世界一可愛いストーカーたちに追いかけられる僕はストーカー   作:Re:クロバ

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良ければ感想や評価など下さいませ。(作者が感想乞食なので)






第2話:嗚呼、生徒会長様

日本人なら誰でも知っているであろう童話、『桃太郎』の話をしようか。

 

桃から産まれた桃太郎は悪さをする鬼を犬、猿、雉の三者三様のお供をつけて、鬼ヶ島へ向かう。

そして鬼退治に成功した後、金銀財宝を持ち帰り、お爺さんお婆さんと共に幸せに暮らしたという結末だ。

 

実に簡単で単純明快な物語。だからこそ長年多くの日本人に好まれてきた代表的な童話なのだろう。

まぁ個人的に好きな童話は『サルカニ合戦』なのだが、それはさておき。

 

僕は桃太郎のお供。犬、猿、雉の3匹に魅力を感じる。

きびだんごを与えただけで鬼ヶ島まで付いて行く、おいおいヤバくねぇか、と。しかも桃太郎さんよ。これ完全なる餌付けだよね。

 

ま、それさえも置いといて。

 

この勇敢な3匹はきびだんごを与えてくれた桃太郎への恩義を果たすために共に鬼ヶ島へ、彼の尻を追いかけた。

鬼退治が終わった後も桃太郎の尻を追いかけた。

 

 

 

 

 

そう……ストーカーだ。

 

 

 

 

 

「ちょい待った」

 

僕の熱論を制止する男友達。

 

「なぁ……自分で言ってておかしいと思わないのお前」

 

「おかしいとは思うけどおかしいとは思わない」

 

「いや、どっちだよ!?」

 

昼休み。朝の件も含め心身共に疲れた僕は友人と和やかに昼食中。基本学校では邪魔は入らない。まぁ、あの3人とは他クラスだから当然と言えば当然だが。

 

「つーかお前結局どーなの」

 

「と、言うと?」

 

すると友人はガッと顔を近づける。

 

「おい……近いって……僕そういう趣味ないから」

 

「いや俺もねぇよ!そうじゃなくって!……あの3人だよ」

 

「あー……ことほのうみ?」

 

「そう。お前結局誰選ぶんだ?」

 

「ハッ。お前はバカか?」

 

「黙れバカ」

 

「僕があの3人を意識して想いの矛先を狂わせるだと…?そんなことは断じて、否!!」

 

「お前キャラ変わってなくね…?」

 

「僕は生涯幼なじみ一筋だッ!!この意思は……想いは……鋼鉄より硬いんだ!」

 

「うわー…軽くドン引きだわ」

 

「ドン引きの時点で軽いもクソもないと思うんだけど」

 

呆れた視線をひしひしと肌に感じながら、友人から少し遠のく。

座っている席から窓の外へ目を向けた。

 

あー……あの白い雲……まるで追いかけられる側と追いかける側みたいだなぁ……まるで僕と幼なじみのようだ。けれど……雲はいつまでたっても同じペースで空を巡る。なんか、虚しくなるな。

はぁ…翼をもった自由の鳥になれればいいのによぅ。…そうすれば彼女の隣に並んで並走できるのに……

 

 

「おい桜っ!」

 

僕はその突然の声に肩を跳ねあげた。

 

「うわっ!ビビッた……な、何?」

 

「ほら、あれ」

 

友人が指さす先を目で辿っていくと、「えぇ……」と溜め息が漏れた。

 

教室への入口では煌びやかな生徒が一人。周りはそれを羨望の眼差しで見つめる。

 

ま、当然か。だって生徒会長だもん。

 

「叢雲くん。ちょっといいかな」

 

ヤッベー……手招きされてんだけど……僕、マジ怖いんだけど……

 

隣へと目線をずらすとそこには怨嗟(えんさ)に身を包ませた友人。「なんでお前だけ……」とブツブツ呟いているが……何度も言っているだろう?僕は幼なじみ一筋だって。僕の想いがブレることなんて地軸がズレるくらいありえないことなんだ。

 

友人に一言断り、席を立つ。周りの生徒を避け、生徒会長の元へ。

 

「えっと……何か用でしょうか?」

 

「ちょっと生徒会の件でね」

 

会長がそう言うだけで周りに安堵が溢れる。

男子、女子共に人気の頂点に立つ生徒会長の身辺の関係には皆敏感のようだ。

 

まぁ、生徒会の件らしいし、ひとまず安心?

とりあえず僕と会長は生徒会室へ足を運ぶ。

 

このタイミングだが言っておこうか。なぜ僕が絢瀬生徒会長と面識があるか。それは僕が生徒会役員だからである。

 

職は書記。

 

書き取るだけのラクな仕事と思い、名声を得たかった僕はすぐに立候補。書記立候補者は僕一人だったので『信任』を勝ち得て当選。そして後悔した。

 

こんなに忙しいものだとは思わなかった。開かれる会議の内容を速やかにメモしたり、各委員会の要望をまとめたり……

けれど、書記の仕事が辛いことには後悔していない。僕が後悔しているのは……

 

「はい、到着」

 

生徒会室に通され、中へ入室。

 

「えーと……話……長くなりそうですよね?あの……給湯室でお茶入れてきましょうか?」

 

「そうね……うん。お願いするわ」

 

僕は丁度生徒会室の隣にある給湯室へと入っていく。

 

そして、桜が給湯室へ消えたのを確認した絵里は生徒会室の窓を閉め、鍵をかけた。そして机の上に散らかっていた資料などを整理。

「よし」と軽く満足したところで彼が急須を持って現れる。

 

彼を軽く椅子へ座るよう促し、絵里は生徒会室の入口の鍵も音をたてないようにゆっくりと閉めた。

 

「さて、じゃあお話しましょうか?」

 

「て、手短にお願いします…」

 

「そんなに畏まらなくって大丈夫よ。2人っきり(・・・・・)なんだから♡」

 

僕は背筋に何か冷たいものが走った気がしたが、努めて冷静を装う。

 

「そ、それで……よ、要件と言うのは…?」

 

「これなんだけどね…」

 

スッと彼女の綺麗な手でスライドさせてきたのは数枚の資料。

 

「あ、今度の全校集会の段取りの確認ですか」

 

「えぇ、そう。叢雲君の意見を聞かせて欲しくってね」

 

なんだ。やはり事務的な要件ではないか。ホッと胸を撫で下ろし、前方の資料を見据える。

 

そして細やかな段取りを確認した。会議のテーマや、各委員会からの要望や予算。

それら全てを確認し終え、ようやく一息をつく。

 

「ありがとう叢雲君。悪かったわね。急に呼び出しちゃって」

 

「い、いえっ。こちらこそ生徒会のお役に立てて光栄ですっ」

 

会長からの感謝の言葉に慌てて頭を下げる。感謝は素直に受け取るべきだ。

 

「あ、会長。お茶入れましょうか?」

 

「ねぇ」

 

「は、はい?」

 

会長が(まと)う雰囲気が変わった。そんな気がした。

 

「その『会長』っていうの……やめてくれない?」

 

「あ……すみません。その…馴れ馴れしかったですよね…?」

 

「そうじゃなくって……私たち知り合ってから半年よね」

 

「ま、まぁ。そうですけど……」

「……そろそろ名前で呼んでよ」

 

会長が僕の顔を正面から見てそう告げた。

もちろん対面になるように座っていたというのもあるが……あまりにも彼女の目が僕の目を見つめすぎている。

 

2人きりだというのもあるのだろうか、僕は少し危険な香りを感じ、少々身構える。

 

「な、名前……ですか?」

 

「えぇ、そうよ」

 

まぁ確かに知り合って半年は経つが…いくらなんでもそれは打ち解けすぎなんじゃ……

 

「そうね……じゃあ…なんて呼んでもらおうかしら…」

 

熟考していらっしゃる……

 

額に手を当てて考えること数秒。また僕の目を度が過ぎる程覗き込み、

「じゃあ『絵里』で」

 

と、リクエストしてきた。

 

「いや……その……先輩ですよね?流石に呼び捨ては……しかも下の名前…」

 

「あら、先輩命令なのに逆らうのかしら」

 

「今どき先輩命令って……その……絢瀬先輩じゃダメなんですか?」

 

「ダ~メ」

 

更に身を乗り出す会長。なんだろう……ドキドキしてきた。

 

え?

 

ドキドキしてきた……?な、なにをバカなことを僕は考えてるんだッ!!こんなシーンを幼なじみが見たら悲しむぞっ!?(勝手な妄想)

 

「あ…その……え、エリ……?」

 

「うふふ。は~い♡」

 

うっわぁぁぁ………

 

なんだろう……?会長を下の名前で呼んだだけなのに、この胸からこみ上げてくる罪悪感は……

 

「じゃあ私も叢雲君のこと……桜って……呼ぼうかしら?」

 

「え…?あ、ぼ、僕は構いませんが……」

 

「ありがとっ」

 

なんだよこれぇ……

生徒会の案件から変わっていってない?それにさっきも言ったが危険な香りがする。僕はすっくと立ち上がり、ドアへ向かう。

 

「あ、そ、その失礼しますっ」

 

声を裏返しながらもなんとかそう言い、ドアを引く。……のだが、

 

「え、あ、あれっ」

 

何度引いても開く気配がしない。少し扉から離れて全体を観察すると、鍵が閉まっていることにすぐ気がついた。

 

「な、なんだ…鍵が閉まってただけなのか…壊れたかと思っ………!!??」

 

僕の喉を異物で詰まらせたかのような声が室内に響く。

背中に衝撃が訪れ、僕は仰天した。

そして、僕の驚愕はこれだけでは終わらなかった。

 

「ぇぇぇええ…!?かかか、会長!?な、何をなさって…」

 

なんと、僕の背中にあの生徒会長がしっかりと手を回して抱きついてきたではないか。

 

「え・り…って呼んでって言ったでしょ?」

 

後ろを振り返ると、驚くべき近さに会長の整った顔。長いまつ毛にブルーの瞳。高い鼻にみずみずしい唇。どこを見てもいけないような気がして、目が思わず泳いでしまう。

 

っていうかいくらなんでも近すぎる。だってさっきから会長の吐息がかかってるもん。てか、荒くない?もしかして緊張してる……?いやいや、僕の方が緊張してますって。

 

凄い良い匂いがする。それだけではなく、なにか妖しい色香が漂う。

 

「ねぇ…どうして扉の鍵が閉まってると思う?」

 

「え?その……な、なんでですか?」

 

「私が意図的に閉めたのよ。って、これじゃあ『What』じゃなく『Who』への解答になっちゃうわね」

 

妖艶に微笑む会長と、この2人っきりという空間が最高にヤバい。っていうか、背中に……その……

 

「あ、改めて。どうして閉めたんですか?」

 

「さぁて…なんででしょうね?」

 

教えてくれないのかよっ。

答えを言わないまま、彼女はもっと顔を接近させた。

 

「か、かいちょ「絵里」え、絵里…!!それ以上はっ…!」

 

「それ以上は?」

 

「その……や、やめてください……!」

 

「そうね。これ以上近づいたらキスできちゃうもんね♡」

 

「わ、分かってるならやめてくださいっ」

 

「なぜかしら?」

 

「なぜかしらって……え?なんで疑問?」

 

「うふふ」

 

よくわからん。この状況も、この人が考えてることも。

 

いや、少なくともこの人が僕に気があるのではないかとは正直言って気づいていた。だって、ことほのうみみたいにストーキングしてくるんだもん。休日はどこに出かけても絶対に会うもん。

 

「ねぇ、桜」

 

「ひゃいっ!?」

 

「2人っきりよね」

 

「え、は、はい」

 

「周り……誰もいないわよね、監視カメラがある訳でもないし…」

 

「そ、そうですけど…」

 

「ふふ…」

 

 

 

 

「じゃあホントにキスしちゃう?」

 

 

 

 

僕は後悔している。生徒会に入ったことを。

書記の職務は面倒臭くて辛いが、それを後悔はしていない。そう僕が現在進行形で後悔しているのが……

 

 

目の前の生徒会長に出会ってしまったことを後悔しているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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