オールマイトなんて大っ嫌い!!   作:半生緋色

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思った以上に時間が空いてしまい申し訳ないです。今月中に後二話はあげたい所。


屋内対人訓練編前編:上鳴君……どんまい

 ヒーロー基礎学。

 それは戦闘訓練、看護訓練、ヒーロー教養などのヒーローとしての素地を形成していく授業。

 ヒーロー科があるどの高校でも実施されている授業では有るが、其の内容は各校によって千差万別だ。

 もちろん自由が売りの国立である雄英のヒーロー基礎学が普通のはずもない。

 きっとこの広い敷地内でほかの高校ではできないようなさまざまな訓練をするのだろう。

 だからこそ私はこの授業をずっと楽しみにしていたのだが……

 

「わーたーしーがー!!」

 

 そんな私の期待をぶち壊すかのように、扉の向こうから不意に声が聞こえた。このタイミングで聞こえる声なんて間違いなく今回の授業の担当教師なのだろう。

 

 うん、気のせいだ。きっと違う人の声だ。

 

「普通にドアから来た!!」

 

 そう言い聞かせる私の心の声と裏腹に、残酷な現実がつきつけられる。勢いよく扉を開き現れたのは、誰もが知る№1ヒーロー『オールマイト』その人だ。突然の№1ヒーローの登場に徐々に湧き立つ周りのクラスメイトとは打って変わって私のテンションが一気に下がってしまうのは仕方がないことだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの? 雛花ちゃん。授業が始まってからずっと表情が険しいみたいだけど」

 

「あ~~……うん、チョットだけ考え事をしてただけだから。いやぁ、コスチュームを着るなんて、本当にヒーロー科に来たんだなぁってさ」

 

 あれから、オールマイトの授業が始まった。といっても何でも今日はいきなりの戦闘訓練らしく、簡単な説明をしてから本人はすぐ教室を後にした。残された私たちはそれぞれ入学前に発注していたコスチュームを更衣室で着替え今グラウンドに集合している。

 発注したといっても、こんな機能が欲しい等といった要望書を入学前に学校に提出しただけで、後はそれを元に雄英専属のサポート会社が無料で製作するお金の掛からない素敵なシステムだ。そう、無料なのだ!

 そして私が今着ているコスチュームはというと、どこからどう見てもボディーラインがはっきりでるタイツに近い黒のボディスーツだ。なんでも特殊な素材でできているらしく、よく伸びるし衝撃が加わると硬化するらしく見た目に対して高機能な品らしい。

 そして、両手には要望に書いたギミック付きのガントレット、両足には動きやすいブーツ、ボディースーツの上にも肘や膝などの体の出っ張った場所にはちょっとしたプロテクターがついている。

 後は腰回りにチャームポイントになりそうな赤い帯と要望していた各種装備、そして首周りには口元も隠せる赤いスカーフである。

 

「……それにしても思ったよりも身体のラインが出るんだけど、このコスチューム」

「雛花ちゃんのも中々過激なコスチュームね」

「梅雨ちゃんも……って、ゴーグルかわいいな~。私もそういうの書けばよかった」

 

 過激と言われても、私は飽くまでつけて欲しい装備と、あの人みたいな忍者風の服装をお願いしたら出来上がったのがこれなのだから、私のせいではないと思いたい。

 忍者風なんて注文したら、普通着物みたいな服が出来上がると思うのだけど、どうしてこうなったのだろうか?

 もしや、世間一般の女性忍者のイメージはデザイナーの中ではこんな感じなのだろうか? 解せぬ。

 そんな私のことを過激という梅雨ちゃんのコスチュームも私と同じようなボディースーツタイプの衣装だ。少しだけ部分部分の質感からみてウェットスーツに近いタイプのようだし、ゴーグル的にも水中のことを想定したのだろう。

 そっと辺りを見渡すと、皆それぞれ特徴的なコスチュームだ。特に、八百万さんのコスチュームは大丈夫なのだろうか? ヒーロー的に……いや、ミッドナイトという先人もいるし大丈夫なのかもしれない。

 そして、もう一人気になるのはあの宙に浮いている手袋だ。此のメンバーの中で姿が見えない、いや元々見えない人物のコスチュームだとするとすごい技術だ。きっと個性の併用で見えなくしているんだろう。……そうだよね? これでただの裸だったら、サポート会社の怠慢だと思う。

 

「……皆の見てると、衣装が過激というよりもメーカーのデザイナーが過激なだけな気がしてきた」

「そうそう、考えたやつ絶対エロおやじだよ!」

 

 私達二人が話していると便乗するように声をあげ芦戸さんが会話に入ってくる。

 うん、芦戸さん、其のセリフ更衣室でも聞いたよ。

 

「さて、始めようか有精卵ども!! 戦闘訓練のお時間だ!!」

 

 そんな話を私達がしているうちに皆揃ったのだろう、それを見計らったかのようにオールマイトのそんな暑苦しい言葉が聞こえた。

 

 

 

 

 

 其処からのオールマイトの説明を要約するとこうだ。

 これから二人一組を作り、それぞれヒーロー組、ヴィラン組に別れ屋内での2:2の対人戦闘訓練を行う。

 状況設定はヴィランが『核兵器』をアジトに隠し、ヒーローはそれを処理しに来ている。

 アジトの場所はヴィラン側にスパイとして忍び込んだヒーローのお陰で見取り図までは手に入っているが、核兵器の場所まではわからない。逆にヒーロー側の襲撃もヴィラン側にはスパイの手によって知らされている。

 ……いるのかな? この設定。この設定のためにオールマイトはカンペまで準備しているみたいだし。そもそもカンペって先生としてどうなのか。

 肝心の勝利条件は、『ヒーロー』は、『ヴィラン』二人の捕獲、もしくは『時間内の核兵器の回収』

 逆に『ヴィラン』は、『ヒーロー』二人の捕獲、もしくは制限時間までの『核兵器の死守』だ。

 そして、くじ引きで決まった組み合わせはこうなった。

 

<A>九生 雛花  峰田 実

<B>切島 鋭児郎 瀬呂 範太

<C>尾白 猿夫  緑谷 出久

<D>口田 甲司  芦戸 三奈

<E>飯田 天哉  耳郎 響香

<F>障子 目蔵  麗日 お茶子

<G>轟 焦凍   砂藤 力道

<H>八百万 百  蛙吹 梅雨

<I>上鳴 電気  爆豪 勝己

<J>葉隠 透   常闇 踏陰

 

 説明の合間、チラチラとオールマイトが此方を見てくる視線を無視したり、後ろからもお尻周りに謎の視線を感じたりして集中できなかったが、授業はここからが本番。

 訓練の内容的にも、お互いの個性の把握とチームプレイが鍵になるのは確実だ。

 緑谷くんも言っていたが、急造のチームプレイをすることはヒーローになった後でもかならずあるだろう。そういう時に大事なのは、お互いの実力能力の把握。

 お互いに何が出来何が出来ないか把握することで、行える戦略の幅が違うし、そういったことをスムーズに行えるコミュニケーション能力も試される。

 周りのクラスメイト達もヒーロー科である以上それがわかっているのか、それぞれのパートナーと挨拶を始め、授業中だというのに少しだけ話し声で騒がしくなる。

 肝心の私のパートナーは峰田君。……えっと、確かマリモ頭で反復横跳びが凄かった記憶がある。

 

「ということで、よろしく峰田君。……峰田君?」

 

 とりあえず、相方になる相手に挨拶しようと、後ろを振り返るとなぜだか峰田君らしき謎の覆面の視線が私のコスチュームに突き刺さっている。

 ……あまりジロジロ見られると恥ずかしいのだけど。

 

「……おーい? 峰田君?」

「…………」

 

 何で私のコスチュームを呼びかけに応えずにガン見してるんですかこの子? そして、何か考えた末に親指を立ててサムズアップ する峰田君。

 

「やっぱヤオヨロッパイこそ至高だけど、オイラは其のコスチュームも悪くないと思うぜ!」

「あはは、ありがとう。それで雄英生活最後の日に何か言い残すことはない?」

 

 峰田君の第一声に、私は反射的に笑顔を浮かべてサムズアップする峰田君の手を握っていた。もちろん、ジリジリと個性を併用して力を入れながらその手を締め上げるのを忘れない。

 

「痛!? ちょ、オイラ別に悪いこと言ってないだろう!? 強いていうなら、もう少し露出を増やして肉付きがいいほうがオイラ好みだなって……あ、なんか身体が怠…」

「ふふ、そうだね、私はそこまで胸無いね、うん知ってる。八百万さんと比べたらそうだろうねー」

「いや、待て! 笑顔はいいけど、オイラに何かしてるだろ? それに、おっぱいは揉めばまだまだ大きくなるって。つまり、九生はまだ成長の見込みが……よかったらオイラの手で!?」

 

 そう言いながら、此の状況下でも不意打ちとばかりに胸に迫る峰田くんのもう片方の手。私も反射的に空いていた手で掌打を綺麗に峰田くんの顎に決めていた。

 

 

「…………あ」

 

 ……やってしまった。

 気づいた時には私の目の前には、きれいに決めた掌打で脳が揺れたのか意識を無くしたのだろう体の力が抜け地面にカクンと膝をつく峰田君がいた。

 授業のチーム割が決まりそれぞれ話し合っていた中、突如生まれる数秒の無言。ああ、突き刺さる周りの視線が痛い。

 あ、やめて緑谷君。楽しそうにパートナーの麗日さんと話してたのに、話を中断して私の方を見るの。別に今のこれ個性でもなんでもないからね? 冷静に私の個性考察するのヤメて! ブツブツ言ってて麗日さんが少し引いてるから。 

 

「えっと……、峰田くんが少し体調悪いみたいなので、保健室に連れて行ってもいいですか? ついでに動けない峰田君の代わりに誰か代わりのパートナーをお願いします」

 

 誰にも何も言われず、沈黙に耐えかねて私は徐ろに手を上げると、この状況を傍観していた、というよりも対処に困り眺めていたが正しいか、オールマイトに嫌だけど声をかける。

 

「あ、いや、九生君。君が何かしたの見てたからね」

「……見てたなら止めても良かったんじゃないですか?」

 

 主に峰田君を。まあ、オールマイトからしても私や峰田君がそんな事をするとは思っていなかったのだろう、私だって此処まで自然に身体が動くとは思わなかったのだから。……西屋さんに教わった護身術の特訓の成果だろうか?

 それにしても、本当にうまく決まった。こんなにすんなり人って気絶するものなのだろうか?

 

「でも、正当防衛だと思うのです。……それともヒーローを目指すならセクハラぐらいは受けろと?」

「それは、そうだが……ううむ」

 

 困り顔で、そう答えるオールマイトを見ると、なんというか複雑な気分だ。もちろん話さなければいけないことでイライラはするけど、それ以上に困らせることが出来たのが少しだけなんだか楽しくなってきた。

 あ、駄目。此の愉悦の対価はきっと私の学校での評価だ。

 

「まあ、其の様子だと少ししたら目が覚めるだろうけど、そういったヒーローにあるまじき行為は控えるように。……最悪やりすぎると後遺症とか残っちゃうから」

 

 オールマイトの言葉通り、膝をついていた峰田くんの身体が少ししてビクリと一度震えれば、フラつく身体を支える何かに掴まろうと手を手探りで動かし始めた。

 ……本当にすぐ起きたあたり、オールマイトのそういったことを判断する目は確かなようだ。 

 

「はいはい、峰田くん大丈夫? ごめんね、急に手を出しちゃって……」

 

 流石に周りの目が痛いので、優しく声をかけながら手を貸そうと腕を峰田くんに伸ばす。

 此の後の訓練のパートナーでもあるのだ、こんなことでこじれて散々な結果になるのだけは避けなければいけない。けど

 

「……思ってたよりも中々。ん? オイラ何やってたん……ぐっ!?」

 

 態とらしいそんな言葉と共に、私の伸ばした手を回避し、私の胸に触る手の感触に思わず手刀を首元に落としたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、早速最初の対戦相手は……」

 

 オールマイトが『VILLAIN』『HERO』と書かれた箱からそれぞれボールを1つずつ取り出した。

 其の引き方だと同じ組み合わせ同士が出来ないかという野暮なツッコミはやめておく。ただでさえ私のせいで授業進行が遅れてしまっているのだ。ほら、飯田君が私のことじっと見てきてる……。いや、悪いのは峰田だと思うんだ。

 其の肝心の峰田はというと、私の後ろで瀬呂君のテープで縛られている。ナイス瀬呂君!

 

「……こいつらだ!! Iコンビが『ヒーロー』。Cコンビが『ヴィラン』だ!!」

 

 <I>上鳴 電気  爆豪 勝己 VS <C>尾白 猿夫  緑谷 出久

 

 早速とんでもない組み合わせだ。私と同じ感想なのだろう、当事者以外の他のクラスメイト達もざわつき始める。

 それぞれのイメージとしてはヴィランとヒーローを入れ替えたほうがしっくり来る。

 爆豪君なんて、言動がそもそもヴィラン寄りだし、ヴィラン側の二人なんて、このクラスでは多分まじめ男子代表だ。

 あ、其の問題の爆豪くんが、緑谷君をガン見してる……。うん、ヒーローを目指す子がそんな人を殺しそうな目で見てはいけないと思います。

 

「他の者はモニタールームに向かってくれ。ああ、峰田くんは誰か運ぶの手伝ってやってくれ」

「じゃあ、俺が」

 

 どうやら、戦闘訓練の様子はアジトの建物の地下にあるモニタールームで見られるらしく、私達はそちらに移動することになった。

 オールマイトの言葉に、すぐに佐藤くんが答える。本来はパートナーの私が運ばなければいけないのだが、さきほどあんなことが会ったばかりだから察してくれたのだろう。

 正直とてもありがたいのだが……

 

「オイラ、女子に運んでもらいたい」

 

 それをぶち壊すように峰田が呟く。うん、そんな気がしたしブレないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達がやってきたモニタールームでは、今まさに訓練が始まる前の映像が映し出されていた。

 どうやらビル内すべての部屋にカメラが仕掛けられているらしい。流石に死角は有るが、それでも問題なく様子を眺めることが出来る。

 そんな映像の中で、緑谷君と尾白君のヴィランチームは核爆弾(仮)が設置された最上階の一室で何やら話し込んでいる様子だった。

 音声はどうやら、私達には聞こえないらしく、話の内容まではわからないがまず間違いなくこれからの訓練での作戦会議だろう。 

 

「対人戦だと、緑谷君は厳しいだろうね―。個性を相手に使えないし」

「……デク君大丈夫かな?」

 

 私の言葉に反応したように、麗日さんがモニターの何やら尾白君に話してい緑谷君を見ながら呟く。まあ、相手はあの爆豪君なら心配にもなるだろう。……というよりも、爆豪くんもだがデクとは中々ひどい呼び方だと思うの。まあ、休み時間も親しげに話していたし麗日さんは悪意はない呼び方なのかもしれないけど。

 そして、緑谷君を同じくデク呼びする爆豪君。何があったのか知らないけど、二人の仲は良好とはいい難い。必ず爆豪君はこれはチャンスと何か仕掛けるだろう。……そもそも爆豪君のあの個性相手に対人戦闘なんかして、無傷で済む相手なんてまずいないだろうし。

 

「あー、相手はthe悪役な爆豪君だもんね。アレで入試一位なんだから対人戦はもちろん強いだろうし」

「……九生さんはどうなると思う?」

「雛花ちゃんって呼んで」

「あ、えっと、雛花ちゃんはどうなると思うの?」

「そうね、私も聞きたいわ、雛花ちゃん」

 

 なんとなく、梅雨ちゃんの真似をして答えてみたら、ちゃんと訪ね返してくれる麗日さんに、いい子だな~なんて思いながら微笑みを返す。

 ただ、すぐに其の様子を見ていた梅雨ちゃんからも何とも言えない視線を感じながら声をかけられ、あははと苦笑いを浮かべてしまうが。

 さて、どうなるかと彼女の質問に答えようと頭を回転させる。といっても、出て来る結論は至ってシンプルで 

 

「……普通に戦ったら、まずヒーロー側が勝つと思うよ? 上鳴くんもなかなかすごい個性持ってるし」

 

 まず此の結論は揺るがない。バカ正直に正面戦闘した場合はまず間違いなくこうなるだろう。そもそも緑谷君はこういった訓練で使える個性ではないのだから、無個性だと思った方がいいし、身体能力も個性無しで爆豪くんのほうがまだ上だと思う。

 そして、其の爆豪君のパートナーである上鳴くんも個性把握では目立たなかったがかなり強力な個性なのは変わりない。

 

「上鳴君の個性知ってるの? 雛花ちゃん」

「自慢げに昼休み前に話してくれたから」

「あ、私も話しかけられたよ―!」

「そうね、私も」

 

 授業の合間の休憩時間、上鳴君がクラスの女子にはだいたい声をかけていた。私もお昼休みの直前に声をかけられお昼ご飯を誘われたが、先約が有ると断った時に何気なしに聞いてみたら答えてくれたのだ。

 彼の個性は『帯電』 身体に溜め込んだ電気を放電することが出来る。単純に武器として使うもよし、電気という性質上様々なことに応用がききそうなすごい個性だ。

 それにしても今考えると、何処か峰田と同じ空気を感じる。奴ほど直接的ではないし、頑張っている姿を見るとなんだか微笑ましいけど。

 っと、少し話が逸れてしまった。こほんと私は咳払いを一つすれば話を続ける

 

「っで、それは飽くまで普通に戦った場合で、多分そうはならないと思うよ? 幾つか根拠は有るけど、まず第一に、私が上鳴くんと個性の話をしてる時、私の気のせいじゃなかったら緑谷君、私達の会話ずっと聞き耳立ててたから」

 

 つまりは、緑谷君は上鳴君の個性について知っているということだ。……私との会話の後何やらブツブツと呟いていたのが不気味だったけど。

 

「雛花ちゃんってデク君のこと見てるんだね」

「あーうん、気になるというかなんというか……ほら、危なかっしいし」

 

 私の言葉にそっと麗日さんがそんな言葉をつぶやく。私は慌てて何か返そうとするが、少なくとも間違っては居ないので微妙な返事になってしまった。

 ……私が気になるのは緑谷くんというよりも、其の後ろにいるだろうオールマイトのことなのだけど。

 

「っで、普通に戦ったら負けるのは緑谷君が一番わかってるだろうから、何か仕掛けると思う。勝敗を分けるとしたらお互いの事をどれだけ知っているか、それに尽きるんじゃないかな? 攻めてくる相手のタイプがわかってるなら、守る方にはいくらか対策がって……ほら、早速動き出したみたいだ」

 

 私の言葉と同時に、モニターの中のヴィランチームが動き出した。

 おおよその作戦は決まったのだろう。訓練用のビルの部屋の中に落ちていたあれを尾白くんに渡している辺り、やっぱり対策は考えているに違いない。

 そうなると、本当にこの勝負わからなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒーローside

 

『それでは、Iコンビ対Cコンビによる、屋内対人戦闘訓練スタート!!』

 

 ヴィランコンビが建物の中に入ってから五分後、拡声器から聞こえるオールマイトの声に建物の真ん前に待機していたヒーローコンビ、上鳴電気と爆豪勝己はそれぞれこれから突入するビルの正面口を眺めていた。

 というよりもそれしかできなかったというのが正しいか。

 

 ――何で爆豪の奴、こんなにギスギスしてるんだよ。

 

 まあ、まず間違いなく緑谷のせいだろうと言うのはわかる。そして、こういった場合は下手に話しかけるよりは放っておく方が面倒がないのも、接した時間はまだ短いがなんとなくは分かる。というよりも、爆豪は、そういったことがはっきりしている。

 

 ――でも、これ一応訓練なんだよな。

 

 仕方がないという風に、上鳴はため息を1つ落とせば今にも爆発しそうな不発弾、爆豪に声をかける。

 

「時間だな。爆豪、結局作戦はどうすんだ? 俺の個性を使えば一応索敵はできるけど」

「……んなもんいらねぇよ。正面から見つけ次第叩き潰す。……それだけだ」

 

 5分間黙っていたおかげで少しだけ落ち着いたのだろう、最初の言葉の節々から溢れ出ていた怒気が収まり爆豪が淡々と呟く。

 その言葉に内申少しだけ安心した上鳴がため息を落とす。

 

 ――まあ、なんだかんだでコイツ入試一位だもんな。冷静でさえいればまず間違いなく大丈夫だろうし。それに緑谷の個性は九生の話しで聞いてる限り対人には使えねぇだろうし。ぶっちゃけ実質は2:1。二人で警戒しながら核を探せば、どうにかなるよな。最悪、単独行動でも俺達の個性ならどうにかなる……。って、

 

「爆豪勝手に先行くなって!!」

 

 慣れない作戦について上鳴考えているうちに、爆豪がさっさと建物の入口に向かって歩いて行く。それに気づいた上鳴が後を追うようにビルの中に入っていくが、其の問題の爆豪は入口に入ってすぐの場所で立ち止まっていた。いや、立ち止まるというよりも何やら震えている様子で……

 

「ちょ、おい爆豪待てって!って、冷た!? 水? スプリンクラーか?」

 

 入り口から入って気づいたが、どうやら爆豪が侵入したのを見計らったように、火災用のスプリンクラーが作動したらしい。後から追いついた上鳴はいきなり濡れることはなかったが、先に先行していた爆豪のコスチュームは既にびしょ濡れになっている。

 

 ――ああ、だから止まってたのか。ということはあの震えって……おい、これちょっとまずくないか?

 

「あのクソナード……」

 

 わなわなと震える肩。これまで聞いた声の中で一番低い声を漏らす爆豪に慌てて上鳴は宥めるように声をかける。

 

「ちょ、落ち着け爆豪、どうどう。こんだけ濡れてると、俺も不用意に個性使えないから、別ンとこから入るか、作戦を……」

「うるせぇ! デクの野郎……ぶっ殺す」

 

 ――ああ、こりゃ駄目だな。完全に頭にきてる。

 

 言葉とともに、両手から爆風を発生し、建物内一直線に階段がある場所まで全速力で進んでいく爆豪を眺めながら、上鳴は一人これからどうしようかとその後姿を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 モニタールームside

 

 開始と同時に突入したヒーローをあざ笑うかのように、一階に潜んでいた尾白君がビルに設置されていたスプリンクラーを作動させた。どうやら、ヴィランのアジトを想定しているようで、此のビルには様々なものが置かれていて、其の中にライターも落ちていたらしい。それを火災報知器にかざし階層ごとに連動したスプリンクラーが一階のフロアに水を降らせていた。

 多分狙いは、上鳴くんに個性によるチームプレイをさせないため、そして……

 

「あ、爆豪のやつ怒ってる怒ってる」

 

 クラスメイトの誰かが呟いたが、まさにこれが狙いなのだろう。

 せっかくのコスチュームと髪が濡らされ激昂した爆豪君が一人突っ込んでいった。多分、これも緑谷君の作戦だろう。そんな爆豪君を見通しのいい階段を上がってすぐの通路で待ち構えていたのは緑谷くんだったのだから。

 そこからは怒涛の勢いだった。緑谷君は、激昂した爆豪君の動きを読んでいたかのように翻弄、何度か捕獲のテープを爆豪君の腕に絡めるような場面があった。その間、皆が爆豪くんに注目してる間に、準備中に緑谷君が渡していたビニールシートで電気対策した尾白君が上鳴くんを地味に捕獲していた。そう言えば、ビニールも一応絶縁体か。上鳴君これはどうしようもないね。

 ……それにしても基本的な体術とかなら尾白君がクラスで一番強そうだ。地味に見える動きで捕まえるということは、それだけ無駄のない自然な動きで上鳴君を捕獲したということに他ならない。

 

「デク君すごい! あの爆豪くん相手に個性を使わないで戦ってる!」

「うん、あれはすごいと思う。きっと単純に動きを予測してるんだろうね」

 

 映る映像を楽しげに見つめる麗日さんの言葉に、私も同じく頷いた。

 体術も、運動神経も全てが爆豪君が上。それでも緑谷君が戦えているのは爆豪くんのことをよく知っているからだろう。短い間とはいえ、尾白君が上鳴君を捕まえる時間を稼げているのだからそれぐらいしか考えられない。でも、それは多分長くは続かない。それは緑谷くんもわかっているだろうから……

 

「あ、上鳴のやつもう捕まってる。いつの間に!?」

「おい、爆豪やばくないか? 尾白まで出てきたぞ? これじゃあ2:1だろ? 緑谷も尾白も男らしくねぇ!」

「いや、これは緑谷君の作戦勝ちだ。此処までの流れは彼が考えた通りに動いているのだろう。……爆豪君の性格も考慮に入れつつ、アジトという状況をうまく使っている。流石だな」

 

 最速での上鳴君の捕獲。そして合流まで視野に入れての配置なのだろう。爆豪君は合流した尾白君と緑谷君に前後を囲まれた形になっている。

 ……此処まではヴィラン側の作戦がうまくいっている。けど

 

「……これは、思ったより早く決着が付きそうですわ。オールマイト先生、次の対戦はどの組に」

「いや、八百万くん。まだ決着はついていないぞ。見たまえ、爆豪少年の顔を」

 

 そう、爆豪君の表情は変わらない。変わらず、目の前の緑谷君を睨みつけている。そこには負けるという感情は一切なく、ここからでも必ず圧倒して勝利するという強い意志がある。まあ、それ以上に明らかに『デク、殺す』という感情のほうが全面に出ているのがあれだけど。

 

 

 

 

 そこからの決着は制限時間いっぱいまで着かなかった。

 大抵のクラスメイトが尾白くんと緑谷君の二人がかりで爆豪くんをテープで捕獲し終了という流れになると想像していたが、まさかの爆豪君が二人相手に制限時間いっぱいまで戦い抜いてしまったのだ。

 二人に囲まれた爆豪君は、コスチュームのガントレットから放たれた強力な爆発でビルの壁を破壊し包囲から脱出。そこからは執拗に緑谷君を狙いながらも、尾白君を捌いて見せた。

 体術などの技術は尾白君の方がやはり上手だが、それ以上に爆豪君の動きがすごかった。

 まさにセンスの塊と言った感じだ。爆発を調整しての動きの軌道修正。技術というよりも戦いながら慣れているのだろう。そもそもあの個性の爆風では爆豪くんに近づくのは実際かなり難しいみたいだった。

 結果は、ヴィラン側が核兵器を時間まで守りきり勝利したが、どうみてもヴィラン側の方が疲労しているあたり、爆豪君の凄さが際立っていた。

 

 それから、当事者も合わせて行われた講評の時間。

 オールマイトがベストだと指名したのは尾白君。まあ、まず間違いなく最善の動きをしていたのは彼なので、その辺りは誰もが認めるところだった。

 それに対し爆豪君の評価はやはり厳しいものだった。明らかに敗因は爆豪くんによる独断専行。それがたとえ挑発されたものだとしても、最後の最後まで緑谷くんに固執したのは失敗だった。その辺りは講評で一番発言していた八百万さんから散々言われてしまっている。例えば、囲まれて脱出できたのだから、二人を撹乱しながら、核兵器の奪取に切り替えるべきではないのか? とか。

 多分、これが一番緑谷君が恐れていた行動だろうから、緑谷くんも自分を囮にするしか無かったのだろうけど。

 そんな講評をあの爆豪君が静かに聞いていたのが印象に残った。

 まあ、それ以上に何の見せ場もなかった上鳴君が一番いたたまれなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこからどんどんと訓練は続いていき……

 

「次はHコンビが『ヒーロー』。Aコンビが『ヴィラン』だ!!」

 

 そして、私の番がやってきた。

 私達はどうやらヴィラン側らしい。ならば、他の組の見学の間に聞き出しておいた峰田くんの個性を活かしやすい。

 それにしても対戦相手は梅雨ちゃんと八百万さんか。

 正直な印象としては、梅雨ちゃんはある程度なんでも出来て戦いにくく、八百万さんに至っては何をしてくるのかが想像できないから戦いたくはなかったんだけどな。

 そんなことを思いながら、今回の相棒になる瀬呂君のテープから開放された峰田はやる気充分のようだ。相手が八百万さんだとわかった瞬間の喜び方たるや、喜ぶだろうなと思っていた私でも流石に少し引いたぐらいだった。

 

「……峰田君、何かあの二人に対して対策とかある?」

 

 私はそんな自信満々のなんというか少しだけ頼もしい相棒にそっと声をかける。

 

「ヤオヨロッパイがH組なんて、今考えるとやっぱり卑猥だよな」

「そういうのはいいから」

「まあ、ヴィラン側ならオイラも色々と本気が出せそうだからな。八百万についてはオイラに任せてもらってもいいぜ! さあ、そうと決まったら移動だ移動! やることが多くて大変だぜ」

 

 うん、不安だ。何ていうか、八百万さん以上に何をするつもりなのかわからないのが不安だ。そもそもヒーロー側で出来ないことってなんなんだ。

  

「……負けないわよ、雛花ちゃん」

「おい、オイラもいるぞ」

 

 そんな私達の様子を眺めていたのだろう、梅雨ちゃんがビルに移動をしようと私達二人にそっと声をかける。いつもと変わらない大きな瞳、けど、どこか決意めいたものを秘めた瞳だ。

 

「おお、梅雨ちゃんやる気満々だ。私だって簡単にはやられないよ?」

 

 ――だからといって、私も負けるつもりはない。

 

「八百万さんにだって、もちろん負けるつもりはないよ?」

「ええ、私も全力でお相手いたしますわ九生さん」

「おい、オイラもいるって」

 

 じゃあ、先に行って待ってるからと、二人にひらひら手を振りながら、私たちは自分たちの訓練場になるビルに入っていくのだった。

 

 

 

 




 因みに、顎に掌底食らった時、峰田くんは気絶したフリをしていました。
 主人公がそんなに怒られなかったのはオールマイトがそれに気づいていたからです。(流石に本当に気絶させていたら指導ものですし)

 そして、私がクジで引いた、対戦組み合わせは此のようになっています

1班,<I班>上鳴 電気  爆豪 勝己,   <C班>尾白 猿夫  緑谷 出久
2班,<D班>口田 甲司  芦戸 三奈,  <J班>葉隠 透  常闇 踏陰
3班,<H班>八百万 百  蛙吹 梅雨,  <A班>九生 雛花  峰田 実
4班,<B班>切島 鋭児郎  瀬呂 範太, <F班>障子 目蔵  麗日 お茶子
5班,<G班>轟 焦凍  砂藤 力道,    <E班>飯田 天哉  耳郎 響香
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