鳥ウナギ骨ゴリラ   作:きりP

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15 わらしべ長者

「ふふっ、漢の顔をしておりんしたな。アルベドを崇拝しているのが笑えてくるでありんすが」

「なんとでもおっしゃい。これで一人目は排除完了ね……あとは距離が近いのはニニャかしら」

 

「え?」

「モモンガさん気づいてなかったのか? あいつ女の子だぜ、()()が違うからな。まあなんかあるんだろうし指摘はしてないけど、他のメンバーも気づいてるんだろうしさ」

 

 変態的な特技を持つペロロンチーノさんはともかくみんなすごいな、確かに先日の会食で魔法談議に盛り上がってしまいましたが全然気づかなかったよなんて会話をしながら、一行は商業地区画へと歩いて行く。

 途中またしても『軒先から降ろされたらしいぜM字』『あぁ強制M字開脚の』なんて声も聞こえたが華麗にスルーするのはお約束でもあったり。

 

 ンフィーレア曰くよくそんな大物と知己を交わせましたねと驚いていたが、バルド・ロフーレと言う人はエ・ランテルの食料取引の多くを担う有名な商人なんだそうな。

 そして到着してみればその店のでかいことでかいこと。マーケットスペースは元より多数の荷馬車が出入りする倉庫区画なども併設しており規模が半端ない。

 もちろん商売をするつもりではないので小売り店舗の方を見学していくのだが、その商品量に圧倒される程だ。

 

「これが全部食料なんだなあ……食肉はわかるけど他の野菜なんかは色とりどりで綺麗なものですね」

「画像的知識はあったけどこうやって実際に見ると楽しいな!」

 

「見た目で味の想像がつかんでありんすなあ」

「そうね、試食……いえ調理法なんかを、あら? あの方ではないかしら、モモンガ様?」

 

 見られているのは分かっていたがやはり私たちは目立つらしい。他の職員から伝わったのか、ロフーレさんと付き人の方達がやってくるのが見えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいません我儘を言ったようで……妻たちも喜びますよ」

「あいつら料理が好きなんで……いや趣味になってくれたら嬉しいなあって思うから助かりました」

 

「いえいえ、お代は頂いてますので……いや、こういった食事の提供方法も面白いですな。やはり異国の方と接すると新たな発見があり刺激になりますよ」

 

 現在小売店舗に併設している飲食店のVIP席らしき所で料理を頂いているのだが、モモンガとペロロンチーノはロフーレさんと普通に会食を。

 隣の席ではあるがアルベドとシャルティアはテーブルに大量の食事を用意してもらい、ワゴンで運ばれてきた食材を説明されながら試食を行っている。

 

 食材の購入も目的の一つであるが、フルーツなのか野菜なのかもわからない食材の数々に困惑しており、アルベドがこんなことは出来ないでしょうかと問いかけてみれば快く了承してくれたのだ。……多少頬が赤くなっていたのは仕方が無いが。

 

「それで馬車はいかがいたしますか? 伝手がございますのでご紹介することは可能ですが」

「いえいえ私たちではとても手がでませんよ」

 

 なんて軽い食事を頂きながら談笑をしていると、白い制服を着た一人の老齢な男性がワゴンを押してやってきた。どうやらメインディッシュ、先ほど渡したお肉の調理が完了したのだろう。

 

「お前が出てくるとは珍しいな料理長」

 

 料理長と呼ばれた男はロフーレに鋭い視線を送ると、私たちを見て納得がいったような顔をして語りだす。

 

「なるほど異国の方だったのですか……失礼致しました、私料理長を務めさせていただいている者でございます。この度は大変すばらしいものに触れさせていただき感謝の念に堪えません。どうぞ、こちらになります」

 

 私たちの目の前に出されたのは綺麗な皿に盛りつけられた……単純と言っても過言ではないのだろうが分厚いステーキだった。

 

 本来はロフーレさんは遠慮するつもりだったのだろう。それはそうだ、中空から突然現れた一メートル四方の肉の塊など不思議を通り越して恐怖の対象であったかもしれない。『私たちの国に伝わる収納の生活魔法です』とフォローはしたが、それとこれとは別問題だ。困惑気味に料理長を伺うロフーレさんだったが、彼は笑顔でこう告げた。

 

「店長……いやバルド、お前も食べてみろ。これを食べないなんて人生の損だぞ。私の50年の料理人人生をかけて保証する」

 

 その言葉に負けたのか、目の前の料理の香しさにやられたのか。恐る恐る肉にナイフを通すロフーレさんや私たちだったが、あまりにも抵抗感なく切れる肉にこれまた驚愕してしまう。

 一口また一口と咀嚼していく五人だったが、最初に言葉を発せたのは女性陣だった。

 

「これほどまでに違うのでありんすか……完敗でありんす」

「私たちはまだ食したことは無いけれどナザリックの美食に近いのだと思うわ。料理長ありがとうございます」

 

 若干悔しさも含ませてはいるが異形種の彼女たちの最大限の賞賛がそこにはあった。もちろん男性陣の方もであるが、

 

「すごい美味しいなあ……多分筋力アップかな」

()()()()()方なんでしょうね、そこまでの効果は無いかもしれませんが驚きです」

 

 おいしおいしいと食べてはいるが嫁の手料理を超えるものは感覚的に無いらしく、冷静に分析が出来てしまうぐらいの美味しさにとどまっていたりする。

 

「……神の料理だ」

 

 ロフーレさんにとっては四人を超えるほどの感動であったようで、打ち震えながらも食事の手は休まらない。

 

 

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

「こんな物でよろしいのですか? 型は落ちますし一月ほど頂ければ最新式の物を用意できますよ」

「いえいえ十分ですよ! 私たちの方が恐縮しちゃうくらいで」

 

 なんというか結果的にあの食肉が馬車になった。なんでも料理長が言うには<保存(ブリザベーション)>の魔法と冷凍倉庫で最大一年は持つらしく、あの一枚でステーキ二百食は軽いと告げられたロフーレさんは商談モードに。

 お肉を一枚二枚と数えていいのか謎ではあるが、ざぶとん大の食肉十枚を交渉に金貨千枚で手を打つことにはなったのだが、すぐに手に入るなら馬車と交換とか出来ませんかね、なんて要求にすぐさま答えられる彼はまさに大商人であった。

 ロフーレにとってもあのステーキ一皿で金貨一枚出してもいいという輩は相当いるはずだと考察しており、商談の一歩としての半値交渉であったのだが、あっさりとそれを飲まれて困惑してしまう。

 自身が使用している馬車を用意したのだが、少々申し訳ないような気になっていた。

 なおついでだが、『馬はいりませんので』と言われて召喚された大型騎馬を見せられて、こんな規格外な大得意を相手にこれでは本当にぼったくり商人になってしまうと危惧したロフーレは、馬の差額としては破格な金貨五百枚を付け足すことを勝手に決めて支払っている。

 

「紹介状も書いていただいたり、ありがとうございます」

「いえ、『黄金の輝き亭』は私も懇意にしているものですから、馬車を見て勘繰られてもなんですし、それで御者はどうされるのですか?」

「あ!」

 

 あまりにもサクサクと進む展開に喜んでいた一行は、御者の必要性を忘れていたりする。

 

「交代交代で……そもそもアルベドの騎獣に命令すればいいだけだからいらないかな?」

「それはそうだけど、外から見られて常識的に拙いんじゃね?」

 

「もうあの娘たちをレギュラーにすればいいでありんすよ」

「レギュラーってなに!? うーん……でもあの女は、うーん……」

 

 自分たちの旅の都合上、馬車自体がカモフラージュ的なものであるので御者を雇うと言う発想は無く、今のところは良案が浮かばないものの、一度やってみたかったこともあって男性陣が交代で御者席に座ることに。

 一行は熱い見送りの中、今日の目的のもう一つである『黄金の輝き亭』を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロフーレさんの紹介状のせいかどうかは文字が読めないために分からないが、すんなりと宿を取ることが出来た一行は、まだ夕食には早い時間だったのもあり、馬車を宿に預けて宿周辺の散策を行う。

 歯ブラシやタオルなんて生活雑貨も一応テントには用意されているのだが、この世界の様式や生活スタイルも学んでいかなければと雑貨屋を中心にウインドウショッピングを楽しんでいる。

 

 ――今更な話だが彼らの言う『大目標』というのは『四人で安全に暮らせる場所を探す』というもので、あったらいいとは思いつつもナザリックを探すなんて話ではなかったりする。

 異世界転移を納得理解はしたものの、あの状況を経験して拠点が転移してくるなんて考えてもいないからだ。

 この世界にある『浮遊都市』の情報を知っていたならその可能性も考えたが、今の彼らにその考えは無い。

 逆に異世界転移のお約束なんてカケラも知らないアルベドやシャルティアはその大目標を『ナザリックを見つけること』と勘違いしているのだが、戻ったらイチャイチャできる時間が減ったりライバルたちが大量にいるのを危惧して、あまり積極的では無かったりする――

 

「モモンガ様ここは貴金属のお店では? 私たちには必要ありませんが」

「うーんちょっとな……結婚指輪とかあるのかなって思って」

 

「妾たちはすでにリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを頂いておるでありんすよ?」

「あーでもモモンガさんの気持ちわかるかも、この世界に来てから結婚指輪として渡したけどあれじゃあなあ」

 

 彼女たちにとっては最大級の結婚指輪ではあったのだが、彼らにとってはただの予備でもあるしと思うところがあるのだろう。

 冷やかし気味に店内を回っていたのだが、やはりあれ以上の意匠を施されたものなど見つからず、そろそろ宿に戻るかと思っていた際に、ある一点のアクセサリーにペロロンチーノは足を止めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがに美味しいですね! それに……ちょっとした変化でもドキドキしちゃって」

「わかる! 嫁が可愛すぎて飯どころじゃ……あ、でも美味しいな!」

 

「モモンガ様に喜んでもらえるならそれだけでも嬉しいです。でもちょっと恥ずかしいわ」

「髪形を変えるなんて今まで考えにも思いつかなかったのはなんででありんすかね? でもこのバレッタ大切にするでありんす!」

 

 現実だってわかっているのにそんな単純なことも思いつかなかったなんてと、そのアクセサリーの前で笑ってしまったが、ペロロンチーノが見つけたのは宝石をちりばめられた『バレッタ』や『カチューシャ』『ティアラ』といったものであり、どれが似合うかとあれこれ悩みながらプレゼントしたそれらを女性店員がさらに美しく見えるようにと奮起してしまった結果がこれだったりする。

 

 アルベドはカチューシャを付けているのだが、角が一体型のアクセサリーのように見えるのがカモフラージュ的な面でも高評価であり、オデコを出しているのがなんとも可愛らしい。

 

 シャルティアはまとめた髪をバレッタで束ねているだけだが、そのほっそりとした首筋が見えるだけで大人の色気を醸し出していたりする。

 

 そんなこんなで今回は二人に違った装いをとリクエストした結果、シックな黒いドレスを纏っての登場となったわけだ。

 

「翼を不審がられて楽しい雰囲気を台無しにされてもなんですので、この色にしたのです。翼を前に抱くようにすれば」

「え、辛くないのか? そんな無理をするようだったら」

「いえいえモモンガ様、腕組みするようなこととお考えくだされば」

 

「シャルティア今度ツインテールやってくれよ」

「み、見本が欲しいでありんす! 他のメイドで言うと誰でありんすか?」

「あれ……いないぞ……あの変態の巣窟にいないっておかしくね? 巻いてないソリュシャンかな?」

 

 なんて楽し気に『黄金の輝き亭』で夕食を楽しむモモンガ一行。目立ちすぎているせいか先ほどちょっと場違いな赤い鼻の男に声をかけられる一幕もあったが、店員の素早い対応でつまみ出されている。あの紹介状のせいなのだが相当な賓客とみなされているようだ。

 

「正直これ以上は隠れた名店を探すレベルになっちゃうしどうだろう、そろそろ王都に向かってみないか?」

「たしか衣料品店の店長がドレスが出来るまでは一か月ほどとか言ってましたっけ」

「それを待つのもアリですけれど、転移が使えるのですから行動範囲を広げるのもアリでございますね」

「私も賛成でありんす! 黄金姫っていうのも見てみたいでありんすよ!」

 

 たびたびアルベドとシャルティアがエ・ランテル住民に比較されていた人物。当然耳に届くのでこの国の第三王女という情報程度は得ているわけだが、さすがに会えるわけは無いと思うもののペロロンチーノは微笑ましく笑顔で答えるのみ。

 

「王女は私たちの中では二人だけで十分ですよ」

「だな! もう俺楽しくってしょうがないよ!」

 

 綺麗な世界が広がっていて大好きな嫁がいる。指輪を外しているうえに少しお酒が入っているせいか、少し目を潤ませるようにして言葉を紡ぐモモンガとペロロンチーノ。その思いは彼女たちも当然同意であるがゆえに楽しそうに笑顔で会話を進めていく。

 

 このままだと今宵の主導権は完全に女性陣に取られてしまうが、それもまた一興か。

 エ・ランテルの夜は更けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

某所

 

「なんだ? 急に寒気がしてきたんだが……」

「ブレインの旦那、風邪ですかい? なんでも今度の獲物はものすごいらしいですぜ。あ……すいやせん男の子がよかったんでしたっけ?」

「お前ちょっと表出ろ!」

 

 

 

 

某牢屋

 

「クレマンティーヌ……そういった趣味は控えるべきだと思うのだが……」

「趣味でやってんじゃねーよ! ってか見るなニグン!」

 

「はい、エ・ランテルでM字ハゲとM字開脚を発見しました風花聖典隊員は連行を」

 

「禿げてないし!?」

「くっぅううう!? あいつら絶対殺してやるっ!!」

 

 




ガゼフさんたちは王都に急行するために、ニグンさんたちを置いて行ってます。
カジっちゃんはズーラーノーンが回収に来るのかなあ? 一応法国の人だから一緒に連れて行ってもらえるかもねw
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