ソードアート・オンライン ~短剣使いの薬品売り~   作:斗穹 佳泉

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久しぶりの投稿です、もう一か月、時間が進むのははやいですね。
少しずつ書いていたらこんなに開いてしまいました。

ではではっ、どうぞ


星空の下で

「え、リズのフレンドって……」

「そうよ、黒の剣士様と閃光様と情報屋」

「やめてくれよ、リズ。久しぶり、でいいのかな、ミナ」

「もう、その名前で呼ばないでって言ってるでしょリズ。二層ってことは、もうずいぶん前よね」

「心外だナ、“アインクラッド最高の”が抜けてるゾ、リズっち。ミナっちの噂は聞いてるゾ。ポーション屋、始めたみたいだナ」

 

突然の、懐かしい声に、ミナは固まった。

 

え、あの、ごめんなさい。

ほんとに突然すぎて言葉が……。

ほろほろと涙が頬を伝わる。

私の心は、懐かしさと、驚きでいっぱいになった。

 

「え、あの、その、俺なんかした?」

「あ、またキリト君がミナを泣かしたー」

「さっすがキー坊、女の子を泣かせるそのスキルにはお姉さん、頭が上がらないヨ」

 

いや、俺はなんもしてない!

とキリトが二人に抗議する。

それには四人とも笑って、店内は賑やかになった。

 

「……あはは、そういえば、初めて会った時も、こんな感じだったね」

 

そしてミナは、涙をぬぐいながら、笑いながら言った。

 

そして昔話をしながら、例の大きなショートケーキを頼み、みんなで食べた。

私は、その昔話の出来事を、今も鮮明に覚えている。

忘れることなんてできないだろう。

他愛のない話をしていたら、ふとアスナが切り出した。

 

「そういえば、大事なこと忘れてたよね、その頃の私たち」

「え? なにを?」

 

ミナが首を傾げ問う。

しかし、キリトとアルゴは頷いて、同時にメニューウィンドウを操作し始める。

ピコン、ピコン、ピコン、と私のメニューウィンドウが通知を受け取り、開くと、それはフレンド申請の画面だった。

そう、私たちは、フレンド登録をしていなかったのだ。

あの後すぐに別れたため、そのことに気づいたのは、数日後だったりする。

それはともかく、フレンド申請をしておかなければ、メッセージを送ることはできないし、会って話す、ということもできないだろう。

だから、私は、この人たちに会うことを、諦めていたのだ。

キリトに会うことを、諦めていたのだ。

向こうから持ち掛けてきてくれたことがすごく嬉しくて、ミナはまた涙を浮かべた。

しかし、笑みも浮かべて、言った。

 

「ありがと、キリト、アスナ、ルーちゃん」

「ちょ、まだルーちゃんって呼ぶ気なのカ」

 

アルゴというのは女性名としてなんか呼びづらいため、昔私がつけたあだ名だ。

アスナと一緒にずっとルーちゃんと言っていじっていたことを思い出す。

アスナにアイコンタクトをすると、にこっと笑みを浮かべて、アスナは

 

「いいじゃない、アルゴより呼びやすいわ。ルーちゃん」

「ア、 アスナっちまで言うのカ!? やめてと言ってるじゃないカ!」

 

こうやってみてると、ルーちゃんって、ちょっといじりがいのある姉みたいな人だ。

年はあまり変わらなさそう。

私のイメージ的には、ルーちゃんは絶対、妹におもちゃにされる姉だ。

 

「今失礼なこと思ってなかったカ? ミナっち」

「え? ナンノコトカナー」

 

はぁ、とため息をつくルーちゃん……もといアルゴ。

いじられるアルゴを、キリトがなだめる。

これも、あの時と同じだ。

 

「まぁまぁ今に始まったことじゃないんだし、いいじゃないか。ル……アルゴも落ち着けって」

「キー坊。今なんて呼ぼうとしタ?」

 

そろそろ怒りそうなので、いじるのはこれくらいにしておこう。

アスナも同意見である。

ルーちゃんを敵に回したら、一体どんな情報が公開され、私が公開処刑されるかわからない。

風の噂に聞いたのだけど、私のスリーサイズもしっているらしい。

……ちょっとその情報網怖い。

 

リズはここに案内するだけだったようで、すぐに帰って行ってしまった。

気を使ってくれたのかもしれない。

まったく、リズはなんだかんだ言って、いつも私の手助けをしてくれる。

心の中でありがとう、とリズにお礼を言い、このチャンスを無駄にしないためにも、私は言葉を発した。

 

「ねぇ、キリト、この後少し時間空いてる?」

「ん? とくに用事もないからいいけど」

「ねぇ、ミナ。それ私もついて行っていいのかな?」

「アスナっち、“たち”が抜けてるゾ」

 

何かを探るような顔のアスナと、この情報は高く売れるナといった顔をしているルーちゃんに、ミナは苦笑して答えた。

 

「だめ、ちょっと二人で話させて」

「だそうだから、二人とも、自重しろよ」

「まぁ、キリト君がそういうなら」

「ミナっちがそういうなら仕方ないナー」

 

 

と、いうことで、私とキリトは今、四十七層のフラワーガーデンにいる。

カツカツ、コツコツと、ブーツと靴が奏でる一定のリズムが、私の心臓へさらに負担をかけていた。

キリトは、何も言わずについてきてくれている。

そしてようやくついたのは、安全圏を抜けた先にある、小さな丘。

圏外だが、モンスターのポップは無く、安全地帯と称してもいいくらいの場所。

右には、澄んだ、広い湖。

左にはお花畑が並んでいて、夢の中にきたような感じになる。

今の時間帯だと、湖が星たちの光を跳ね返し、より美しく、綺麗に見える。

ポーションの材料を取りに行くときに、ここで笑っているカップルを見て、羨ましいなと何度思ったことだろう。

私も、いつかキリトとあそこで笑えたらなって、何度思ったことだろう。

しかし、今は。

 

「へぇ、綺麗だな」

「うん、とても綺麗」

 

置かれているベンチに座って、景色を眺める。

キリトも隣に座ってくる。

この時間帯が一番綺麗に景色が見えるのだが、幸運にも人はいない。

ここは、「情報屋が薦めるデートスポットベスト10!」という本に載るほどの場所だ。

二人きりになれるなんて、本当に運がいい。

 

「キリトはこの場所、知ってた?」

 

私の問いに、首を横に振ってキリトは答えた。

 

「いや、知らなかった。この層はデートスポットが多いってことしか知らなかったからな」

「それだけ知ってるってことは、一緒に来たい人はいるの?」

 

ドクン、ドクン、と心臓が鳴る。

キリトに聞こえてるんじゃないかと思うほどに、大きく鳴る。

 

「さて、どうだろうね」

「むぅー、教えてくれてもいいじゃん」

 

からかうように笑うキリトに、ミナは抗議する。

相変わらず、キリトといると楽しくて、こんなにもドキドキしてしまう。

一つ深呼吸をし、ミナは言った。

 

「……私はね、いるよ」

「え、そうなの? 誰?」

 

びっくりした顔でキリトは反応する。

その反応速度は、中々目を見張るものだった。

その顔は、ちょっと子供っぽくて、それでもかっこよくて。

そのキリトの顔を見て、顔を赤くしながら、ミナはゆっくりと答える。

 

 

「あな――」

「そこにいるのは誰だ!」

 

よりもはやく、キリトが左後方の林に向かって叫ぶ。

私も振り向くが、なにも見えない。

キリトが右手に漆黒の剣を持ち、警戒する。

 

「キ、キリト?」

「ミナ、ちょっと下がってろ」

 

キリトは私にそういうと、今度は林に向かって警告を発する。

 

「出てこないなら、斬るぞ」

 

 

その声に反応し、ガサガサ、と茂みが揺れる。

さすがに私も愛用の、水色に透き通るダガー『レインフォール』を右手に持つ。

 

現れた人物は、襤褸衣を纏い、顔は仮面をかぶっているのか、アバター本来の顔ではないのがわかる。

しかし、両手には、武器を持っていない。

あれ、ていうか、この人。

 

「もしかして、Pohさん?」

「sit、なぜお前がいる『黒の剣士』」

「そりゃこっちのセリフだぞPoh。何の用だ」

「えと、お取込みのところ申し訳ないんだけど」

 

ミナが二人の威圧感におどおどしながら、Pohとキリトの間に出る。

キリトが止めようとするがその前に、ミナが言葉を発する。

その声は、おどおどしながら前に出たミナのものとは思えないほど、綺麗に紡がれた。

 

「Guten Abend, Poh. Obwohl ich in der Lage war, zwei Personen mit Kirito mit großen Schmerzen zu werden, würden Sie mich nicht stören?」

(こんばんは、Pohさん。せっかくキリトと二人になれたのに、邪魔しないでくれますか?)

 

「Ha, hörte, dass er von diesem Untergebenen zu diesem Ort kam, aber ich habe nicht gehört, dass es einen "schwarzen Schwertkämpfer" gibt」

(ハッ、部下からこの場所に来たと聞いたが、『黒の剣士』がいるとは聞いてないぞ)

 

ドイツ語を、キリトは知らない。故に、なにを話しているのかも不明。

ミナがドイツ語をしゃべったことに驚き、視線はミナとPohをいったりきたりする。

しかし、その話の内容がどうであれ、目の前にいるのが、レッドギルドのリーダーだということが、キリトの警戒心を解かさないでいた。

 

「Also, ist es einkaufen Es tut mir leid, dass ich es jetzt nicht verkaufen kann. Ich kann den Laden für 1 Minute um 0 Uhr heute Abend eröffnen」

(それで、買い物ですか?すみませんが今はお売りできません。今夜0時店を1分開けるので、その時にお願いします)

 

「Regeneration, Verdampfung, Oxidation, Gift, Lähmungsgift, Gesamttoleranz beträgt 100. 3 Millionen Colleges sind vorbereitet.」

(リジェネ、気化、酸化、毒、麻痺毒、全耐性を100ずつだ。300万コルは準備してある。)

 

Pohは言葉を発し終わると、消えるように茂みに入っていった。

ポーション屋という、プレイヤーにバフを与えるアイテムを扱っているため、こういった裏で生活しているプレイヤーが、ちょくちょく店にやってくる。

私がドイツ語を話せるのは、ただ外国語が好きだからだ。

……というのは冗談で、オンラインゲームでより多くの人と会話をするのが目的で覚えた。

あと英語とフランス語ならしゃべれる自信がある。

……たぶん。

 

そのままたっぷり十分、たっただろうか。

ふぅ、とキリトが剣を下ろし、緊張を解く。

しかし瞳に宿る光はそのまま、私を向き直った。

 

「ミナ、あいつはなんて言ったんだ?」

 




オリジナル展開が続いておりますが、もう少ししたら原作に戻す予定です。
ポーションについては作中で効果を書きたいと思っています。

感想等々、もしあれば嬉しいです。

ではではっ、また次回。


アルゴの喋り口調が本編と違うかもしれませんが、作者のアルゴに対するイメージです。本作中ではそういうもの、と思っていただければ幸いです。
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