ソードアート・オンライン ~短剣使いの薬品売り~ 作:斗穹 佳泉
やはり私は亀進行なので、さくさく進む方が珍しいです。
どうか飽きずに見てやってください。
ではではっ、どうぞ
チリリリーン。
液体の入った丸底フラスコを象った紋を持つドアが開かれる。
そこはこの店の店主がせっせこ集めたお金でやっと手に入れ、つい先日開店した、アインクラッド唯一の、ポーション屋。
チャイムは、誰かが来店したことを店主に告げていた。
その音を聞いた店主は、読み込んでいたスキル説明ウィンドウを閉じ、開いた扉に向かって声をかける。
「はーい、いらっしゃい」
「やっほーミナ、どうなのよ商売の調子は?」
お客かと思ったけど、こんな風に話してくるのは彼女しかいない。
彼女の勧めで、私はこの店を始めた。
店は最近開店したばかりで、まだ情報屋にも載ってない。
そんななかでもお客がちらほらと訪れるのは、リズや、ミナと縁がある攻略組の人がいるからだ。
ちなみに、攻略組の中でも、このポーション屋を知っているのは、ごくごくわずか。
「まぁまずまずってとこかな。リズの方は?」
「私は、ほら、閃光様と黒の剣士様からがっぽりもらえるからさっ」
リズは笑いながら店を見渡す。
あたりにはポーションが武具屋のように並べてあり、店内は明るく、まるで私の店のよう……
「って、私の店の内装パクってない?」
「え、えっへへ~、気にしないっ。パクったんじゃなくて、リスペクトしたの!」
「それ、あんま変わらなくない?」
チリリリーン。
と、そこで救いのベルが。
「あ、お客さんだ。いらっしゃい」
リズを蒸留装置が置いてある奥の部屋へ押し込み、お客に笑顔を向ける。
「よぉミナっち、どうよ店の調子は?」
「あ、クラインさん、お久しぶりですね。おかげさまで良好ですっ」
やってきたのはギルド「風林火山」のリーダー、クラインさん。
この人との付き合いは、第二十八層でモンスターに囲まれていたところを、私も加勢してなんとか抜け出したところから始まっている。
ソロでポーションの材料を集めて回っている私を、何度かパーティに入れてくれたりと、とても優しい人だと思う。
「しっかし、ミナっちは白衣似合うよなぁ、もしかして医者とかの娘さんとか? あ、いや、わりぃ。あっちの世界のことを口に出すのはマナー違反だな」
「いえいえ、私は気にしませんよ? それより、今日はどのポーションを?」
「そうか、サンキューな。そうだな、そろそろリジェネポーションが切れてきたから、メンバーの分も買っとこうかなって思ってよ」
リジェネポーションとは、私が持つスキルでのみ作ることができるポーション。
効果は、バトルヒーリングと似たようなもので、秒間50ポイントHPを回復させ、持続時間は5分。合計15000ポイント回復させることができる。
モンスターが大量に狩れる場所では、これを飲めばほぼHPを気にせずに狩り続けることができるそうだ。(私の店に買いに来るプレイヤー曰く)
「いくついります?」
「んーそうだな、30個ほどかな」
「じゃあ75000コルになります」
「相変わらず高いなぁ」
笑いながらクラインは言う。
ポーション30個で75000コル。
1個あたり2500コル。
参考までに、今尚始まりの街で暮らしている人の1日の消費量、30コルくらい。
このポーション1個で、83日生きていけるという計算だ。
「これでもだいぶまけてる方ですよ? ほら」
とミナは店内に飾ってあるポーションの値札を見せる。
“リジェネポーション
効果 バトルヒーリングと同様/飲めば秒間50ポイント回復する/持続時間5分/1個4500コル……値段は、原材料が迷宮内にあり、採取に命の危険があるため”
「うへぇ、えげつねぇ値段だな」
「私だって命惜しいですもん。なかなか大変なんですよ」
それを聞いて、クラインは、そうか、そうだよなぁと独り言を言いながら、ハッと思いついたような顔になって
「ミ、ミナさん、お、俺がミナさんをまm――」
「ねぇミナ、そろそろ終わった?」
ガチャ、と蒸留装置が置いてある奥の部屋の扉が開き、リズが顔を出す。
「あれ、クラインじゃん。あんた知り合いだったの?」
「お、おま、なんちゅうタイミングで……」
「もー、お客の接待中は出てきちゃダメっていってたじゃない。クラインさん、さっきなんて言おうとしたんですか? リズのせいで聞き逃しちゃって」
ミナがそういうと、クラインは、
「あ、い、いや、いいんだ。ポーション、サンキューな」
といってそそくさと帰ってしまった。
さっきなんて言おうとしたんだろう。
なにはともあれ、今日も収入たくさん入ったから、よしとしよう。
店のドアに掛けているオープン・クローズの看板をひっくり返し、クローズにする。
店の中をちょこちょこっと片付けていると、ふと過去の事を思い出す。
私がこの店(ポーション店)をやろうと思ったきっかけは、始まりの街で、あるスキルを入手したからだった。
スキル名は「薬品精製手」。
“ポーションクリエイター”と読むこのスキルは、その名の通りポーションを作成するスキルだ。
SAOがデスゲームとなってから、私は少しの間、始まりの街に閉じこもった。
そりゃそうでしょ?
今まで、普通にゲームをしてきた。
FPSやTPS、ホラーやアクション、アドベンチャーまで、たくさんのジャンルのゲームをしてきたけど、命をかける、なんてことはなかった。
死んでも、リスポーンは当たり前。
とあるゲームでは、リス狩りすら当たり前だ。
とまぁ、それは置いといて、次勝つにはどうすればいいのか。それを考えるのが私の楽しみだった。
それが、私の日常だった。
突然日常が壊された。
私はただ怖くて、圏外にでるのすら怖くて、しかしすることも見つからず、ひたすら街を歩き回っていると、街の端っこに、寂れた道具屋を見つけた。
ドアを開けると、そこは割と大きな道具屋で、奥にはポーションを作る蒸留装置があるのがわかった。
小一時間ほど、ポーションが作られていく様を見ていると、道具屋の女主人に?マークが浮かび、
「あんた、ポーション作りに興味があるのかい?」
そこから先は、なにが私を動かしたのだろうか、さくさくとクエストをクリアし、蒸留装置と、白衣を報酬としてその女主人からもらった。
それから……
「で、これからどうするの?」
「ふぇ? なにかあるの?」
そこで黙々と片づけを見ていたリズに、現在に引き戻される。
「これから、私のフレンド主催のパーティーをするんだってば。来る?」
「え、う~ん……」
「あんた今日はこれからもう予定ないのよね?」
「え、まぁ、そうだけど」
「じゃあ問題なしね。私がレストランまで案内するから、ついてきて」
半ば強引に、パーティに参加することなった。
私、そのリズのフレンドがどんな人なのかまったく知らないんだけど……。
場所は最前線からはるか遠く、第二層。
人気のいない道を通り、案内されたレストランは……
「……あれ? 私、ここ知ってるよ?」
「え? ほんとに?」
「うん、第二層に着いてから割とすぐに来たよ」
「んー、じゃああいつがここ選んだのってなにか意味があるのかな?」
あいつ、とは誰のことだろう。
しかし聞く間はなく、リズは扉を開け入って行ってしまう。
「お、やっときたか、リズ」
「もお、遅いよリズったら」
「少しは遅れてる自覚を持って欲しいナ」
「うっさいわねえ、ちゃんと連れて来たでしょ。ほら、ミナも早く」
円形のテーブルに着いているのは、三人。
その三人は、まだ最前線が二層だったころ、私が命を助けてもらった三人だった。
作れるポーションについては、後々書いていこうと思っています。
この通り亀な上文字数も少ないですが、続けられるよう頑張りますっ。
感想等々、もしあればうれしいです。
ではではっ、また次回