ちょっとした偶然
今回の小説は本誌ではありえない時系列で進むのでご注意ください
「まさか奴良くんが妖怪やったなんてな~…」
「はははは……まぁ…夜わね…」
夕焼けに染まった帰り道、リクオとゆらは珍しく二人だけで下校している。
いつもどおり清十字怪奇探偵団の部活を終えた後、メンバー一人を除いて全員で帰路に付いた。
その一人とは、家長カナで。
今日は体調が悪いらしく、学校自体を休んでいる。
そのカナを除いた全員で途中まで一緒に帰ってきたものの、家が違うのでそれぞれ別れることになる。
まずは清継と島が…次に鳥居と巻が…
そしてつららが、ご飯の用意があるので先に帰りますと…
「陰陽師娘!若に何かしたら、ただじゃおきませんよ!」
という台詞を残して、家の方へ走って行った。
結果残ったのが大妖怪の孫と陰陽師の娘だったというわけであり…当然そこに心温まる楽しい会話など無く、静寂が二人を包み込んでいく。
そうして二人になってしばらく歩いた後、冒頭のゆらの一言が沈黙を破った。
口の端を釣り上げ、意地悪い光を宿した目がリクオを横目で睨み、
対するリクオは右手で頬をかき、視線を斜め上にずらして、ゆらの視線から逃れる。
「奴良くん…夜の奴良くんは、なんか悪業しとらんやろうな?」
リクオがこっちを向いてくれそうにないので、ゆらは歩く速度を上げ、リクオの前に回り込み、リクオを真正面から見詰め念を押すように言う。
「え?……う…うん…たぶん…」
回り込まれたことで足を止めざるを得なかったリクオは、いきなりの質問に動揺を隠しきれない。
元より隠す必要もないのかもしれないが…
夜の自分とは言っても、自分は自分なので当然記憶はある。
だがゆらの言う悪業が、何なのかわかりかねるため回答に自信が無くなり…
結果ゆらの疑いをさらに深めることになる。
「嘘っぽいな~……調べさせてもらうで…」
「え…そんな。でもどうやって?」
リクオにとっては意味が全然わからない。ただ分かることは…目の前のゆらは本気ということぐらいか…
「じっとしとってね奴良くん」
そう言ってゆらは右手をリクオの首の横に、左手を顔に…ちょうど親指と人差し指の間で目を挟むように置き、その目をのぞきこむ。
「ちょっちょっと花開院さん…」
目を覗き込む…その動作をするためには顔を近づけなければいけない。
つまり、やっている本人は分からないが、被害者であり被験者であるリクオにとってはかなり混乱する状況。
リクオの視界に映るのは拡大されたゆらの顔、お互いの息が肌に当たる至近距離。
幸い、周りに人はいない。
(か、顔が…近い…)
「ホンマに奴良くんは悪業しとらん?」
「う…うん。してない…」
リクオは状況が状況なだけに質問の意味など全然頭に入っていない。
今答えれたのは、奇跡とも言うべき反射だ。
この嘘判断方法は相手の瞳孔の開き具合や瞳の動き、脈拍などで相手の嘘を見抜く。
だが昼のリクオがゆらの視線を近距離で受け止めれるわけがない。
加えて気になる子の顔が目の前にあれば…脈拍など当にMAXなのだ。
故に…
「嘘…やね」
ゆらにそう言われるのも当然。
ゆらから解放されたリクオは赤くなった自分の顔を隠すために、顔を俯き気味に背けつつ反論。
「う、嘘じゃないよ」
自分でもわかるほど、心臓が脈打つ、顔が熱い…ボクはどうしたんだ…花開院さんの顔をあんな近い距離で見ただけなのにっ!!
突如視界から外したはずのゆらの顔が目の前に広がる。
「奴良くん、反論するときはちゃんと相手の顔見て言わなあかんよ」
今度はゆらに下からのぞきこまれていた。
ゆらの口元が笑っていることから、からかわれていることが容易に理解できる。
だが自分ではどうにもできない。
この心臓の音を抑えることも、頬の赤みを消すことも、ゆらのことをまともに見れない自分の情けなさも…
リクオの頭の中に様々な思いがわき起こり、本格的に俯く。
「まぁええわ。今回はここまでにしたる」
ゆらのぞきこむのをやめ、リクオの正面に腕を組み言い放つ。
そして組むのをほどき右手でリクオを指さし、宣言する
「次こそは、奴良くんの悪業あばいて滅したるわ!」
心なしか焦ってるよう気聞こえる。
リクオに宣言し終えたゆらは、もうほとんど日が暮れ暗くなってきている道を一目散に走り出した。
残されたリクオは、俯くのをやめ先ほどの出来事を反芻しながら一人道を歩く。
一回目はどうしても血流が速くなったり顔がにやけたりしてしまったが2回目以降はどうにか抑えることができた。
そして冷静に考え、出た結論は……
意味不明――である。
行動理由や悪行の意味などあらゆる方面から思考してみたが最終的に帰着するのは全部そこなのだ。
リクオはこれ以上は無駄と判断し、さっきの出来事を映像として脳内に保存。
そして足取り軽く、鼻唄を歌いながら家の方へ歩いて行った。
一方ゆらの方は――
「はぁ…はぁ…あんな緊張したの何年ぶりやろか…」
ゆらは自室のベットに寄り掛かり、息を整えている。
顔にはあまり出さなかったが、実はあの時かなり勇気を振り絞っていた。
そもそもあの場面で二人きりになる予定はなかった、学校の報告でカナが休みと聞いたので今日はつららとの3人だと思っていたからだ。
だが偶然にもつららが夕飯支度のため早期離脱した結果
二人きりになってしまった。
最初の沈黙は敵同士で気まずいからではない、ゆらが色々と考えて居たためにリクオが話しかけれなかったのだ。
ゆらの考えでは、昼のリクオはまず間違いなくそのような会話はしてこないだからこそこのチャンスを十分生かすために数多の事を考え
出た答えが京都にいたころにされた、うそ発見方法
触れれるというのもあるが、自分が主導権を握れるからという理由でそれをチョイスした
だが先の台詞を聞く限り、予想以上に辛かったようだ。
主導権を握るということは自分がリクオを誘導しなければならない、だからこそ自分が恥ずかしがって躊躇したり、頭が真っ白になってしまわないように常に強気で居なければいけない。
そうしてゆらの頑張りの結果、主導権とリクオの誘導に成功、そして即興嘘発見計画もいいところまでいった。
だが唯一誤算があった。
それが人間のリクオのタイムリミット。
何気なく最初に聞いていたのだが、リクオは夜になると妖怪になる。
つまり日が落ちると妖怪になる、そうゆらは考えてしまった。
そのためにもっとリクオを観察?したかったが日没に気づき、リクオが嫌な気分になるのを承知で無理やり会話を切って走って逃げてきた。
妖怪になってしまったら、陰陽師としてそのようなこと許されない。
そして妖怪のリクオを見ているがゆえに、口では絶対に負ける事が分かっていた。
ある程度呼吸が落ち着いたゆらはベッドにあおむけに寝転ぶ。
見えるものは天井とライトだけ…
そのライトの光がまぶしくて、ゆらは自分の腕を目の上に置く。
今まで陰陽師であることを誇りに思っていた。
そしてこれからもずっとそう思っている。
だけど…今だけは自分が陰陽師であることが少しだけ…恨めしい…
そばに居れば女同士分かる。
幼馴染の家長カナも同じ妖怪の及川つらら(雪女)もおそらくリクオのことが好き。
それに比べて自分は…敵同士。
そして…
あいつらは小さいころから同じ学校と小さいころからずっと世話を…
自分は途中からの転校生
リクオに関する情報量が全く違う。
「ごめんな…奴良くん。
私は、こうするしかなかったんや…
それに…
――家長さんと及川さん…
ホンマに――
――ズルイわ」
ここまで読んでくださった方ありがとうございました^^
それといまさらですが…リクオとゆらムズッ!!
どっちもぜったい鈍感そうじゃないですか…鈍感と鈍感なんて…天然と天然ぐらい扱いづらいっすよ…。
だからこそちょっとゆらを強めに行ってみました。逆もよかったんですが…夜若がいるんでちょっと自粛してもらいました。
それと今回の話お分かりの通り時制がおかしいです。
詳しく言うと
あのリクオが妖怪とばれるシーンが夏休みが始まる前に起こったと考えて下れば分かると思います。
でわ今後もよろしくおねがいします^^