オールマイトなんて大っ嫌い!!   作:半生緋色

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前後編で終わると思ったけど、案の定いつもどおり長くなったので中編です
後編は短いのですぐあげれると思われます! ……うん、伸びそう!!


個性把握テスト中編:投げるよりバットで打ったほうが飛ぶじゃないですかあれと一緒です

第三種目の立ち幅跳び

第四種目の反復横跳び

 

 共に私の個性による身体の増強でかなりいい記録が出せたと自負している。特に時間をかけて脚部に力を溜めて飛んだ立ち幅跳びで梅雨ちゃんに勝てたのはとても大きいと思う。……その時の梅雨ちゃんの顔がとても悔しそうで少しすまない気持ちになってしまったのだけど。

 流石に連続して飛んだり溜める時間が無かったらまず勝てないと思う。これは実戦ではなくテストなのだから許してほしいな。

 それで、勝つために無茶したその代償が

 

「うう……足がムズムズするよ~。何ていうか、冷え切って感覚が無くなっていた足をいきなり熱めのお湯に浸けて、急激に血流が良くなるような」

 

 反復横跳びを終え、座り込んだ私は筋力の増強を解除し生命力を急いで治癒力にだけ回す。

 此の種目なんて継続して負荷がかかりっぱなしなのだから、筋繊維がブチブチに切れている。そんな状態を急速に治すものなのだから、はっきり行ってむず痒い。こういった地味な負傷が治る感覚がいつまで経っても慣れない。痛みと違ってくすぐったい感覚というのはどうしても耐性がつきにくいのだから仕方がないと諦めてはいるけど。

 

「ケロ、握力の時も思ってたのだけど雛花ちゃんの個性、もしかして副作用でも有るのかしら?」

 

 そんな私の足を気遣うように優しく擦ってくれる梅雨ちゃんが尋ねるように声をかけてきた。……時々くすぐるような手つきになるのはきっと気のせいだと思いたいのだけど。何と言うか、とっても感覚が鋭くなってるせいでものすごく擽ったい。もしかして、さっきの立ち幅跳びのこと根に持ってませんか? 

 

「っぷ、はははは!? 擽ったいって! ちょっと、その手は卑怯! ふぅ……えっとね半分当たりで半分外れ。強いて言うなら人体のリミッターを外して増強しているのだ~。ほら、身体が耐えれる限界を超えてね。それ以上は乙女のヒ・ミ・ツ・だよ!」

 

「……少なくとも口調が少し変なのは副作用っぽいわね」

 

「あ~それはまったく否定できない自分が悲しい……。やっぱりおかしな感じなのかな~? おかしいと言えば、さっきの真面目そうな子の反復横跳びもすごかったよね~。本人も赤面してたけど、そういう所がなんかギャップがあって可愛いと思うんだ私」

 

「はいはい。さあ、次の種目に行くわよ、雛花ちゃん」

 

 どこか呆れたような、それでも優しげに声をかけ差し出された梅雨ちゃんの手に捕まり私は立ち上がる。

 

「は~い。……なんか梅雨ちゃんが私に対して素っ気ない気がするな~。まぁ、行こう行こう。見てても反復横跳びはそんなに個性生かせる人は居ないだろうし、次の対策考えなきゃ」

 

 幾つかの種目をこなしつつ、周りを見ている中である程度クラスルームの個性が把握できてきた。この中でこのテストの順位が高そうなのは、今も言った足の個性を持った真面目そうな飯田くん。それに受験一位突破のどう見ても不良な爆豪君、なんだかミステリアスな火傷の男の子、そして……

 

「ふぅ、こんなものですわ」

 

「すごい。何か個性でも使ったの?」

 

「いえ、流石にこの種目には何も思いつきませんでしたわ。強いていうなら、少しシューズを変えたぐらいで」

 

 そっと視線を向ける先で黒髪ポニーテールの女子生徒と浮かぶ体操服が二人で話している。そう、問題はこのポニーテール女子だ。50m走の時は手の先から何かを出して、ゴールラインに飛び込むという短縮技を使ったり、握力の時は万力を作り出し1.2tというとんでもない記録を作り出していた。

 多分、物質を作り出すという個性なのだろう。制限などは流石にあると思うが使い方次第ではかなり汎用性が高い個性だ。そして、何よりも素の運動能力もかなり高いらしく、こういったその個性を活かしにくい種目でもかなり上位の記録を出している。まあ、雄英に来るのだから運動能力が低い子などそうそういないだろうし、居たとしてそれを補うだけの強力な個性を持っているかだと思うけど、彼女は両方持っているのだからたちが悪い。そして何よりも

 

「……あ~あ、物質を出しただけ副作用で縮んだりしないかな~」

 

「ケロ、何の話?」

 

「こっちの話! さ、次々。次は私も個性を全力で使えそうだから、頑張っちゃうよー」

 

 自分の少し貧相な身体と比べるとなんというか負けた気になる。いや私だってきっと成長期だ! 個性は4歳まで、一部の体型は15歳でだいたい決まるとかそんな俗説なんて知らない。もしかしたらまだ成長期の可能性だってあるのだ。そもそも未だに自分の両親が誰だかわかっていないのだから、実年齢なんて大凡で出した飾りみたいなものだ。実は年下の可能性だってある。……考えたくはないが、逆のパターンもあるけど。

 それに個性の関係でカロリー等の消費がすごいのだから栄養が足りなかったのかもしれない。だから仕方がない。そう、仕方がないのだ。

 

 

 

 

 

第五種目:ボール投げ

 

「次、九生」

 

「はいっと。……このボールは大丈夫なんですよね? 紛失とか壊れても弁償とか無いですよね?」

 

 私の問い掛けに、私の前にボールを投げた無重力個性の女の子もなんだか顔色が悪い。まあ彼女は自身の個性でこの種目最高記録になるであろう無限を叩き出している。多分あのボールを紛失しているだろうから気にもなるだろう。

 私だって出来れば弁償とかのリスクを背負いたくないから聞いているのだし。まあ、アレだけ何個もすごく遠くまで投げられているのだから今更ではあるのだけど。

 

「……何をするか知らんが心配するな。このソフトボール型測定器は雄英のサポート科製だ。ちょっとやそっとでは壊れん。それに紛失は想定内だ、請求などしない」

 

「それを聞いて安心です。あ、それともう一つ! このサークルの中なら何してもいいんですよね? 遠くに飛ばせれば。さっきも梅雨……蛙吹さんが舌使って飛ばしてましたし」

 

「何度も言わせるな。このサークルの中なら何をしてもいい」

 

「了解です! では……」

 

 最初は自分自身がサークルの真上に全力でジャンプして、そこから投げることも考えたが正直足場のない空中で投げたところでそんなに力も出せないと却下した。ドッチボール等でジャンプして投げるのが力強く感じるのは結局ジャンプする前の助走の勢いがボールに乗るからであって、真上に飛んだところでせっかくの脚力などが生かせないからだ。……これが空中に足場を作れる等の個性だったら話は違うが、そういった個性ではなく単純に増強寄りな私の個性では地上で投げたほうが効率がいいだろう。

 なら、どうするか。私の個性での強化は体の中の溜めた生命力を各所に分配して強化するものであり、先程の立ち幅跳びのようにどこかに集中して生命力を流したほうが強化倍率が飛躍的に上がる。逆に体全体を同じように生命力を回せば強化範囲は全力の半分ぐらいが限界だしかなり燃費が悪い。ボールを投げる場合だと強化すべきは地面を蹴り踏ん張る両足、其の勢いを伝える腰、そこから其の勢いを重ねて振る腕、最後に手首のスナップだろうか。うん、ほぼ全身だ。

 とりあえず、一投目はそのまま全身を強化して投げてみることにする。いきなりあのチャレンジするよりも、まずは普通に投げて記録を出しておかないと無茶も出来ない。

 まずサークル内の一番後ろまで下がり、小さく深呼吸。眼を閉じ投げるための体の動きをイメージする。そして心の準備が出来てから生命力を全身に回していく。

 右手に持つソフトボール型測定器を振りかぶれば、大きく右足で大地を蹴り、左足で其の勢いを受け止め、其の勢いをそのまま腕を振り切り、手首でボールを押し出し……

 

「……マイトの、馬鹿!!」

 

 ふふ、完全ではないけど言ってやったのだ! ああ、スッキリした。やっぱり叫ぶのは楽しい。周りの目がとっても痛い気がするけど私はそんな小さなことは気にしない。

 投げ終わった後、また体中の筋繊維がブチブチとちぎれたのだろう心地よい痛みが全身を襲う。本来ならそれなりに激痛なのだが程よくの痛み止めの物質も出始めてきたみたいだ。……これならもう少し痛くなっても耐えられるだろう。

 

◀587.1m▶

 

 無言で相澤先生が突き出した計測器の記録を見る。おお、やっぱりそれなりに出せたけど最初に投げたthe不良な爆豪君の記録は抜くことはできなかったか。やっぱり掛け声はバカより、死ねぇ!! のほうが力がはいるのかな?

 

「ソフトボール投げは二回だ……笑っていないで早く投げろ」

 

「了解で~す。ふっふ、次が私にとっての本番ですからねー! さあ、次なんて言ってやろうか」

 

「雛花ちゃん、流石に程々にした方がいいと思うわ」

 

「むぅ、梅雨ちゃんに言われると私も少し反省。じゃあ普通に……」

 

 私の測定を見ていた梅雨ちゃんの声が遠くから聞こえ少しだけ頭を冷やす。そうだ、まだ試験中だし、皆私を見ているのだ。……というか、芦戸さん、私見て笑ってない? うん、ちょっとテンションが上ってきたからと言って羽目をはずしすぎては、引かれてしまう。もう手遅れかもしれない? 気のせい気のせい。

 さあ、そんなことより深呼吸深呼吸。……集中しないと今度のは失敗するかもしれないのだ。

 相澤先生に投げ渡された二回目の測定用ボールを受取、私はもう一度サークルの中に入る。

 さて本題だ。このままさっきと同じ様に普通に投げては先程と対して記録は変わらないだろう。そもそも私は足の筋肉は鍛えているけど腕はそんなに鍛えていない。それ故に全身を強化した上で投げたボール投げも記録は思ったほど伸びなかったのだ。ならどうするか? 梅雨ちゃんは舌を使ってボールを投げていた。つまり、別に必ずしも『手』を使わなくてもいいということだ。

 私は今度は足にだけ生命力を集中させる。立ち幅跳びのときと同じようにじっくり時間をかけて生命力を一点に集中させ力を極限まで高める。そして右手に持っていたボールをサークル内の私の目の前に大きく弧を描くように投げ

 

「いっけぇぇ!!」

 

 今の限界まで強化した足で大地を蹴り、そのままの勢いでソフトボールを蹴り上げる。

 インパクトと同時に、ソフトボールはボッ! っと大きな衝撃波と音を響かせ、遥か彼方へと飛んでいく。

 

「痛った!?…あはは! ちょっとやりすぎたかな~」

 

 ボールを蹴り上げた私はそのまま仰向けで倒れ込み、痛みを抑えるために出ている脳内物質のせいで精神だけハイになったまま痛みを誤魔化すように笑ってしまう。笑いながらも必死に流れそうになる涙を止めているのは褒めてほしい。

 流石にボッキリ右足の骨が何箇所か折れた上に、色々と筋肉が千切れてる気がするのだから、立っていられるはずがない。そりゃそうだ、足のインパクトの威力だけであれだけ飛ばすのだから強化し、ある程度補強もしているとは言え、生身の足が耐えられるわけもない。ジャージで隠れて見えないだろうけど、多分足がとんでもないことになってるんだろうな~。……ああ、見たくない。早く治そう。

 

「お前は、個性を制御出来ると思っていたんだがな」

 

 そんな倒れている私に、なんだか少し怒った様子の相澤先生が此方を見ている。

 なんだろう、私の経験からこうやって淡々と喋る時は大体の場合かなり怒っている。私、そんなに怒られるようなことをしただろうか?

 深く考えるほどの余裕もない。少しだけハイになった頭がボーとするし……ああ、チョコレートが食べたい、あとレバー。

 

「あ~……えっと、ごめんなさい。やっぱり蹴ったらまずかったです? でも、何しても良いって言ったの先生ですし。私は悪くないと思うのです!」

 

「違う、怪我のことだ。人を救うヒーローが自分の個性で行動不能になってどうする。此のテストは自分の今の限界を測るものだ。……個性把握テストと言っただろう? 自分自身が制御出来ない、行動不能になるような玉砕覚悟の記録が参考になると思うか?」

 

 たしかに今の私は傍から見れば行動不能なのかもしれない。まあ、普通ならこれだけ足をポッキリ折ったら動けない。雄英にはリカバリーガールがいるとは言え、全力を出す度に体を壊していてはヒーローになる前に体はボロボロになってしまうだろう。

 

「あー……でも、えっと私の怪我ならほら、個性でなんとか……よっと、痛っ、イタタタ!? まだ繋がりきってない!?」

 

 先程から全力で治癒していた足は、立ち上がろうとすると激しく痛むが感覚は戻ってきて、ふらつくがなんとか立つことが出来た。其の様子にさすがの先生も驚いたのか、少し何かを考えるような仕草をし私を見つめる。……ん? 治癒が止まった!? 痛い!? 何でいきなりって、先生か!

 

「……どういった個性かは知らんが、個性届はちゃんと書いておけ。九生、お前の学校に提出した個性届けが身体能力の強化になっているぞ?」

 

 どうやら、先程の痛みはまた先生の手で個性を止められたのだろう。ああ、そう言えば私の個性届ってそういうことになってるんだっけ。それで試したのかな? ……今のことは根に持ちますからね相澤先生。

 それはそれとして、戸籍と同じで誰の子かもわかっていない私の個性届けは、保護されたときに自治体で作られたものだ。そもそも私の『吸精』は自発的に抑えていないと勝手に辺りから生命力を奪ってしまう少し困った個性なのだ。それ故に、あの人から普段は全力で抑えろと言われ雄英を目指すと決めるまではほとんど封印してきた。普段は自分の中の生命エネルギーを用途に合わせて効率的に使う個性だと周りには伝えていたのだ。それ故に役所もそんな風に個性届を作ったのだろう。保護された当初の私なんてかなり荒れてたし、直接聞かれた記憶はそういえばなかったような気がする。中1の時も先生に腫れ物扱いされてたし、一斉診断は何も変更せずそのまま出したのだろう。あれ、それって結構まずくない? 個性届って変更できるのかな? まあ、これ以上怒られるのは嫌なので、その辺りは今は誤魔化しておこう。

 

「ほら、治癒力も身体能力の1つですよ。私の場合は、強化できる範囲が細分化出来るのです」

 

「……どうせ後で分かることか。ほら、さっさとサークルから出ろ。後が支えている」

 

 ◀743.3m▶と表示された測定器を私に見せながら、相澤先生が50m走のときと同じように、早よと手を向こうに行けと払う。それにしても、多分先生を誤魔化しきれてない感じだ。打ち消す謎の個性の関係で、相手の個性を見極めるのが得意なんだろう。さすがプロと言うべきか。

 

「大丈夫? なんかすごい音してたし、先生に何か言われてたけど」

 

「ん、先生に少し注意されたけど大丈夫大丈夫! ちょっと反動で足はまだ痛いけど、どう? 私かなり自信あるんだけど今回の種目!」

 

「すごかったわ。でも、大丈夫と言う割に、雛花ちゃん、ジャージの裾血で染まってるわよ?」

 

「っうぇ!?」

 

 サークルから出て、駆け寄ってきた梅雨ちゃんと芦戸さんに指摘され、そっと見ないようにしていた足の方に視線を向ければ、濃い色のジャージでわかりにくくはなっているが、赤い血が染み付いている。やっぱり、急激な強化とインパクトの衝撃は想像した以上に体を痛めつけていたらしい。傷をすぐ治癒したから滴るまではいっては居ないが、此のまま放置していては染みになってしまう。

 

「せ、先生! 相澤先生! ちょっとジャージを少し洗ってきてもいいですか?」

 

「行くならさっさと行ってこい。……水道なら校舎側が一番近い」

 

「了解です。じゃあ、ちょっと行ってくるねー。なんかすごい記録出たら後で教えてよ二人共」

 

 行ってらっしゃいと小さく手を降ってくれる二人にそれだけ言って、私は急ぎ後者の方へと走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……までは良かったのだけど。

 

「………」

 

 今、私の目の前には一人の不審者がいる。私がジャージを洗い終わりグラウンドに戻ろうとした時に見つけた奴は、怪しい目つきでクラスメイトの様子を覗っていたのだから間違いなく不審者だ。身体は2mを軽く超え、体型も筋骨隆々、まさに筋肉モリモリマッチョマンの不審者だ。

 ……ああ、ダメだ。どうしてこんな心の準備をしていない時に出会ってしまうのだろう。頭でどれだけ誤魔化そうとも、眼の前にいるアイツは私が憎むあの相手は、私に気づいたようで視線を向ければ気まずそうに苦笑を浮かべる。……よかった、気づかなければ私も何をしていたかわからない。

 

「……何でこんな所にいるんですか? オールマイト」

 

「や、やぁ。九生君、久しぶりだね」

 

 自分自身でも不思議になるほど冷静に言葉が出てくる。あれだけテストでハイになっていた心が氷のように冷めていく。わかってる。わかってるんだ。此処で衝動に任せて何か問題を起こせばそれだけでヒーローになる道が閉ざされるだろう。

 

「はい、そうですね。それで、何でこんな所にいるんですか? コソコソと覗き見ですか? 確か教師もされるそうですけど、こんなところで覗きをしているぐらいなら、街に出てパトロールでもして、平和を少しでも守るべきじゃないんですか? あなたは皆のあこがれの№1ヒーローなんですから」

 

「ああ、いやA組が入学式に来なかったから、どうしたのかなと気になってね……。それにしても、少し辛辣じゃないかな? 九生君」

 

 辛辣なのはあなたに対してだけです。っと心のなかで呟く。多分オールマイトも察しているのだろう。

 それにしても、やっぱり入学式やってるんじゃないか。私達も出なくちゃいけなかったんじゃないんですか? 相澤先生。

 

「なら、隠れる必要なんて無いじゃないですか。きっと『皆は』貴方を見れば喜ぶんじゃないですか?」

 

「ほら、私が行っては緊張してしまう子がいるかもしれないだろう?」

 

「そんなことで緊張してたらヒーローになれないと思いますけどね。……まあ、どうでもいいですけど」

 

 私としても一刻も早くオールマイトのそばから離れたい。けど私が此処を離れたところで、多分ずっと此方を覗っているのだろう。それはそれで嫌だ。少なくとも、彼が此処にいる理由がわからなければ。

 誤魔化すようにあたふた慌てるオールマイトが何かを隠しているのは明白だ。少なくとも、彼は私以外の誰かが目的で此処にいるのだろう。私が目的なら私が離れた時に接触してくるだろうし。生徒を見るのに夢中で私に気づくのも遅れていた。なら、一体何が目的で? 

 無言でじっとオールマイトを軽く睨む。何とも言えない雰囲気に先に根負けしたのはオールマイトの方だった。

 

「ああ、そう言えば! 九生君はテスト大丈夫なのかい? 聞いた話だと、最下位は除籍処分だとか」

 

「……あなたに心配されなくても大丈夫です。けど、其の口ぶりだと本当に誰か除籍処分になるんですね」

 

「ああ、まあ……」

 

 複雑な表情を浮かべるオールマイト。その表情はいつもより濃くて嫌いだ。いや好きな顔なんて無いんだけど。

 でも言い淀んでいる辺り、相澤先生は本当にそういうことをやってきた先生なのだろう。

 

「……女子なら透明の個性の子と耳タブの子。男子なら、マリモ頭の子とチャラそうな子、あとはモサモサ髪の男の子。今のところ目立った記録を出してないですから危ないと思いますよ。教師なら、前に出て励ましてきたらどうですか? まあ、モサモサ髪の男の子は強化型の個性持ちなので、本気出してないだけでしょうけど」

 

 本当に何故彼の記録が伸びないのかが私にはわからない。最初の50m走は私と同じで個性を先生に止められているだけかと思ったが、握力も立ち幅跳びも運動が出来る普通の生徒と変わらない程度の記録しか出していないのだ。最初は彼が私の此のテストでの最大のライバルだと思っていたのに、拍子抜けと言えば拍子抜けだ。これで彼が本気を出していないだけだったら少し頭にくる。皆は自分の出せる全力を出し切ってテストに挑んでいるのに、少しでも其の力を使えばかなり記録は伸びるだろう彼がそうしないのは私達を舐めていると言っているようなものなのだ。

 でも仮にそうじゃないなら何で出さないのか? 目立ちたくないから? もしくは使用に制限があると言うのが現実的か。私の場合は生命力を必要とするように、彼の場合も力を振るうのに条件が必要とか。仮にそうだとしたら納得できる部分もある。個性も眼の前にいるオールマイトに近いぐらい力が出せるものだ。オールマイトはまず間違いなく体を鍛え、個性を鍛えているからこそのあの力だ。それをノーリスクで出せるなんて普通ではありえないだろうから。

 それでも私が試験場で見た彼の個性は目の前のオールマイトに近いものなのは事実だ。彼がもし肉体があの力に耐えれるまで鍛えれば、まさしく後継者として新たなオールマイトになれるかもしれない。

 ……ん? そう言えば私を河川敷で鍛えてくれた西屋さんが、オールマイトと一緒に浜辺で清掃活動をしていた私と同じくらいの少年がいると聞いていた気がする。それが仮に彼だとしたら色々なことに辻褄が合う。

 

「……気になって覗き見してたのって、其の男の子ですか?」

 

「あ、いや私はただ、本当に君たちの様子が気になっただけで」

 

 試しにカマをかけてみたら思いの外反応した。単純に気が緩んでいる時は表情に出やすいのだろうけど、否定しない辺り少なくともオールマイトは彼のことを知っているのだろう。

 つまりオールマイトは自分の後継者を育てるために雄英の教師になったのだ。……それも、既に自分が決めた後継者を世間の目を気にすること無くマンツーマンで育てるために。

 

 何それ? 私たちはついでということ?

 

 正直私はどうでもいい。彼には元々学びたくないと思っていたから。けど、オールマイトに憧れているだろう他の生徒はそれを知ったらどう思うだろうか?

 ……いや、これはあくまで私の憶測だ。私の悪意が混じっているのは私自身も認める。だって、大嫌いなものは大嫌いなのだ。

 そんな思いで目の前のオールマイトをそっと睨んでしまう。

 

「一人の生徒に肩入れするのって先生としてどうなんですか?」

 

 そうだ、長々しくこんな奴と話しているからこんなことばかり考えてしまうのだ。早く皆の所に戻ろう。少なくとも、彼の目的の人物の大体の目星もついたし。

 私の言葉に露骨にドキッと驚く顔をするオールマイトの言葉を待たず、嫌だけど一度ペコリと頭を下げ会釈し

 

「では、私はテストに戻ります。……覗き見は程々にしてくださいね、№1ヒーロー」

 

「ああ、九生君も頑張って。あ、出来れば私がここで見てることは内密に……」

 

 それだけ言うと、オールマイトの最後の言葉に私は何の返事もせず、急ぎ足でグラウンドのクラスメイトの元へ戻っていった

 

 

 

 




 現状主人公の全力で蹴ったところで、緑谷くんのデコピンより全然威力はありません。それでも飛距離が勝っているのは、緑谷くんがボールを最後に押した力だけで飛ばしたからです。
 あと、あれだけの威力の蹴りだともう少し飛ぶんじゃないかなとも思いましたが、ボールとかそもそも蹴り慣れてないので、うまく蹴れてなかったということで。
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