引きこもりを決心してからはや二週間が経過いたしました
とりあえず部屋にずっといると外聞が悪いとかなんとかで、訓練には参加することになりました
主に白崎と先生の説得があったからなんだけど、憐れみなら要らないんだからね!
元々クラスでも浮いていた自分が役立たずとなれば、関わってくる暇人がいる訳もなく
ひとりぼっちは寂しいもんな、とか言ってくれる友達もいない訳ですよはい
あれからとりあえずいろいろ漁ってはみた、錬成師の事を
錬成師はいわゆる鍛治系統の天職で、鍛冶屋のうち1割、十分の一がこれにあたるありきたりな職業らしい
剣、槍、盾、甲冑、その他武具の鍛治に役立つ
なんて言われれば完全に内政型特性である、これで前線に立てって?ご冗談を
「しっかし暇だな、理由つけて訓練早く切り上げたり不参加するのも面倒臭くなってきた」
コネコネコネコネ
「『もしかしたら読書をすればいい使い道が見つかるかもしれません』とか『武器を使うより持つ方が効果的かもしれません』とか、んなわけねーじゃんなに騙されてるの」
コネコネコネコネ
「あーしんどい。屋外訓練なんてしたって、俺が前線に立つより勇者様ご一行が立った方が圧倒的だろ」
コネコネコネコネ
「…さっきからグチグチうるさいわねナマケモノ」
「やあ生真面目ちゃん、午前の練習終わったの?あと多分それ、グチグチじゃなくてコネコネだと思うんですけど」
「一応はね、だれかさんが始まる前に屁理屈こねてサボったから早めに終わったのよ…コネコネって何よ?」
「鉄の塊錬成で捏ねてんの、なんか分かるかもしれないしー」
タオルを首に巻いて訓練場の方からやって来た八重樫に嫌みを言われる
それを俺は左へ受け流す
「…本当どうしたの?いつものあなた以上にやる気がないじゃない」
「えーいつもこんな感じでしょ」
「そんなわけ無いでしょ‼…ねぇ、あなたがよければ私と香織と一緒にーー」
「なぁ、八重樫」
心配からかある提案をしようとした八重樫の話を、俺は中断させる
「3人から4人」
「…?」
「低スペックの俺が迷宮へ行って、その俺をカバーするために必要な人員数」
「そ、それが?」
「それだけのリソースが俺だけにとられる、その間そいつらは俺のお守りって訳だ」
捏ねていた鉄塊を一気に引き伸ばすと、刃のようなものがついた延べ棒になる
「こんな子どもの粘土遊び程度のものしか作れない俺が迷宮?笑えない冗談だな」
そう言って両手で延べ棒を鉄塊に戻す
「ましてや八重樫や白崎は『勇者パーティー』筆頭だ、俺なんかの為に外れる訳にはいかねーだろ?」
「でも…」
「見誤るなよ八重樫、お前達がやるべきことを」
鉄塊を捏ねながらクラスのまとめ役に釘を指す
捏ねていれば何か掴めるかもしれないと思ったが、どうやら骨折り損だったようだ
「元の世界に帰れる保障がどこにもない、この先どうなるかわからないのに無能一人にかまけている余裕はないだろ」
「そんな言い方…‼」
「違うのか?ステは低い、天職は内政向け、技能は2つだけ、魔法適正は皆無、おまけに成長性もなしときたもんだ。笑えるほどの無能じゃねーか」
この二週間、訓練という体であらゆることを試された
そして自分には魔法の特性すらないことが判明した
他の面子が手のひらサイズで収まる魔方陣を、俺は直径1メートルの魔方陣を描かなければ発動しない
さらに問題となったのは成長率の悪さである
二週間で上がったレベルは1、各ステータスの上昇数値はたったの2である
天職勇者の天之河は二週間でレベル10、各ステータスは倍増している
比べる対象が勇者だから、なんて理由になら無い
他のクラスメイトもそれには及ばないが、しっかりと成長しているのだから
「……」
「な?反論できないだろ?そんな奴にお守りつけて、万に一つ戦えなくなったりしたら俺は一生自分を許せない」
それだけはできない、万が一俺のせいでクラスの誰かが戦えなくなったりーー最悪死んだりしたら、俺は一生それを恨んで生きていくことになる
「…じゃあ、どうして」
「んー?何が?」
「どうしてっ、二週間たってもあなたは錬成の試行錯誤を続けているのっ‼」
「……」
…痛いところを
「諦めていないんでしょ?本当は自分も一緒に戦いたいと思っているんでしょ?みんなと一緒に、クラスの一員として‼」
まったく、こいつは本当に面倒臭い奴だよ
「黙秘」
「え…」
「それについて話すことは何もない。じゃ、午後からの練習も頑張れよ」
「ま、待って南雲君‼」
そんな声を無視して、手のなかで鉄塊を捏ねながら自室への道を歩く
分かっているさ、未練がましいことぐらい
こんなことしても、俺が突然強くなるわけでもないのに
本当、面倒臭い…
ーーーーーーーーーーーー
「一緒に訓練しようよ」
八重樫と一悶着あった翌朝、他のクラスメイトが訓練をしているであろう時間に目が覚める
厨房に行って朝食のあまりでも貰おうかと考えて戸を開けたら、満面の笑みで女神様が待ち構えておりました
なにこれ目覚ましドッキリ?
そんな風に考えていた俺に、目の前の女神こと白崎は『一緒に訓練しようよ』と言ってきた
Hahaha!Nice joke.
ありえない、そう絶対にありえないことだ
「あーすまない白崎、今日は書庫に行って調べものがーー」
「一緒に訓練しようよ」
…んん?おかしいな、聞き間違いかな?
「えーっとどうしても今日中に調べておきたいーー」
「一緒に訓練しようよ」
おおっとこいつはヤバイ
本能が警鐘を鳴らすくらいにはヤバイ
「…俺と訓練するよりもさ、八重樫や天之河と一緒にした方がーー」
そう言った途端、ガシッと両の手で両肩をつかんでくる
痛くはない、痛くはないのだが滅茶苦茶こわい
「一緒に、訓練しようよ?」
にっこりと、誰が見ても見惚れる笑顔でまったく同じ言葉を繰り返した
これは、ダメみたいですね…(諦め)
「……ハイ」
「よかった‼南雲くんならそういってくれると思ってた‼」
肩をつかんでいた手を離すと、絶対に逃がさんと言わんばかりに右手を握って引きずる勢いで歩き出す
さながら俺は荷馬車に載せられた子牛の気分だ
ドナドナドーナードーナ…
しかし、白崎ってこんなに強引なことしたっけな?
八重樫辺りの入れ知恵でも、もう少し穏便にすると思ったが…
どうやら八重樫の入れ知恵でもなかったようだ
訓練場に入って、八重樫が「ちょっと、香織?!」とかなり驚いていたから、俺を引っ張ってやって来ることは想定外だったらしい
「あ、雫ちゃん‼南雲くん一緒に練習してくれるって‼」
「香織、あなた…」
かなり強引な手を使ったのは分かったらしく、白崎にどう声掛すればいいか悩んでいるようだ
あの八重樫を悩ませるとは、白崎恐ろしい子…‼
朝食食べてない(という言い訳を使って戻ろうと思っていた)と知ると、「じゃあはい‼用意していたんだ‼」と中くらいのバスケットに朝食らしきものを準備していた
マジでどうしたの白崎、俺のあまりの不甲斐なさにとうとう吹っ切れたのか?
「自覚があるのならどうにかしなさいナマケモノ」
「難しいことよく分かんなーい」
「気持ち悪いからやめて」
「流石の俺でも泣くぞこの野郎」
毒舌なフレンズめ、さっきの驚き顔永久保存版にしてばらまいてやろうか
「で?後方支援向けの平々凡々な俺と、何の訓練するんだよ」
「普通に剣術の訓練でいいんじゃないの?」
「インドア派で帰宅部の俺になんという拷問を…‼」
「こっち来て何度か訓練してたでしょあなた」
「ド素人が1から始めるとキツいんだよ」
「少なくともクラスの半分が該当する件について、何か言うことがありますか南雲はじめさん?」
「ノーコメントで」
「あなたって本当にどうしようもないナマケモノね…」
「やかましいわい」
白崎は準備してくるとか言って訓練場内に向かっていった。俺はと言うと、八重樫とグダグダ言い合いながら訓練場備え付けの剣をーー取らずに懐から鉄塊取り出す
「…自前の武器使うの?」
「そうだけど?」
「……」
「なんだよその『昨日の問答はなんだったんだよこの野郎』みたいな目は」
「昨日の会話はなんだったのナマケモノさん?」
「しかも口に出してるし」
「私がどれだけあのあと悩んだか分かる?傷付けたんじゃないかって、結構不安になったのよ?」
「その件については悪かったって」
冷たい視線を受けながら鉄塊を伸ばして剣擬きにすると、準備を終えた白崎が戻ってきた
「二人ともお待たせ‼…どうかしたの?」
「いーえ別に、ただナマケモノさんに嫌味を言っていただけだから」
「そうそう嫌味を言われただけだから、うん」
「??」
首をかしげて分からないと言う仕草をする白崎、純粋なそのままの君でいて
「で、だ。本当に剣術の訓練するのか」
「八重樫流の新人向け訓練をしてもいいんだけれども」
「出来ればそれはパスしたい」
「そう?まあ無理にとは言わないけど…」
「ここでそれやると、流れ的に冒険へ強制参加させられそうで」
「…大概に酷い理由なのはよく分かったわ」
間違って上達なんぞしてみろ、前衛として駆り出される可能性が急増するぞ
「だから我流で練習しようそうしよう」
「あなたがそれでいいならいいけど」
「……むー」
そんな風に八重樫と話をしていると、白崎がほほを膨らませていかにも『不機嫌です』といった様子でこちらを見ていた
「…どうしたんだ白崎」
「…雫ちゃんばっかり南雲くんとお話ししてズルい」
「ズルいって香織あなたねぇ…」
はっはっは、リスみたいにほほ膨らませてもかわいいだけだぞ
「じゃあ立ち話はこれくらいにしましょうか」
「そうだな、さっさと終わらせよう。んで?俺は八重樫と白崎を同時に相手すればいいのか?」
「何寝言言ってるの?そんなことさせるわけ無いでしょ?」
「流石に酷くない?ねぇ?寝言は言い過ぎとちゃう?」
「自分で素人って言ってる人間がいきなり対複数戦出来るわけがないでしょ、現実見なさい」
「なに?俺何か恨まれることでもした?流石に傷付くよ?」
「身に覚えがないとは言わせないわよ」
えーよくわかんないなー
「最初は香織としてもらうわ、回復役だけどある程度剣術もできるから」
「よ、よろしくお願いします…」
「なんでそんなにガチガチなんだ」
回復役と剣術練習というのも字面がすごいが、俺にとっては充分強い相手だろう
しかし、白崎とかぁ…なんというか、まぁ、うん
「…出来ればしたくないけどなぁ…」
「…?南雲くん何か言った?」
「ん、何も」
構えもへったくれもないただ剣を持って突っ立ってるだけの俺と、若干腰を落として構えを見せる白崎
…10分どころか5分も持たないのではなかろうか
「因みに香織に負けたら勝つまで練習に付き合ってもらうから」
「ちょっ」
なにそれ聞いてないんだけど
「今決めたわ」
「この鬼‼悪魔‼スパルタ師範‼お節介焼き‼」
「なんとでも言いなさい」
くそぅほとんど効果がない、知ってたけど
「はぁ…じゃ、お手合わせ願いましょうか白崎さん」
「こ、こちらこそお願いします」
ペコリとお辞儀をする白崎に、軽く会釈で返す
それじゃ、無能は無能らしくやりますかね
ーーーーーーーーーーーー
訓練開始から約10分が経過した
白崎の剣捌きは決して上手とは言えないものだろうが、少なくとも俺よりも数段上であることはすぐに分かった
しかし上だからと言って上達途中な為か、振り上げ中や振りかぶった後の隙が以外と大きい
そこをうまくついて避けてはいるが、正直一太刀すら浴びせられていないのが現状である
やっぱりレベル差は大きいって、はっきり分かるんだね
「うぅ…え、えい‼」
若干疲れが出てきたのか最初よりも攻撃が大降りになる
「あらよっと」
それをちょっと右にずれて避ける
さっきからこれの繰り返しだ、もういい加減面倒くさくなってきたぞ
「……」
けしかけた張本人は試合をじっと観ているだけで何の声かけもしてこない
やっぱりあいつドSなのではなかろうか
「はふぅ…も、もう疲れたよぉ…」
「回復役がすぐへばってどうすんだよ…」
流石に10分程度剣を振っただけで、体力の限界に到達するのは不味いのではなかろうか
「だ、だって南雲くん避けてばっかりなんだもの…」
「そら一番疲れないからな、体力温存できるいい方法だよ」
面倒くさがりには面倒くさがりの戦い方があるのだ
決して後々訓練への強制参加させられるのが嫌なわけではない、断じて
「…まったく、少しは改心してくれるかと思ったのだけどね」
それまでじっと試合を見ていた八重樫が近付いてくる
「負けたら訓練に強制参加なんだろ?だったら負けなきゃいいわけだ」
「それで引き分け?理解しがたいわね」
「なんとでも言え」
これで一応訓練はしたのだから、今日はもう上がろうと思いーー
「じゃあ、次は私とね?南雲君」
ーー目の前に剣の切っ先を向けられた
「…聞いてないんだけども」
「言っていなかったものね」
じりじりと剣を近付けてくる八重樫、どうやら本気のようだ
「流石に避けてばっかりで訓練になるとは思っていないでしょ?私が直々に指南してあげるわ」
「ワーウレシイナーナミダガデソウダナー」
「死ぬほど感動してちょうだい」
波紋使いの先生みたいなこと言わないでもらえませんかねぇ…
「では、はじめ」
「おぉう?!」
問答無用で剣を横薙ぎされる、後ろに転げて避けたもののかなり危なかった
「避けるのはクラス一番かしらね」
「そいつはありがたいこって…っ‼」
しゃがんでいた俺に容赦なく剣を降り下ろす八重樫、こいつは本気のようだ
「逃げてばかりいては勝てないことを教えてあげるわ、南雲君」
「出来れば俺以外に教えてほしいなそういうことは‼」
後方に全力疾走、所謂戦略的撤退と言うやつである
「逃がさないわよ」
はっと気がつくと目の前に八重樫がいた
急停止するが降り下ろされた剣を避ける余裕がなく、持っていた自前の剣で何とか防ぐ
「私から簡単に逃げられると思わないことね」
「…まさか縮地を使ったのか」
アニメや漫画の噛ませ役みたいなこと言っているが、本気どころか全力でかかってきていることに気付き冷や汗がでる
縮地、書いて字のごとく短い距離を短縮させることでまるで高速移動したかのように見せる戦法
これがなかなか厄介で、いきなり後ろに回り込まれたり攻撃を避けられたりと相性によってはとことん合わないものだ
「っていうか卑怯だぞ‼俺ごときにそんなもの使うだなんて‼そんなんチートやチーターや‼」
「逃げようとしなければ使わないですむのだけれどね」
何を言うか、今逃げずしていつ逃げるのだね
「さあさあどうするのかしら?このまま延々と逃げ続けてもいいけれども」
「むむむ…」
そうしたいのは山々なのだが、絶対体力が持たなくなる
ーー致し方なし、か
「…はぁ、どうしてお前がここまで戦いに固執するのか理解できないが、覚悟を決めるべきか」
「ようやくやる気が出たのかしら?」
「不本意ながらその通り」
持っていた剣を構えて、嫌々八重樫に対峙する
「最初からやる気を出してくれればこんなことしなかったわよ、流石に」
「嘘こけどうせ昨日の事引きずって、どっかでお返ししようと思ってたんだろ」
「…さて何の事かしら」
「まったく…」
あの話はあそこで終わったんだからきれいさっぱり忘れてくれやしませんかね?
「…お返しなんて考えてなかったわよ」
「…ん?」
「ただ、ただ南雲君に自信を持ってもらいたかったの」
「……」
「気付いているでしょ?城内での噂、訓練にもまともに参加しないって」
「まぁねぇ、自覚がある分そりゃしっかりと」
「でも、南雲君は私たちの仲間なのよ。みんなで元の世界に帰る、それが私の、私たちの目標なのよ」
「……」
「最前線で剣を振ってほしい訳じゃないの、でもみんなで一緒に戦い続けたいの。私のわがままだけど、本心でもあるから…」
「…はぁ、こんな役立たずに何期待してるんだろうねこの人は」
それだったらますます俺が前線に立つ意味が無くなる、勇者たちがやってくれればそれで丸く収まるんだろ?
帰れるかどうかは別にして
「しかし、一度やると決めたんだ。しっかりとやりきらせてもらうぞ」
「さっきまでの逃げ腰はどこ行ったのかしらね?」
「さぁ?逃げるためにやる気を出してるだけだろきっと」
構えなんて適当に、振り方だって酷いものだろう
だがまあ、やってやれない事はない、筈
「先手必勝‼」
「甘いわ‼」
大きく右から横薙ぎするが難なく止められる
うん知ってた、意気込みでどうにかなるのはバトル漫画くらいなものだ
「だから小細工させてもらう」
「っ‼」
鍔競り合いしていた八重樫の剣が若干歪む
それに気付いた八重樫は後ろに飛び退く
「あなた…」
「自前の剣を介して錬成させてもらった、まあちょっと曲がった程度だけども」
そう言って大きく剣を振りかぶる
「一度はしてみたかった技その1‼『桜吹雪(仮)』」
振るった剣先から小さな何かが飛び出していく
「なっ!?」
あわててそれから逃れる八重樫、ついさっきまで立っていたところに小さな刃が突き刺さる
「な、なによそれ‼」
「振り回したときに錬成で剣先を小さく飛ばしたんだ、それも連続でな。お陰で某メイド長な気分だ」
そう、あの武闘派メイド長
主人のために戦い、決め台詞を言うあのメイド長だ‼
『サンタ・マリアの名に誓い すべての不義に鉄槌を』
…あれ、違うメイド長の電波が
「さあさあお手を拝借ってな‼」
「くっ‼」
適当に剣を振り回すだけで、出来損ないのナイフが飛んでいく
万に一つ当たっても刺さるどころか傷一つつかない安心設計(大嘘)
「いい加減に…‼」
「‼」
縮地かっ‼
「してちょうだい‼」
後ろに一気に回り込まれる
体を捻って回避するがあえなく模擬剣の餌食となる
「くぅう‼いってぇぇ‼ちったぁ容赦しろよ‼」
「あなたに言われたくないわね‼」
いや絶対お前は手加減してくれなきゃダメなやつだろこれ
「Reload‼」
無駄に発音よく懐から別の鉄塊を取り出して宣言する
短くなった剣にくっつけてリロード完了だ
「何を…‼」
「これが無能の戦い方だ八重樫‼」
元の長さに戻った剣を思いっきりぶん投げる
「こんなものっ‼」
それを難なく弾き飛ばす八重樫
お前ならそうしてくれると思ったよ
「これで…‼」
「これで、どうした」
「っ?!」
目の前に近付いて剣の先を向ける
「チェックメイトだ八重樫」
「そんな…剣はさっき飛ばした筈じゃ…」
「…こんな格言をご存知?」
某お嬢様学園戦車道部部長のような口調ではっきりと言ってやる
「『本当の切り札は、最後の最後まで取っておくものだ』」
「…格言じゃなくてアニメの名台詞じゃないのそれ」
うるへーどっちでもいいんじゃい
「…なるほど、ね。あのとき出した鉄塊以外に持っていたと」
「こんなこともあろうかとな」
「まったく…私も詰がーー」
持っていた剣が弾き飛ばされる
「ーー甘くなっていたわね」
ですよねード素人の付け焼き刃戦法なんて通用するわけないですよねー
「はぁぁぁぁぁ…分かってはいたが俺の負けか…」
「あら、別の鉄塊を出せばいいじゃない」
「あんな重いもん5個も10個も持てるわけないだろ」
さっき出した3つで打ち止めどすえ
「あーあー…なーんか悔しい、悔しいけど面倒だからいいや」
「……」
「結局無能が無い頭捻ったって、この程度か」
そう言って訓練場の地面に寝転がる、このまま地面と同化してしまいたい
そう、このまま……
「……」
「…南雲君ーー」
「ああああああぁぁぁっぁっぁぁぁぁぁ‼」
「?!」
ゴロゴロと地面を転がる
服が泥だらけになるが知ったことではない
「あーー恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい‼昂ってたとは言えなんであんな恥ずかしいこと言っちゃったの俺ぇ‼」
高校生にもなって厨二病とか、恥ずかしさで死ねるわ
「うぅ…ああいうのは天之河の役目だろ…俺が言ったってただの痛い子だよ…うぅ…」
死にたい、このまま塵芥となって消えてしまいたい
それか貝になりたい、二枚貝じゃないやつがいいな
「…はぁ、締まらないわねぇ」
「あはは、南雲くんらしいと思うよ?」
やめてくれ白崎、慰めのつもりかも知れないがそれは俺に効く
「本人がこの調子じゃ、訓練はここまでね」
「私もちゃんと南雲くんの訓練したかったなぁ…」
「あら、ちゃんと約束は守ってもらうから明日以降お願いすれば?」
「ちょっと待とうか八重樫」
すくっと起き上がって八重樫に抗議を入れる
「あん時の約束は『白崎に負けたら』だっただろうが、お前に負けてもペナルティは無い筈だぞ」
「無いだなんて一言も言ってないわよ、それにーー」
耳元まで顔を近付けてくる、ちょ近い近い
「ーー私こう見えて、負けず嫌いだからね?」
小さく微笑んで訓練場の待機場所に戻っていく八重樫
白崎と何やら言い合いしているが、軽く流している様子だ
ーーとりあえず訓練への強制参加は決定事項となったらしい
「雫ちゃん、南雲くんとなんのお話ししていたの?」
「これからの練習のことよ」
「ふーん…練習のこと、ね…」
「…なに、その含みのある言い方は?」
「べーつーにーだ」
「?」