自分にとって本当に重要で大切なもの
それは思うのではなく感じること…。
涼しい…
屋敷の中、自室の椅子に寄り掛かり、リクオは夜風を堪能している。
昨日終業式があり、今日から本格的な夏休み、
元来真面目な性格なので、宿題をきちんと計画し今まさにやろうとしていた。
だが実際、リクオの数学と書かれたノートと教科書は、机の上に開かれてはいるが
ノートは白紙のまんまやった形跡がない。
だからと言って問題が分からなくて放置しているのではない。
リクオは努力家で意外に頭が良いので、このような問題解こうと思えば解けるはずだ。
仮に解けない問題があっても、この屋敷には多くの妖怪がおり、出来るかどうかは別として聞く相手に困ることはない。
では何故、リクオは自分の計画した勉強をせず椅子に寄り掛かっているのか?
別段妖怪の血が覚醒し、ヤクザっぽく勉強なんてクソくらぇという状況になっているわけではない。
そもそも、覚醒した自分がキチンと椅子に座るのかどうかが疑問だ。
正解は一人の女の子…正確には陰陽師である花開院ゆらの事が気になっているからである。
中学生故の甘酸っぱい恋煩いかというと、そうではなく単にあの後から、学校にあまり来なくなったからだ。
と、自分では解釈している
あの後…四国からウチのシマを荒らしに来た軟弱狸らの襲来事件。
あの時ゆらはその大将である玉章に、自身の式神を屠られ、自身もまた殺されそうになっていた。
間一髪助けられたのだが、その事件以外に思い当たる節がないのでそれが原因と考えていいだろう。
だとしたら持ち前の人の良さ…ゆらのことが気になるのは仕方がないといえる。
「……どうしてるんだろう…花開院さん…」
天井に向かって呟いても、妖怪屋敷といえどさすがに返事は帰ってこない。
リクオはそのまま目を瞑り、人間の友達である“清十字怪奇探偵団”のメンバーとの夏休み前の会話に思いを馳せる…
・・・
・・
・
「花開院さん? たしかにここ最近みかけないよね。ボクも気になって先生に聞いてみたんだけど…
先生も知らないみたいだ。連絡が取れないらしくてね…まぁ夏休みに入ったらボクら清十字怪奇探偵団みんなで
探しに行こう。彼女は我らの重要な特別軍事顧問だからね」
清継君はそう言って、さわやかに去って行った…
「ゆらちゃん?なんで私に聞くの?…はぁ?女の子同士だったら分かるかもって……
う~ん…サボりじゃない?…よくわからないけど陰陽師の修行が無くなったからちょっとラッキーとは思ってるけどね。
それよりも何でそんなことを…?もしかしてリクオ~~~……(ニヤニヤ)」
巻さんは後半ずっとニヤニヤしながらしゃべるだけしゃべって去って行った…
「ゆらちゃん?そうだよね~私も少し気にしてた所、早く探しだして修行の続きしてもらわないと…あっでもまたピンチになったら、あのお坊さん…助けてくれないかなぁ~」
鳥居さんは途中で自分の世界に入ってまったので、こちらから去った…
「ゆらちゃん?…確かに最近学校来てないね。どうしたんだろう…早めに実家に帰ったとか…でもそれだったら普通連絡してくれるよね? うーん…でも何で?リクオ君…ゆらちゃんに用事でも…あるの?」
場の雰囲気が完全に悪くなる前に素早くカナちゃんから逃げた…
なんだったんだろう…
「花開院…あの陰陽師娘ですか、何故若がそのような事を?…心配!? そんなことする必要ありません!!それに私は知りませんし、知りたくもありません!!」
文字通りプリプリと怒りながら行ってしまった。
わかってたような気がするけど、他に聞けるような人いかなったから…
あ、もう一人忘れてた
「花開院さん?知らないな…陰陽師のことよくわからないけど、一人で修行でもしてんじゃねぇの?」
島君は普通に言って普通に去って行った…
・・・・
・・・
・・
・
こう思い返してみると一番地味で普通な島君が一番それっぽいことを言ってる気がする。
「はぁ…明日でも探しに行こうかな…。」
リクオは呟いた。
ノートは白紙、未だに勉強は始まってすらいない。
筆箱から鉛筆を出すことさえせず、ただ椅子の上に居る。
どうもおかしい。
花開院さんは確かに友達だ。
だからと言ってこんな勉強も疎かになるぐらい心配になるのだろうか?友達ってそういうものなのか?
わからない…
「リクオ~。清継君から電話よ~~」
リクオの母、若菜の声が室内に響く。
「わかった~。今行く~」
リクオはその声に返事をし、無駄に座っていた椅子から身を下ろす。
そしてそのまま電話のある廊下へと歩き出した。
『もしもし、リクオです』
『ああ、奴良君かい?ちょっと伝えい事があって電話させてもらったよ』
『うん。何?』
『実は明日みんなで花開院さんを探そうと思ってるんだ。奴良君は開花開院さんのこと気にしてただろ?、それに我らが特別軍事顧問に聞きたいこともあるしね。時間はみんなの予定を考慮して15時ってことになってるけど奴良君は平気かい?』
『うん。大丈夫』
『それはよかった。じゃあ明日15時に学校に集合だ。遅刻するんじゃないぞ~』
リクオは耳に付けていた受話器を電話に戻し、自室へと歩く。
ゆらをみんなで探せる。
このこと自体はリクオにとっては良いことであるはずだ。
だが実際、リクオは意外にも喜んではいない。先ほど明日自分でゆらを探すと決めたはずなのに、なぜか釈然としない。
みんながいれば楽しく、さらに人でも増えるので捜索範囲もゆらを見つける確率も格段にあがる。
理論は分かる。
だがその理論に自分の心が納得しない。
リクオはこの心境では勉強する気になれないと判断し、早々に寝る準備を始める。
寝れないと分かっていても、それ以外リクオにすべきことは無かった。
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「おーい、奴良君こっちだこっち」
時刻午後3時5分前。リクオはつららと共に清継との約束通り学校に来ていた。
どうやらリクオ達が最後らしい。
「それじゃあ、あっちをみんなで探してみよう!」
清継は学校の北側を指さし、元気よく叫んだ。
みんなその意見に賛同し、ぞろぞろと清継についていく。
その最後尾をリクオは、あくびをかみ殺し気だるそうについていく。
「若、どうしたんですか?」
つららは何時もと違うリクオを気遣い声をかける。
普段リクオはこのような慈善作業率先してハキハキテキパキやるのだが何故か今日は元気がない。
「ふぁあ…ちょっと寝不足で…」
リクオはあくびをしながら、もっともらしく答えた。
その答えは半分正解であるが半分は間違っている。
リクオは元々夜になると妖怪の血が覚醒し、何故か外へふらふらと出て行くのだ。
そのせいで現在は慢性的な寝不足、さらに昨日は覚醒することはなかったが、色々と(主にゆらのこと)を考えていてあまり眠れなかった。
もう半分は自分でもよくわからない。
なぜか何時ものようなやる気が出ないのだ。
そうとしか言えない。
つららはリクオの慢性的な寝不足のことを知っていたので、心配そうな眼をしてくるものの何も言ってこなかった。
そのようにして清継の指示の元、東だ~南、西~上~下~など探したが一向にみつからず時間だけが過ぎていく。
そして日がそろそろ落ちる頃、つまり夕方
「むう…こうなったら、手分けして探すしかない!僕はこっちいくから、島君はあっち、奴良君はあっち、女の子たちはそっちをたのむよ」
何故女の子同士を固めるのか理由は分からないが、清継はみんなに指示し、自分の示した方向へ走っていく。
他の人たちもそれぞれ歩いて別れる。
振り返った時つららと目があったが、すぐに目をそらし、自分の示された方角へと歩く。
独りになればやる気になるかと淡い期待を持ったが、現実は望みをかなえてくれないようだ。
やる気は未だに出ないが、眠気は何故か覚めていく、意識することなく足に身を任せただただ歩き続ける。
そして気づいたら浮世絵町の外れにまで来ていた。
今まであった住宅や喧騒は少なくなり、代わりに緑が生い茂っている。
リクオは足を止め周りを見渡す。見えるのは木や雑草、そして廃墟…
その廃墟にふと目が止まる。
そして何故か“花開院さんはここにいる”と感じた。
今まで見てきた建物の様子や、時間、探した場所、立地条件など考慮して導き出した答えではなく。
まさしく直感。
ただそう感じた。
外れる可能性など無い。
絶対的な確信。
理由も根拠もない、ただ全身の細胞が、求めているものはここにある、と脳に訴えてくる
廃墟に近づき、砕けている壁から中をのぞく。
―――見つけた――――
破れた胴着を着て、空を見上げている。
驚きはしない
達成感もない
分かっていたから…
「花開院さん?」
分かっていることを聞く意味のない問いかけ
でも…普通こう言うよね?
「“やっぱり”こっちにいたのか……」
━完━
ここまで読んでくださった方
ありがとうございます^^
え~やっと終わりましたw
何がというと自白小説?ほぼ出てくる人が一人というものっすげぇ自分にとって書きづらい小説です。
でもこれをやっておかないと、どういう関係なのかどう思ってるか短編だと分からないかな~と思ってむりやり書きました。
本誌ではゆらちゃんとあまりこう言う関係なりませんからね~…
ちなみに作者がゆらが好きな理由はその部分ですね
つららだと本誌でやってくれますし、カナは確かにかわいいですけど…それだけなんですよね…自分にとっては…
ゆえに最終選択ゆらになりました。
最初の絵では垂れ目過ぎてちょっとな~と思っていましたが話が進むにつれてどんどん目が変わっていったのでバッチグーですw
そして今回もまた一段と意味分からない文章
色々とお許しを……
次回からはちゃんと二人を絡ませた話を書くつもりです。それまで少々お待ちを…