さあ戦うことが決まったから早速旅に出発だ!
なんてどこぞのひのきの棒渡して世界救ってこい系ゲームじゃないので、しっかりと訓練をしていきます
なんでもその辺は予測済みだったらしく、今いる聖教教会本山『神山』麓にある『ハイリヒ王国』へと向かうらしい
向かってる途中にハイリヒ王国の歴史やらなんやらを話されたが、自分含めてクラスの半分も聞いていないだろう
単純に興味がない、もとの世界ならまだしも異世界の国の歴史なんて聞いて得しないのだから
聞き流し安定、みんなもそうしよう
魔方陣が描いてある台座らしきものに乗り込み、教皇のじいちゃんが
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」
と唱えると、まるでロープウェイの様に動き出した
始めてみる(召喚時の魔方陣を除けば)魔法にクラス全員大騒ぎ、俺は別の意味で心臓ドキドキ
べ、別に高いところが苦手なわけじゃないんだからね!
だからせめて囲ってある柵はもう少し丈夫なものを付けてくださいお願いします
するすると雲海を抜けて、そこに広がっていたのは巨大な都市だった
ハイリヒ王国王都、その全容が眼前一杯に広がっていた
山肌からそそりたつ王城、放射線状に道路と建物がのびる城下町
このロープウェイのようなものの終着点は、どうやら王城の一番高い塔のようだった
神山からのびる魔法の乗り物の終着点、まさに奇跡の体現だろう
特に興味はないが
宗教と国家の繋がりなんて、中世ヨーロッパでは普通にあったことだ
むしろあの時代は教皇の力が強く、如何に皇帝であれその権威には遠く及ばなかった時代なのだ
宗教は人心を落ち着かせ、希望を与えるもの
娯楽の少ない時代、拠り所として人々は宗教を求めたのだ
披露するつもりのないうんちくは仕舞っておいて、いよいよ王城に到着だ
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列の最後尾に並び、のんびりとついていきながら適度にぐうたらする
何も考えずに歩くのは楽でいい(ぐうたらの鑑)
そんな風に歩いていると、ようやく目的地、王座の間に到着した
いかにも『玉座の間です』と言わんばかりの両開き扉が開かれ、教皇のじいちゃんを先頭に全員中へと入っていく
そこには赤い絨毯の挟んで甲冑姿の兵士と、ローブを纏った文官らしき人たちが30人ほど並び
その一つ上の玉座には来客を直立で出迎えた初老の男性、同じほどの年齢に見える女性、そしてまだ幼さ残る金髪碧眼の男女が並んでいた
彼らこそ、この国の王族だ
そうしていると教皇のじいちゃんがおもむろにクラス全員をその場に待たせる
さも当然と言った風貌で玉座を上り、国王の隣に立つ
手を差し出せば、国王はその甲に軽い接吻を落とす
まあ要するに軽くキスをしたわけだ、まさかこの目でカノッサの屈辱の現実が見れるとは思ってなかった
その後は王族の自己紹介やら国家中枢に関わる面子の紹介をされてお開きとなる
そして晩餐会が開かれ、改めて自分達への期待の大きさを実感することとなる
それはそうと王太子殿下?その白崎さんは競争倍率の高い娘なので射落とすつもりがあるのなら、あらゆる手をお使いくださいね?
俺?さぁなんのことやら…
後は訓練時の教官紹介をして、一日目は終了
天蓋付きのベッドで眠れない理由は、きっと枕が変わったせいだろう
絶対そうに違いない
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翌日早朝から、野暮ったい目を擦って訓練に参加する
お昼からとかじゃダメですかね?ダメですかそうですか
団長ことメルドさんは、副団長に雑務を押し付けて訓練指導入るようだ
嫌なことから逃げても逃げ切れないって、それ一番言われてるから
訓練の前に渡すものがあるとか言って、ちょっと大きめの長方形の板を配る
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
マイナンバーカードかな?あ、でもあれはまだそこまで高性能じゃなかったか
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト?」
天之河が聞きなれない言葉を聞き返す
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」
ほーん、便利なもんで
感心しながら指先を針で刺し、魔方陣に血を擦り付ける
するとーー
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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なんか出た、すごい気持ち悪い
いやだってさ、自分の能力数値化とかどう見てもゲームの話でしょ
嫌だよどのステータス振るか延々と悩む系異世界冒険は、しなくていいならしないけども
その後の団長の話をまとめると
①ステータスは鍛練で上昇する。また魔法アイテムの使用でも上昇する
②『天職』の欄は才能のことで、末尾の技能と連動してこの分野に関しては無類の強さを発揮する
③天職保有者は戦闘系天職と非戦闘系天職に分かれる。戦闘系のほうが希少で千人に一人、場合によっては万人に一人らしい。反対に非戦闘系天職は結構あるらしく、十人に一人のものも珍しくない
ということである
そして最後に付け加えられたのが
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
「…………」
(チラッ)
圧 倒 的 オ ー ル 1 0 ス テ
あなたなんにもできないのねぇ…
ソ,ソンナコトナイヨ!(幻聴)
あーあーあーあー、日頃の行いのせいかステータスまでぐうたらになってやがる
これは駄目みたいですね…
ナマケモノのフレンズ宣言を受けた主人公並の絶望を感じていると、勇者の天之河のステータスが判明する
あーもう見なくったってわかるよ勇者だもんねオール100にマシマシの技能なんでしょはっじー知ってるよ
案の定天元突破のステータスに差別しか感じられない、おかしいこんなこと絶対許されない
そして死刑宣告、もとい自分の番になる
「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
鍛冶屋、鍛冶屋ねぇ…
悪くはないんだろうが、しょーじき足手まとい感が半端ない
クラスで一番下であろうステータス、ここから導きだされる答えは…
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやっ「そうだ、引きこもっちゃおう」…は?」
なんか言ってた檜山を完全無視して、さっさと王城内に戻ろうとすると団長があわてて止める
「ま、待ってくれ‼確かに非戦闘系天職ではあるが戦闘ができない訳では…」
「いやいやいや何言ってるんですか、農民に槍持たせたって大した戦力にはならないけど農民には農民の得意分野があるでしょう。だったら自分も自分の得意分野伸ばしますよ」
ハンマー片手に魔人族と戦うのも絵面的には美味しいかもしれないが、どう考えたっていなくてもいい戦力だろう
だったら戦うのやめますよ、足手まといで一生終わるの嫌なんで
「もうね、日頃の行いの悪さがこんな形で出てしまうわけですよ。好きでぐうたらしてるんだから当然だけど、まあそれはそれこれはこれ。戦い行って汚い肉塊のオブジェ作りたくはないですからねぇ」
死ぬのは怖いが死んでからバカにされるのも嫌だ、だったら卑怯ものと呼ばれてもいいから後方で頑張ることにしよう
むしろクラスの為にもなるしいいんじゃなかろうか、なんて思っていたら
「南雲君、気にすることはありませんよ! 先生だって非戦系? とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。南雲君は一人じゃありませんからね!」
と声高らかにそう言ったのは愛子先生、励ますために言ってくれたと思うんですがね先生
世間一般ではそれをフラグと呼ぶんですよ?
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畑山愛子 25歳 女 レベル:1
天職:作農師
筋力:5
体力:10
耐性:10
敏捷:5
魔力:100
魔耐:10
技能:土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
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…この圧倒的農耕系技能、これはもしかしなくても
「先生、いつの間に農家系アイドルデビューしたんですか」
「あ、アイドルデビュー?!し、してませんよそんなこと‼」
「いやいやだってどう見たってゼロ円の食堂やってたり無人島開拓やってる系アイドルでしょこれは、むしろそうじゃなかったら詐欺ですよ詐欺」
「だから違いますってぇ~‼」
必死で否定する先生、見ていてほっこりする小動物っぷりである
まあ、なんだ
幸先悪く異世界冒険が始まったようで何より
ーーところで先生、新しい村建設の予定はありますか?