鳥ウナギ骨ゴリラ   作:きりP

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24 ネムと天使とペロペロおじいちゃん

「じい! どうした? そこまで深刻な報告では無かろう?」

 

 いつもの皇帝執務室での会議。ただ今回は帝国を富ませるための政策会議ではなく、密偵からの報告から始まる不可思議な事件。それに対する検討会のような様相を見せていた。

 

 王国からの、いや王国会議に出席していた内通している貴族からもたらされた<伝言(メッセージ)>による第一報は、『ガゼフ・ストロノーフ生還。南方の傭兵団と思しき者たちの救援があった模様』とのこと。

 ガゼフ生還に関しては以前にエ・ランテルの密偵からも報告を受けてはいたが、第三者の存在が明らかにされたのは初めてのことだった。

 

 カルネ村なる王国辺境の地を詳しく調査するまでの事ではないと思われていたが、ここへ来て俄然その傭兵団に興味を持つ皇帝ジルクニフの考えも分かるというもの。

 ガゼフを救い()()()()()()()()()()()()()を退けた強者たちがいるというのだ。そう、エ・ランテルに一時護送したのが運の付きというわけではないが、法国の関与は帝国の者たちであるからこそ容易に想像がついていた。

 ただそれについては容疑者全てが逃亡してしまうなどというお粗末な結末もあり、法国に関しては今は論じる段階ではない。

 

 そしてこの『じい』と呼ばれた男。帝国最強の魔法詠唱者フールーダ・パラダインが、口をぽっかりとあけて呆けてしまった理由は、別の密偵によるカルネ村周辺に関する報告にあった。

 それが虚偽ではなく複数の村が襲われたことが事実であるかを確認していた密偵は、数日にわたって不可思議なものを見たというのだ。

 

『明け方トブの大森林から朝日とは違う明滅する眩い光を目撃。その後空から複数の光の粒のような物が舞い降りるのを確認』と。

 

 現地までは赴いていないがそれがカルネ村方向の森であることも報告されていた。ただこれがあまり信用されていない<伝言(メッセージ)>による第一報であったので、不思議なこともある物だと流す程度の話題であったのだが、とある者たち(十三英雄)をある意味ライバル視しているフールーダには聞き逃すことが出来なかった。

 

 

「失礼しました陛下。それでですがお願いの儀がございます、私をそのカルネ村の調査に向かわせていただきたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 開拓村の朝は日の出と共に働き出し、夜は暗くなったら就寝する。たとえ子供であってもある程度の年齢になれば、水を汲みに行ったり薪を集めたり。収穫時ともなれば大人と変わらぬ作業を割り当てられたりもする。

 ただ村に余裕が出てくれば、やはり子供には自由に伸び伸びと育ってほしいと思ってしまうのは親の性というもので。

 

 

 

 

「ねーむーちゃー! あーそーぼ~!」

 

 

 

 

「はぁーい!」

 

「こらネム座って食べなさいよ」

「ネムちゃんだって、ふふっ。ネムは最近すっかり早起きさんになったわね」

「危ないことはしないようにな。ネムがお姉ちゃんなんだから」

 

「わたしお姉ちゃんなの!? よしっ、いってきまーす!」

 

 慌てて朝食を食べきり外へと飛び出していく少女を優しい笑顔で送り出すエモット夫妻とエンリ。そういえば村にネムと同世代の子供はいなかったななんて。

 言葉通りの『天から降りてきた幸運』に感謝し、小さな二人の少女を話題にエモット家の一日が始まっていく。

 

 

 

 

…………

 

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 

「ネムちゃーおはよう!」

「グリムちゃんおはよう!」

 

 ネムには『召喚された天使』という話は理解できていないが、新しくできた自分よりちょっと背の低いお友達との毎日は、とても楽しくて嬉しい、それでいてスリリングな日常となっている。

 今日は何をしようかと早速手をつないで歩きながら相談を始める二人。少し近すぎるような距離ではあるが『真っ白なワンピースに麦わら帽子』の少女と二人、確かに姉妹と見られてもおかしくは無い。

 

 一昨日は森で大きな魔獣とお友達になった。グリムが瞳をキラキラさせながらドーンとつっこんでいったのには驚いたが、ドッタンバッタンした末にお友達になったんだと思っている。

 

『トトロじゃないでござるよ……いやもうそれでいいでござる』

 

 ちょっと舌ったらずなところがあるグリムが『トロル』と間違えたのかな? なんて思っているが今日もトトロに会いに行くのも楽しそうだ。少し焦げていた毛皮が治っているといいけど。

 もちろん森で食べられる木の実を集めたり薪を拾ったりと、友達とやるだけでなんでこんなに楽しいんだろうと思ってしまうのだが、子供たちのやるべき仕事もきちんとこなしていたりする。

 

「このまえからねー、おねーちゃんたちが来てるの」

「ほんとぉ! じゃぁあいさつに行くー!」

 

 確か朝の父親の話にも出ていたけれど村の倉庫に新しい移住者が来ているのだそうな。じゃぁグリムもずっとこの村にいてくれるのかなあなんて思いもしたけれど、姉たちはその者たちの護衛らしい。

 

「あら、あなたがネムちゃんね。グリムゲルデに新しいお姉ちゃんが出来たわね、ふふっ」

 

 そう言って柔らかく笑う胸が巨大なお姉さんが次女のゲルヒルデさん。あの時村の者たちを癒してくれた神官さんだ。

 なんでも『衣装チェンジだと私は看護師さんらしいわ』と言っていたが、騎士の姿では覆い隠されていた大きな胸が、今の清潔な真っ白な衣服を着ていると突き破らんばかりに盛り上がっているのが窺える。

 

「このおねーちゃんはだいじょぶ」

「だいじょうぶ?」

 

()()()()()()()手を出したりしないわよ。それじゃ私は食事の介助に行くから、ネムお姉ちゃん妹と仲良くしてあげてね」

「えへへ」

「やっぱりネムお姉ちゃんなんだ……うん! もう仲良しだからまかせて!」

 

 他の姉たちは村長宅へ伺っているそうで会えなかったが、またいつでも機会はあるだろう。それより自分に妹が出来た喜びに胸がぽかぽかと温かくなってくる。

 でも姉ってどうすればいいんだろう。自分の姉はすぐ怒るし……でも姉が繋いでくれる手は暖かかったななんて思いだし、再び彼女の小さな手をギュッと握る。

 何故か頬を染め『えへへ』と笑うグリムにドキドキしてしまったのはなんでだろう。そんなことを考えながらまずは仕事を終わらせちゃって遊びに行こうと村に面した雑木林まで駆け出していく二人だった。

 

 

 

 

「やったー! よろしくおねがいします!」

「ダインおじさんありがと!」

「いやなんてことないのである。おじさんか……おじさんであるな……」

 

 途中以前ンフィーレアと連れだってやってきた冒険者のおじさんに会い、森の歩き方などを教えてもらった。ついでにグリムの被っている帽子に興味を持ち、ネムの為に編んでくれると約束もしてくれた。なんでもこういった細かい作業は得意なのだそうな。

 

 そしてその場を離れやっと森手前の雑木林へ。ただこの辺りは薪を取りつくしてしまった感もあり、いつもより奥まった場所までやってきている。

 

 

 そこで出会ってしまった。

 

 

 森から現れたそれは最初はなんだかわからなかった。あきらかにゴブリンとかそういった魔獣などではなく、人間であることはわかるのだが「おー! おー!」と声を上げる姿が怖くて不気味すぎて身体が固まってしまう。

 倉庫に戻ると言っていたダインも近くにはおらず助けを呼ぶことも出来ない。

 

「第七位階……いや、それを超える力の奔流は第八位階? おぉー……女神がここに顕現された」

 

 真っ白な髭が地面に付きそうな老人が荒い息を上げ涙を零しながら、じわじわと這うように近づいてくる。身体は鳥肌が立ち声を上げることもできないけれど、大好きな妹を守らなければと無意識にグリムを抱きしめるネム。

 グリムの方はそれがなにかわからないようで興味深そうに瞳をクリクリと輝かせながら佇むのみ。「ネムちゃーあったかい」なんて場違いな声まであげている。

 

「何卒……なにとぞ……私に魔法の深淵を……」

 

 完全に跪きながらも、足の指を使ってじわじわと前進してくる様はホラーとしか言えない。老人の唇から出された舌がグリムの靴まであと数センチといったところで、救世主があらわれた。

 

 

 

 

「なにやってるのよ糞じじい!? 武技<重量爆撃>!!」

「げふぉぉおおおお!?」

 

 

 

  

 黒いフードを纏った金髪の女性が、槍の石突ではあったが完全に殺す勢いで老人を吹き飛ばしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「陛下にダメ出しされたくせに一人で飛びだして……戦争前の休暇ついでにお鉢が回ってきたかと思えばとんだ厄介ごとですわ……回収班は()()を縛って届けなさい。私は謝罪を済ませてから一人で帰るわ」

「はっ!」

 

 正直あの場面をまともに見てしまった供である帝国騎士たち(見た目は旅人のような恰好)は、国の重鎮を粗雑に扱う四騎士が一人『重爆、レイナース・ロックブルズ』の態度になんとも思わない。むしろよくやってくれたと言わんばかりだ。

 すぐさま縛り上げ担ぎ上げ森に沿うように消えていく。

 

 レイナースも立場上逃げ出すのが最善ではあるのだが、未だになにがなんだかわかっていない震える少女たちを前に、そうすることを自分自身が許してくれない。そんな人間ではありたくないのだ。

 目線を合わせるようにしゃがみ込み、優しく声をかけた。

 

「怖かったでしょう、もう大丈夫よ。私がポーンてふきとばしちゃったからね」

 

 擬音としては『ドゴーン!!』といった感じではあったのだが、安心させようと努めて明るく怖いのはいなくなっちゃったよと語り掛けるレイナース。

 抱きしめあう二人の背中をなでながら緊張を解いていく。

 

「ネムちゃーいなくなっちゃったって! だいじょぶ!」

「グリムちゃんごめんね……おねえちゃんなのになにもできなくて……ぐすっ」

 

 瞳に涙をいっぱいに溜めながら、決してそれを零してやるものかと必死に言葉を紡ぐ少女に、本当にやるせない気持ちになってしまう。あのじじいどうしてくれようかと。

 もうすでにぶん殴ってはいたがそれでも足りなくなってくる。

 

「ぐすっ……お姉さんありがとう」

「ええ、どういたしまして。むしろ私にも謝らせてください、私の遠い知り合いがあなたたちを怖がらせてしまったことを」

 

 片膝を突きながら頭を下げる。ただなんの気無しの目線を合わせていた状態からの謝罪は、もう一人の少女に見られて欲しく無いものを見せてしまった。

 

「おねえちゃん、お顔にけがしてる! ちぃーねえちゃんところにつれて行かなきゃ!」

「えっ!? あっ! これは怪我じゃないのよ……でもちぃねえちゃんてどなたなのかしら?」

 

 年端もいかない少女におぞましいものを見せてしまった事を後悔するも、さすがにさっきの爺よりはマシですわよねと気を取り直し、ここがガゼフ・ストロノーフが救われた奇跡の地であるカルネ村であることを今更ながらに思い出す。

 そしてそこに連れていこうという美しい少女の理由に一抹の期待を持ってしまうのも仕方がないと言えるだろう。

 

「えっとね! グリムちゃんのお姉ちゃんは魔法が使えるんだよ! 村の人たちもみんな治してもらったんだ!」

 

 さっき泣いたクアランベラト(カラスのような鳥)がもう笑ったと言わんばかりに、姉妹かと思われた二人だったがどうやら友達のようで、麦わら帽子の少女の姉はすごいんだよと我がことのように褒めるもう一人の少女。

 神官だろうかそれとも森司祭(ドルイド)だろうか。それほど多くの人々を癒した存在。この呪いを解ける者がいるのなら全てを差し出しても構わない。

 一応は敵地であるのだが二人に手を引っ張られ動き出す足は止まってはくれない。

 

 残念なことに彼女の願いもむなしくそれが叶うことはやはりなかったが、明け方もう一度来ていただければ、少女や胸の巨大な女性の主に相談できると言われ、ここまで来たならばと居座ることに。

 他の村人や偶々いたのであろう冒険者たちに不審の目を向けられたりもしたが、ネムやグリムを()()()から救ってくれた恩人であると知れ渡り、大歓迎で受け入れられたのには苦笑してしまったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイナースさんだそうです。多分呪いなんでしょうが次女が匙を投げたらしくて……お願いされて連れてきちゃいました」

「レイナース・ロックブルズです……え? ここはどこですか?」

 

「いきなりだな!? でも本職が匙を投げるって相当だぞ?」

「うーん……なんでありんしょう。イビルアイとは違った似た感覚というか……」

 

「モモンガ様が女を連れ込んで……」

 

 違うから! 愛しているのはお前だけだから! と、いつものパターンで消えていくモモンガとアルベド。残された三人のうち二人は階上を見上げながら『アルベドお前ら朝までヤッてただろう……また墓穴掘ってるぞ』なんて考えがよぎり、新しいベッドがもう一台必要になるかもなんて考えていたり。

 




出すぎなのでオリキャラタグを付けました。

書いている作者すら名前を憶えていないので憶える必要もありませんが、一応メモとして今まで出てきたことを書いておきます。長女とか次女とか本来どうとかは知りませんw

ブリュンヒルデ    長女 指揮役 両刀
ゲルヒルデ      次女 神官  胸が巨大
ヘルムヴィーゲ    三女 タンク ドM  
オルトリンデ
ヴァルトラウテ
ジークルーネ
ロスヴァイセ
シュヴェルトライテ
グリムゲルデ     末っ子 魔力系魔法詠唱者(第八位階?) ヤンデレ?
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