オールマイトなんて大っ嫌い!!   作:半生緋色

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ちょこっと実技試験が長くなりそうなので二分割!


入試編前編:悲しくプレゼント・マイクの声が響く

2月26日

 

「うわーついに来たよ」

 

「そうだね、来ちゃったね」

 

 入学試験会場と書かれた立て看板の横を通り抜け、両サイドにたてられた先人ヒーロー胸像に見守られながら、既にヒーロー科を受験する受験生たちが集まる校舎前で私と友人の真実は其の大きなH型校舎を見上げていた。

 

「……やっぱり周りの人見てると私って少し場違いな気がするね」

 

「今日の入試はヒーロー科志望の子ばかりだから仕方ないよ。試験勉強しなくて本当によかったの?」

 

 この日の入試はヒーロー科の実技試験のみ。後日に普通科や経営、サポート科などと同日に学科の試験日がある。故に此処に集まるのは自ずとヒーロー科志望の学生ばかりになる。そんな中、真実がついてきたのは

 

「だって、雛花ちゃん付いてきて欲しそうな目で私の事昨日ずっと見てたでしょ?」

 

 そんな風にジト目で見てくる親友が私のことを心配してくれてのことだ。

 

「そんなことないし。……ただ、一人だとちょ~っと緊張するなって思ってただけで」

 

「それに、一人だと最近の雛花ちゃん何するかわからないし」

 

「地味に私に対する真実のそういう信頼がすごく辛い……。いや、受験なんだから変なことはしないよ! 最近のアレはちょっと試験が近かったのと個性の影響でナチュラルハイになってて」

 

「自覚してるならよろしい。無理はしないでって言っても、雛花ちゃんは無理するだろうけど」

 

「あはは、無理をして通るなら私はいくらでも無茶するけどネ!」

 

「……まあ、あんな人達の中から勝ち上がるのは大変そうだもんね」

 

 彼女がいうあんな人達とは、先程すれ違った同級生に対して殺すぞ宣言していた受験生のことだろう。確か一度ヴィランが起こした事件の被害者としてテレビで見た記憶がある。すぐに事件解決者がオールマイトだとわかったので、そんなに詳しくは見ていなかったが、周りの受験生が彼のことを爆豪と呼んでいたので多分有名になるほどには其の事件で何かがあったのだろう。

 こういった場合、被害者が有名になる要素は少ない。大概はかわいそうな被害者で片付けられてしまう。それでも彼が有名になるということは、其の事件が大事件であったか、被害者であった彼が何かしらマスコミの目を引く何かを起こしたからだろう。遠目で見た彼の様子だと恐らくその個性を使って犯人に抵抗したとかかな?

 

「流石に言動的にヒーローに向いてない気がするけど、雄英って面接とか無いからね~。間違いなく勝ち残りそうな気がする……。誰かに足引っ張られないかな? ほら、嫌われてそうだし」

 

「雛花ちゃんのそれも十分ヒーローとして危ない言動だけど。……まず深呼吸。他の人の目もあるんだから落ち着いて。間違っても私以外の前で本性出しちゃいけないからね?」

 

「本性違う! 冗談なのにひどいよ……。でもまあ、ありがとうね真実。私ちょっと頑張ってくる」

 

「うん、頑張って。私は信じてるからね。雛花ちゃんならきっと合格できるって。後、もしも駄目だったらホールケーキでいいからね?」

 

「ああ、それは……意地でも合格しなきゃだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなやり取りで緊張を解した私は真実と別れ急いで会場である講堂に向かう。因みに真実は試験日だけ保護者用に開放されている大食堂でご飯を食べて時間を潰すらしい。噂に聞いているランチラッシュのめし処か……正直羨ましい。

 講堂の入り口はまだ時間があるというのに既に受験生で混雑しており、順番に列に並びながら配布された試験内容資料に目を通す、そして程なく番号で指定された席へとたどり着き座席に座る。

 まだ全員がこの中に集まって居ないが、それでも周りを見渡せば人、人、人。ある程度時間もあったので簡単に書類に目を通し終えた頃にはほぼすべての座席が人で埋め尽くされた。

 これだけの人数が集まれば、試験会場だというのに同じ学校同士の受験生の話し声でざわめき始める。因みに私の中学からは雄英ヒーロー科志望が私だけしか居なかったので話す相手も居なく一人きりだ。

 決して私が友だちが少ないとかそういうことではない……と思いたい。

 

「やっぱりみんな緊張してるのか喋ってるね~……」

 

 ポツリと私は緊張をほぐす意味で独り言を漏らす。私も真実がいなかったらここまで落ち着けてなかったかもしれない。と言うより、私自身が緊張するとつい口を動かしてしまうタイプなので、入り口の段階で既にかなり緊張していたのだが。

 

「これだけの人数の中にいるのだもの、緊張するのもしかたがないわ」

 

 そんな私の独り言が聞こえていたのだろう、隣の席に座っていた受験生が声をかけてきた。

 そっと視線をそちらに向ければ其処には長い黒髪を後ろで括り、可愛らしい大きな目を此方に向ける女の子と視線が重なる。

 

「うん、そうだね~。話せるだけの気が許せる相手が一緒にいるとやっぱり安心するし。紙に書いてあるこの試験の内容だと、協力した方がいい場面もあるかもだし。……私は九生雛花、今はライバルだけどお互い頑張ろうね」

 

「そうね、お互い頑張りましょ。蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで。……でも、演習会場は違うみたいよ?」

 

 そう言って梅雨ちゃんは自分のプリントを私に見せてくれる。其処に書かれていた演習会場はたしかに私が向かう場所とは違うようだ。これも隣にプリントを見せてくれる人がいなければ気付かなかったかも知れない。

 

「あ、本当だ。流石にそのあたりの対策はしてるのか~。う~ここで梅雨ちゃんと仲良くなっておいて、一緒に協力して実技試験を乗り越えようという私の計画がぁ……」

 

 う~と態とらしく机に突っ伏しながら、そんなことをいう私を梅雨ちゃんはじっと見つめながら楽しそうに微笑を浮かべ口を開いた。

 

「私も思ったことは結構口にしちゃうタイプだけど、雛花ちゃんも中々ね」

 

「……私の場合は半分冗談だけどね。なんだかんだ言って今はみんなライバルだから、出し抜くぐらいの気持ちじゃないと。でも、良かった梅雨ちゃんとは別会場で」

 

「あら、どうしてかしら?」

 

 私は突っ伏していた体を起こしてもう一度彼女に向き直る。

 

「こうやって会場を分けてるってことは、会場ごとに合格者数が決まってる可能性があるし。其の場合同じ会場だったら本当に梅雨ちゃんと少ない椅子の取り合いになるかも知れないし」

 

「あら? 何方にしても、狭い椅子の取り合いなのは変わらないと思うのだけれど?」

 

「けど、それでもさ、私は私に声をかけてくれた人には残って欲しいんだ。だからさ、梅雨ちゃん……。次会う時は、雄英の教室だね!」

 

 冗談交じりに宣言した言葉。これは本音である。こうやって知り合えたのも何かの縁なのだ。そんな私の言葉に梅雨ちゃんは

 

「雛花ちゃん、それってよくあるフラグ的なセリフだから試験前では言わないほうがいいわ」

 

 なんて真面目に言ってくるのだ。うん、梅雨ちゃんは何を話してもまっすぐに返してくれて少しだけ恥ずかしくなる。

 

「大丈夫大丈夫、追い詰められたぐらいが私にはちょうどいいの……っと、始まるみたいだね」

 

 気がつけば周りのざわめきがどんどん小さくなってきた。私も梅雨ちゃんも自分の席にちゃんと座り直せば、講堂の中央、講演台に前に上がってきた一人の人物に視線を向ける。

 遠くから見える其の姿は何処か見覚えがある。確かプロヒーローのプレゼント・マイクだったはず。 

 そんな彼は時間を確認しつつ、講堂内が静かになるのを見計らって、其の大きな声を響かせた。

 

「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

「……」

 

 講演台で喋る先生の声とは裏腹に、とても気まずい沈黙がその場を支配していた。

 それもそうだ、これからとんでもなく競争率の高い入試の試験が行われるのだ。

 彼らは一字一句聞き漏らさないように努めて黙っているのだ。誰が彼らを責められるというのか。

 

 あーこれ、前で喋ってるプレゼント・マイク辛いだろうなー。よく見たら耳を澄ましているし

 

 其の姿を見ていると少しいたたまれなくなってしまう。だが、それでも静まり返る会場の中、其のノリで話を続けようとする彼にはある意味プロ根性を感じる。

 私にできることといえば、そんな静まり返る会場の中プレゼント・マイクの説明を他の生徒と同じく一字一句漏らすこと無く耳を澄ませて聞くことだった。

 マイクの説明はおおよそ配布されていたプリントに書かれていること同じだった。

 受験生は演習会場でそれぞれポイントの違う仮想敵を行動不能にしポイントを競い合うというものだ。

 仮想ヴィランの数は限られているだろうし、それを周りの受験生と取り合うことになる。

 ポイントのカウントの為もそうだが、他人への攻撃等、アンチヒーローな行いは御法度と言っていたことを考えると、この試験中は常に試験官に見られていると考えたほうがいい。

 考えれば考えるほど、この試験に対する疑問点が出てくる。一人だけこの試験内容に関して質問した真面目そうな男子生徒が居たが、あの雰囲気の中で質問できる彼の真面目さもすごいと思ったし、質問するのが其処なのかとも思った。

 ただ、よくよく考えれば自分が飛び込みたい世界はそういうものなのだという実感も湧いてくる。

 限られた情報で、様々な可能性を考慮して、最善の動きができるか。

 

「……色々大変そうだけど、此処まで来たらぶつかるだけか。私は向こうの出口側のバスみたいだから梅雨ちゃんもがんばってね」

 

「ケロ、雛花ちゃんも」

 

 可愛い返事に私は思わず微笑を浮かべながら、よいしょっと、声を出して座席から立ち上がる。

 さて、がんばりますか。そう決心して私は自分を追い込む意味である言葉をつぶやく。

 

「私、この試験が終わったら……」

 

「言わせないわ。私も、できれば雛花ちゃんとは一緒に合格したいもの」 

 私の言い掛けた其の言葉は、寸前で梅雨ちゃんの手で阻止されるのだった

 




雛花「私、実は待たせてる人がいるんだ。入試うまく行ったら、ケーキを一緒に食べようって約束を」
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