アミバとジャギの珍道中アカデミア   作:たきざわかい

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聖帝様のお通りだっ

オープニング「Blood Red Sandman」


悪霊の罠

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そのまま放置されている錆びた設備や床に転がった備品を避けながら、ジャギ一行はハンディライト片手に探索を続けた。

正直、ロクなものがない。

 

「何か出てくりゃ面白いんだがな」

 

と、ジャギがぼやいた。

暗闇を照らすハンディライトの光は、一点のみをやけに明るく際立たせた。

 

その癖、工場内は全体的に闇に包まれている。

 

「私はできれば、何も出てこない方がいいのですが……」

 

少々青ざめた顔を浮かべている八百万が、か細い声で呟いてみせる。

 

「大丈夫か、八百万?こういう時は歌でもうたって気を紛らわせるに限るぜ」

 

 

切島が血の気の失せた表情をしている八百万に向かって、心配そうに声をかけてやる。

 

切島の性格は間違いなくイケメンだ。

 

 

「よし、じゃあ、俺が歌を聴かせてやる」

 

 

「へえ、ちなみにジャギが歌うのってどんなジャンルだよ?」

 

「上方民謡だな」

 

「おお、渋いじゃんかっ!」

 

そして、そのままジャギが歩きながら、胴間声でがなり立てるように歌いだした。

 

 

 

夕べ島原で姫を十人ばかり、買うてみたではないかいな。

 

たこにきんちゃく、かわらけ、かんぬき、あたごやま、上つき、下つき、けながにまえだれ、中でも良いのが饅頭ボボ。

 

タンスの引出し、引き開けて、紙出せ、紙もめ、紙持ってこい。

 

他人でも三番すりゃかわいうてならぬ。

 

中細りのキュウリマラ、くるりと入れたらば、ハアハア、良か良か、泣く泣く、持ち上げた。

 

嘘で涙が出るならば目にツバつけて、泣かしゃんせ、泣かしゃんせ。

 

 

 

「……なんつう歌だよ」

 

「下品ですわ……」

 

歌の内容に唖然とする切島と八百万。

 

「こいつは江戸末期から明治に流行った上方の座敷歌だ。これでも立派な民俗学、言ってみれば無形文化財の一つなんだがな。

やれやれ、そんなこっちゃ、偏差値七十九が泣くぜ」

 

と、二人に対してジャギが減らず口を叩いてみせる。

 

 

ジャギは教師だろうが生徒だろうが、学園内だろうが街中だろうが、万事が万事、こんな調子だ。

 

 

 

何を言ったところでのれんに腕押し、糠に釘、教師陣からは、下劣な品性の持ち主という烙印を押される。

曰く、ヒーローの評判を貶める奴、曰く服を着て歩いている下品の塊。

 

それでもジャギは気にすることなく、毎日アミバと好き勝手にしていた。

 

 

 

だから切島と八百万が、ジャギに出来ることといえば、黙ってため息をつくくらいなものだ。

 

 

「おう、おう、どうしたんだよ、二人共、溜息なんぞついてよ。いいか、俺の話をよく聞けよ。

俺やお前らは、何も木の根っこから生まれてきたんじゃねえぞ。みんなお袋の股ぐらの間から生まれてきたんだ。

つまりはみんなやってることよ。お前らの親父とお袋が、えっちら、おっちらと毎晩励むから俺達はこの場にいるんだぜ。

俺の言ってること、どっか間違えてるか?」

 

「まあ……言われてみれば、その通りなんだけどよ……」

 

「でも、もうちょっと言い方があるのではないでしょうか。もう少しオブラートに包んで表現するとか……」

 

 

「は、歪曲的に表現しようが、直裁的にぶちまけようが、所詮、ナニはナニだ。それ以上でもそれ以下でもねえやな」

 

そう言いながら、人差し指と中指の間に挟んだ親指をジャギが、八百万の鼻先に突きつける。

 

 

「いやァっ、そんなの見せないでくださいっ」

 

頬を赤らめて、いやいやと恥じらう八百万に対し、ジャギがげへへと、卑しい笑い声をわざらしくあげてみせた。

 

 

「また、ぶりっ子しちゃってよ。おう、切島、お前こういうあざとい女、どう思うよ?」

 

ジャギの問いかけに、苦笑いを浮かべる切島。

 

どう返答すればいいのやら、考えあげねているのだろう。

 

 

 

「うーん、俺は恥じらいのあるタイプの方が好きだけどな……」

 

と、切島が当たり障りなく無難に答える。

 

「なるほどな……切島よ、お前、悪い女に騙されるタイプだな」

 

「な、なんだよ、いきなりっ」

 

「お前は女の涙やぶりっ子にころりと引っ掛けられるタイプだ。間違いねえ。でもよ、よく考えてみろ。

八百万だってな、あと五年もすりゃ、ぶりっ子なんて見たくもなくなるわな。

二十過ぎてブリッ子する女なんざ、うんざりするだけだわな」

 

「ちょ、ちょっとっ、私を話に巻き込まないでくださいっ」

 

「へっ、俺は事実を言ってるだけだぜっ」

 

「……ジャギは屈折してんな」

 

「おうっ、自慢じゃねえが、俺は頭の天辺から足の先までねじ曲がってんだっ」

 

「……何か女性に対してトラウマでもあるのでしょうか?」

 

 

「ヒャハハハっ、何とでも言えっ、だがな、所詮は男と女なんざ、騙し、騙されが世の常よっ」

 

高笑いをあげながら、ジャギがホルスターから引き抜いたショットガンを天井目掛けて打っ放すっ。

 

そして中腰に構えると、暗闇に向かって叫んだっ。

 

「おう、そこのテメエっ、それ以上俺達に近づくんじゃねえっ」

 

 

北斗神拳の使い手であるジャギの感覚は、鋭さを通り越して、もはや異常と言えるほど発達していた。

 

 

「……おい、ジャギ、誰かいんのか?」

 

警戒するように切島が、手足を硬化させる。

 

 

「ああ……お前ら、すぐに行動できるようにしておけ」

 

「……わかりましたわ」

 

三人が臨時体制を取ると、それは暗がりからノソリと現れた。

 

 

「……こいつは、一体何だ?」

 

それは一つ一つが、人間のパーツで出来た巨大な肉塊の産物だった。

 

人体を縫い合わせて出来たグロテスクな怪物だ。

 

 

怪物が口を開く。

 

 

「あら、元気そうな獲物がやってきたわ。あたしのお人形にするか、それともパーツにするか、悩ましいわねえ」

 

「は、テメエみてえな化物に興味はねえぜ」

 

「まあっ、酷いわねえっ、お姫様に失礼よっ、あたしの名前は汚芽子っ、人は呼ぶっ、愛顔姫(キューティー)っ」

 

 

叫びながら三人に突進する破芽子っ。

 

ジャギはカウンター狙いで破芽子を蹴り飛ばした。

 

「テメエのどこがキューティーじゃいっ!!」

 

ゴムボールの如く壁に打ち付けられる破芽子、だが、オホホホと笑いながら立ち上がってくる。

 

「お姫様に向かってご挨拶だわねっ、でも、積極的な殿方は嫌いじゃないわァッッ」

 

「俺の蹴りが全然効いてねえな」

 

 

「オホホホッ、あたしの一部におなりなさいなっ、それこそが究極の愛よっ」

 

「テメエのパーツなんざ、御免こうむるぜっ」

 

汚芽子目掛けてショットガンの散弾を連続で浴びせ、ジャギが手足を粉砕していく。

 

飛び取る手足の肉片が床や壁に跳ね上がり、そこら中に散乱した。

 

だが、吹き飛ばされた手足が再生していく。

 

こいつは再生持ちの個性でも持っているのかと、ジャギは舌打ちした。

 

だが、そんな思いとは裏腹に股間はホットだ。

 

今にも目一杯隆起し、脈打つナニが、ズボンのジッパーから飛び出しそうになっている。

 

そう、ジャギは重度のハッピートリガーだった。

 

「ヒャハハっ、腐肉は清掃だァっ!!!」

 

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