多分
艦コレ学園の正門前。
そこにラルとトライファイターズのメンバーが着ていた。
「何か和風な学校……」
フミナの言葉通り、目の前に広がるのはテレビでみるような田舎の学校。
木造建築で近年みないような建物。
正門もレンガ造りで掛けられている学校の表札も木造だ。
「時代遅れ……いや、時代が違うような」
ユウマが呟いていると目の前に人がやって来る。
「失礼します。聖鳳学園チームトライファイターズのメンバーですか?」
「あ、はい!」
メガネをかけた白い制服を着た女性がやって来る。
ショートカットで知的なイメージの強い女性。
「失礼、私、ガンプラバトル部の副部長を務めています霧島です。部室へ案内しますね」
「あ、あの、まだ一人」
「悪い、遅れた」
フミナがまだ一人が着ていないと伝えようとした時、後ろから声が聞こえる。
三人が振り返り、フミナとユウマは目を丸くした。
「「先輩!?」」
「悪い、遅れちまった」
「どうしたんですか!?メガネは!」
「あ?バトルするのに邪魔だろ」
遅れてきた人物、ハヤテ・シンは普段していた瓶底メガネを外していた。
前髪も少し手を加えられているらしく、少し汗を流して三人を見ている姿はイケメン。
「~~」
「ん?」
セカイが振り返ると顔を赤くしている霧島の顔があった。
見られていると気付いたのか霧島は小さくせき込み、顔を上げる。
「そろったようですね。部室までご案内します」
「よし、行くぞ」
「……先輩、大丈夫なんですか?」
フミナがおずおずと尋ねる。
「問題ない。ちゃんと用意してきた」
背負っているリュックサックを揺らしながらハヤテは言う。
「そもそも、どこへ行っていたんですか?」
ユウマが尋ねる。
トライファイターズのメンバーの誰もが連絡を取ることができず、詳細がわからないまま。
唯一、知っている人物が。
「ラルさんと姉ちゃんだけだもんなぁ……教えてくれなかったし」
ミライはニコニコと微笑むだけ。
ラルさんは「楽しみにしていたまえ」というだけだった。
「イタリア」
「「イタリアぁああああ!?」」
「色々あってな、ガンプラバトルの方はまー、試合をみて、判断してくれってところかな」
「しっかし、この学校、和風過ぎないか?」
「それは僕達も思いました……」
遅れてやってきた俺とトライファイターズのメンバーと共に弓道場のような建物の中に入る。
そこでは大量の資料とガンプラが置かれていた。
「数は少ないですが、どれも素晴らしい出来栄えのものばかりですね」
「ありがとうございます」
コウサカの言葉に霧島が感謝する。
霧島が副部長ということらしい。
俺に話をした様子だが副部長としての役目を果たしている様子。
「ところで、霧島さん、ここの部長は」
「あ、部長でしたら」
霧島が言おうとした時、地面が揺れる。
「へ?」
「なに?」
「地震?」
「いや、違う!これは」
扉の方をラルさんがみる。
バァンと音を立てて白い制服の少女が現れた。
茶髪、長い髪で団子のようなものがある奇抜な髪形。
整った顔立ちの少女は俺を捉えると全力疾走で飛びかかってきた。
盾、
盾が!?
「なんとぉ!?」
「バーニングラァブゥゥゥウウウ!」
エコーがかかった声と共に俺の視界が暗転する。
音を立てて地面へ倒れそうになった。
咄嗟にリュックサックをカミキ弟へ投げる。
「あぶな!」
キャッチしてくれたカミキ弟に感謝したかったが地面に頭からいったことで喋ることができない。
「お、お前は」
「Hey!会いたかったデース、ちゅっちゅ!」
「やめろぉぉぉおお、金剛ォ」
頬へキスしてくる彼女を全力で抑える。
「お姉さま、今は抑えてください」
「あーん、霧島ぁ」
うしろからやってきた霧島が金剛を引きはがす。
「それよりもお姉さま。挨拶を」
「ハァイ!英国で生まれた帰国子女の金剛デース!この部の部長でもアリマース!よろしくお願いしまーす」
ビシッと指を突き付けて俺達へ挨拶する金剛。
彼女の挨拶にトライファイターズのメンバーは言葉を失っていた。
どうやら、金剛もこの世界に来ていたみたいだな。
「隣の部屋へ。そちらに他の部員とバトルフィールドがありますので」
「あ、はい!」
霧島の案内で俺達は隣の部屋に入る。
ゾクリ。
“俺”に突き刺さる冷たい視線。
体が震えそうになりながら目の前の部員を見る。
そこにはかつて前の世界にいた艦娘と呼ばれる少女達がいた。
中には翔鶴、瑞鶴の姿もある。
部員は部長の金剛、副部長の霧島、比叡、榛名、翔鶴、瑞鶴、吹雪がおり、この中でバトルに出るのは金剛、吹雪、翔鶴の三人。
対して。
「本当に大丈夫なんですか?先輩一人で」
ホシノ後輩が俺に尋ねる。
書置きで俺が一人で参加するといったことを気にしているのだろう。
「ああ、大丈夫だ」
頷いて俺はカミキ弟からリュックサックを受け取る。
「お前は大会予選が近いからな。ここでガンプラに傷をつけさせるわけにはいかないからな……負けるつもりは毛頭ない」
不安そうに見ているホシノ後輩達に俺は真っすぐ見つめ返して答える。
初戦の相手は吹雪。
使用するガンプラはスノーホワイト。
フィールドは地上。
「勝ちます!司令官」
「今はただのハヤテ・シンだ」
吹雪へそう言いながらGPベース、続いて、用意したガンプラをセットする。
「ハヤテ・シン……ジェスタTE、出る!」
「WWじゃない!?」
コウサカ・ユウマはバトルフィールドに現れたガンプラを見て驚きの声を上げる。
「黒いな、あのガンプラ」
「ユウ君、あれってジェスタ……のカスタム機?」
「おそらく、だが、何だ?ジェスタのカスタムにしては機体周りの装甲がかなり分厚い……それに、背中に背負っているパーツ?武装なのか?あんなのじゃ、動きに制限がかかるだけだ」
ハヤテ・シンが用意したガンプラ。
それは機動戦士ガンダムUCで登場したRGM-96Xジェスタ。
スリムなジェガンと比べると厚い装甲が取り付けられているが背中のバックパックによってガンダムに匹敵する速度を出すことが可能としている。
だが、ハヤテのジェスタは本来のジェスタよりもさらに重厚になっているばかりか、武装や背中に取り付けているパーツが多すぎて動きが鈍くなるとユウマは捉えていた。
対する吹雪が使用しているガンプラはポケットの中の戦争に出てきたガンダムNT-1アレックス。
純白の塗装がなされ、ビームライフルとミサイルポッドが装備されている。
専用のチョバムアーマーはつけられていないようだ。
「これじゃあ、スノーホワイトが有利だ。なんで先輩はWWを使わなかったんだ?」
「何か、考えがあったんじゃ」
試合開始のブザーが鳴り響く。
低空で移動するジェスタTEを追いかけるスノーホワイト。
スノーホワイトのライフルがジェスタTEを狙うが無駄な動き一つなく回避していた。
「ウソ!?」
驚く吹雪。
くるりと回転しながらジェスタTEが盾の先端を向ける。
盾に隠されているビームガトリングが音を立てて撃たれた。
「う、わぁぁ!」
慌てて回避運動を取るスノーホワイト、弾丸のいくつかが装甲を掠める。
弾切れになったのかガトリングをパージした。
「このまま、行きます」
ミサイルポッドの全弾を撃ちながらスノーホワイトが接敵する。
ビームサーベルを抜いてスピードを活かして迫った。
「危ない!」
セカイが叫ぶ。
ジェスタTEは回避運動を取らず、振り下ろされるビームサーベルを見ているだけ。
「そこ!」
アームレイカーを操り、腰部分からビームサーベルを抜いてつばぜり合いをする。
「必ず勝ちます!司令官!」
「だから!!」
ジェスタTEの両足に装備されている装甲から仕込み腕が飛び出す。
「仕込み腕!?」
驚く吹雪の前で仕込み腕が持っていたビームサーベルがスノーホワイトの両足を切断する。
バランスを崩したところでジェスタTEのビームサーベルがコクピットを貫いた。
スノーホワイトが動かなくなったことを確認してジェスタTEの仕込み腕は収納される。
「まずは一機」
すぐにシステムが次のファイターが現れたことを伝えた。
ジェスタTEが振り返ると足元でビームが爆発する。
「五航戦翔鶴、デュナメスフライングスワンが相手をします!」
翔鶴のガンプラはガンダムOOに出てくるガンダムデュナメス。
GNスナイパーライフルを構えながら近づいてくる。
「狙撃タイプか……」
ハヤテはジェスタの背中からいくつかのパーツを取り出す。
「私が倒します。私が!」
叫びながら翔鶴が狙撃を行う。
肩や足などにビームが直撃するが破壊に至っていない。
代わりにジェスタTEに装着されていた装甲がパージされる。
「なんて固い装甲!」
驚きながら狙撃を続ける翔鶴。
目の前でジェスタTEはスナイパーライフルを構えていた。
「いつの間に!?」
放たれるビームをデュナメスはGNフルシールドで防ぐ。
衝撃で仰け反るデュナメス。
その光景を見てユウマ達は息をのむ。
「あの装甲、チョバムアーマーだったのか、見た目よりもかなり厚めに作られているからビーム兵器を受けても本体へダメージが行かないばかりか……仕込み腕や補助パーツをたくさん用意している……まるで要塞じゃないか」
重装甲かつ隠された武装の数々。
量産機でここまでやるのか!?
驚くユウマ。
それは相手の翔鶴も同じ。
「負けない……絶対に、提督を手に入れます」
「なぁ、翔鶴」
通信機越しにハヤテが話しかける。
「なんで、俺に拘るんだよ」
「それは!貴方しか、いないから!」
叫びながらデュナメスが狙撃をする。
ジェスタTEの狙撃がGNスナイパーライフルを破壊した。
「貴方の優しさに救われたから、だから!!」
叫びながらビームサーベルで迫るデュナメス。
「悪いな」
振り下ろされるビームサーベルを前にジェスタTEは盾を前へ向ける。
盾に隠されているミサイルがデュナメスの顔と腕へ直撃。
爆発を起こす。
煙の中からジェスタTEが飛び出す。
ジェスタTEの右腕にはガントレットのようなものが装備されていた。
「俺は、お前たちに好かれるような男じゃない。他の男を見つけろ!もしくは、こういうバトル相手ならやってやる!」
ガントレットがデュナメスの装甲を貫く。
「ウソ……先輩だけで二人も倒しちゃった」
「これが世界大会出場の実力……」
「すっげぇ!ハヤテ先輩、こんなに強かったんだ!」
「まだだ、最後の一人が残っている」
ラルの言葉通り、部長である金剛が残っていた。
「流石デース!提督ぅ」
「だから、俺は提督じゃ」
「そうでも、私達からすれば提督なのデス」
にこりとほほ笑みながら金剛が操るのはガンダムZZをベースにしているガンダムバーニングラブ。
「名前、まんますぎだろ」
呆れているとロングビームサーベルを抜いてバーニングラブを襲い掛かって来る。
ジェスタTEは盾で防ごうとするがビームサーベルの威力が途中で増す。
「ウソだろ!?」
危機感を覚えて慌てて離れる。
その際にライフルが破壊された。
「覚悟してくだサーイ!ファイア!!」
叫びながらロングビームサーベルを振り回す。
「近づけないってか……くそっ!」
極太のエネルギー刃がジェスタTEの装甲を焼いていく。
「残っている奥の手でなんとかするか」
バーニングラブから大きく距離を取って背中の残りのユニットを展開する。
「あれは!?」
「剣?」
「まさか……」
背中のユニットから現れたのは二本の大剣。
ブンと音を立てて刃の部分にエネルギーが纏われる。
ソードインパルスガンダムが使っていた武装エクスカリバー。
「さて、ギアを上げていくぞ」
全ての追加装甲を外したことでジェスタTEの速度が増す。
「流石デース!でも、負けません!勝つのは私デース!」
「悪いな金剛」
ロングビームサーベルを躱しながらジェスタはバーニングラブの懐へ入り込む。
「ガンプラ歴に関しては俺がまだ上なんだよ。お前らに負けるつもりはない!!」
バーニングラブの体にエクスカリバーを突き立てて、ビームサーベルを腹部や足へ突き刺す。
とどめとばかりに繰り出された拳がガンダムバーニングラブの頭部を吹き飛ばす。
同時に爆発を起こしてガンダムバーニングラブがシステムに撃破認定。
「何より、せっかくの人生だ。過去何かに縛られず、楽しめよ。その方がいいぞ」
勝者はハヤテとされた。
「先輩!すっごいです!今度は俺とバトルしてください!」
「勘弁してくれ。流石に疲れている」
「その割には元気に見えますけれど」
「疲れているから」
「相変わらずですね。少しは見直しましたけれど」
コウサカがデレた!?
「流石だね。ハヤテ君。腕は衰えていないようだ」
「ラルさんには勝てないけどさ」
俺達は艦コレ学園を後にしていた。
あの後、少しばかり彼女達と話をしたが果たしてどうなるかはわからない。
まあ、これ以上の悪化はしないだろう。
「でも、もったいないな。先輩が強いとわかったのに」
「悪いけれど、今回は俺の尻拭いでもあったからやっただけ、こんなこと、何回もやっていられないよ」
そういって瓶底メガネを装着する。
「俺はこうしている方がすっごい、落ち着く」
「残念だな~」
「勿体ない」
「でも、先輩らしいですよ!」
「……ありがとよ、セカイ」
「はい!……あれ?先輩、今」
「さぁて、かえってご飯でも食べるか……米が恋しいぜ。イタリアじゃ、食べていなかったからなぁ」
「そういえば、先輩はどうしてイタリアに?」
「……ある人に会ってひたすらガンプラバトルをしていた」
誰に会ったかはここでいわない。
言ったら大騒ぎする相手だからな。
イタリアの伊達男なんていったら。
「ええ!?それだけのためにイタリアへ行っていたんですか」
「俺の場合、勘を取り戻すには実戦あるのみだからな……さて、次はお前達の大会地区予選だな。頑張れよ」
「はい!」
「ハヤテ先輩」
少し離れたところでコウサカが俺に尋ねてくる。
「何だ?」
「どうして、今回の試合、今まで使っていたガンプラを使わなかったんですか?あの世界大会でベスト3にまで到達するほどの力を見せた……ガンダムデルタカイWWを」
「……そのことか」
アレを知っているコウサカなら聞いてくると思っていた。
そもそも、何度も聞こうとしている節があったからな。避けてきたけど。
「教えてください。あれなら今回の戦いも」
「あれな、時が来るまで封印しているんだよ」
「封印?」
「そ、本気で戦いたいあいつらと会うまで封印中」
「……そんな理由で」
「大事なことなんだよ」
納得できていない後輩へほほ笑みながら俺は歩き出す。
家へ戻るとちょっとした騒動が待っていた。
「なんで、お前らが俺の家に言えるんだ!?」
「遊びに来ました!」
笑顔で答えるのは榛名と比叡。
室内には他の艦娘だった奴らがわちゃわちゃいる。
幸いにも俺のガンプラ制作室に足を踏み入れられてはいない。
「普通の生活送れいったのに」
「提督……いえ、ハヤテさん」
呆れていたら翔鶴が俺の前にやって来る。
いつもの光がない瞳なのかと身構えていると違った。
それどころか、瞳が潤んでいません?
「何だ?」
「私達、ガンプラバトルをする貴方を見てますます、いえ、本気で好きになりました!」
はい?
「前の世界の気持ちもあります。でも、この世界でもあなたのことを本気で愛しています」
「……いや、俺は」
「ですから、負けません」
「は?何に」
「あんな子何かにあなたは渡しません!」
拝啓、こいつらを転生させたクソ神様とやら。
俺はアンタのことが嫌いだ。
もし、ガンプラバトルができるというのなら容赦なく叩き潰してやる!!
この後、カミキ姉が夕食を勧めてきて大騒ぎになったことはいうまでもない。
ジェスタTE
ハヤテ・シンが作ったジェスタをベースとしたカスタム機。
頭部を除くすべてにオリジナル加工を施したチョバムアーマーを装備、
足の装甲には仕込み腕が内蔵。
背中のバックパックには様々な武装のオプションとメイン兵装の折り畳み式エクスカリバーが二本、隠されている。
本来のジェスタのスピードが損なわれているが防御力は並みのガンプラでは突破することができない固さを持つ。
ちなみにTEとはタイプエクスカリバーの略称である。