オールマイトなんて大っ嫌い!!   作:半生緋色

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というわけで始まりました。

……きっとこういうのは色んな人が書いてるだろうけどよかったら見てやって下さい。


プロローグ

 これは私が覚えている最初の記憶であり、これだけは忘れなかった大切な記憶。

 私がヒーローを志した一番の出来事であり、私が憧れたヒーローとの出会いの記憶。

 

 

 其の場所は何かの肉が腐敗しているような鼻につく臭いが満たしていた。

 明かり一つ無い無骨なコンクリートむき出しの小さな部屋がその時の私の世界の全てだった。

 

 嫌だ、嫌だ

 

 どうしてそんな牢獄のような所にいたのかは覚えていない。

 

 助けて、誰か……誰でもいいから

 

 ただ、全身に力が入らず強烈な飢餓感だけを覚えている。

 今にして思えば、子供だった私を顔も覚えていない両親は虐待でもしていたのだろう。

 今考えてもひどいなと思うし、無論許すつもりはない。

 だけど、それがあったから私は『彼』に会うことが出来たのだ。

 

「いや……」

 

 狭い部屋の中で私のかすれた声だけがいつも虚しく響いていた。

 

「……しにたくない」

 

 何度同じ言葉を口にしているのだろう。その時は体力の無駄だとわかっていても、声に出さずにはいられなかった。子供ながらに私は死を理解していたから。

 その時の私は死が本当に身近だった。声を出し、生きていることを自分自身で確認しなければいつの間にかそちら側に行っても可笑しくなかったからだ。

 だから、私が生き残れたのは単に私自身の『個性』が生きることに向いていたことと 

 

「……誰かいるのか?」

 

 彼が私を見つけてくれたから。

 

 

 

 

 

 

 

 ただ自分の声が虚しく反響するだけだった私の世界に声がした。

 聞き覚えのない私以外の声が扉越しに聞こえたのだ。

 最初は幻聴かとも思ったけど、次第に響く何かを壊す音が現実だと私に告げた。

 そして重い鉄の扉が開く音。闇に包まれていた私の牢獄に光が差した。

 

 長い間浴びることのなかった光に目が眩む。目を細めながら視線だけをそちらに向ける。

 

 其処には見たことがない男が立っていた。

 

 初めて見た彼の姿はとても印象に残ってる。黒尽くめの昔日本にいた忍者のような出で立ちをした人物だった。今だからわかるけど、それが彼にとってのコスチュームだったのだろう。

 私は事態を把握することが出来ず、彼を汚れた床の上這い蹲り見上げることしかできなかった。

 最初この部屋の中を見回し、私を見つけた時の彼はとても困惑して迷っているようだった。きっと私はとっても汚くひどい顔をしていたのだろう。そんな彼は少し何かを考えたあと決心したように私をまっすぐに見つめ忘れもしないあの言葉を口にした。

 

「其処の君、大丈夫だ。どう見たって怪しいおじさんだけど、……いや、まあ、実際怪しいんだけど俺が来た!!」

 

 覆面越しに見えない彼の表情。それでも私を安心させようと無理に笑ってくれている。

 

「それで、君は此処に居たいかい? 否、聞くまでもないな……。そもそも俺は泥棒みたいなものだからなぁ。他人の家から欲しい物を持っていくのも、まあ仕事だ」

 

 彼はそうおちゃらけた様子で笑いながら私を担ぎ上げると、いとも簡単に私を牢獄のような世界から連れ出してくれた。

 もう出ることが無いと思っていた外の世界へと。

 

「……軽いなー君は。とりあえず、君は俺に盗まれてもらうぞ? ああ、拒否権はない。嫌なら逃げることだ。さあ、早く逃げないとお湯攻めのあと、食べ物を無理やり口の中に押し込むからな?」

 

 それが私を救ってくれた、そして育ててくれた『私にとってのヒーロー』との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの日から何年もの月日が流れた。

 今の私はもう中学3年生になり、あと少しで高校進学を控えている世間一般で言う受験生だ。

 九生雛花(きゅうせいすうか)と名前の書かれた進路希望の紙の前で、私はそんな過去を思い出していた。

 

「……やっぱり、これしかないよね」

 

 私がなりたいものは何か。そう考えたときにいつも浮かぶのは彼の姿だった。

 だから、迷った末に第一志望に『雄英高等学校ヒーロー科』とゆっくりとペンを走らせる。間違えても泥棒なんて書かない。

 ……我ながら少し癖の強い字に思わず苦笑が出てしまう。でも、仕方がない。無知だった私に彼が教えてくれた彼の癖を受け継いだ字なのだから。

 

「そっかー。やっぱり雛花ちゃんは雄英に行くんだ。大丈夫だよ、雛花ちゃんなら受かる受かる」

 

 そんな様子を見ていたのだろう、ルームメイトの友人が私の書いている進路希望の紙を後ろから覗き込み、屈託のない笑顔を浮かべながら私にそう喋りかけてきた。

 黒の長い髪を後ろで結んだ眼鏡が似合う彼女の名前は言乃葉真実(ことのはまなみ)。私が此処に来てから出来た親友だ。

 そんな友人の声に私は少しだけ照れくさそうになりながらも黙って小さく頷く。

 

「そういう真実だって、雄英なんでしょ?」

 

「……私はヒーロー科じゃなくて普通科だからぜんぜん違うよ」

 

 そっと、真実も私と同じ紙を見せてくる。相変わらず綺麗な字だ。

 

「せっかくなんだからよかったら一緒にヒーロー科受けようよ。普通科ならヒーロー科と併願も出来るし」

 

「それも少し考えたけど、雄英の実技試験は私の個性じゃ多分難しいよ。それに、あまりお金がかかることをしちゃうと流石に此処に迷惑がかかっちゃうかなって」

 

「迷惑なんて掛ければいいと思うけどね。予算はいっぱいあるみたいだし。せっかくすごい個性なのに勿体無いよ?」

 

「うーん、雛花ちゃんが、本気でそう言っているのは私にもわかるけど、やっぱりお世話になってるし。……私は私にできそうなことから頑張って此処に恩返ししたいかなって」 

 

 微笑みながらそう語る真実の顔を見て、私は少しだけ複雑な気持ちになる。

 

 

 世界総人口の約八割が、何らかの特異体質である超人世界。

 混乱渦巻く世の中で、其の個性を使い自らの私欲を満たそうとするものが現れるのも必然だった。

 そういった人たちを世間ではヴィランと呼び、其のヴィランによる犯罪の被害者も数多く生まれる。

 そんな中でヴィランによって両親を失った子供たちも右肩上がりで増えていった。それもそうだ、個性という剥き身の凶器をほぼ誰もが持っている世界。

 其の凶器を使えば人の命なんて簡単に奪えてしまうのだから。

 そういった子供たちが増えてきたことで、子供たちを保護する施設も行政、民間問わずに増えていった。

 私が今いるこの場所も其の一つ。ヴィランによって両親を奪われた孤児たちの養護施設。

 一昔前の養護施設は様々な問題を抱えていることも多かったが、此処は「とある」ヒーローの後援で作られた施設故に、そこに集まる子供たちも他の施設よりも、ある程度自由に生活することが出来ている。

 

 其のヒーローの名は、『オールマイト』

 

 絶大な人気を誇るNo.1ヒーローであり、世間では彼のことを『平和の象徴』と呼んでいるらしい。

 そういった事情で、この施設に集まる寄付などは他の施設よりも多く、此処を卒園した人たちも彼の意思をついでか、彼女の様にこの施設に寄付などをする人も多い。

 彼が後援になることによって彼に救われた多くの人々が次世代の為にまた人を救う、そんな大きな樹形図が出来上がっている。

 それほどまでに、彼の存在感は人々にとって大きいのだろう。

 そして、今の私はそんな『オールマイト』のお陰で此処で生活が出来ている。

 

 ……それが私にとっては、とても嫌なことなのだが。

 

「どうしたの雛花ちゃん、怖い顔して?」

 

 話の途中で険しい表情を浮かべていたのだろう、心配した彼女に声をかけられる。

 

「あー、うん。私も、此処の人たちにはすごくお世話になってるな~って思い返していて」

 

 苦笑いを浮かべながら答える私に、じっと彼女は瞳を此方に向けてくる。そして、呆れたように一つため息を漏らした。

 彼女はきっと個性を使ったのだろう。

 

「嘘。でも、言いたくないことなら私もこれ以上聞かないけど」

 

 彼女の個性は『真偽』

 条件はわからないけど、その人が本当のことを言っているのか嘘を言っているのかわかるものらしい。

 私が嘘を言っているのがわかった上で、深く聞いてこない彼女に心のなかで感謝する。

 

「ごめんね、ありがとう。でも、此処の人は大好きなのは本当だよ? こんな私を良くしてくれてとっても感謝してるし。……あはは、なんだか変な空気になっちゃったね。とりあえず、明日も早いし寝よう? 学校行く前に朝の掃除当番こなさないといけないし」

 

「そうだね。寝坊したら怒られちゃうし。それにしてもお互い大変だね。雄英高校を受けるなんて、職員さんに行ったらどんな顔されるかな? ……とりあえずは落ちないように勉強も頑張らなきゃだね」

 

「う……其の点は頼りにさせていただきます」

 

 私の学力は決して悪くはない。それでもルームメイトの彼女に敵わない。

 それ故に時々勉強を教えてもらっているのだが、本格的に雄英を受験すると決めた以上は、これまで以上に彼女にお世話になるだろう。

 そもそも偏差値79超、競争率に至っては300倍を超えてくるのだ。出来うることは全てやらなければ多分通らないだろう。

 そんな私の不安を感じ取ったのだろう、彼女が私に微笑みかけてくる。

 

「大丈夫。私も教えてる方が問題を理解できるし、お互いに頑張ろうゆよ?」

 

「うう……ありがとう。真実は本当に私の親友だよ!」

 

 某漫画のキャラクターのように、心の友よ~!と口にしながら彼女に抱きついてみる。昔は嫌がっていたけど、今は慣れた様子で彼女も私の髪をよしよしと撫でてくれる。

 

「……そうだ。いっその事約束しない?」

 

「ん、約束?」

 

 抱きしめてた手を緩めマジマジと彼女の方に向き直る。

 彼女は少しだけ悪戯っぽい笑みを浮かべて。

 

「そう、お互いに必ず雄英高校に合格するって。それまではお互いサボっているのを見付けたら、相手にケーキを奢るなんてどうかな?」

 

「地味に真実って、私がサボる前提で話を勧めてるよね? でも、そんな真実は嫌いじゃないよ。よし、頑張るぞー」

 

「私も楽しみにしてるね」

 

「一緒の高校生活を?」

 

「ううん、何個ケーキ食べれるかなって」

 

「意地でもサボらないからね!」

 

「其の言葉、録音しておけばよかった」

 

「ソンナニワタシッテシンヨウナインデスカネー」

 

 そんな他愛のない会話でお互いに少し笑いあったあと、それぞれ寝間着に着替えれば自分のベットに入っていく。気が付けば静かな時間が出来ていた。

 

「……ねえ、真実ちゃん?」

 

 私は改まって、部屋の反対側のベットで休んでいる彼女に声をかけた。

 

「ん?どうしたの」

 

 彼女もまだ眠っていなかったようで、ベットの上転がりメガネは外しているが視線だけをこちらに向ける

 

「真実も無理しないでね。そうやって私に巫山戯て言う振りして、自分を追い詰めるの悪い癖だよ?」

 

 彼女は私の言葉に少しだけ困った顔をしながらも彼女は答える。

 

「……お互い様だよ」

 

 彼女が何を言いたいのか少しわかって、私も思わず苦笑いを浮かべる。

 つまりはお互い似た者同士なのだ。

 

「うん、そうだね」

 

「お互い、本当に不器用だよね」

 

「……絶対に合格しようね?」

 

「うん、絶対」

 

 それから私たちは、お互いにそれ以上何も喋ることもなくその日の夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 ……私にはルームメイトの彼女には言っていない秘密がある。

 私は此処に来る数年前までのあるヴィランに誘拐されていた。

 それだけならば、此処にいる他の子達とそう大差ない。超人社会ではよくあるヴィランによって人生を狂わされた可哀想な子の一人だ。

 

 ただ、私の場合は少しだけ事情が違う。

 何故なら私は正確には『ヴィランの手によって救われた人間』だからだ。

 世間でヴィランと呼ばれる彼は私を地獄から『誘拐』という手段で救い出し、そして育ててくれた。

 彼が言うには『やりたいようにやっただけ』なんていつも言っていたけど、そんな彼が私にとっての光であり憧れだった。……世間一般で悪とされる彼の行動は、彼にとっての正義であり、私にとっても同じように正しいことのように写ったからだ。

 だけど、そんな私の恩人である彼も一人のヒーローの手によって凶悪犯として逮捕されることになる。

 

 そのヒーローこそ、オールマイトだ。

 

 私はあの男、皆が№1ヒーローと崇めるオールマイトが大っ嫌いだ。

 確かに其処にあった私の幸せを奪ったのは間違いなく彼だし、私の中の正義だった彼を悪として断罪した彼を許すつもりはない。

 それが世間から見れば逆恨みと呼ばれるものだとはわかっている。それでも、私は彼を許すつもりはないのだ。

 

 だけど私はオールマイトのように多くの人を救うためにヒーローを目指す。

 それは私を救ってくれた彼のような人物になるため。彼しか救えなかった私のように、私しか救えないそんな誰かを救うために。

 それが、私を育ててくれた彼に対する恩返しになると信じて。

 




さーて、次回からゆるくフワフワな入試編が始まっちゃうZE!(血生臭くないとはいってない


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