死んだと思ったかい? 残念、生きていました。
今回は美紀ちゃん編です。
本を本棚に収める作業を続ける。
俺は図書委員。なので返却された本を元の棚に戻す仕事をしなくてはならない。本に手をかけながらポケットの中でハンカチで隠したスマホをチラチラと確認する。もういい時間だ。窓の外を見れば東の方から藍色のような黒が空に馴染み始めていた。
隣に目をやる。そこには寡黙な後輩が同じく本を元の棚に戻していた。
ボーイッシュな感じの女の子。ガーターベルトを身につけており、大人の色香を醸し出している。正直にいうと、とてもエロい。
エロスの塊のような少女、直樹美紀はふと、こちらを見た。
「……何ですか?」
「んー、やっぱり可愛いなって」
「はいはい、そんなこと言っている暇があるなら手を動かしてください。まだまだたくさんあるんですから」
「わかったよ」
世辞か、仕事をサボるための方便かと思われたのかこともなさげに流される。
無論先ほどのは本音である。
とはいえ、好きでもない男からそんなこと言われても抱くのは嫌悪くらいだ。なので冗談として受け流されるのが丁度いい。
「……お前、友達はどうした?」
「いきなりですね。圭なら先に帰ってもらいましたよ? 多分遅くなるでしょうから」
「そうか」
「で、女の子を前に他の娘の話題を振るのはどうなんですか?」
「む、俺は祠堂を待たせてるなら先に帰っていいぞと言おうとしたんだが」
「それでもですよ。今はふたりっきりですし、ムードというのを考えてくださいよ」
「そうか、そりゃすまん。俺が悪かった」
こう言う時は謝る以外に選択肢はないことを俺は知っていた。
彼女の機嫌を損ねるのは俺としても嫌だ。漸く出来た繋がりなのだからそれを失いたくない。
しかし美紀は悪戯っ子のような笑みを浮かべると、人差し指にそっと指を当てた。
「許しません。なので、私を抱きしめてください」
「はい?」
俺は目を丸くした。だが美紀は蠱惑的な笑みを浮かべたまま、両手を広げていた。彼女とは春からの付き合いだが、なんとなくこれは何言っても聞かないパターンだと理解した。
「……一回だけな?」
「はい」
早々に諦めた俺は美紀に手を伸ばし、そっと抱き寄せた。柔らかな身体にふんわりと香るいい匂い。なんとなく理性がゴリっと削れる音がした気がした。
しかもこの慎ましくも柔らかい二つの感触は俗に言う……
「くぁwせdrftgyふじこlp」
「何いきなりトチ狂ってるんです?」
「気にするな、お前が可愛すぎた発作だから」
「……」
美紀は無言で顔を俺の胸に埋めて、顔をぐりぐりと押し付けてくる……結構力が強い。
「……まったく……先輩はズルいです。ズルズルです。私をいつもこんな気持ちにさせて……」
「悪いな。でも、お前が可愛いのは事実だからな」
そんな事をのたまう俺に美紀はそっと顔を離して微笑んだ。
「私じゃなかったら……本気にしちゃいますよ?」
「おや、それは俺は充分恋愛対象として見られてるってことか。そりゃ光栄だな」
優しく美紀の髪を梳く。外はもう星が見えていた。
私は多分、先輩に恋をしているんだと思う。多分ってのは私が恋をしたことがなかったからだ。でも、この狂ってしまいそうな感情はまさしく恋なのだとも思った。
私を見て欲しい。触れて欲しい。そしてぐちゃぐちゃに壊して欲しい。先輩以外がどうでもよくなるように、壊して、壊して、壊し尽くしてほしい。
多分圭も同じ気持ちだと思う。親友だからわかる。彼女も私と同類なのだと。
だからこそ、先輩とあんなにも深く繋がっている丈槍さんに嫉妬しているのだ。
私は多分、眼中にないのだろう。けど諦めない、あの人に本当の意味で撫でてもらうために。
ここだけの話。自分、性癖はノーマルなんで、ヤンデレはかけないんすよね……
というわけでいつも通り純愛系の話でした。
さて……次回はいつになることやら……