世界一可愛いストーカーたちに追いかけられる僕はストーカー   作:Re:クロバ

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第6話:認めない意地とは裏腹に

波乱の週末を過ごしてから、月曜日。全国の学生と社会人がまだ休み気分で過ごす1日だ。

 

さて、かくいう僕もその1人。通学路を首をポキポキ鳴らしながら気だるく歩く。

 

「くっそ……疲労が抜けない……あの女子たちのせいに決まってる……はぁ、頭痛いわぁ…」

 

独り言と不満が止まらず、つらつらと道中垂れ流す。足並みはまるで酔っぱらいのような千鳥足で、カバンはまるで鉛のように重く自分の肩にのしかかる。

 

なんつーか、腕も痛いし……これはあれか?生徒会のあの2人が力を込めてたせいか?

 

自問しながら歩くこと数分。眼前に広がるのは学校の正門へと続く階段。

 

「はぁ……いっちょ、登りますか!」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「スクールアイドル部ぅぅ?」

 

僕の声が生徒会に響く。僕の目に映るのはことほのうみの三人衆。どうやら新たな部の申請に来たらしいのだが…

 

「悪いんだけど…新しい部の新設は認められないなぁ」

 

「そ、そんなぁ!酷いよ桜くん!」

 

「南さん。最後まで話聞いて」

 

僕は彼女らが机の上に出してきた申請書をよく見えるように、角度を整え、入部希望者の欄を指でコツコツとつつく。

 

「入部希望者なんだけど……3人じゃあ新たな部の新設を認めるわけにはいかないんだ。最低でも5人はいてくれないと……校則違反にもなっちゃうし」

 

いかにも生徒会らしい意見を述べる。だが、まだ納得していない様子の高坂さん。やれやれ……

 

「あの~高坂さん?もうこの時点で言っておくけど、例え5人集まったとしてもクラブの新設は難しいかもよ?」

 

「えぇ!?なんで!?」

 

 

 

「既にこの学校には、スクールアイドル研究部があるから」

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

他の教室とは違って少しみすぼらしいドアの前に立つ。

 

「なぁ、ちょっと」

 

僕は後ろへ振り返り3人にしかめっ面を向ける。

 

「なんで僕に協力させるわけ。今から生徒会で会議だから抜けたいんだけど?」

 

「そこをなんとかっ……!」

 

「高坂さん……私的な理由で生徒会の活動を妨害するのはあんまりよくない……」

 

「桜くん!」

 

「な、なに。南さん」

 

「ダメ……かな?」

 

後ろで手を組む+上目遣い+軽く紅潮した頬=可愛い

 

「いいよ。僕、やってみるよ」

 

悪いな。会長、のんたん。可愛いには勝てない。それが僕のストーカーであったとしても。

 

「さて……と」

 

腕をぐるぐると回し、気合いを入れる。そのままドアをノック。

 

「失礼しまー……」

 

「何よアンタぁぁぁ!?」

 

ドアを開けた瞬間、叫び声と共に何かのプラスチックケースが僕に飛んできて、激突。

 

「んがぁぁぁぁああ!!」

 

鼻血を撒き散らしながら丁寧にノックアウトされる僕。やっべー……超絶頼りねぇな、僕。

 

一悶着(・・・)あった後、鼻に可愛い絆創膏を貼り、しかめっ面をした黒髪ツインテールの少女と対峙。どうやら軽く怪我したらしい。こっちは重症だけど。

 

「で?何の用なのよ」

 

「えっと……せ、生徒会です」

 

「生徒会ぃぃ?それが何のようなのよ」

 

「ったく……最近下級生に僕舐められてる気がすんだけど」

 

「聞こえないように独り言言ってるとこ悪いけど、私3年よ」

 

「……世の中ってたまにすごい神秘的な物を生み出すんだな」

 

「どういう意味よっ!」

 

「はぁ…とりあえず……えーと……ロリ先輩?生徒会書記の叢雲です」

 

「矢澤よ!や・ざ・わぁぁ!!」

 

結構感情表現豊かだな…この人。

 

「今回ここに赴いたのは彼女らからの提案をアナタに聞かせるためです」

 

「提案ってなによ」

 

「はい。どうやら彼女らはスクールアイドル部を新たに新設したいらしく、その為にも既にある研究部である貴方の了承をいただきたいらしいのです」

 

そう告げると、矢澤先輩の顔が強ばる。

 

「……悪いけど、それは認められない」

 

「理由をお聞かせ願えませんか」

 

「それは言わないわ。黙秘よ。とにかく!皆出てってよ!ここから!早くっ!!」

 

ぐいぐいと強く肩を押される僕ら。悔しいことに僕も背丈はそれほどないので、このロリ先輩は僕の肩を押せるのだ。

 

さて、追い出されてからの廊下。もう1度室内へ入ろうと試みるも、またもやプラスチックケースが飛んできて鼻血が出た。酷い。

 

「はぁ……先輩があんなんだし…入部希望者も最低ラインに届いていない。悪いけど……高坂さん。今のところは諦めてくれないかな?」

 

「で、でも……!」

 

「…」

 

いつもとは違い、非常に真剣な顔をした高坂さんは僕に掴みかかるかのような勢いで反論した。

 

「叢雲君も、今の学校の状況を分かってるでしょ!?廃校にさせないために理事長が共学の方針を取ったけど、増えた生徒数は数える程度…!それに……これ!」

 

バッと紙を目の前に出される。

 

「……『廃校のお知らせ』…だね」

 

「生徒会は事前から知ってたんだよね?」

 

「……そうさ。できる限り一般生徒にはバレないように努めていたが、理事長本人がこの情報を解禁した。なら、あの人のご意向に背くことはできない」

 

「ねぇ、どうして!?どうしてこの学校が廃校にならなきゃならないの!?生徒会はこの学校を思って色んな行事に取り組んできたんだよね!?それでも廃校になるんなら…無駄なことしてきただけじゃん!!ねぇ、叢雲君!」

 

 

頭の奥で火花が弾けた。高坂さんの胸ぐらを掴みあげる。

 

 

「僕にだって…なんでこの学校が廃校になんなきゃならねぇか分かんねぇよ!!けどな……!?生徒会は…この学校を一番に思って行動してきた!!地域の慈善活動とかにも参加して、学校の評価もあげた!!それが全部無駄だって……?んな、ふざけたこと言ってんなら僕はお前を絶対に許さない!!訂正しろよ!生徒会に対する侮辱を!!!」

 

今まで生きてきた中で僕は最高に激怒したかもしれない。彼女の制服がしわになることを忘れるほど、握りしめる。

 

「もしかして……今、巷で人気のスクールアイドルをこの学校に取り入れたら……入学希望者が増え…廃校を回避できるっ!ってそんな算段を立てているのか!?」

 

「っ……!そ、そうだよ!だからこそ許可してほしいの!」

 

「悪いけど高坂さん!3人だけ特例として、校則を無視した新クラブ設立!っつーのを認めるわけにはいかないんだ」

 

「だって学校の危機なんだよ!?」

 

「だからこそ生徒会が……会長が死ぬ気で頑張ってんだろうが!!」

 

「私たちもできる限りのことをしたいの!」

 

「じゃあ言うけど高坂さん。そのスクールアイドルによって入学希望者が本当に増えると本気で思ってるの!?」

 

「!?」

 

「確かに高坂さんが言っている話には夢がある。まるで一攫千金だ。けどさ……そんな確実でもない方法に頼るのはベストじゃない!」

 

「やってみなくちゃ分からないじゃん!!」

 

「やりたいならどうぞ勝手にやってよ!!僕は部の新設は認めないけど、活動を完全に否定する気はない。けど、高坂さんたちがどれだけ頑張ったって、有名になれるとは限らない!!」

 

「だとしても……!」

 

「……っ。ゴメン。生徒会の会議に行く。高坂さん。僕が言った意味をよく考えて」

 

彼女の拘束を解き、身を翻す。方向転換し、階段を登っていく。そして……立ち止まった。

 

そこで少し静止してから、再び方向転換。研究部の前まで舞い戻る。高坂さんたちはもうこの場にはいなかった。はぁ、と溜め息をついてからドアをノック。

 

「すみません。生徒会です」

 

すると本日3回目のプラスチックケースが飛んできたので、咄嗟に姿勢を低くして、回避。

 

「…っぶね!」

 

「何、かわしてんのよ!」

 

「殺る気満々じゃないですか!酷くないですか!?」

 

「なによ何回も何回も!執念深すぎよ!」

 

「……聞いていましたよね?さっきの話」

 

「……っ」

 

「彼女らの意志……やはり、アナタの心には響きませんでしたか?」

 

「そんなの……あいつらが勝手に口走っただけでしょ。確かに部室

の前であんな大声で怒鳴り散らしてたら嫌でも聞こえたけど……『だから?』ってのが私の感想ね」

 

 

 

「へぇ……同意見ですね」

 

 

 

「え?」

 

「僕もそう思いますよ。彼女らにはある意味で鼓舞するかのような発言をしましたが、あの3人の努力は結局無駄になるでしょうね」

 

「『できる限りのことをしたい』だの『やってみなくちゃ分からない』とか……はっきり言ってあれはただの美論ですね。確実に実現できるかどうか分からない将来のことを語るのは非常にナンセンスです。アナタもそう思ってるんでしょ?」

 

「いや……そこまでは…」

 

「いえ、アナタもそう思ってる。故に『だから?』という言葉で彼女らの理想を一蹴できた……違いませんか?」

 

矢澤先輩は押し黙る。さっきまでの勢いはどこに行ったのだろうかと思わせるほど、沈静化した。

 

「ていうか…流石に笑えますよね。スクールアイドル?でしたっけ。あんなもので学校を救おうって?馬鹿げてる。あんな遊び(・・)で音ノ木坂の危機を救えるわけないじゃないですか」

 

そう僕が憎ったらしく述べた時だった。ダンと机を叩き、彼女が僕に詰め寄る。

 

「あんたがさっき部室の外で言ってたこと……そのまま返すわ。……訂正しなさいよ……!スクールアイドルに対する侮辱を!!!」

 

「じゃあお教え願いませんかね。アナタがそんなにまで熱くなっちゃうほどの魅力を持つスクールアイドルってのを」

 

「はん!教えてあげてもいいけど、アンタには一生スクールアイドルの価値を理解できないでしょうね」

 

「まぁ、確かに。てか、高校生がやるアイドル活動なんですよね?そんなものに魅力があるんですか?」

 

「あるに決まってるじゃない!だからこそ侮辱するのをやめなさいって言ってるの」

 

「最近テレビとかを見ると…えーと……エーライズ?「A-RISEッッ!!」そのアライズとかいうユニットが何度も取り上げられてますけど……それに対しても僕は魅力を感じないんですが」

 

「それはアンタが特殊なの!A-RISEはね!全国のスクールアイドルに憧れる女子、スクールアイドル好きの男子たちが憧れるトップクラスのスクールアイドルなのよ!」

 

「へ~…でも、それはただ容姿が良いからってだけで選ばれたお飾りのようなものなのでは?そうすれば、周りからの信頼も多少は得れますよね」

 

「あっ、アンタなんて事言うのよッッ!!!A-RISEは1から努力して…努力して、努力して、努力した末に頂点を勝ち得たのよ!確かに容姿はずば抜けてるかもしれないけど……でも、たったそれだけの理由でテレビとか雑誌に引っ張りだこになってるんじゃないわ!!」

 

「へ~。でも努力しても実らない人たちっているじゃないですか。そんな人たちにも同じことを面と向かって言えるんですか?『アライズは努力した末に輝いている』って。それじゃあ私たちの努力はなんだったんだ……ってなるでしょ普通」

 

「ふん。甘いわね、生徒会。それなら私は『奇跡は誰にだって起きる。だから皆で更に頑張れば、彼女らほどではないにしろ、必ず結果になる』って言ってあげるわ」

 

僕は……頬が裂けるほどに笑った。

 

 

 

「『奇跡は誰にだって起きる』『必ず結果になる』……ふーん。なるほど……なら…あの3人にも当然それらが起こりうるんですよねぇ?……先輩」

 

 

 

そこで何かに気づいた矢澤先輩はキッと目付きを鋭くし、焦り出す。

 

「あっ、アンタッ……!まさか最初っから…!?」

 

「アナタは確かに言った。なら物は試しです。どうです?許可してあげてもいいんじゃあないんですか?」

 

「アンタは許可していないんでしょ…?アイツらの部の新設を」

 

「ええ、もちろん。けれど……活動は完全に否定していません」

 

「はぁ!?どういう意味よ!活動なんて、部室がなくちゃできるわけないじゃない!」

 

「いいやぁ?そうでもないんですよね、それが。よく耳を澄ませてくださいよ」

 

矢澤先輩が僕の指示通り耳を澄ませる。すると、聞こえてきたのは可愛らしい掛け声。1、2とまだまだ未熟だが精一杯の掛け声。

 

「ほらね?」

 

「……アンタはどっちの味方なのよ」

 

「もちろん学校側です」

 

「なら校則に書いてないの?クラブ以外の特別活動を一切認めないって」

 

「書いてますよ。ですが……僕は学校側の味方なので。アナタが『必ず結果になる』と言った以上は彼女たちの活動を止めさせるわけにはいかない。だって彼女たちは……『学校のために』活動しているんですから」

 

「でも!部の新設は認めていないのよね!?だったらアイツらがいくら頑張ったところで、スクールアイドルとして世の中で活躍していくのは無理があるわよ!?」

 

「はぁ……僕はですね?なにも意地悪な気持ちで部の新設を認めていないんじゃないんですよ。校則において認められないだけなんです」

 

「なっ…!そ、そんなの言ってたかしら!?」

 

「『3人だけ特例として、校則を無視した新クラブ設立!っつーのを認めるわけにはいかない』ってちゃんと言ってますよ」

 

「…………全部アンタのシナリオ通りってことかしら?」

 

「さぁ?僕にはよくわからないし、故に何も言えません。ただ唯一言えることとすれば……」

 

ここで僕はグッと顔を近づけた。

 

 

 

「生徒会舐めんなよ?」

 

 

 

「っ……」

 

「ま、こんなこと言っても……現状は彼女ら3人ですからねー……学校の味方と言えども、軽く注意はしておくか。それでは失礼しま……」

 

 

 

「失礼します」

 

 

 

僕が退室しようとした時に、ガチャリと扉を開ける声。

 

茶髪のサイドテールの女の子、銀髪の女の子、紺色長髪の女の子、僕のご主人様、茶褐色のショートボブの女の子、橙色のショートカットの女の子が一斉に入室してきた。

 

ニヤリと誰にも気づかれないように笑い、今度こそ部室(・・)を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅れてすみません。ただいま戻りました」

 

もう3人しかいない生徒会室にやりきった感を醸し出しながら帰ってきた僕。

わざと悪モノになるのも辛いなとダサい自分を心の中で笑う。

 

「ほら、さっちゃん。新しい仕事増えたよ?」

 

「貴方がいない分、会議をやりくりするの大変だったんだから」

 

「2人とも、本当にありがとうございます。お陰で職務を全うできました」

 

会長と副会長に笑いかける。

 

「「職務?」」

 

「はい」

 

「一体どんな?」

 

 

 

「生徒会として、生徒に校則を守らせる職務ですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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