最近の高町家のどうでもいいはなし ~マニアック眼鏡伝説~
えー、皆様。
俺、城島晶です。
とらハファンの方なら説明するまでも無いですが、師匠に不意打ちの一撃を入れる為、今日も今日とて、夜中に師匠の部屋の屋根裏に隠れています。
まあ、それだけならいつもの事だったりしますが、今日はなんと、ここに潜んだまますでに二時間が経っています。
「…………」
いえ、師匠がまだ部屋に戻ってこないっていうわけじゃないんです。俺に気づいて警戒してるってわけでもないです。
「……!――っ……」
つーより今の師匠は隙だらけで、多分、奇襲じゃなくても攻撃成功しそうです。
それじゃあ、なんで何にもしないでここに潜んだままなのかって?
もっともな意見です。
「……ぁ……く……んっ!」
さらに、さっきからの謎の台詞はなんなのかって?
はい、まったくすばらしい意見ですね。
これがまあ、原因なんですけどね、
「やっ……そこ……ふぁ――!」
んーと、そのー、なんと言いますか、なんとも言えないと言いますか、なんとも言いがたいけど言わずにはいられなくてそれでもやっぱり俺の口からは言いづらいといいますか。
まあ早い話、今の俺は思いっきり――
「美由希……いいか?」
「恭ちゃん!わ・…たし……もぅ……」
大ピンチです。
いや、まあ二人が最近付き合い出したってゆーのは知ってますよ?前作の「涙が奏でる鎮魂曲」参照なんてゆー宣伝だってやっちゃうし。
ですけどね、一応それを知ったのはつい最近な訳で。なんといいますか、俺としても「ああ、仲が良いな~、うらやましいな~」とかそういうレベルでありまして。ミドリガメと話題に挙げた時だって、「俺達が見てないときに、キスぐらいしてるんじゃね―か」と、笑いながら話してたぐらいで。
それがまさか、『いくとこまでいっちゃってる』なんて――はっはっは。
いや~世の中わからないものです。
あ、別に覗こうとしたんじゃないだぜ?
俺もね、師匠が部屋に戻ってきた後、すぐ美由希ちゃんが来たんで、さすが師匠!鍛錬の後も美由希ちゃんに講義するなんて、熱心だな~とか思って、邪魔しないためにも今日は素直に屋根裏から降りて、挨拶して寝ようとしたんですよ?
まあ、いきなり二人がキスしてたときも、終わったところを見計らって「お邪魔しました~」とか少しにやけた感じで現れようと思ったんですよ?
で・す・が!
師匠が無言で美由希ちゃんを布団に押し倒したときにゃ、どうしようもないってなもんですよね?
しかも師匠、眼鏡を外そうとする美由希ちゃんに、「いつもどおり……そのまま」ですよ!?
普通、アレの時ってそういうのは外すもんじゃないんですか!?いや別に、俺が経験したわけじゃないですが。
いや、まあ確かに前作の「涙が~以下略(宣伝)」みると、キスシーンは全部眼鏡つけたまんまだったっスよ。そのとき、なんか変だな~と思わないでもなかったけど、あまりに自然だったんで気にしませんでしたが。
つまりアレですね。どーやらメガネかけたままは、『師匠のデフォルト』らしいんですわ。
はっはっはっはっは、師匠の意外な一面を見れて、俺もうれしいですYO!
「今度は……私が……ん……」
はっはっは、やるな美由希ちゃん!でも、俺のシナリオにも○○○シーンはあるから引き分けだNE!
はっはっはっはっは!
……いや、現実逃避してる場合じゃなくて……。
次の日っス。
結局、昨日は朝まで眠れませんでした。
つーか、師匠達が第4ラウンドまで入って、寝かせてもらえませんでした。
しかし、あの人達はなんで……
「返しが甘い!剣先だけで勝負しようとするな!」
「はい!――はぁ!」
なんで元気一杯ですか?
……いや、よく見れば師匠は多少疲れが見えますね。それでもいつもと変わらない動きは、さすが、実践派の御神流といったところですか。
まあ、美由希ちゃんはなんかツヤツヤしてて、いつもより調子よさそうなのは無視しましょう。
今日の鍛錬は終わったようで、一礼して美由希ちゃんが家に戻っていきました。
……よし!
「師匠!」
「……なんだ、晶」
「手合わせお願いしまっす!」
「……まあいいだろう」
疲れの残る今がチャンス!
試合開始と共に先制攻撃――あっさりとかわされた!さすが師匠、動きに無駄が無い!しかもその後の攻撃は、明らかに俺の力を試すためのモノ。やはり……このままでは負ける……だけど、今日の俺には必殺技が――
「くらえ!師匠」
「……む」
距離を置き、懐に手を伸ばした俺に、怪訝な顔をする師匠。不適に笑う俺。
そして俺は――
眼鏡をかけた。
「……」
「…………」
時が流れた。
「………………」
「……………………」
つーか止まったっぽい。
「えーと……」
「……何の真似だ」
あ、師匠の声めっちゃコワい……
「いや、師匠って、眼鏡好きでしょ?これで俺を攻撃できないかな~と」
「……ほう……どこからそんな考えが浮かんだか知らんが、思いっきりやっていいってことだな?」
むんず、と師匠に頭を鷲掴みされたりして……師匠、顔は笑ってるけど目が据わってます!
やばい!このままだとマジ死ぬ!
「あああああ!すいません師匠!だってほら、昨晩はお楽しみでしたねとゆーか、「いつもどおりそのまま――」って、よく言うんですか?というか――」
ピキ――と、師匠が凍りついた。だらだらと、首筋に発汗ではなく明らかな冷や汗が浮かんでいる。
チャンス――!
「隙ありぃぃぃぃぃぃぃ!」
グワンガラガラゴワキーン!…キーン……ィ-ン……
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えーと、皆さんこんにちは。うちは鳳蓮飛。みんなからはレンって呼ばれてます。
なんか知らんけど、今日、あのオサルのやつが、頭を何かにぶつけて倒れました。
しぶとい晶はたんこぶで済んでましたが、なぜかその時のことと、朝から何度もうちに自慢げに騒いでいた「必殺技」のことを忘れていました。
最後に晶の元気な姿を見たとゆーおししょーは、
「さあ……まあ、長い人生だ。いきなり空から隕石でも落ちてきたんじゃないのか」
と、珍しく冗談を言ってはりました。
まあ、オサルのことですから、神さんが何かの罰でも与えたんとちゃいますか?それなら、おししょーの言うこともあながちまちごうてへんのかもしれへんです。
ただ――気になることが一つ。
あれからしばらくの間、馬鹿ザルの部屋から「眼鏡が……そのまま……眼鏡が……」という謎の寝言が聞こえてん。うち、怖くてしゃーなかったですわ。
教訓――人の意外な一面を見てしまったら……見なかったことにしましょう。