あ、今回は小話になります。
次回からヒーロー基礎学突入です
それは入学式が無事(?)終わった後の帰り道のこと――
「へぇ、そんなことがあったんだね雛花ちゃん。さすがヒーロー科というか、すごい所だね」
正門前で待ち合わせをしていた親友の真実と合流し、地下鉄までの短い桜並木の道を歩きながら、何気なしにお互いの今日の出来事を話していた。
といっても、彼女の驚く顔が面白くて、話してしまったのは私ばかりで少しだけ話を盛ってしまったが、彼女も長い付き合い故に其のことはわかっているのだろう、クスクスと微笑む。
「っそ、初日なのにヘトヘトだよぉ……。お肉食べたいお肉」
「残念。今日の夕飯は予定では豆ご飯と焼き魚だったと思うよ。……入学式でそんな感じだと明日からもっと大変なんじゃないかな?」
「そうだね~。出来れば省エネしたいのだけど。今日で溜め込んでた力だいぶ使っちゃったからね~」
正直に言えば結構不味いかもしれない。受験が終わって自主トレをしていたとは言え、自分自身から生成される生命力とボランティア的にしていた草刈りでの草木の生命力では今日のようなペースで消費していてはすぐに限界が来てしまう。
結構由々しき問題なので、早く対策を立てねばならないのだけど、今のところ特に思いつかないから問題なのだ。
無難な方法は食事をいっぱい取ってよく寝ること。それで、自分の体で作れる生命力の量は多少増えるだろう。
だけど、私はあくまで施設で暮らしだ。食事については他の子と差がつくわけには行かないので、其の点は自腹で補うしか無い。
一応は奨学金申請も通っているので、中学の時よりはそういったことに使える分は増えたのだけど、基本は学校に行くためのお金だ。節約しなければいけない。
一番手っ取り早い方法は、遠慮なく抑えてる個性を使うことだろうか。うん、ヴィランまっしぐらだ。
バレないようにチョットずつクラスメイトから吸い取るという案が私の心の中の悪魔が囁いているが、それを自分の意志でしてしまったら人としてもヒーローとしても終わりだと私の中の天使が囁いている。
入試? あの時は皆ライバルだったし、ちゃんと注意したのでノーカウントです。
……いっその事オールマイト辺りから吸い取ってしまおうか。良心其処まで痛まないし。
「なにか悪い顔してるよ、雛花ちゃん」
不意に告げられた親友の言葉に、そんな考えを頭の隅の方に置き去りすると、すぐ否定するようにぶんぶんと顔を横に振って
「そんなこと無いよ。ええ、まったくそのようなことなんて。……それより、真実の方こそどうだったのさ~。普通科とはいえ、雄英何だし、変わったことあったんでしょ?」
「強引に話を変えてるあたり当たってたんでしょ? 雛花ちゃんわかりやすいから。私のところは、う~ん……普通かな」
今日の出来事を再度思い出したのだろう、苦笑いを浮かべながら真実の口から出たのはそんな言葉だった。
「雄英で一番程遠い言葉に聞こえるんだけど……普通って?」
「普通に入学式があって、普通に担任の先生の自己紹介から、それぞれの自己紹介して、明日の連絡事項が伝えられて解散」
「うん、紛れもなく普通で、私が一番求めてた入学式。やっぱり、いくら自由な校風といっても、普通の先生は普通に入学式に出席させるよね?」
「……雛花ちゃんって、そういう所根に持つよね。その調子だと担任の先生がもう苦手な感じそうだね」
下校しようとした時、偶然居合わせたB組の女の子に聞いたら普通に入学式参加したと言っていた。つまり、私のA組だけが入学式に出席していないことになる。
それにB組でも、入学式にA組が来なかった話題で持ちきりらしくA組だけ何故特別扱いなんだと地味に評判も良くないらしい。
今は始まったばかりですぐ問題になるようなことはないけど、そういったことが重なると他のクラスとの軋轢を生みかねないと思うのだけど。
「根に持ってるわけじゃないけどさ、いや、個性とめられたのは根に持ってるか。それよりも、入学式なんて絶対思い出に残る行事なのになーって。まあ、今日みたいなことされたほうが忘れないといえば忘れないけど。自己紹介とか各自でやれみたいな感じだったし、だからまだ名前も知らない子もいるんだよね……それでも友達は出来たけど」
「へぇ、雛花ちゃん、友達できたんだ」
じっと話を聞いていた真実が少しだけトーンが落ちた声で聞き返す。そしてそのまま私の顔を真顔で覗き込んできた。
ん? と少しだけ違和感を感じたが、特に怒らせるようなことは言っていないと思うのだけど。私は誤魔化すように微笑み――
「私だって中学の時とは違うんだよ? 皆私のことを知らないし、ちゃんと個性抑えれてるし」
少なくとも今日初めてあったクラスメイトたちは今までの学校のクラスメイトたちとは違った。ヴィランに誘拐されたという色眼鏡で見られないだけでこれだけ違うのかと痛感する程度には。それにきっと単純に皆良い人なのだろう。だから、私みたいな子でも話しかけてくれたのかもしれない。
「……今日は其の子達と一緒に帰らなくてよかったの? せっかく友だちになったのに」
「誘われたけど今日は断った。だって、先に約束してたのは真実だし」
それでも一番の友達はやっぱり目の前の真実なのは変わらない。
そう返し見た彼女の表情はいつもどおりの優しい笑みだった。まだ少し顔が近いのが謎だけど。
私本当に何も変わったこと言ってないよね?
「でも、今度ちゃんと真実にも紹介するからさ」
「うん。楽しみにしてる」
「でさ、真実こそ友達は出来たの? 私の前では結構話すけど、そういうところは奥手だし」
「うーん、友達……とまでは行かないけど、一人だけ少し気になる男子がいて」
「私というものがありながら、男子なんて真実も隅に置けないな~」
茶化すようにお返しとばかりにじっと私も彼女の顔を覗き込む。恥ずかしそうに顔をそらす彼女がおかしくて思わず笑ってしまった。
「……なんていうか、雛花ちゃんに少し似てる感じがして」
「うんうん……って、私? 私に似てる男子って、それはちょっと危ない気がするんだけど」
性格的なことだったらかなり猫かぶりだと思うし、言論が似ているなんてもっての他だと思うのだけど。そんな子とお付き合い……じゃなかった、友だちになるなんて私断固反対だ。
「雛花ちゃん……ううん、なんでもない。性格とかじゃなくてなんていうか、雰囲気かな。何ていうか、色々抱え込んでいて放っておけない感じがして」
何でそう言いながら私のことじっと見つめるのかな真実さん。そんなに私って放っておけないのでしょうか?
「……じゃあ、帰るまではじっくり其の子の話を聞かせてもらおうかな。で、其の子の名前は?」
「えっと、名前は……」
地下鉄乗り場に向かう階段を降りながら、彼女は少し恥ずかしそうに其の人物について語っていく。私はそんな彼女の話を時には相槌を打ちながら帰るまで聞くことになったのだが。
雄英職員室。そこでは入学式初日だというのに、明日から始まる授業に合わせて先生方がそれぞれ準備をしている。ある者は手元のノートパソコンで明日の授業のプリント作り、あるものは生徒に対する自己紹介のリハーサルを。
そんな職員室の一番新しい机。一人の新任教師が一枚のプリントの前で頭を悩ませていた。
「くうぅ……初授業うまくいくかな」
何度目になるかわからないそんな呟きを漏らしながら、きっちりとしたオーダーメイドの黄色いスーツを着た体格のいい長身の男が自分が作った明日のヒーロー基礎学の指導案を読み返していた。
男の名前はオールマイト。世間では№1ヒーローと呼ばれている、この雄英に今年から努め始めた新任教師である。
もちろん国立の高校に務めるために、教育免許は取得している。といっても、認可された科目はヒーロー基礎学だけの特別免許の取得故に、教育実習などをこなしたこともなく、紛れもなく明日が彼の長い人生の中ではじめての授業だ。
「指導案ですか?」
そんな新任教師の呟きが聞こえたのだろう、偶然後ろを通りかかった雄英教師ミッドナイトがオールマイトの指導書案を覗き込む。
「ああ、ミッドナイト君。……君、本当に職員室でもその恰好なんだね」
「何を今更。むしろ、コスチュームを着ないオールマイトさんの方が少数派ですよ」
職員室を見渡しても、それぞれプロヒーローは自身のコスチュームを着ているものがほとんどである。だが、それでも
(それにしても、ミッドナイト君のコスチュームは教育者としてどうなのかと思うのだが)
通称18禁ヒーロー『ミッドナイト』そう呼ばれる彼女のコスチュームは身体のラインがはっきりと出る胸の部分含め肌色の極薄タイツだ。
これでも、彼女のデビュー当時と比べれば法案により規制され露出が少なくなっている。
因みに、その規制が行われることになった原因はまさしく彼女なのだが。
「私は、ほらコスチュームだと時間切れしちゃうと、どうしてもね」
オールマイトのコスチュームを着れない理由にミッドナイトも察したのか小さく頷けば、話を戻そうともう一度オールマイトの手元のプリントに視線を落とす。
「それで、明日の授業の内容は……」
プリントに書かれた指導案を眺めながら、ミッドナイトは思わず少しだけ眉をしかめてしまう。
其処には、最初の授業ということで、それぞれの自己紹介と個性の紹介などが書かれているのだが、やはり教師としてはまだまだ素人であるオールマイトの指導案はどうしてもマニュアルに近いものになっていた。
「どう思うミッドナイト君? これで問題はないとは思うのだが」
そんなミッドナイトの表情に感づいたのだろう、オールマイトがただでさえ濃い顔を不安で更に曇らせ尋ねる。
(……オールマイトさんのこんな顔を見ることになるなんて思わなかったわ。けれど、ヒーローがそんな顔をしているのなら、それは間違いなく迷っているということよね。なら、教師として先輩の私にできることは)
ミッドナイトは考える。確かに普通の授業として考えればこれで問題はないだろう。
国の教育方針に則り、必要な事を必要な量だけこなす。けれど、それはきっと雄英やオールマイトでなくても出来ることだろう。なら――
「通常授業じゃなくて基礎学ですよね? もっと実戦メインでいくべきですよ。 ほら、設定作って任務っぽくするとか。オールマイトさんが困った事件とかを参考にしてみたりすれば」
(せっかくのオールマイトさんの授業だし、あの子達も普通の授業なんて求めてないはずだし、これぐらいのアドバイスなら問題ないわよね)
なんとか自分の教育方針にならないように言葉を選び、オールマイトに伝える。
「おお、なるほど! それなら、彼等の対応でそれぞれの資質も見れるということか」
ミッドナイトの言葉を聞き、オールマイトの曇っていた表情が一気に明るくなる。
其処からは話が早かった。オールマイトが状況を提案し、ミッドナイトがそれを補助し指導案を詰めていく。
「基本方針はこれで問題ないと思いますよ。あとは……オールマイトさんとしては、こういった事をしたいというものはありますか?」
ミッドナイトの問いに、オールマイトは少し考えた後苦笑を浮かべ
「何分はじめてだからね。まだ其処までのヴィジョンが見えてないんだ。先生としてはやはりまだ未熟ということかな。恥ずかしい限りだ」
HAHAHAと最初とは違い何処か明るい笑みをこぼすオールマイトにミッドナイトは釣られるように微笑を浮かべながら。
「なら、自分が生徒だった時を思い返してみるのは? 其の時に印象に残った先生のやり方を真似てみては……」
そんな軽い気持ちで言ったミッドナイトの言葉に、オールマイトの笑みが一瞬にして凍りつく。
「私の学生時代……学生時代」
ブツブツと何かを呟くと先程までの笑みが消え、ガタガタと何かに怯えるように震え出すオールマイト。
豹変した彼の様子にミッドナイトも慌てて声をかける。
「一体何があったんですかオールマイトさん?」
「いや、き、聞かないでくれミッドナイト君。少し、ほんの少しだけ思い出しただけさ。震えるな此の足め!」
「いえ、此方こそすみませんでした。少し不用意すぎたみたいですね私……でも、これで指導案は大丈夫じゃないですか? オールマイトさん」
オールマイトの震えが収まるのを待ち、出来上がった指導書に眼を通したミッドナイトがオールマイトに確認を取る。
同じように、オールマイトも指導書を確認しながら頷く
「ああ、本当に助かったよ、ミッドナイト君。私一人では、明日の授業をうまく乗り切ることはできなかっただろう」
「本当にオールマイトさんは大げさですね。同じ雄英に務める同僚なのですから、此のぐらいなら手伝いますよ」
「なら、ミッドナイト君。ついでと言っては何なのだが、もう少し相談に付き合ってほしいのだが」
オールマイトは1つ咳払いをし、また少し考えた末に少しだけ顔をそらしながら
「これはあくまで私の友人の話なのだが」
(此の微妙な言い回しは間違いなくオールマイトさん本人のことですね)
「昔ひどい別れ方をした女性と再開して、なんとか其の人との関係を改善したいのだが、君ならどう対応する?」
「なんですか其のアバウトな相談。まあ、私なら……」
「私なら?」
私ならという言葉に、グイグイと食いついてくるオールマイトに、少し驚きつつもミッドナイトも1つ咳払いをし考える。
私ならと前置きをしたが、仮にこの友人というのがオールマイトさん本人だと過程すると、そもそもひどい別れ方をした女性となると確実に恋バナである。授業と同じで普通のアドバイスでは駄目だろう。
「他の人と変わらずそのまま接するのも一つの手ですけど……」
それならば、ゆっくりとではあるが確実に関係は改善するだろう。だが、相談主はあのオールマイトだ。はっきり言って人を引き付ける何かを持っているのは明白だ。なら、そんな焦れったい方法を取らなくても大丈夫だろう
「思い切って相手のことを意識してるアピールしてみれば良いんじゃないですか? 他の子とは、違う君のことをちゃんと見ているとアピールすれば、良くも悪くも関係は変化しますよ」
(少なくともオールマイトさんを本心で嫌う人なんて少ないだろうし)
それに、なんというか確実に年上であろうオールマイトがそういった青臭い恋バナに頭を悩ませるなんて思わなかったのだ。だからこそ、少しぐらい面白くなりそうな方を選択してもバチは当たらないじゃないか。
「なるほど……たしかに其のとおりだ。ありがとうミッドナイト君。早速明日からアタックしてみるよ」
「いえ、出来れば其の友人さんにどうなったか聞いて私に教えてくださるとうれしいですね」
「ああそうだった。友人にはそう伝えておくよ。では、私は早速施設の使用許可を取ってくる」
立ち上がり、急ぎ職員室を後にするオールマイトを眺めながら残されたミッドナイトは
「……この仕事をしててそれなりになるけど、こんな相談されるのはじめてだったわ。それにしても、オールマイトさんがね」
フフッと笑みを浮かべながら、自分の仕事に戻っていったのであった
入学式の翌日。前日の入学式とは打って変わって、普通に相澤先生のSHRから始まり、午前中は先生がプロヒーローである以外はごく一般的な授業が行われ、そして気がつけばもう既に昼休み。
其の時間、全ての学科の生徒が集まる雄英の大食堂『LUNCH RUSHのめし処』は一日で一番の賑わいを見せていた。
其処はまさに戦場、厨房ではこの学食の名前にもなっているクッキングヒーローランチラッシュが忙しなく動き回り、様々な注文の品を仕上げていく。
そんな大食堂で梅雨ちゃん、芦戸さん、八百万さんそして私は今、食券の販売機の列の中にいる。
「午後の最初の授業って、たしかヒーロー基礎学だったよね~」
「そうそう。一体何をするんだろ」
「何をすると言えば、お昼本当に何にしよう。まさか此処までメニューあるとは思わなかった」
「私は軽めに、なめこそばかな。ねばねば系がすきだしトッピングで納豆もあれば入れちゃおうか」
「う、麺類……たしかにリーズナブルで栄養バランスがいいし、私も麺類かな」
4人の中で最後尾に並んでいる私が事前に手に入れていたメニュー表を見ながら同じくメニューを覗き込む芦戸さん
「あの、蛙吹さん。本当に私が好きなものを頼んでも良いのですか?」
「かまわないわ。個性把握テスト一位おめでとうというお話だし」
「いえ、今回は私の個性と相性が良かっただけで」
そして、その前で同じようにお昼ごはんのメニューを考える梅雨ちゃんと八百万さんという並びだ。
因みに一位になった人にランチを奢るという賭け事まがいな行為は、八百万さんが嫌がるかもしれないと、八百万さんには私達からのプレゼントということになっている。
そう話しているうちにたどり着いた券売機の前、まずは先頭の梅雨ちゃんが、券売機にお金を入れ、自分のランチメニューの食券を買う。梅雨ちゃんはどうやらお昼はランチラッシュの日替わりランチAを選ぶ。
ボタンを押し、食券を取れば券売機に更にお金を入れ。
「さ、八百万ちゃん、どれにするの?」
「それでは遠慮なく。……私、一度でいいので素うどんと言うものをを食べてみたかったのです」
梅雨ちゃんに場所を譲られ、券売機の前に立った八百万さんは数秒そわそわ知ながら迷った末にそっと、一番安い素うどんのボタンを押すと、嬉しそうに出てきた食券を手に取った。
これには私達もそっと顔を合わせ
「……え、遠慮じゃなくて?」
思わず私が声を上げて聞いてしまったが、当の本人の八百万さんは嬉しそうに食券を手にし
「ええ、全く其のようなことは。シンプルなうどん。余程味に自信がなければ出せませんし、何事も基本を抑えなければ」
「八百万ちゃんがそれで良いのなら、私はかまわないわ」
梅雨ちゃんも思いの外嬉しそうな八百万さんをみて、どこか満足そうに微笑めば、そっと八百万さんが押し忘れていたお釣りのボタンを押してお釣りを取り出す。
「ああ、お釣りはボタンを押さないと駄目でしたのね……私としたことが、1つ勉強になりました」
うん、なんだろう、何で八百万さんそんなに嬉しそうなんだろう?
これはもしかして食券を買うのがはじめてなのかもしれない。……とても可愛らしいので見ていて楽しくはあるのだけど。
私はと言うと、メニューを覗き込みながらも、いまだに迷い続けている。
なにぶん、自分の個性は食事で摂取した栄養素をごっそり使ってしまう。けれど予算には限りがあるわけで。
うーんと、券売機の端から端まで急いで眺める。本当に色々なメニューが有る、季節ごとにこれらのメニューもまた変わっていくらしい。本当にそういったところは充実してるよね雄英。そんなことを思いながら何気なしに眺めた券売機の一番端
……お、これ良いかも!
「雛花ちゃんはどれにするのかしら?」
「迷ったけど……思い切ってこれにしようかなって」
「え? ほんとに?」
「そんなメニューまで有るんですね」
私が券売機にお金を入れて押したボタンに、皆それぞれ違う反応をする。
そんなに可笑しいだろうか? 確かに普通はこんなメニューを初日から頼みはしないと思うけど、だが、これでいいのだ。
さて、芦戸さんも食券は買ったみたいだし、後は受取口に持っていくだけだ。
それから皆それぞれ受け取り口で料理を受け取り、あらかじめ場所取りしていたテーブルに集まった。
「「「「いただきます」」」」
声とともに、皆それぞれ頼んだ料理に箸をつける。あれから私の注文したメニューに触発されたのか、券売機でもう一度食券を買いたかったのか、八百万さんはカレーを追加注文した。
「あまり食べすぎると、午後の授業に響かない?」
炭水化物に炭水化物の組み合わせ、私なら余裕でしょうか仕切る自身は有るけども、八百万さんはそんなに大食いの印象がないのだが。
「いえ、私の『個性』は身体の脂質を様々な原子に変換して創造するので、たくさん食べることでたくさん出せるのです」
「ふーん」
身体の脂質……つまり、身体に蓄えが無くなってそれでも無理に個性を使えば……いや、何を考えているんだ私。
「雛花さんも、すごい量食べてますけど大丈夫なのですか?」
「あはは、私の個性も体を無理やり動かすからものすごい勢いでカロリーを消費するんだ。だから食べておかないと持たないのだ」
「ケロ、それでもかなり多いけど大丈夫なのかしら」
「食べ切れるの?」
皆口を揃えてそういう私が頼んだメニュー、そびえ立つ大量の野菜、そしてそれを支える大きなすり鉢の中白濁したスープに包まれた大量の麺。此のランチラッシュにおける名物メニューの1つらしい日替わりチャレンジメニュー(麺)超マシマシメガちゃんぽん(約4キロ)である。
個性にも様々な種類がある。例えば体の脂肪にあらゆるものを沈み込ませる個性のプロヒーローだっている。
学食にもそういった個性を考慮したのか、格安でチャレンジグルメサイズのメニューが準備されている。個性の併用で食べきることが前提故に賞金などはつかないが、格安で食べることが出来るらしいのだ。詳しくは食券を渡した時、ランチラッシュ本人に聞いたことなのだけど。
もちろん、そういった個性を持たない人でも注文可能らしいが、注文条件が一人で食べること、残してしまえば罰金を取られるというチャレンジグルメ要素はきっちり残されている。
一人で食べる制限はこの価格でシェアされないためだろう。
因みに私の場合は、胃に入れたものは内蔵を活性化させることによりすごい勢いで消化、エネルギーに変換できるので、大食いは得意である。いやぁ、本当に良いメニューが有った。
私は、皆の問いかけに答えるように無言でどんどん其の麺を口の中に入れていく。
「いや、食べてみたらものすごく美味しいから余裕だよ? これは、もしかして個性を使わなくても行けるかもしれない……。ああ、でも多分時間に余裕ある時じゃないとキツイかなぁ」
流石に人前だから麺を啜る音は立てないようしながら、口いっぱいに麺をすすり噛み切ればゴクリと飲み込む。
「そういえばさ、話戻すけどヒーロー基礎学って何するんだろう。絶対普通の授業じゃないよね。担当の先生誰だっけ?」
「そう言えば、聞いていませんでしたね。授業内容によって担当のヒーローが変わるのかもしれませんわ」
まずはうどんを攻めている八百万さんが口を挟む。皆も其の言葉にうーんと考える。
「……昨日のテストと同じで相澤先生だったりして」
芦戸さんの言葉に、皆少しだけ苦い顔をする。
うん、昨日の今日だと皆そんな反応になっちゃうよね。
「まあ、やってみたらわかることだし。私たちは結局全力で取り組むだけだよ。とりあえず今はお昼をちゃんと食べて、午後に備えようか」
「ケロ、そうね。何が来ても良いように食べるのは大事だと思うわ」
蛙吹ちゃんの言葉で皆食べることに集中しだす。といっても合間合間にそれぞれのことを話しながらゆっくりと学校初日のお昼休みは過ぎていくのだった。
そして、遂にはじめてのヒーロー基礎学の時間がやってくる。
因みに次回のヒーロー基礎学
班分けはグループ分けツールを使って完全ランダムにしました
はい、完全ランダムにしました(大事なことなので2回