ありふれたぐうたらで世界最強?   作:makky

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急がば回れ、時としてそれが必須になるだろうから


9:上を目指して下に潜る

 状況を改めて整理しよう

 この大迷宮は階段状に上から下まで繋がっている

 そこで俺は上に続く階段なり何なりがあると踏んで捜索を行った

 

 結果は上へは行けないが下になら行けると言う、求めていたものと真逆の結果だった

 

「何?上がるためには降りろってこと?急がば回れ的なあれですか?」

 

 3日間探し続けてこれでは切れたくもなる

 しかし大迷宮に切れたってしょうがない

 

 錬成でどうにかなるかとも思ったが、途中まで上がるとある一定の階層から錬成ができなくなってしまった

 ネズミ返し的なトラップを見せつけられ、ますますイライラが募る

 

「仕方がない…本当は行きたくないけど、降りるか」

 

 捜索初日に見つけた下へと続く階段を、緑光石を入れたランタンを左手に提げて降りていく

 

 そこは暗闇だった

 暗闇に目が慣れることはなく、完全な闇が広がっていた

 ランタンの明かりが自分の体と周囲を照らす

 

 ――どう見ても夜戦で探照灯付けちゃった軍艦です本当にありがとうございます

 

 敵からフルぼっことか勘弁してほしい、そんな風に考えていると

 

 左側で何かが光った

 咄嗟に壁際に飛び退き、ランタンで照らす

 

 そこには体長約2メートルの灰色のトカゲがへばりついていた

 金色の目でこちらを睨み付け――

 

 左腕が石のようになり始めた

 

「んな?!」

 

 持っていたランタンまであっという間に石になり、光源がなくなってしまった

 腰につけていた小型の鞄から神鉱石から出た水の入った小瓶を一気に煽る

 

 すると肩まで石化していた腕があっという間にもとに戻った、この水本当にヤバイ

 

 同じ鞄から、スタングレネード擬きを取りだし点火する

 再びトカゲの目が輝いたことを確認すると、縮地を使ってその場から飛び退く

 

 すると今までいた場所がみるみる石になっていく、こいつは厄介な魔物だ

 

「これでも喰らえ‼」

 

 点火していたスタングレネードを投げ込み、右腕で顔を塞ぐ

 

 次の瞬間、暗闇だった辺りを目映い光が照らした

 

「クゥア!?」

 

 今まで浴びたことの無いような光を見たことで、完全に行動不能に陥っていた

 背中から試作銃を引き抜き、空力で足場を作り魔物の目の前まで接近する

 

「くたばれくそったれ」

 

 頭に銃口を突き付け、行動できないうちに頭を吹き飛ばした

 

 

 

 

 

 

 

 

 壁からずり落ちたトカゲの肉の一部を剥ぎ取り、そのまま階段を降りていく

 途中他の魔物の相手や目ぼしい鉱石を採掘していたら、鞄がパンパンになってしまった

 ああ次は…てちげーよ

 

 取り合えず持ち物整理が必要になったので、適当な場所に錬成で待避所をつくる

 ちょっとした空間をつくって、出入り口を塞いだら作業開始だ

 

 今回倒したのは先ほどのトカゲと、矢鱈めったら羽を飛ばしてくるふくろうと、六本足の猫である

 それを全部火にかける、纒雷で焼いてもいいんだがせっかく火種が作れるんだから火で焼きたい

 

 調味料なんて上等なものは無いので、そのままがぶりといただきます

 身体中に痛みが走り、それを超回復水(俺命名)で無効にする

 …なにネーミングセンスが悪いだって?

 うるせぇこれ以外だと『ポーション』とか言う残念なネーミングにしかならないんだよ

 

 食べきってごちそうさま、さておまちかねのステータス確認なんだが

 いちいちプレート全部だすのも面倒臭いので、増えた技能だけ説明しておこう

 

 まずは『夜目』、暗闇で目が見えやすくなる技能だ

 実際ほの暗かった室内が、はっきりと見えるようになっていた

 常時発動型技能のようだ

 

 次に『気配感知』、何かの気配を感じやすくなる技能だろう

 これは使わないとどんなものか分からないが、取り合えずオンにしておこう

 

 最後に『石化耐性』、トカゲの技能らしく石化に耐性が出るのだろう

 できれば試したくない技能ではあるが…

 

 今回は3つの技能を獲得しました、以上

 

 では次に武器の整備と弾薬の補充、そして作りかけの新兵器の完成を目指しましょうか

 

 武器整備は、ここに来るまで大活躍した試作銃1号を完全に分解して整備すること

 何百回と失敗したお陰でこいつの構造はほぼ把握しており、万に1つ分解行程をミスることはないだろう

 どこか部品が歪んでいないか、部品の欠如はないか、入念に調べながら元に組み立て直していく

 

 弾薬補充は、試作銃1号用の雷管付き銃弾と各種手榴弾の製作である

 この雷管がなかなかの曲者で、こいつが一番手間取った原因である

 燃焼石の分量を間違えると発射時に暴発を起こすことがあり、それ以外にも雷管の構造で四苦八苦したのは今となってはいい思い出である

 手榴弾は二種類つくる過程で多くのタウル鉱石が必要となるが、それを差し引いても十分すぎる威力である

 今後も主力として使っていくつもりなので、補充はしっかりと行う

 

 最後に新兵器なのだが、薬莢含めた銃火器作成に想像以上の労力を消費してしまっている

 錬成の熟練度は確かに上がるのだが、そんなに悠長なことをしていられない事情もある

 そこで燃焼石なしでも作れる武器を作成しようと、ちょくちょく作り続けここで一気に作り上げてしまおうと考えたわけだ

 

「とは言っても、相変わらず飛び道具なのな…」

 

 ピンっと張った弦を、弧を描いたタウル鉱石製の弓で固定した横向きの弓矢のようなそれを背中にかけて、準備完了

 

 さっそく探索再開である

 

――――――――――――

 

 せっせと下へと降り、探索を続けているとなにやら凄まじい空間に出た

 足元中粘着性の液体で充満し、歩きにくいったらありゃしない

 獲得した気配感知と、いつのまにか持っていた鉱物系探索を駆使し進んでいく

 

「…んー?」

 

 すると鉱物系探索に何かが反応する

 

=====================================

フラム鉱石

艶のある黒い鉱石。熱を加えると融解しタール状になる。融解温度は摂氏50度ほどで、タール状のときに摂氏100度で発火する。その熱は摂氏3000度に達する。燃焼時間はタール量による。

=====================================

 

「…ガソリンかなんか?」

 

 石がタール状になるとか、もう訳ワカメ

 しかも融解温度50度なのに、足元に溶けているそれは何が原因で融解しているんだ一体

 

「摂氏3000度とか火事なんてレベルじゃねーなこれ」

 

 悠長に言っているが、これで試作銃は使用不能になってしまった

 

「しょうがない、まさかこんなに早く使うことになるとはね」

 

 構えていた試作銃を背中に戻し、先ほど完成させたばかりの新兵器――弩を左手に装着する

 引き金は右で引かなければならないが、音をたてずに攻撃できるのは正直言ってありがたいことだ

 こんな空間でドンパチやってたら、何が現れるか分かったもんじゃない

 できる限り隠密行動をとりたかった、こいつはそれに必須なアイテムだ

 

「それと忘れないうちに…」

 

 下にへばりついているものではなく、壁に埋まっているフラム鉱石を採掘し鞄に収納する

 こいつを使えば、新しい手榴弾が作れる

 使えるものは使っていかないと命がいくつあっても足りないのだ

 

 採取を終えて更に下へ

 そうすると三叉路に出る

 

「それでは一番左側から…」

 

 下に落ちていた石で目印を書き、さあ行くぞと思い立ったその時

 

 ガチンッ‼

 

「ファッ?!」

 

 足元のタールから何かが飛び出した

 無数に並んだ歯、先のとがった口

 特徴的な背鰭、あれは…

 

「…なんだサメか」

 

 空を飛んだり悪霊になったりするサメを知っているだけに、タールに潜る程度で驚くわけが…

 

「ってサメだぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」

 

 驚くに決まってんだろうが‼なんで陸にサメがいるんだよ‼

 

「おいおいおいおい気配感知が働いてないぞまさか効かない敵かよ‼」

 

 動揺しつつなんとか思考を働かせる

 どうやら気配感知を無効にする敵のようで、出てくる瞬間まで感知ができなかった

 

「誰かSPC呼んでこい」

 

 サメは殴るもの、そう決まっているんだ

 左手の弩に指をかけ、今しがたタールに潜っていったサメを警戒する

 取り合えずこのままいるのはまずいので、空力で足場を作り上へと逃げる

 

 こちらに襲いかかってくる瞬間は、確かに感知ができる

 ほぼノータイムではあるが、感知できないのと比べればずっとましだろう

 

「来やがれクソザメ」

 

 スタングレネードを口にくわえながら弩で狙いを定める

 

 ザバッ‼

 

「‼ふぉこふぁ(そこだ)‼」

 

 パシュンっと弩からボルトが真後ろに射出される

 だいたいこういった方法で狩りをするやつは死角から攻撃すると相場が決まってるんだ

 そう、相場は決まっているんだ

 

「?!」

 

 だがボルトがサメの皮膚で弾かれるのは想定外だったよ

 

「ふぃくふょう(畜生)‼」

 

 こちらに飛び掛かってきたサメを空中で避けながらボルトを再装填

 くわえていたスタングレネードに点火して放り投げる

 

「いっけぇ‼」

 

 目を塞ぎながらスタングレネードを蹴り飛ばす

 目映い光で照らされるが、サメはそのままタールへと潜っていった

 

「ちっ、面倒臭いやつだな」

 

 今度は手榴弾をくわえてサメを待つ

 すると今度は真っ正面から出てきたが、自分からずれて飛んでくる

 

「ひいふぇいふぁか(効いていたか)‼」

 

 潜って回避したかと思ったが、どうやらしっかりと効いていたようだ

 すかさずボルトを射出する

 するとまぐれ当たりで右目に命中した

 

「ふぁっふぃー(ラッキー)‼」

 

 上に避けると、サメはタールに潜るがすぐに上がってくる

 どうやら傷付いた右目が想像以上に痛いようだ

 

「おおふひあふぇろ(大口開けろ)‼」

 

 痛みでもがいているところに点火した手榴弾を投げ込む

 入ったとほぼ同時に炸裂し、タールザメは爆発四散した

 魔物内部で爆発が収まったお陰か、周りのタールに引火することなく倒すことができた

 

「はぁ…はぁ…う、上の魔物がかわいく見えるぞ畜生…」

 

 明らかに上の魔物以上の戦闘能力を持っているやつらばかりだ

 こんな綱渡り何度もできる自信がない

 

「さっさと、降りねぇと…」

 

 バラバラになったサメの残骸を回収し、出口を求めて三叉路の左通路へと足を踏み入れた

 

――――――――――――

 

 サメとの死闘を繰り広げた階層から、現在五十階層下った地点にわたくしはおります

 いやーサメのとき、上の魔物がかわいく見えると言いましたね

 前言撤回、サメでさえかわいく見えるやつらしかいねぇぞここ

 

 毒性の痰を吐きかけてくる虹色ガエルに、麻痺性の鱗粉を撒き散らしてくる巨大蛾というsan値をガリガリ削ってくる魔物

 精神が音を立ててすり減っていくのに、超回復水では精神的回復はできないのだ

 万能じゃねーのかよ何とかしろ

 おまけに毒ガエルの毒食らって激しい苦痛に犯されるしで、もう精神的な限界が来かねない状態だった

 

 密林に覆われていた階層では巨大ムカデと樹木の魔物が待ち構えていた

 ムカデは節々毎に別れて襲いかかってきた

 1匹が30匹に別れたときは思わず卒倒しそうになったが、スタングレネードと手榴弾で足止めしつつ試作銃で地道に倒していった

 

 樹木の魔物は、まあ見たまんま樹木であった

 その代わり体力が少なくなると、葉の部分を揺らし赤い実を大量に投げつけてきた

 1つためしに食べてみると、これがかなりうまいのだ

 見た目リンゴなのに味は糖度の高いスイカのような味だった

 久しぶりの肉以外の食料に感動しつつ、食べられるだけ食べ保存分を確保すると樹木の魔物を駆逐した

 

 そんな風に減った精神を果物で回復しつつ、五十階層下ってきた

 

 そこには、なんとも不思議な空間が広がっていた

 順路の脇道の突き当たりに、荘厳な両開き扉が待ち構えていた

 扉の脇には2対の1つ目巨人――いわゆるサイクロプスが壁に埋め込まれてこちらを見ていた

 

「…おいおいラスボス戦、いやその前の中ボス戦かよ」

 

 どう見ても脇のサイクロプスが襲いかかってくるやつですわ

 鞄から新型を含めた三種類の手榴弾を、3つずつ紐に通して腰に装備する

 背中の試作銃1号改良型に、これまた改良型弾薬を装填する

 

「あと…こいつはどうすっかなぁ…」

 

 試作銃1号改良型よりも大きな銃口を持ち、持ち手とは別に大きく曲がった取っ手が付いたそれを使うかどうかを思案する

 

「念には念を、石橋を叩いて渡る事にしよう」

 

 専用弾を前から入れながら、最悪のシナリオに備えて準備を完了する

 

「さてと、この扉の向こうに何があるかなんだが…」

 

 順当に考えると、扉の向こうには厄介事が待ち構えているに違いない

 それが強力な魔物なのか、はたまたトラップなのかは分からないが、少なくとも入り口をここまで豪華にするだけの価値があるものなのは確かだろう

 それで、中に入る方法についてなのだが

 

「扉の真ん中に2つの窪み、ご丁寧に魔法陣付きとはねぇ」

 

 中に入りたければ門番を倒せ、ということらしい

 

「上等、だ‼」

 

 扉の取っ手に手をかけ、思いっきり押す

 すると扉が赤く放電し、俺を吹き飛ばす

 

「ったく、過激な防犯装置だことで…‼」

 

 腰のミニ鞄から超回復水の小瓶を取り出して飲み干す

 完全に回復したところで、遂に始まった

 

 扉のある部屋中に響く雄叫び

 それに続いて扉両脇の石像が動き出した

 暗緑色の肌をして、全長4メートルを越える大剣を持ち

 今だ壁に埋まっている下半身を強引に引き抜きながら

 2体のサイクロプスがこちらを睨んでいた

 

「――上等だ」

 

 試作銃を手放し、腰にあるスタングレネードを1つ取り出す

 

「脳天に風穴開けて、小洒落たオブジェにしてやる!!」

 

 ――どう聞いてもヤクザな台詞を吐きながら、戦闘開始だ

 

「まぁ、飾りたいとは思わないけどな」

 

 スタングレネードを投げ込み、左に走り出す

 閃光が部屋を満たし、こちらを見ていたサイクロプス2体は行動不能になる

 

「――特とご覧あれ」

 

 試作銃を構え直し、出来損ないスコープから覗いて

 1体に向けて発射した

 きれいな弾道を描き、一つ目を抉り脳を破壊して貫通せずに止まる

 

「head shot(流暢)」

 

 銃側面から飛び出しているそれを顎で押し込み、リロードを終える

 これが新型弾丸、6連弾倉(マガジン)である

 6発の弾丸を縦に繋げて、ボルトハンドル部分を大幅に改良した試作銃左側に装填するものである

 改良内容は左側に穴を作り、そこに弾倉を入れられるようにした

 ハンドルを引けば空薬莢が排出され、その後弾倉を押し込めれば再装填が出来るというものだ

 これもまた苦心に苦心を重ねて完成させたもので、左腕が不自由であるハンディをどうにかしようとした結果である

 

「苦心して作ったんだ、これくらい威力なきゃな」

 

 脳を破壊されたサイクロプスは絶命したことを理解できず、目から血を吹き出しながら倒れ込んだ

 

「この先に何があるのかは知らねぇがーー」

 

 腰から別の手榴弾を取り出して点火する

 

「――押し通らせてもらう!!」

 

 ひょいっともう1体のサイクロプス目掛けて投げ込む

 片割れが即死したことで、完全にフリーズしていたもう1体は投げ込まれた手榴弾で正気を取り戻す

 何が投げ込まれたかは理解できていないようで、その上を通過しようとして

 

 業火にその身を包んだ

 

「サイクロプスの丸焼きとか、誰得だよ本当…」

 

 軽口を叩きながら、火を纏ったまま突っ込んできたサイクロプスを避ける

 

「使用上の注意をよく読み、くそったれなモンスターにのみご試用くださいってか?」

 

 フラム鉱石を十分に入れ、爆発と同時に辺り一面火の海に変える対集団・対大型魔物用手榴弾『火炎手榴弾』である

 炎を消そうとして転がるサイクロプスだが、体にまとわり付いたタール状のフラム鉱石は中々取れず、ようやく火が収まる頃には全身黒焦げで瀕死のサイクロプスが出来上がっていた

 

「ほらほら早く逃げないと大変だぞ」

 

 よろよろと立ち上がろうとしたサイクロプスに、再び銃弾を撃ち込む

 その瞬間サイクロプスの体が光り、銃弾を弾いてしまう

 

「おろ、予想が外れた…まあ、逃がさないんですけどね初見さん」

 

 立ち上がろうとしたが力が入らず、その場にうつ伏せで倒れるサイクロプス

 その巨体から少し離れた場所から、真っ正面にサイクロプスを捉える

 

「さあ!!フィナーレと参りましょうか!!」

 

 背中から、もしものときと思って準備していた新兵器を取り出す

 口径50ミリ、大型の専用弾を約3メートル飛ばす試作グレネード投射銃1号である

 装填されているのは、フラム鉱石と燃焼石の混合爆裂弾

 

「残念ながら、チェックメイトだ」

 

 引き金に指をかけ、躊躇なく引く

 そして轟音とともに、サイクロプスは止めをさされた

 

――――――――――――

 

「おえぇぇぇ…」

 

 バカみたいにテンション上げて戦うんじゃなかったぜ…

 

「燃焼系武器多用しすぎて、酸欠になるとは思わなんだ…」

 

 火炎手榴弾とグレネードランチャーのせいで、周辺の酸素濃度が急激に低下

密室で燃焼系武器を多用しない、ちぃ覚えた

 

「戦闘方針を変えるべきかもしれんなこれは…」

 

 少なくともオルクス大迷宮内での戦闘スタイルは、変更すべきかもしれない

 

「んでだ、この扉を開けるわけなんだが」

 

 絶命したサイクロプスからそれぞれの魔石を取り出す

 

「この2つの魔石をこうしてっと…」

 

 扉の窪みにそれぞれはめる

 すると魔石から赤黒い光が迸り、魔法陣へと魔力が供給される

 何かが割れる音と同時に、部屋全体が眩しく光り出す

 

「うをっまぶしっ」

 

 思わず右手で顔を覆う

 しばらくして目が慣れたので、目の前の扉を押す

 

 開け放たれた扉からの光と、技能の夜目のお陰で部屋の全貌が明らかとなる

 石造りの巨大な神殿のような構造、ギリシャ風の石柱が2本ずつ等間隔に部屋の中央まで並んでいた

 その中央には、巨大な立方体の石のようなものが置かれており、扉からの光で光沢を放っていた

 

「……」

 

 慎重に部屋の確認を行う、周りに魔物の類いはいないようだ

 そして中央に鎮座する立方体を観察して、違和感を感じる

 何か、何かが生えている

 生えているというのは適切ではないかもしれない

 どちらかというと、埋め込まれていると言った感じだ

 

 光源確保の為に扉の固定とランタンの準備をしようと思い、扉付近で錬成をしようとした

 

 その時であった

 

「……だれ?」

 

 か細い、よく聞かなければ聞き逃してしまいそうな小さな声が聞こえてきた

 振り返れば、立方体から生えている何かがゆらゆらと揺れていた

 それは、人であった

 肩から下と両腕を立方体に埋め込まれて、顔のみが出ている

 長い金髪が顔の前に垂れ下がっており、その隙間から深紅の瞳がこちらを覗いていた

 顔は痩せ細っていたが、見た感じ10代前半と言った顔立ちである

 

 ――大迷宮の奥底で、死と隣り合わせの地獄で

 俺は俺以外の言葉を話す生き物に出会ったのだった




一人は辛く、きっと悲しいものだから
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