「どうしたんだ?後輩」
翌朝、機嫌の悪いホシノ後輩がいた。
「別に、何でもありません」
「それより、先輩。セカイからまたガンプラを作ったと聞きました。それはどんな?」
「ふぁわぁ……ああ、これのことか?」
鞄の中から箱に納めていたガンプラを取り出す。
「これが先輩の?」
コウサカが俺の作ったガンプラを眺める。
「(今回は武装だけじゃない……機体の方も弄っている?なんだ、肩や両手、両足にある切れ込みのような筋は?まるでユニコーンのように装甲がスライドするのか)」
「おい、そんなジロジロみるなよ。まだ動かしていないんだから」
「じゃあ、この後、バトルフィールドで?」
「ああ、テストする。どうなるか不安で仕方ないんだけどな」
「不安?」
「ちょっと弄ったからな。稼働した途端に爆発しないか心配で」
「「「爆発!?」」」
驚いた顔をしてこちらをみる三人。
ラルさんは知っているのか「ほぉ」と声を漏らすだけだ。
「久しぶりだな。キミの機体は作成して動かすことで完成したかどうかわかるからね」
「ええ、久しぶりなのでどうなることか」
「……先輩、ちなみに危険なものを積んでいるわけじゃないですよね?」
「ルールを犯すようなことはしねぇよ」
「じゃあ、この後、やりましよう!」
「そうだな」
目の前の飯を食べる。
その後、楽しいガンプラバトルだ。
「で、なんで乱戦?」
「すいません、先輩、巻き込んじゃって」
俺の隣でカミキ弟が謝る。
「いや、悪いのはカミキ弟じゃねぇよ。問題なのはあっちだ」
あのロングヘア―の阿呆め、ボコボコにしてやる。
俺とカミキ弟がシミュレーションを使おうとした時、ガンプラ学園という全国大会優勝を続けている強豪校のエース、キジマ・ウィルフリッドがいた。
彼だけなら問題なかったのだが、本牧学園チームのカリマ・ケイとやら、ホワイトウルフのメンバーに加えて。
「まぁた、てめぇと戦えるなんて嬉しいぜ。ハヤテ・シン!」
俺にめっちゃ敵意を向けているアドウ・サガがいるんですけど。
メイジン主催のバトルロワイヤルが行われることになった。
おかしいな。俺はガンプラの試運転だけのつもりだったのに、まぁいい。
「こういう楽しいことをしてみたかったから丁度いいぜ。カミキ弟」
「はい!」
「お前はキジマ・ウィルフリッドとやりたいだろ?」
「はい!」
「じゃあ、奴のところへ向かえ。他は可能な限り相手するな」
「え?」
「俺が露払いをしてやるよ……試作で作った俺のガンプラ……XX(ダブルクロス)プロト!」
射出されるガンプラ。
ビルドバーニングの隣に降り立つのは純白の機体。
ベースはジム・クゥエルにしているが両足と背中にブーストパーツを追加している。
何より、頭部が。
「ガンダムヘッドだとぉ!」
俺のガンプラの姿を見てホワイトウルフのメンバーが驚きの声を上げる。
かくいうカミキ弟もガンダムを使っていることに少し驚いていた。
「先輩、どうして」
「少しばかり本気を出しただけだ。セカイ、行け!」
「はい!」
カミキ弟に任せて。
ホワイトウルフのメンバーと向き合おうとした時。
「邪魔だ」
ジエンドが現れてホワイトウルフのメンバーを駆逐していた。
「おいおい、乱暴だなぁ」
「てめぇを潰すのはこの俺だぁああああ!」
襲い掛かって来るガンダム・ジエンド。
距離を詰めようとしてくる敵から距離を取るために左手のライフルを連射する。
「そんなものが通用するかよぉ!」
「知っているよ」
放たれる粒子ビーム。
迫るビームをXXプロトの右手で受け止めさせる。
「なに!?ビームが吸い込まれて」
アドウの撃ったビームのエネルギーをそのまま吸収しながらXXプロトを走らせた。
「脱がすかよ!ファング!」
ジエンドから射出されるDNファング。
ファングを潰すには。
「こうするか」
XXプロトに追加している実体剣のアームセイバーを展開して、ファングを切り裂く。
「ビーム兵器も考えたけれど……これで正解だな」
「面白い!来いよ!叩き潰してやる!!」
巨大な手のようなものを広げて向かい撃つガンダムジエンド。
「さて、お試し、逝きますか」
文字は間違えていない。
何せ、
「久々の試運転だからよぉおおおおおおおおおお!」
操縦桿を操作してSPスロットを選択、指で叩くように発動させる。
操っているガンプラ、XXプロトの右肩の装甲がスライドして、そこから青い光が放出した。
「何だ、その光はよぉ!」
放出される極太のビームとファング。
「切り裂くぞ、XX!」
腕のアームセイバーでビームを切り裂いた。
「なっ!?ビームを!」
「驚くなよ。まだ、こいつは全力を出してねぇぜ!アドウ・サガぁああああああああああ!」
近づくジエンド。
逃げることなく向きを変えて懐に入り込む。
ジエンドを覆っているマントのようなものがなくなって、本体が明らかになる。
00系列以外のデザインが取り入れられているのが目に見える。
だが、ほとんどオリジナルで何が隠されているか油断できない。
「ここで終わるかよ!」
アドウ・サガが奥の手を使おうとすることに気付いた。
おいおい。
「それは後輩のために全国大会で取っておいてくれよ!!代わりに、こいつをくれてやるからよぉおおお!」
右手を大きく広げて前に突き出す。
掌が輝きながらエネルギーを纏い、ジエンドの体を貫いた。
「ウソ……だろ?」
信じられないという顔で倒されたジエンドをみるアドウ。
「残念、今回は引き分けだな」
直後、音を立てて俺のガンプラ、XXプロトが大爆発を起こす。
「なにぃ!?」
驚くアドウの前で壊れるXXプロト。
システムが試合終了を表示する。
「おい!てめぇ、どういうことだ!!」
アドウが怒りに染まった顔でこっちに近づいてくる。
怖いんだけど?
溜息を吐きながら俺はアドウをみる。
「名前にあるけれど、コイツはまだ完成してねぇんだよ。テスト機。試運転もまだだったからいきなり爆発はしなかったけど、こうなることは予想済みだったんだ」
「チッ、おい、てめぇ、ハヤテ・シン!全国大会で俺と戦え!」
「それは無理だな」
「なにぃ?」
「悪いが俺は補欠だ。全国大会はあそこにいるカミキ弟達が出るんだ……まぁ、どこかで会って気が向けば、バトルしてやるよ。コイツはあくまでテスト機。どうなっているかわからないが完成していたら、ガチのバトルができるからな」
右腕がバラバラになっているXXプロトを手に乗せながら答える。
顔を上げるとこれまた不敵な笑顔を浮かべているアドウ・サガ君がいました。
「いいぜぇ、ハヤテ・シン。てめぇのような奴を待っていたんだ。今度、俺と会うまでにそのガンプラを完成させていろ。俺が叩き潰す!」
何やらこの人を本気にさせてしまったらしい。
まぁ。
「いいぜ、やるなら徹底的に叩き潰してやる」
カミキ弟の方もライバルができたみたいだ。
俺の場合は叩き潰したい相手ができたという不純な動機だが、楽しめる理由ができた。
合宿が終わった時、トライファイターズのメンバーは色々と成長していた。
どこがどうとはいえないけれど、前よりも前を向いている。
こんな言い方はどうかと思うが彼らは全国大会にどうすればいいかという課題をクリアすべく動き出す。
かくいう俺もXXプロトを完成させないといけない。
だから、家へ帰って早速ガンプラを完成させないといけないのだが。
「おい、何で、俺もカミキ弟の家へ行かないといけないんだ?」
「合宿です!」
「第二弾です!」
「付き合ってください。先輩のガンプラ知識、操縦などを僕達に可能な限り教えてほしいんです!」
やる気を見せるトライファイターズのメンバー。
その熱気に俺を巻き込むことをやめてほしいんだけど。
熱気と言えば、俺にサインを求めてきた変な三つ子がいたなぁ。
「悪いな、カミ……ミライ、俺まで押しかけてきちまって」
「ううん。気にしないで、でも、料理の買い物とかは付き合ってもらうからね?」
いきなり押しかけても受け入れるなんて、こいつの心の広さに限界はないの?
まぁ、こちらとしては食費が浮くから丁度いいんだけど。
「そういえば、シン君」
「うん?」
「家の前に小さな子供たちがきていたけれど」
「子供?」
「うん、黒い髪の子、銀髪の子、茶髪の双子さん」
それって。
「悪い、俺、家へ取りに行くものがあるから、少し外れるぞ」
三人へそういって俺は家へ向かう。
家に向かうとカミキ姉の言うとおり、四人の小さな子達がいた。
「お前達、暁、響、雷、電だな」
「あ、司令官!」
「なのです!」
「ハラショー」
「うわぁああああん!どこに行っていたのよぉ!」
俺の姿を見ると黒髪の自称“レディー”の暁が泣きながら抱き着いてきた。
暁の頭をなでながら俺は他の三人を見る。
「久しぶりだな、四人とも」
さて、何の用事だ?
「商店街のガンプラ大会?」
「そうなの!私達も出場したいんだけど……今の私達じゃ初戦敗退しそうなの」
「だから、司令官の力を借りたいというわけさ」
「……その商店街の大会はいつだ?」
「明後日なのです」
「は?それで、お前らが使う予定のガンプラは?」
「これなのです」
電が俺の前にガンプラを見せる。
デュエル、バスター、ブリッツ、イージスの素組み。
パーツの差し込みが甘いし、特に塗装もされていないなぁ。
見上げると不安そうにこちらをみている四姉妹の姿がある。
「仕方ない」
カミキ姉に食材は提供するからなんとかしてもらおう。
「電なのです」
「雷よ!かみなりじゃないからそこのところ間違えないでね!」
「響だよ。こうみえて、次女さ」
「暁よ!司令官にはお世話になっているわ」
「一応、知り合いだ」
「先輩、ロ――」
「ホシノ後輩、それ以上を言えば、さすがの俺も怒るぞ」
「ごめんなさい」
謝罪するホシノ後輩。
机の上には制作中のガンプラパーツなどがある。
俺が座っていた場所には壊れたままのXXプロトが置かれていた。
「セカイもそうですけれど、先輩もなかなかの」
「コウサカ、それ以上言うならマジで俺も切れるからな?何でも商店街の大会に出るからガンプラを見てくれと頼まれたんだよ」
「……そうですか、しかし、素組みでところどころ雑だな。これじゃあ、大会で優勝は難しいな」
「あう」
「そうなのですか」
涙目になる暁と電。
あー、泣かしたな。
「泣かした」
「最低だ」
「ユウ君」
「え、あ、いや!?」
戸惑うコウサカ。
まぁ、弄るのはそこそこにしておこう。
「手助けはできる。ただし、底上げしてやるだけだ。大会自体はお前達がなんとかして勝ち抜け」
俺の言葉に四人は頷いた。
「さて、XXプロトは置いといて、お前達のガンプラを見てやるよ」
「シン君」
ガンプラの改修を疲れて眠っている四人に布団をかけているとカミキ姉に声をかけられる。
「何だ?ミライ」
「あっちの三人も寝ちゃったみたいなの」
「そっか、じゃあ、XXプロトの改修は明日だな」
「ご飯、どうする?」
「ああ、残っている?」
「少しだけね」
カミキ姉の用意してくれた料理はおいしいからな。
がっつくように食べる。
「セカイ達は大丈夫?」
「ああ、目標が定まっているからな。そこまで真っすぐ向かうだけだからな」
「そう」
「母親みたいな顔をしているぞ?」
「もう、からかわないで」
頬を膨らませてこちらをみる。
「悪い悪い、冗談だから」
「……もぉ」
こんな可愛い奴でも怒らせたらとんでもないからなぁ。
「シン君も目標ができたの?」
「ま、出来たと言えば、出来たな。もう一度、俺は世界に挑戦する」
「世界に?」
「世界大会へ出場する……ライバルとぶつかり合うために、なぁ」
食器を流しへ置く。
「さてと、少し散歩でもするかな」
「あ、私も付き合うわ」
はい?
何といった。この子。
「お前、もう夜だぞ?」
「うん」
「女の子が夜を出歩くと……って、お前は強いから大丈夫か。むしろ、変質者が跣で逃げ出すだろうな」
「ちょっと!」
「冗談、でないけれど、まぁ、一緒に来るか?」
「うん」
この時、カミキ弟達が寝ている場所から殺意のようなものを感じたが気のせいだろう。
夏だが、この時間帯の外は涼しかった。
頭の中でXXプロトの改修内容を考えているとおずおずとカミキ姉が話しかけてくる。
「シン君」
「うん?」
「実は、セカイ達に黙っているんだけど、全国大会中高年の部のイメージキャラクターを行うことになったの」
「イメージキャラクターって、おいおい」
俺は驚きの表情を浮かべていることだろう。
だって、読モのカミキ姉がイメージキャラクターを引き受ける=ガンプラアイドルキララのような流れにいくこともある。
ガンプラバトルの公式大会のイメージキャラクターはアイドルなどの登竜門というイメージがここ数年の間についていた。
もしかしたら、これを機会にカミキ姉も世界へ出ていくかもしれない。
「それは良いことなんじゃ?」
「少し前までは断ろうかなと思っていたんだけど、セカイやホシノさん、コウサカ君達が頑張っているのを見ると、私も……何より」
こちらを見上げるカミキ姉。
何だ、この空気。
「シン君が頑張っているのをもっと近くでみれるかなって」
頬を赤らめているカミキ姉には悪いけれどさ。
「全国大会、俺は補欠だぜ?」
「そうだったね」
「だから、カミキ弟達のことを応援してやれ、まぁ、俺が代打で出ることがあれば、その時だけで応援を頼むわ」
「うん!」
笑顔を浮かべるカミキ姉。
その顔を見ているとなんともいえないなぁ。
まぁ、俺も頑張らないといけない気持ちにはなる。
「お約束みたいなものだけど、互いに頑張ろうぜ」
カミキ姉の前に拳を突き出す。
最初は驚いていたがすぐにほほ笑んで拳をぶつける。
カミキ家へ戻ると殺意で満ち溢れていたコウサカが俺を待っていた。死ぬかと思いましたよ。
XXプロト
ハヤテ・シンが作ったガンプラ、
本体のベースはジム・クゥエル。ただし、頭部は陸戦型ガンダムのものが使われている。全体的な塗装は白で統一されている。
背中のバーニアは0096シリーズのもの。肩、腕、足に奇妙なラインが入っている。
完全に完成していないが右腕に実体剣が装備されている以外はビームライフルとシールドのみ。