知っているけど、わかりたくない。
「妖怪は絶対的“悪”…それってホンマなんやろか…」
自身の兄の襲撃により、怪我を負ったゆらは、先ほどまで陰陽師であるにもかかわらず、妖怪により怪我の手当てをされていた。
現在はその妖怪屋敷から自分の家への道中である。
今まで、兄にも、本家である花開院でも、言われ続けてきた言葉“妖怪は絶対な悪”
自身もその言葉に賛同し、妖怪退治の修行のためここ東京にやってきた。
だが先ほどの状況はなんだ?退治すべき筈の妖怪に救われ、あまつさえ治療もされている。
そのようなことをされるまで、妖怪と親しくしていれば兄に折檻されるのも当然だ。
…少しやりすぎであるように感じるが…
疑ってはいたが気付かなかった…言い訳のようなことを思っても、
近くにいる妖怪に気がつかない、これだけであのドSの兄は同じことをするだろう。
だからこそゆらは自分の力の無さを恨む…しかしそこに矛盾が生じる。
それが現在進行形でゆらを悩ましている事柄の正体。
力の無さを恨むということは、もし自分に力があればということ。
だが本当に自分に力があったらどうなるのだろうか?
花開院の理念の元、今現在自分を助けてくれた妖怪。
奴良リクオの事を何も知らないままに、滅してしまうかもしれない。
屋敷にいた妖怪の数から厳しいことは分かるが、少なくともいい方向には転じないだろう。
ここまで来て、うつむき歩きつつ、口から零れ出た言葉が冒頭の一文である。
都会を感じさせない、街灯だけがたよりの暗い闇、その中で夏の風を一身に浴びつつゆらは歩く。
ずぶぬれの体とボロボロの服、そのどちらか一方の条件でさえ都会では目立つであろうが幸い、あたりに人はいない。
いたらどうなると言うことでもないのだが、不審な目を向けられることは必至だろう。
「あ~もう何で私が、こんな事で悩まなあかんのや…」
突如足を止め頭を抱えて、呻く。
格好だけでもかなり怪しげだったのだが、さらに奇行が加わり不審度が俄然跳ね上がる。
「う~~~私をこんだけ悩ますなんて…奴良リクオ…これも悪行やで…」
ゆらは頭を抱えたまま、薄笑いを浮かべて言い放つ。
本人が聞いたら突っ込みどころ満載な台詞だが生憎ここに本人はいないので返事はこない。
元々返事が欲しくて言った言葉ではなく、単に“悪行”という言葉でこの悩みを余所へ追いやろうとしたのだ。
実際にそれは成功し、頭を抱えるのを止め再び歩き出そうとした……が
気が付いた…
“悪行”…その言葉でこの疑問を遠ざけようとしたのだが、
逆にその言葉がキーワードとなり、ゆらの脳内に答えを明確に映し出す。
自分は陰陽師らしく“滅する”や“悪行”、“絶対的悪”など色々思ってきたが、実のところ全く逆だった…。
最初の頃は心からそう思っていたかもしれない、だけど今は…
本当に滅そうなど思っていない。
本当にそれが悪行だなど思っていない。
本当に妖怪が絶対な悪なだと思っていない。
だからこそあの時自分の兄の攻撃からリクオを守ったのだ。
仮にリクオが妖怪だと自白したとしても、自分は恐らくリクオを庇うだろう…
この前命を救われたから?多分それもあると思う。
だけどそれだけじゃなくて…もっとこう…私は…
「ちゃうちゃう!…はぁはぁ…何考えとるんや私は…」
ゆらは頭をぶんぶん振り、脳内から今の考えをどこか彼方へ飛ばそうとする。
だかそう簡単に思いと考えが吹き飛ぶはずも無く、ゆらの陰陽師のプライドを締め付ける。
「うう……京都にきたらついでに…“滅し”たるわ!」
そう言いゆらは走りだす。
何も考えなくてすむように…
だが分かっている。
考えなくても…“自分に”リクオは“滅せ”ない。
心情で…恐らく実力でも…
薄々知っていた…でも理解してなかった。
理解してはいけなかった。
そして…理解したくなかった。
━完━
ここまで読んでくださった方
ありがとうございます^^
お分かりの通り今回、ぬら孫小説描くのは初です。
つまり処女作ですね、ちなみに短編小説を書くのもはじめてですw
初めてづくしの今作品。
意外にもゆら→リクオでした。理由は簡単で自分が好きだから…かな?
疑問形ですが多分そうです。もう一つはの理由は少なかったから…でしょうか
ぬら孫といったらリクオ×つららやリクオ×カナが主流ですからね。
こういうのもいいかな~と思いました。
自分はこういう系の小説はズバッと行くのはあまり好きではないんです。
だから“のらりくらり”と書いていたら文書も“のらりくらり”になってしまいました。
ついでに・・・ゆらのような方言の場合私よりウチのほうがしっくりくるように感じるのは自分だけでしょうか?^^;
意味がわかりにくかったり、色々あるとは思いますが初めてと言うことで
大目に見てください><!
それでは次回も楽しみにしていてください。
(^^)ノシ