ひでぶっ
オープニング「KILL THE FIGHT」
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「さて……それではこれに耐えられるかな、脳無よッ、ふははははっ!!」
調子に乗ったアミバが、脳無の秘孔をデタラメなように見えて結構的確に乱打する。
その凄まじい破壊力は、脳無の驚異的とも言える再生能力を上回った。
その結果、脳無は細胞一つ残さず、塵へと還っていった。
「……んん」
風とともに消え去る脳無を前にしアミバが、顎に手をやりながら思案する。
「ふむ、流石に細胞レベルまで分解すると死んでしまうか……」
ちなみにアミバの突いた秘孔は、全身の細胞をオートファジー化させるというものだ。
オートファジーとは、細胞が自己のタンパク質を分解してしまう事を言う。
そして暗殺拳である北斗神拳の技には、他にもアポトーシスやネクローシスと言った細胞死を引き起こす秘孔も存在するのだ。
「……脳無よ、お前は最高のデクだった。だからせめて、天才である俺がお前のために歌を捧げよう」
そう言うや、突然、その場で熱唱し始めるアミバ、歌うのは友川かずきの『木々は春』だ。
歌い狂うアミバを目の前にし、ヒーロー、ヴィラン問わず、その場にいた全員が目を丸くしていた。
そして全員が認識した。こいつはガイキチだと。
その間に助けを呼びに行った飯田が、他の教師陣を連れて戻ってきた。
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ジャギが温くなったコーヒーを啜る。まるで風味豊かな泥水のような味わいだ。
コーヒーメーカーが不調で、かつ、コーヒー豆自体が粗悪なせいだろう。
その味は例えるならば『世紀末ブレンド』といったところか。
「警察の奴ら、根掘り葉掘り聞きやがって、うざったくてしょうがなかったぜ」
「確かにな」
アイスティーの氷をストローで掻き回しながら、アミバが頷いてみせる。
「でもさ、しょっ引かれなくて良かったじゃんか」
アミバの隣に座っていた峰田実が言う。
「そうよ、下手すれば退学&少年院行きだったかもしれないんでしょ。いくらヴィランとは言え、あれだけ殺したんだもの」
ジャギの横に居た蛙吹梅雨が、峰田の言葉に同意した。
「へへ、まあな。なんだかんだで、俺ひとりでも十五人くれえぶっ殺したか」
空になったコーヒーカップをソーサーの上に置き、ジャギがゲラゲラ笑ってみせる。
食堂に居並ぶ生徒達は、そんな彼らに決して近づくことなく、出来る限り気配を殺していた。
それはそうだろう。
頭のネジが、一本どころか三本ばかりぶっ飛んだ大量殺人鬼コンビが、自分達の利用する食堂に居座っているのだから。
あれからふたりは、警察から事情聴取を受けた。
そのまま取調室に連行され、数日ほど尋問を受けていたのだ。
もっとも、アミバとジャギが警察の取り調べに対し、まともに答えるはずもなく、やった事といえばそれは誘導尋問だろうがと、テーブルを蹴飛ばし、
質問はノラリクラリとはぐらかし、腹が減ったとカツ丼をたかったくらいだが。
「警察や検察の方も過剰防衛で、俺達を家裁に送って少年審判させるのが狙いだったようだがな。残念、フタを開けてみれば審判不開始だ」
アイスティーを飲みながら、アミバが唇を歪ませる。
「ヒャハハッ、あるいは検察官送致まで狙ってたかもしれねえな。まあ、今となっちゃ、どっちでもいいけどよ」
少年事件の場合、まずは犯人である少年らを検挙した警察や検察機関が、家庭裁判所に発生した事件を送る。
次に家庭裁判所が未成年者の起こした事件を調査し、そこで事件性が皆無ならば審判不開始の決定が下される。
逆に事件性があると判断されると、少年審判が開始される。
そこで下されるのが、不処分、知事又は児童相談所長送致への送致、保護処分、検察官送致になる。
『不処分』は無罪、あるいは有罪でも軽微な罪だから特に処分しないという事だ。
『知事又は児童相談所長送致への送致』は、未成年者を児童福祉機関に委ねたほうが良いと判断された場合に講じられる。
『保護処分』の場合は、保護観察、少年院送致、児童自立支援施設等送致のどれかの決定が下される。
そして最後の『検察官送致』は、事件の内容や少年の非行の度合い等から、保護処分よりも刑事裁判で処罰するのが妥当と判断された場合に決定される。
この場合は、家裁から検察官へと事件が移行し、通常の刑事手続きになる。
『検察官送致』は強盗殺人や強姦殺人、放火などの凶悪犯罪等でなければ、滅多に行われないが、今回のケースでは、
いくら凶悪なヴィラン相手とはいえ、アミバもジャギも大量殺人を犯している。
もしかしたら過剰防衛で少年院送致か、あるいは検察官送致で傷害致死として起訴されれば、少年刑務所コースもありえたかもしれない。
だが、十五歳という年齢と、持ち前の悪運の強さでどうにかなってしまったのだった。
アミバとジャギというこのふたりの男は、昔からそうだった。
こういう場合の悪運は、恐ろしく強い。
「あるいは政府がヴィラン殺しを黙認しているのかもな。建前はともかく」
と、言葉を漏らす峰田、あるいはそうなのかもしれない。
法律上はともかく、世論がそういう方向に向かっているのだろうか。
「あるいはその内にヴィラン専門の殺しのライセンスなんてものが発行されるかもしれんな、くくく……」
純粋に濁りきった眼をアイスティーに落とし、アミバは不気味に笑った。
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休みの日なので、四人で待ち合わせして出掛けた。
向かった先は駄菓子屋だ。
だが、その駄菓子屋はただの駄菓子屋ではない。
この駄菓子屋には、なんと、ワンプレイ十円で遊べるレトロゲーム機がズラリと並んでいるのだッ!
「おーい、アミバ、インベーダーゲームやろうぜ」
峰田がアミバに声をかける。
「ふ、インベーダーゲームか、よかろう」
スタンド型の筐体に立ち、投入口に十円玉を投げ入れるアミバ、ゲームが開始されると速攻で名古屋撃ちをはじめる。
「おおっ、すげえじゃんかっ、アミバっ、UFO乱れ打ちかよっ」
「ふはははっ、俺は天才だァっ」
そして梅雨とジャギはというと、こちらはディグダグをプレイしていた。
二人がモリを突き刺し、北斗神拳よろしく膨らませて敵に次々に破裂させていく。
ディグダグに飽きて、新しいゲームを探しはじめると、梅雨が「カエルのゲームがあるよ」とジャギに言った。
よく見ると、それはフロッガーだった。
カエルの個性なだけあって、こういうものには目ざとい。
小腹がすいたので一旦休憩し、四人で駄菓子を買って食べる。
飲み物は勿論、松永ジュースことポリジュースだ。
コーラ味、サイダー味、グレープ味などを飲みつつ、うまい棒を齧ると、そこに待っているのはレトロ感溢れる昭和の世界だ。
四人はそのまま、夕方になるまで駄菓子屋で遊んだ。