レスタニア解放戦記 (ドラゴンズドグマオンライン外伝)   作:岸本 案

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第12章「鋼鉄の魔物」

 崩れ落ちる瓦礫の中で、エイミーたちは着地に備えた。各々持てる魔力を解放して空気抵抗を発生させ、落下速度を減殺する。そして、着地と同時に体を回転させて衝撃を分散させるのは覚者なら誰でも体得している基礎動作だ。十数メートルの高度からの落下であったが、エイミーたちは誰一人無様に地面に叩きつけられる事無く戦闘態勢に入った。

 上空を見上げて、シェリーが落下を免れた事を悟り、エイミーは安堵した。三人いれば、不測の事態にも対応できるはずだ。

 

 床を破ってエイミーたちを落下させた張本人は太い両足を踏ん張り、石畳を砕いて着地していた。大小の円柱を組み合わせたような金色に輝く人型の魔物は、頭部に着けた仮面の奥から殺気を撒き散らして襲いかかってくる。全身を覆う金属は淡い光を放っており、ミスリルやバルダーと言った稀少金属で拵えられているのは明らかであった。全長の三分の一程度を占める頭部に仮面を付け、両腕に大きな盾を備えている短い手足の三頭身ほどの寸胴の巨体は異形としか表現できなかった。

「魔道生物(ゴーレム)か。各自散開して間合いを見極めてください。敵の攻撃手段が解るまで迂闊に飛び込むのは避けること」

 エイミーの指示より早く、五人は魔物の間合いに入ること無く出方を窺っている。所謂「後の先」をとる戦術は初めて遭遇する魔物には定石である。後の調査で判明したことだが、この魔物はダムドゴーレムの亜種、ゴリアテと呼ばれる魔物だ。本来ゴリアテは亡都メルゴダにのみ棲息する魔物である。今回何故護政区にまで出現したのか、未だに解っていない。

 アンジェリナが正面で魔物の気を引こうとロッドに明かりを灯す。明らかにその光に興味を持った魔物は巨体を感じさせない敏捷さでアンジェリナに突進してきた。それでも、上空から突如襲いかかってくるグリフォンや予備動作なしで飛びかかってくるオークに比べれば対処の時間は充分あると言えるものであった。大型の魔道生物(ゴーレム)がロッドの光に反応しないかもしれないと言うアンジェリナの不安は杞憂に終わった。

 突進の素早さからはかけ離れた鈍重さで腕を振り下ろしてきたゴーレムの攻撃をアンジェリナは盾で受ける。機械仕掛けであろう巨体の分だけ重さのある攻撃だったが、アンジェリナは衝撃を利用して大きく後ろに飛び退いた。勢い余って地面にゴーレムの腕がめり込み床に大きな穴が穿たれる。それと同時に設置魔法と呼ばれる術式が完成して足元から雷の魔法が吹き上がった。不意を突かれた形になったが、間合いを広げていたアンジェリナは魔法の直撃を避けることができた。帯電した大気が身を護る盾に反応して小さく放電を繰り返して幾筋もの白い光と空気を切り裂く乾いた音を発生させる。静電気で自分の髪の毛が浮き立つのを自覚したアンジェリナは唾を飲み下した。直撃していたら皮膚が焼かれるではすまない。

「関節部の留め金を狙え。ネジが緩めば横倒しに出来る筈だ」

 魔法の噴出が終わるのを待っていたデイビットが狙いすまして放った矢が吸い込まれるように膝裏の関節に命中する。だが、鉄より硬い金属で作られたゴーレムの体には傷一つ付けることができず、乾いた音を立てて矢は弾き返された。デイビットの剛弓が弾き返されたのは衝撃であった。エイミーたちは仲間の武器での破壊力をお互い理解している。今の一撃で相手に傷を付けられないなら、誰が切りかかっても無為であると判断できたからだ。

「なら属性攻撃に切り替えるだけですわ」

 状況を打破するためリィナが魔道弓を構えてゴーレムの弱点を看破しようと試みる。一秒にも満たないうちに、ゴーレムの両肩の突起物が金色に輝く。同時にアンジェリナが聖属性のエンチャントを仲間の武器に付与すると、其々が手にする得物が金色の煌めきを放ち始めた。囮になっているアンジェリナを狙ったゴーレムの大振りな攻撃が空を切ったのを見計らって、ファッツがゴーレムの足元に滑り込む。両肩の突起物を狙って大剣を突き上げようとした刹那、ゴーレムは自ら跳び跳ねてその巨体をファッツに向かって覆い被せてきた。即時に攻撃を中止して転身したファッツは髪の毛一本の差で押し潰されるのを免れることができた。もし、相討ち覚悟で攻撃を出していれば、質量で劣る覚者が負けるのは明らかだった。

 ファッツの無事を確認すると、今度はジレディーヌが剣を構えずにまだ起き上がらないゴーレムの傍らを走り抜けた。その姿を目で追ったゴーレムが立ち上がり片足を軸に反転しようとする。ゴーレムの正面に立つ事になったジレディーヌは最小限の動作で剣を抜かずに柄でゴーレムを殴りつけた。しかし、その攻撃はゴーレムの両手についた大きな盾に弾き返され、本体に傷をつけることは叶わなかった。だが、全身の体重を乗せたジレディーヌの攻撃はほんの一瞬だけ、ゴーレムの体勢を崩すことに成功した。ジレディーヌは口角を吊り上げ不敵な笑みを浮かべると、相手の攻撃範囲から飛び退いた。

 ジレディーヌを追って前進しようとする背中を見せたゴーレム目掛けて、エイミーが片膝を付いているファッツの体を踏み台にして大きく飛び上がった。今までの二人はゴーレムの気を引き、隙を作る為の伏線であったのだ。本命の攻撃は飛び上がったエイミーの肩への直下攻撃だ。何の打ち合わせもないまま、ここまで連携が取れるのはクランの覚者であればこその信頼が産んだものだ。狙いすましたエイミーの一撃が右肩の突起物を破壊する。

 

 その、一瞬前。

 ゴーレムは全身の排気孔から雷の魔法を放出した。攻撃を中断し盾を構えてエイミーは直撃は避けたが、片手に持つ盾で全身を護れる道理はない。足に魔法を受け具足が悲鳴を上げてひび割れを起こす。魔法は具足の中のエイミーの足に到達して、その美しい肌を焼いた。

 苦悶の表情を浮かべエイミーが着地する。具足の隙間から紅い血液が流れだし床に染みを作っていく。治癒のためリィナが魔道弓を構えてエイミーに走り寄る。すぐさまアンジェリナがロッドに明かりを灯し注意を引こうとするが、ゴーレムは前傾姿勢になりエイミーとリィナに向かって大きく顔を前に突き出した。瞬時に危険を悟ったアンジェリナはリィナとエイミーの前に盾を構えて立ち塞がった。

「馬鹿。何考えとる。自分から攻撃を受けに行くな」

 デイビットはそう叫んだが、自らもエイミーたちのもとへ走りよっていく。この一行の中で怪我を負った仲間を見捨てられる覚者は誰一人居なかった。全員が集まって来るのを予想していたようにゴーレムは前方に雷の魔法を噴射する術式を完成させた。

 ただ、皆が集まってくることを予想してたのはゴーレムだけではなかった。

「神の御手の中では、何人(なんぴと)たりとも我が仲間を傷付けること能わず」

 アンジェリナがロッドを大きく掲げ祈りを捧げてから盾を構えた。「今度は守ってみせる」知らずそう心の中で呟いたアンジェリナはゴーレムの魔法の到達よりも早く術式を完成させた。

「守りたまえ。ハンズ・オブ・ザ・ゴッド」

 アンジェリナの言葉と共に盾を中心に半径二メートルほどの空間が淡い金色の光に包まれた。駆け寄った仲間たちが光球の中で固唾を飲むなか、ゴーレムから噴出された霧状の雷の魔法が悉く弾き返されていった。




シーズン3・1直前に投稿。どうにか間に合いました(@_@)
タイムアタックに参加しながらの執筆ですよ。後一日残して現在セージで10位。誰もやらないのを良いことに上位に食い込んでおります。

このまま開催期間終わらないかな~(@_@)
「タイムアタックトップ10入り」・・・うん。甘美な響きだ。
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