ハガレンに出てくる『あの素材』について、独自解釈があります。
翼とマリアが持ち帰った『バルベルデ文書』。
F.I.S.の武装蜂起や、キャロルの世界分解などを裏で手引きしていた裏組織『パヴァリア光明結社』。
その秘密を解明するべく、長野県に本部を置く日本の諜報機関『風鳴機関』の施設を使い。
暗号の解読に勤めていた。
その間襲撃が起こらないとも限らないため、松代を中心とした広い範囲に避難勧告を発令。
一般人には退避してもらい、自衛隊とS.O.N.G.による厳重な警備体制が布かれることとなった。
さて。
そんな人っ子一人見当たらなさそうな中を、マリア、切歌、調の三人は巡回していた。
敵影をいち早く見つけるためというのもあるが、逃げ遅れている一般人を保護するのも目的の一つだ。
時折携帯した双眼鏡を覗き込みながら、周囲を警戒していると。
「あっ!252発見!速やかに確保デース!」
「切ちゃん!?」
何かを見つけた切歌が、少し先の畑に向けて突撃。
確かに人影らしきものが見えるが、直後に聞こえた悲鳴から案山子であることが分かった。
失態に照れ笑いしながら、後ろ歩きをする切歌。
背後に現れた影に気付くことなく。
「ああ!」
「デス!?」
運悪く。
ふいに現れた老婆と、ぶつかってしまった。
慌てて振り返り、調と一緒に謝る切歌。
老婆はほがらかに笑いかけているので、許してくれたらしい。
マリアはそんな二人の下へ、駆け寄ろうとすると。
「おばーちゃん?どうしたの?」
老婆が出てきた列とは違う場所から、ひょっこり顔を出す第三者。
記憶に新しかったからこそ、マリアは驚きを露にする。
「あなた、喫茶店の・・・・!?」
「おや、お久しぶりです」
いつか雨宿りをさせてくれた『店主』は、人懐こい笑みを浮かべたのだった。
「どうしてここに?もしかしてご実家?」
「いーえ、単なる通りすがりですよ」
問いかけに対し、首を横に振る『店主』。
「この辺のおいしいもの巡って、メニュー開発でもと思ったんですが、この状況でしょう?そしたらこのおばーちゃんに出くわしたもんですから、ほっとけなくて」
「なるほど・・・・でも、何が起こるか分からないのだから、こちらとしては感心しないわね」
「はは、耳に痛い」
抱えた籠には老婆が背負っているものと同じく、おいしそうなトマトが詰まっている。
『店主』がここにいる理由は分かったが、状況から考えて留まっているのは感心しない。
「そういうマリアさんはどうしてこちらに?ライブというわけでもなさそうですが?」
「・・・・今回はエージェントの方よ」
「なるほど」
まさかS.O.N.G.の任務について話すわけにも行かず。
マリアは公式に発表されている事実のみを、簡潔に答える。
対する『店主』は特に気にした様子も無く、ただ微笑んで納得するだけだった。
「スーパーで売っているものより甘い!」
「すっごくおいしいデス!」
ふと、切歌と調の方を見てみると。
老婆から受け取った、取れたてのトマトに感動している所だった。
「マリアさんも、お一つどうです?」
「あの、ごめんなさい。私、生のトマトは・・・・」
「まあまあ、騙されたと思って」
籠から一つ取り出し、差し出してくる『店主』。
マリアが申し訳なさそうに首を横に振り、やんわり断ったときだった。
「――――みーつけた」
弾かれるように振り向く。
二つに結んだ髪に、グラマラスな体形。
バルベルデで激突したパヴァリア光明結社の錬金術師、『カリオストロ』が立っていた。
「今度こそ、借りを返させてもらうわよ」
指先で頬を叩きながら、意地の悪い笑みを浮かべて。
徐に取り出したアルカノイズの結晶を、そこら中にばら撒いた。
赤い陣の中から、次々現れるアルカノイズ達。
「ッ逃げるわよ!」
本来ならシンフォギアを纏って対処するところだが。
バルベルデにて最後のLiNKERを使い切ってしまった今は、逃げの一手しか取れない。
マリアは咄嗟に老婆を背負い、背を向ける。
現れるなり突撃してくるアルカノイズ。
無情にも、その距離は近すぎた。
走った程度では開ききれない距離を、あっと言う間に詰められそうになって。
「えっ!?」
「ちょっと!!」
何を思ったのか。
『店主』は持っていた籠を調に押し付けると、ノイズの前へ躍り出る。
「何をしているのッ!?」
マリアの警告を無視した彼女は、両手を打ち合わせて。
地面に叩きつけた。
刹那。
ばしん、とプラズマが走ったと思うと、地面が隆起。
出来上がった壁はノイズの前に立ちはだかると、その突進を尽く防ぐ。
分解器官により三分の二ほど崩されたが、従来のノイズより位相差障壁が弱い彼らに対しては十分すぎる性能だった。
「・・・・へっ?」
「・・・・・ちょっと、ぃ今のッ・・・・!?」
間抜けな声を出したマリアに微笑んで、『店主』は前を見据える。
対面に立つカリオストロもまた、目の前の出来事に驚いているようだった。
「ありえない、だって『そっち』は魔女狩りでほとんど消えて、今使えるのはあいつ、と・・・・・・・ッ!!」
早口でぶつぶつ呟いた彼女は、次の瞬間。
みるみる目を見開き、ぽかんと口を開けて。
『店主』を穴が開くほど凝視する。
「あんた・・・・まさかッ・・・・!?」
わなわな震えだしたカリオストロが面白かったのか。
『店主』はにんまり笑みを浮かべた。
「――――気付いたんなら、力量差は分かるだろう?小娘」
「――――ッ!!」
不敵な台詞に、半歩身を引くカリオストロ。
マリア達に見える顔は、驚愕と畏怖に満ちている。
「今ならちょっとしたやんちゃってことで見逃してやる。とっととおうちに帰ることだ」
『さあ、どうする?』と。
余裕の態度を崩さないまま問いかける『店主』。
対するカリオストロは、束の間歯を剥き睨んでいたが。
やがてゆっくり笑みを浮かべる。
「――――いやよ、こちとら黙って飛び出してきてるからね」
次の瞬間。
両手に陣を展開して、構える。
「何にも収穫できませんでしたなんて、ダサくって仕方が無いのよッ!!」
完全な戦闘態勢。
対話は難しそうだった。
「交渉決裂か・・・・おばーちゃん」
「え、ええ」
それが分かったからこそ、『店主』はため息一つ。
ズボンのポケットに突っ込んでいた手袋をはめつつ、首だけで振り向いて老婆に話しかける。
「驚かせてごめん。でも安心してくれ、畑には指一本触れさせないよ」
「だ、大丈夫なのかい?」
「なぁに、ここらはちょいと散らかるけど、大丈夫だよ」
不安げな老婆の問いに、『店主』はまた笑う。
「それに、悪いことした子供を躾けるのは――――」
つぼめた指先を前に出す。
はめられている手袋には、赤いインクで陣らしきものが書かれている。
「――――大人の役目だ」
指をこすると、パキンと音がして。
火花が、飛んで。
「きゃぁッ!?」
「う、わ!?」
「デースッ!?」
瞬間、爆発。
アルカノイズごと、カリオストロが炎に包まれる。
もう先ほどから置いてかれっ放しのマリアには、もう何が何だか分からない。
分からないが、やるべきことを見失うほど動揺もしていない。
「ッ行くわよ!切歌!調!まずはおかあさんを安全な場所に!」
「わ、分かった!」
「合点デス!」
発破をかけられた二人も、しっかり頷いて走り出す。
去り際、マリアが振り向くと。
黒煙の中から飛び出したカリオストロが、『店主』を睨みつけていた。
初撃にしては中々なダメージを負ったはずだが、戦意を失っていない。
敵の健在を確認したマリアは、すぐに撤退に専念した。
◆ ◆ ◆
「な、んだ、ありゃあ・・・・!?」
戦闘はS.O.N.G.司令部にも察知されており、モニタリングされた異様な光景に誰もが驚いている。
無理も無い。
手袋をはめた手で指を鳴らしたと思えば、次の瞬間には爆発しているのだから。
「あれはまさか、発火布・・・・!?」
だが、状況をしっかり理解できている者もいた。
S.O.N.G.に協力する錬金術師、エルフナインだ。
「知っているのか?」
「あの手袋に使われている素材なら」
S.O.N.G.司令官『風鳴弦十郎』に問いかけられ、彼女は頷く。
「あれは発火布と呼ばれる特殊な布で、強く摩擦すると火花を発するんです。ライターが開発されるまで、錬金術師の間で火種として利用されていました」
「いや、あれは火種ってレベルじゃないだろ・・・・」
オペレーターの一人『藤尭朔也』のぼやきにも頷いて、エルフナインは続ける。
「そもそも発火布は、植物性の布に金属や石英を合成して作るものです。そして合成に必要な匙加減は、錬金術によってのみ可能とされています」
「では、彼女もまた錬金術師ということか!?」
「恐らく」
エルフナインはモニターを凝視し、観察する。
「・・・・発火布で生み出した火種を、空気中の塵を導火線代わりにして運んでいるようです。後は標的周囲の、恐らく酸素濃度などを調節して」
言い終えると同時に、また爆発。
すっかり煤けたカリオストロの姿が、その威力を雄弁に語っていた。
「しかも、あの人が扱う術式・・・・」
光弾を放ち、魔法使いのように戦うカリオストロに対し。
爆発や地面を変形させた突起物といった、物理的手段で攻撃する『店主』。
「まさか・・・・・あの人は・・・・!?」
その正体を思い当たったエルフナインは、目を見開いた。
◆ ◆ ◆
「こん、のぉッ!!」
場所は移動して雑木林の中。
まさに苦戦しているカリオストロも、手袋の仕掛けに見当がついていた。
熱気と黒煙に巻かれながら、目的のものを探し回る。
早く、早く。
逸る気持ちを宥めながら、『ダウジング』を繰り返して。
(ッ見つけた!!)
「っはああああああ!」
「おっ、と」
逃げの姿勢から一転、攻勢。
何度目か分からない爆発を障壁で防ぎ、『店主』へ肉薄。
『風』で強化したキックを、懇親の力で叩き込む。
防御が間に合わなかった『店主』は、咄嗟に腕で防ぐも。
そのまま吹っ飛ばされてしまう。
受身を取り、身を翻した『店主』が着地すると。
飛沫が上がり、足元が一気に濡れる。
「あっ」
「もらったぁッ!!」
すぐさまカリオストロが『水』の陣を展開し、川の水を操る。
吹き上がった水柱を『店主』は避けることができず。
大量の水を頭からかぶることになった。
当然、手袋も濡れている。
「ふっふーんだ!びしゃびしゃにしちゃえばこっちのもんよ!」
足を露出させているからか、足首までの深さに遠慮なく飛び込むカリオストロ。
威嚇するように『水』の陣を展開したまま、勝ち誇った笑みを浮かべるが。
「――――さて、追い込まれたのはどちらかな?」
『店主』は慌てることなく、再三両手を打ち合わせて。
川底に突っ込んだ。
何度目か分からないプラズマが走り、カリオストロの周囲が壁で覆われる。
さらに水もある程度細工されたのか、じゅおっと音が立った。
「水を分解すると、酸素と水素になる」
「ッやば・・・・って、足が!?」
ポケットから、今度はライターを取り出す『店主』。
試しに点けると、ちゃんと火が灯った。
察したカリオストロは当然逃げようとするが、川底に足を固定されて動けない。
「ちゃんと覚えておこうね、お嬢ちゃん」
『店主』は無情にもにっこり笑って、ライターを放り込んだ。
刹那、
「うっわぁ!?」
駆けつけた響達の前で、今日一番の火柱。
やらかした本人も顔を覆い、爆風から身を庇う。
場所が水場だったからか、火はすぐに消えたものの。
もうもうと上がる黒煙が、その威力を物語っていた。
『店主』がしばらく見つめていると、変化。
「げ、っほ!ごほごほッ、ごほッ!」
「どうする?まだやるかい?」
黒煙が揺らぎ、カリオストロが咳き込みながら出てきた。
いよいよ損傷が激しくなった衣服と、満遍なく真っ黒に汚れた体。
伝う雫をおざなりに振り払ったカリオストロは、『店主』を恨めしそうに睨みながら。
やがてプルプル震えだし、
「んもーッ!!サンジェルマーンッ!!あんたのお師匠強すぎぃーッ!!!」
テレポートジェムを足元に叩きつけ、実に悔しそうに地団太を踏みながら撤退していった。
「マスターさーん!」
「やあ、響ちゃん」
敵がいなくなったのを確認し、『店主』が切り替えるように息を吐きだしたところへ。
響達が駆け寄ってくる。
『店主』が経営する喫茶店は、旧リディアン近辺。
そこに通っていたことのある響達もまた、常連だった。
「翼さんに、クリスちゃんも勢ぞろいか。どうも、ご贔屓に」
「あ、それはこっちも一緒で・・・・じゃなくて!あのッ!」
「あはは、うん。分かっているよ」
身振り手振りでわたわたと慌てる響を、『店主』は微笑ましく見下ろして。
ひとまず川から陸へ上がった。
もう隠す必要もないからか、また手を打ち合わせて濡れた足元に触れる。
すると水が蒸発して一気に乾いた。
「こっちも誤認逮捕は勘弁願いたいからね。少ないけれど、話せることは話そう」
「では、同行願えるのですね?」
「うん、でもその前に・・・・」
途中で手ごろな木の棒を手に取り、ずんずん進む『店主』。
翼の確認を肯定しながら、上がりきった丘から周囲を見下ろす。
「まずはこの辺の『後片付け』をさせてくれないか?さすがに放置は憚られる」
陥没したり、せり上がったりした地面。
未だ煙がもうもうと昇っているところもあり、戦いの、というか、攻撃の激しさを物語っている。
宣言どおり畑や家屋には損害を出していないものの。
なんというか、とんでもないことになっていた。
並んで見下ろした響達は、絶句したり呆れたりしていたが。
『店主』の提案にただ頷いたのは、共通したリアクションだった。
実は名前を決めていたけど、出すタイミングを失ってしまった←
永い間生きた所為で、『名前はイッパイアッテナ』状態。
もちろん本名は別にあり、錬金術師の間では結構有名。
テンション振り切れたエルフナインが、鼻息荒げてぴょんこぴょんこするくらいの人物。
髪型は肩甲骨までの長さを一つ結び、色は黒。
胸は控えめだが、その分すらっとしていてカッコイイ。
かつて『サリア』という名前の弟子を取っていたらしい。
当方AXZは遅れて視聴していますゆえ。
多少の矛盾や差異は見逃していただきたく・・・・!