうだね。女神様奮発し過ぎです。物価は日本と変わらないんだよね?
手鏡の方は……お。思い浮かべたら手の中に物質化するのってこんな感じなのか。
「高級感溢れるデザイン。いい品だね。後は僕の顔だけど……。えっ…………」
恐る恐る鏡を覗き込むと、女神様に負けないくらいの美少女と目が合った。
誰? この女の子。鏡の精か何か?
え、嘘。僕と同じ動きしてる……えっ……えぇっ!
「な、なんじゃこりゃぁぁっ!!??」
どういうことなの女神様ぁっ!!?
『?』→×
『!?』→×
『!』→◎
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