オールマイトなんて大っ嫌い!!   作:半生緋色

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入試編後編:親方!空から男の子が

 最初は此の実技試験は行けると思った。

 この試験向きではない個性でありながらも、我ながらうまく立ち回れていたと思うし、ポイントであるロボに恐れること無く動けたから。だから自分でもある程度できると過信していたのかもしれない。

 

「標的補足!ブチ殺シマス」「標的補足!ヘヘヘ、ミロヨ動ケナイミタイダゼ」

 

「クソ……、誰か手を貸してくれ!!」

 

 だけど、雄英の入試はそんなに甘いものではなかった。

 突如現れた巨大なロボの一撃に運悪く瓦礫に足をとられた瞬間、それを待ち構えていたかのように現れたロボットたちが俺の周りを囲む。此のままだと多分失格だな。そう思ったときに声が聞こえた。

 

「とりあえず、伏・せ・て!!」

 

 聞こえた声に言われるがまま俺はその場にしゃがむ。

 瞬間、自分の真上をものすごい勢いで何かが飛んでくる風切音と続く何か金属同士がぶつかる音。自分の真上を通り過ぎた其の何かが、辺りに散らばっていた2ポイントロボだと気づいたときに、そいつは笑いながら俺の前に現れた。

 

「あはは、思ったより飛んだ飛んだ!! 私もやればあんなこと出来るんだ~っと、ちょっとまだ無茶するからそのまましゃがんでてね?」

 

 そんな笑う女は其の言葉とともに俺を狙って集まっていたロボたちを次々となぎ倒していく。文字通り、力技でロボを掴み振り回すのだ。あの細腕でどこからそんな力を出しているのかわからないが、多分個性だろう。

 次々となぎ倒されていくロボたちを俺は見ていることしかできなかった。そして最後の一体をなぎ倒した時、彼女は俺の方を見てまた笑いながらこう言った。

 

「ふっふ、別に貴方のために倒したんじゃないんだから。これはあくまでポイント稼ぎのためであって……」

 

 ああ、これちょっと危ない人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 痛い痛い痛い痛い

 引きつった笑みを浮かべたまま、肩で息をしつつも彼の脚に乗っていた瓦礫をどかす。

 彼を助けるために治癒を無視して全身の筋肉の活性化だけしたのだから、当然のように身体が悲鳴を上げている。それでも体が動くのは、其の痛みを誤魔化す為に脳内から色々ハイになる物質が分泌されまくっているせいだろう。

 ……と言うか、何か口走ってないか私? まあどうでもいいや。そんなこと考えるより今すぐ何か食べたい。後生命力(エネルギー)がほしい。

  

「お、おう。まあなんだ、助かった。けど、大丈夫か?」

 

 困惑しつつも、心配そうに此方を見ていた男子が声をかけてくれた。ハイになった頭でも助かったと言われたら嬉しいものだ。

 しかし『いえ、これっぽっちも大丈夫じゃないです。死ぬほど全身痛いです』と、素直に言えたらどれだけ楽か。

 だって、助けに入った私の方が実は今瀕死かもなんて口が裂けても言えないじゃないか。

 せめて私の身体にもう少し生命力あったなら……あったなら、ああ、あるな、目の前に。

 

「大丈夫じゃないので、お礼代わりににあなたの元気を頂きます」

 

「……ん?」

 

 私の言葉に、心配そうに私を見ていた彼の顔が引きつるのが見えた。

 私はそのまま捕食者の笑みを浮かべながら彼に詰め寄る。どうせ、足を痛めてるのだ逃げられない。諦めると良いとおもうのです。

 

「弱肉強食です! あ~……じゃなかった。そう、これはギブアンドテイク。助け合いということでどうでしょう?」

 

「ちょっと待て!?」

 

 慌てる相手にそっと手を伸ばし相手の同意を得ないまま私は彼の頬に触れる。瞬間、すっと空っぽだった身体に何かが満ちる感覚

 

「ん~……此の場から離脱するのに必要なの。そっちは少し足を痛めてるみたいだし、とりあえず瓦礫が飛んでこない安全な所まで運んであげるから。……此のまま此処にいたら、二人とも危ないし」

 

 私の個性は、無差別に周辺全ての生命力を吸い取ることも出来るが、範囲を最小限にした接触で吸収するほうが一番効率もいいしコントロールも容易だ。そうやって彼からちょこっとだけ生命力をもらう。直ぐに其のエネルギーを治癒に回せば痛みに多少は耐えれるようになった。

 

「ああ…なんだ個性の関係か。すまんけど頼むわ」

 

 落ち着きを取り戻した私の言葉に少し驚きながらも同意するように彼も頷く。

 それを確認した私は再度、彼から生命力を奪う。

 それなりの疲労感が今彼の身体に降り掛かっているだろうが、これだけ奪えれば担いで逃げる分には十分だ。

 まだ危機が去ったわけではなく、依然脅威の巨大ロボは演習場を突き進んでいる。このあたりのビルもいつ崩壊しても可笑しくない。

 

「いやぁ、ごめんね~、こんな手段しか無くて」

 

 それだけ彼に言って、崩れる建物に巻き込まれないように私は彼をなんとか背負いあげ、一旦他の受験者と一緒にその場を急いで離れようと動き出した。

 とりあえずは、突然崩れてきても大丈夫なように大通りでも目指すか。

 細い路地なんて走っていては、突然崩れてきたときに逃げ道はないし、既に崩れて道が塞がっている可能性だってある。

 

「残り二分を切ったぜぇ!!」

 

 途中にプレゼント・マイクの声が聞こえる。

 プレゼント・マイクの声は未だ悲鳴と轟音が鳴り止まぬ演習場でもよく響く。さすがプロヒーローだ。

 でも、まあこれ以上のポイント獲得は実際厳しいだろう。

 あの巨大ロボがまだ近くにいる限り、背負った彼を置いていくことは出来ないし、背負いながらの小型ロボの迎撃は流石に危ない。

 急いで瓦礫が飛んでこない位置まで逃げてからの周りの小型ロボの迎撃が一番無難では有るだろうが、それはきっと先に逃げた人が既にやっているので期待できない。

 

「俺を置いていけば、少しはポイントを稼げるんじゃないのか?」

 

 背中から聞こえる言葉に思わずふふっと笑い声を上げてしまう。

 だって後悔は不思議としていないし、そもそも見捨てるなんて選択肢は私の中にはなかった。生命力を吸い取るだけ吸い取って放置という手段も有るが、それはもはやヒーローの所業ではないし。それに少なからず彼を助けるために何体かのロボは倒すことは出来たし、あの状況下で他に補給の宛もなかったのも事実、何よりも助かったって言ってもらえたことが嬉しかったから。

 

「いやだなぁ、それは言わない約束だよ。おとっつぁん」

 

「おとっつぁん?」

 

「気にしない気にしない。そっちこそ、ポイントはきっちり稼げてたの?」

 

「あー、それなりに。俺の個性はそもそもこんな試験向きじゃないけど」

 

「あはは、どんまーい」

 

 私の笑い声をかき消すように後ろから建物が崩落した音が聞こえる。どうやらあの巨大ロボが此方側に向かって進み始めたようだ。

 

「……よくこんな時に笑ってられるな?」

 

「笑ってなきゃやってられないよ? こう見えて私の個性はそんな便利なものでも……いや、すごく便利だけど、副作用がね。それに、笑えなくなったらそれこそ終わりだし」

 

「笑ってるのは副作用ってことか。っと、もう少し、右だ」

 

「ん? 了解」

 

 声に反応して、彼を背負ったまま横に飛ぶ。何故か彼の身体が私に固定されたように密着しているので、難なく回避できたが後ろからまた巨大な腕が振り下ろされたのだろう、爆音が響き瓦礫が飛んできた。

 

「危な! さっきの個性?」

 

「違う。後ろを見てただけだ。けど」

 

「……けど?」

 

 彼の言葉の続きを聞こうと後ろを振り向くと、かれはすぐ後ろの瓦礫に向かて指を指していた。ゆっくりと土煙が晴れていく其の場所を見る。

 

「いったぁ……」

 

 土煙の中で不意に聞こえた女の子の声に思わず足が止まる。他にも何人か其の様子を目撃した受験生がいたが、彼らが動き出す前に間髪入れずに私は後ろの彼に問いかける。

 

「あ~、お願いが……」

 

「わかってる。どうせ俺は残り時間じゃ何も出来ないだろうし、ならせめて俺もヒーローらしくな」

 

 私が言い切る前に彼も察してくれたのだろう、ゆっくりと背中越しに感じる彼の身体から生命力を自分の体に流し込む。

 先程よりも躊躇しないで吸い取った分、彼にはかなり負担になるだろうが、それでもこれで多少無茶な動きもできるようになった。

 

「えへへ、そういうの大好き! やっちゃうか!」

 

 これならもう一人背負うぐらいなんとかなるだろう。そう思って駆け出そうとした時

 

「ぐあっち!?」

 

「ん?」

 

 すぐ近くで、変な声とともに誰かが盛大にコケた音がした。

 

「いったぁ……」

 

 半ば反射的に視線を向けたその先で、どこかで見覚えのある男子受験生が倒れている。

 

「え?……二択?」

 

 そこで一瞬思考が止まってしまう。

 

 流石に私でも、三人は無理だ。

 どっちかを見捨てろということ?

 あの人はただ転けただけの可能性もある

 けど、そうじゃないなら此のままじゃああのロボのキャタピラに

 

 思考停止から爆発するように溢れる思考。迷いと焦りが冷静な判断を下せないでいる。

 時間で言えばほんの数秒の迷い。だけどそれは緊急事態においては致命的な時間だ。

 ……そんな私の思考を袋小路から開放してくれたのは、上空で聞こえた、巨大ロボが暴れたのとは違う、何かを砕く巨大な音とそれに連鎖して鳴り響く爆発音、辺りの受験生の何かとんでもないものを見たようなざわめきだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すげぇな。」

 

 其の様子を見ていたのだろう背負っている男の子の声が聞こえた。

 遅れて見上げれば其処には一人の受験者が巨大なロボの頭部を殴り倒し、宙を舞っている姿だった。

 傍目に言えばありえない光景だ。アレ程の巨体を後ろに弾き飛ばすほどの破壊力。

 それでも腕がすごい色に変色しているのでリミッターを外した制御できない全力の一撃だろう。あの怪我では多分もう腕は動かない。

 彼はきっと選んだんだ。同時に救う方法を。自分を犠牲にして。

 それも一瞬で何の躊躇なく判断した。

 

「そうだね、すごいや……」

 

 少なくとも、私にはすぐに判断できなかった。両方救う手段が私の中で無いことはすぐに理解できたのに、選択を迷ってしまった。

 けれど、今はそんなことで迷っているよりも彼が自分を犠牲にして作ってくれた此の時間のうちに私は出来ることをするべきだろう。

 

「後一分だぁ!!」

 

 遠くでプレゼント・マイクの声が聞こえる。けど、今はそれを気にしている暇など無い。

 そう、確かに巨大ロボの脅威は去ったが、それはつまりあの巨大質量が爆発しながら崩れてくるということだ。いくら此方側に倒れてきているわけではないとはいえ、爆発に巻き込まれて破片が飛んでこないとも限らない。だから、この場所でとどまり続けるのは少々不安だ。

 ちらっと、あたりを見れば先程転けていた男子受験生は自力で立ち上がり、既に此の場を離れ始めている。此方側を手伝ってくれても良いのではと思うけど、私達と違って動けるならポイントを少しでも稼ぎに行くのがベストでは有るので何も言えない。

 ならとりあえず、緊急性が高いのは後ろで瓦礫に足を取られてた女の子を助けておこう。

 なに、旅は道連れというわけではないけど、残り時間的に二人をおいてポイントを稼ぐより、助けておいたほうが気分的に良い。まあ、見捨てる気は最初からないのだけど。

 

「大丈夫? 早くここから逃げるよ」

 

 私は急ぎ其の女の子に駆け寄り瓦礫をどかす。

 見た限り目立った怪我はないようで、少し安心する。これなら肩を貸すぐらいで大丈夫そうだ。 

 

「ありがとう。けど、先にあの人を。あの人……このままじゃ」

 

「あの人? 腕は多分かなり痛めてるけど流石に着地のことは考えて……」

 

 上を見上げて、見えた自由落下する少年の姿に言いかけていた言葉を、其の考えを否定する。

 殴った腕と、多分其処まで跳躍するのに使った両足がありえない角度にぷらぷらと揺れながら彼はただ落下してきているのだ。多分何箇所も同時に折れていて、もう既にまともに動かせないのだろう。

 

「……ないみたいだね。でも、あの高さから落ちてくるのは流石に私でもキャッチできないし」

 

 前言撤回だ。

 彼はたしかに躊躇の無さはすごいけど、自分の出来る範囲を考えていない。

 文字通り彼は体が勝手に動いたのだろう。どうにかする術があったからこそ倒すことが出来たが、無ければただの自殺と変わらないのだ。

 ただ倒した後の今も、どう見ても無事ではないし依然危機なのは変わらないのだけど。

 ただ、少なくとも見殺しには出来ない。だって彼が飛び出したのはどこまでも善意なのだから。

 当然あの高さから落ちてくるものを普通に地上でキャッチしたら、其の衝撃で彼も私もただではすまない。着地地点に緩衝材でもあれば激突の衝撃は緩和されるだろうが、そんな物があるはずもなく……

 

「私が行く。私の個性なら……」

 

 そんな私の思考を読んでいるわけではないだろうけど、よろめきながら立ち上がった彼女がそう言った。もう流石に考えている時間はない。なら、彼女に頼るしか無いだろう。

 

「わかった、何か私に出来ることはある?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うへぇ……なんとか大丈夫だったみたいだけど、もう嫌だよこんなの」

 

 空中で重力から解き放たれたようにふわふわと浮いている少年の姿を見て私はほっと一息つく。一歩間違えれば大惨事になる所だったのだからため息ぐらいついても誰も文句は言わないだろう。

 彼女の個性は触れた相手の重力を無くすことが出来るらしい。

 そして後ろの彼の個性は、触れたものとモノ同士を引っ付ける個性らしい。

 私達がしたのは彼女が落ちてくる少年に落下前に触れるための支援だ。

 素早く動けない彼女を、彼女の個性で無重力状態にした3ポイントロボの装甲の上に載せ、後ろで担いでいた彼の個性で彼女を落ちないように装甲に簡単に固定。彼女自身の重さも0にして、それを私が運び、空中で彼女が彼にタッチするという行き当たりばったりな作戦だ。

 ……最終的に私の脚では落下地点に間に合いそうになかったので破片ごと彼女を投げたし。

 成功したのはひとえに

 

「しかし、運が良かったな」

 

「本当に運が良いのは、こういった事態に巻き込まれないことだと私は思うんですけど!」

 

「いや、彼。あの子の個性じゃないと危なかったんじゃないか?」

 

 言われてみれば其のとおりである。そっと、其の話に出た張本人の彼女達の方を見れば、個性を解除したのだろう。あまり高さがないとは言えふたりとも地面に落下する。少年の方は言わずもがな、女の子の方も個性の反動だろうかすごく体調が悪そうだ。あ、吐いた。

 

「流石に……流石に雄英の先生陣がどうにかしたんじゃない?」

 

 そんな様子を苦笑しながら見つめる私は、そう言うしか無かった。というより、そうだと信じたい。

 あのまま為す術もなく落下していれば、其の衝撃を相殺する何かでもない限りもれなく命の危機だった。試験で死者だしたら雄英といえども非難は免れない。

 憧れて目指していた高校が其処までずさんな管理ではないとは思いたいものである。

 

「まあ、私たちは私達で出来ることをしたし」

 

「ポイントは稼げなかったけどな」

 

 すかさず突っ込む彼の言葉に、うっと一瞬よろけてしまう。

 ヤメて下さい、其の言葉は私に効く。

 そっと視線を後ろに向ければ、言った本人もダメージを受けているようにみえる。

 なら、何で言った。

 

「いや、きっと最初のスタートダッシュで稼げてるし」

 

 私は倒れている二人のもとに歩き向かいながら、反論とばかりにそんな強がりながら口にする。

 ポイント数については私はちゃんと数えていない。正直周りと競い合う関係上、数えてもそんなに意味がなさそうだったから。結局、一番倒した人が合格するのだろう。ポイント制とはそういったものだ。

 

「俺も、数えてなかったけどそれなりに動きは止めてたし」

 

 彼も対抗してそんなことを言ってくるものだから私は思わず笑ってしまう。

 

「なにそれ、まあ、私達が手間取ってる間にいろんな人がロボ倒したんだろうけど」

 

 そう思うと、もう少しやり方があったのではと思う。例えば、彼の個性を先に聞いておけば行動の選択肢はもう少しあったかもしれないのだ。

 

 

 

「試験……終了~~~~!!!!」

 

 その時ちょうどプレゼントマイクの声が響く。

 声の後に演習場で鳴り響いたサイレンの音を合図に周りを彷徨っていた仮想敵ロボの動きも止まる。

 

 ああ、やっと終わったのか。

 

 そう思った瞬間、緊張の糸が切れてしまったのだろう、不意に身体に力が入らなくなる。どすんと背負った彼のことを気にせずその場に腰を下ろしてしまう。

 ああ、此のまま大の字で横になれたらどれだけ楽だろうか。さすがに周りの目があるからしないけど。

 というよりも、周りは私達よりも先程巨大ロボットを倒した少年に注目しているようだ。

 ぞろぞろと何人かの受験者が彼の様子を見に集まってきている。なら、彼の手当などは彼らに任せておいても問題ないだろう。流石にヒーロー科志望なのだから、そのまま放置するようなこともないだろうし。

 

「もう動きたくない……」

 

「まあ、お疲れ様。正直助かった」

 

 そんな私に対して、脚を庇いながら隣に腰を下ろした彼が声をかけてくれた。

 改めて面と向かって言われると照れるので顔は合わさないようにする。

 

「けど、いざこうやって思い返してみると、女子に背負われて助かったってなんか恥ずかしいな」

 

「……なら、次は助けられた分、今後こんなことがあったら誰かを助けてみたらどうかな? 例えば女子とか」

 

「そんな都合よく事件に出くわさないと思うけどな。まあ、考えとくは」

 

 

 

 

 

 

「はい、お疲れ様~お疲れ様、お疲れ様」

 

 遠くから聞こえた声に視線を向ける。見ると一人の小柄な老婆が受験生たちの間を歩き、グミを配りながらけが人を探している。遠く、なぜだか誰も聞いていないのに説明しだした受験生の話を聞く限り、彼女がこの学園でもトップクラスに有名なヒーローの一人リカバリーガールなのだろう。確か個性は私と少し似ていて治癒力の活性化だったはず。

 見れば何人かの怪我をしていた受験生たちの怪我がどんどん治していく。其の治療法はなんとも言えないあれな映像なのだけど、全身をバキバキに折っていた少年の怪我も治っているところを見ると其の能力は噂通りなのだろう。

 

「他に怪我した子は?」

 

「すいません、こっちのこの人お願いします」

 

 声を上げ、リカバリーガールを呼び止める。

 

「はいはいっと、そっちの女の子は大丈夫そうだけど、そっちの男の子。怪我はそんなにひどくはないけど顔色が悪いよ。少し体力の方が無いみたいだねぇ。一気に完治させるよりは、徐々に活性化させてゆっくり治すかねぇ」

 

 此方に気づき、トコトコと杖を突きながらやってきたリカバリーガールは私達の姿を見て直ぐに診断する。さすが其の辺りは熟練のプロだ。

 

「あーそれ私のせいです、すいません」

 

「気にすんな。不可抗力だし実際助かった」

 

「……因みに、体力がない状態で治すとどうなるんです?」

 

「ああ、怪我は治るけど逆に死ぬから気をつけないといけないんだよ」

 

「逆に死ぬ!?」

 

 思わず聞こえた言葉に不安そうに彼がリカバリーガールの方に向き直るのが見えた。

 其処はプロなのだから、ちゃんと殺さないようにしてはくれるだろうという言葉は彼にかけずに面白いから其の彼の顔をジロジロと覗き込むことにする。

 

「とりあえず、一旦医務室に来てもらおうかねぇ」

 

「だ、大丈夫なんですよね? 俺、死んだりしませんよね?」

 

「まあ、ゆっくりやるさ、あとはアンタの体力次第さね」

 

 そう言って、リカバリガールはポケットから紙を取り出し彼に渡し、次の怪我人の方へと歩いていった。多分渡した書類は臨時で保健室を受験生に使わせるための書類か何かなのだろう。彼も渋々それを受取れば、リカバリーガールの後ろについてきていた小型のロボットが彼を持ち上げられ、担架に乗せられる。

 

『保健室へ』『I KNOW』

 

「あはは、がんばれー。その後、バンダナの男の子の姿を見たものはいなかったという……うう、惜しい人物を亡くした」

 

「勝手に殺すな! そんで、俺の名前は泡瀬洋雪だ。バンダナで覚えられるのはなんか嫌だ」

 

「私は九生雛花。じゃあさ、名前もちゃんと覚えておくから、次会う時は雄英の教室だね!」

 

「どうだろうなー。まあ、結果次第か」

 

「なんだろう、普通に返されると、どう返して良いのかわからなくなる」

 

「ん? ああ、そうだな。次会う時はお互いプロヒーローだな。……のほうが良かったか?」

 

「絶対合格してやる。そして、私に遅れて一年後にプロ入りした泡瀬に私のほうが先輩だからって言ってやるんだ」

 

「あ、遠回しに俺が落ちるみたいなこと言ってないか!?」

 

「あはは、気のせいだよー。まあ、死なないでね」

 

 担架に乗せられ、ゆっくり運ばれていく彼の姿を小さく手を振りながら見送った。

 正直ああは言ったものの、自分が受かっているかなんてわかるはずもない。それを決めるのは私ではなく雄英側なのだから。なら、とりあえず今ぐらいはゆっくりと気を抜いてしまってもかまわないだろう。

 

「……とりあえず、着替えて真実と合流しなきゃ。ついでに何か食べよう。今日ぐらい食べすぎてもいいよね? これも自分へのご褒美ご褒美」

 

 それで決定! っと心のなかで頷けば、急ぎ私は演習会場を重い体をむち打ち、親友の待つ食堂に向かって走った。こうして私の雄英入試実技試験は幕を閉じたのだ。

 




 デクが殴ってから落下までの短期間で、落下位置までの移動とある程度の空中での滞空ってどう考えても一人だと厳しいよねっと思って今回な感じになりました。
 あと、やっぱりすまっしゅネタの扱いって難しい。
 
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